職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~

黒水晶

キャンディ・ポリス裏話〜異議あり!!~

割り込み投稿でしれっと一章終わりました。
割り込み投稿したのは、四十四話「お伽話」から四十七話「まつろわぬ神」です。
ややこしくてすみません。


 神域――――そこは人の住む世界と同じ位置に存在し、別の次元に存在する。世界を管理するための空間だ。その空間の時間の流れは神界とその世界の中間と言われている。

 白い空間に存在する世界の時間の流れはバラバラで、一番ゆっくりと時間が流れる世界は神界であり、速い世界では神界の一年の間に五百年から八百年過ぎるという。

 神界に住む神――――主に女性の意見により、神や天使の年齢は神界での時間で数えられている、と言う裏話があったりする。

 そんな世界を管理する神々の仕事場とも言える地球の神域にクレアシオンは来ていた。遊びに来たわけでも、仕事を手伝いに来たわけでもない。制約の枷を付けられ、地球の主神であるシエルに引かれながら、歩いていた。

 今、彼らが歩いているのは広場のようなところだ。木や花が植えられた花壇が規則的に並べられ、普段は仕事のあいだに休憩しに来る天使で賑わう落ち着きのある場所だが、今はその面影もない。

 ざわざわと天使が集まり、今にも暴動が起きそうなほどに興奮しているのが見て取れる。彼らは『あのクレアシオン』を自分たちの神が捉えたと聞き、集まってきたのだ。

「……暇なのか、こいつらは?」
「ふざけんな!!」
「ぶち殺せ!!」
「毎回、毎回、無断で地球に降りやがって!!」
「今回は特に酷いぞ!!」
「あ、あはは……」

 当の本人は人ごとのように広場にある時計の時間を気にしながら、サボってるのではないか?と暗に指摘した。その言葉を聞いた天使たちは怒りをぶちまけた。

 大半は、クレアシオンの不法侵入に対する怒りや、今回彼が起こした銀行強盗事件の結末についてのことだった。そのことに怒っている天使はまともっだった。他の者たちはただクレアシオンに向けて、薄っぺらい正義を振りまきたいだけなのだからだ。

 普段から、彼をよく思っていない者たちが、拘束されている彼を見て、殺せ、殺せと宣っている。その罵倒の嵐を柳に袖押し、とばかりに他人事のように見ているクレアシオンと、それを見てサラにヒートアップする天使を見て、シエルは苦笑いをしている。

「ごほんっ!これより、クレアシオン=ゼーレ=シュヴァーレンの断罪をはじめる!!」

 シエルの宣言により、辺りは静寂に包まれた。断罪、その言葉にクレアシオンがピクリ、と反応し、聞き捨てならないと反論する。

「俺が何やったって言うんだ!!」

 と、声を大にして言い張った。どこか演技がかった物言いに、集まっていた天使からブーイングが飛んでくる。

「貴様ーー!!あれだけのことをやっておいて――――ッ!?」 

 激昂したラジュをシエルが手で押さえた。

「なぜ止めるのですか!?」
「はぁ……。話がややこしくなるから、あなたは黙てて。あなたたちもよ。クレアがやってくれなければ、あなたたちの中から、どれだけの死者が出たかも分からないのだから」

 ラジュは納得出来ない様子だが、シエルの命令を受けて、口を閉じた。だが、その目は射貫かんばかりに、クレアシオンを睨み付けている。

「それに、クレア。貴方が何をしたかよね?」
「ああ」

 じっと、クレアシオンの目を見て確かめるように聞いたシェルをクレアシオンは真っ直ぐ見て答えた。自分にやましいことは何もない、と言う意思表示だ。

 目は口ほどに物を言う、と言う。彼の真っ直ぐな瞳は彼の行いが真っ直ぐであると言う証なのだろう。

「下界への不法侵入、下界への干渉、破壊活動、etc.etc.」
「oh……」

 シエルの口から紡がれる神界の規律に触れるクレアシオンの行動の数々。よくもまあ、あんな短時間のうちに、ここまで出来たものだ。意識してやろうとしても、出来るものではない。

 真っ直ぐ見ていた瞳は右へ左へと動かされ、斜め下の位置に固定された。シエルの目が半目になり、クレアシオンに非難の視線が浴びせられる。

 だが、クレアシオンは反論を試みた。

「あれでも、被害は最小だったと思う……ぞ?」

 その反論は先程のふてぶてしい態度からは想像できないほど、弱々しく、子供の言い訳の様な物だった。

「あれで、最小だと!?」

 そんな、クレアシオンの態度を見て、水を得た魚のように、ラジュが声を荒げた。この点を責める、クレアシオンを罰しようとしたのだ。

「それは、ありがとう」
「シエル様!?」

 だが、シェルがクレアシオンの言葉を認めてしまい、ラジュは素っ頓狂な声を出す羽目になった。ラジュがクレアシオンを振り返るとニヤニヤと笑うクレアシオンがいた。ラジュの顔が真っ赤に染まっていく。

「私達は邪神どころか、悪魔の存在にすら、気づかなかったのよ」
「見つける事が出来れば、我々が必ず、対処していました!!」

 シエルの言葉にラジュは、反論した。見つける事さえ出来れば、必ず倒す事が出来たと。しかし、シエルが言いたいことはそこではない。

「……どれ位待てば、見つかったのかしら?待てば待つほど、邪神は強くなっていくのに」

 見つかるまでに、あとどれぐらいの被害者が出ることか?そもそも、見つけるどころか、居ないと決めつけ、探すことすらしなかったではないか、とラジュ達を見る。
 
「ぐっ……」
「それに、クレアがやらなければ、私達の中でどれだけ死人が出たかさっき聞いたわよね……?」 

 その事にラジュ達も反論は出来なかった助かったのは確かだったからだ。クレアシオンが倒した悪魔の数と邪神の強さを知って青ざめたのは記憶に新しい。

 もし、あの数の悪魔達が責めてきたら、自分達はどうなっていただろうか。そんなことを考え、背中に冷たい物を感じる。

 静まり返った中、シエルとラジュが話している間、落ち着きなく時計を見ていたクレアシオンが口を開いた。

「時間がない。そろそろ行っても良いか?俺も好きであの場に行った訳じゃない。何者かが、俺の転移に干渉したから、彼処に転移する羽目になった」

 クレアシオンは『何者か』を強調しながら、シエルを見た。シエルは光と運命を司る女神だ。クレアシオンが偶々、転移先をミスして、偶々、銀行強盗の現場に転移して、偶々、その場にクレアシオンと波長が合い、クレアシオンが見える少年がいて、その銀行強盗が偶々、悪魔が関わっていた。

 なる程、出来過ぎた話だ。これを運命と言わず、何というのか。

「でも、そのおかげで、貴方はチェリーパイを食べれる様になったでしょ?」
「ま、まぁな……」

 クレアシオンは、反論するが、丸め込まれた。いや、微妙に彼の転移に干渉したと言っているようなものだが、店の味ではない、家庭のチェリーパイを食べる機会を得られたと言う事も事実。そこを責める事は彼には出来なかった。

 それに、とシエルは続ける。

「私程度の運命干渉で、貴方をどうこう出来る分けないじゃない」

 つまり、クレアシオンは干渉に気が付いて、そのまま転移をしたことになる。シエルの言葉に集まっていた天使達はざわつく。

 クレアシオンを手引きしたのが、自分達の主だったことに動揺しているのだ。

「お前は無駄な事はしないからな。何かあると思った」
「最近、嫌な事件ばっかり起きてたからね。嫌な予感がしてたのよ。それに、あんな小さな子にお願いされたら、何とかしたくなるじゃない」

 二人の間に確かな信頼関係を感じる。シエルはここ最近続く事件に心を痛めていた。それに、不審な点が多く、裏に悪魔が居るのではないか、そう考えていた。だが、いくら探しても下位悪魔の一匹も見つからなかった。
 
 彼女の部下である天使達は、気のせいじゃないか、気にしすぎではないか、といくら探しても見つからないので、そもそも居ないのじゃないかと言うようになっていた。

 しかし、嫌な予感を拭い去ることは出来なかった。むしろ、日に日にその予感は大きくなる。悪魔で一番恐ろしい者は、強い者ではない。気配を断ち、暗躍する者だ。

 直接手を下さず、負の感情を貪り、力を蓄える。こういった悪魔が見つかるのは、既に手を付けられなくなってからになることが多い。隠れる必要が無くなったから、表に出てくるのだ。

 自分達が全力を出しても見つけることが出来ない。事件の残虐性から見ても、とんでもない力を持っているのは間違いない。既に邪神が生まれているかも知れない。

 そんな時に現れたのがクレアシオンだった。自分がこんなに悩んでいるというのに、鼻歌交じりに地球の境界面にある厳重な警戒網をくぐり抜けながら、『週間スイーツ世界の有名店特集』に赤いペンで丸を付けながら読んでいるクレアシオンを見つけ、クレアシオンの転移に干渉したのだ。

 彼ならば、問題を解決してくれると期待して。

 そして、期待通り、クレアシオンは全ての問題を解決してくれた。この断罪は、シエルが彼の罪を裁くのでは無く、彼に対する批判的な意見を誤解を解くと共に改善しようとした物だった。

――――クレアは変な所で不器用よね。それに助けて貰ったのに、恨み事を言うなんておかしいわ。

 助けられたのに、その力が恐ろしいから、妬ましいから、そんな負の感情でクレアシオンを責めるのは、間違えているとシエルは考えていた。

 そのために、今回の事だけでもクレアシオンの功績を正しく広めるために今回の断罪を行ったのだ。罪を断つために。

「クレアシオン=ぜーレ=シュヴァーレンは、幾つかの法を犯したが、彼の功績は無視する事は出来ない。よって、彼への罰は一時間私に――――」
「ちょっと待った!!被告側の弁護人が居なくては、この裁きに正当性はない!!」

 シエルが顔を赤らめながら何かを言おうとした時、天使達をかき分けて二人の男が現れた。そして、黒地に燃えるような紅い紅葉の柄をあしらった着物を着た男が、その判決に異議を申し立てた。

「この俺、クレアの親友である秋天雨月尊様が弁護人を勤める!!」
「デレデレレレ♪伝説の弁護人最上級神秋天月尊が現れた!!」

 秋天雨月尊と名乗る男の後ろに控えた大柄の男は、ゲームの様な効果音を口にした。その口調が棒読みな所から、無理に付き合わされていることが分かる。 

 対する秋天雨月尊はノリノリで、左右の手を大きく開き、がに股になり、左右の手を交互に動かしている。

 その姿に『いや、その登場の仕方はモンスターだろ!?』天使達の想いは一つとなった。そして、ここに居る全員の目の前にコマンドが現れた。

『伝説の弁護人(自称)最上級神秋天雨月尊{クレアシオンの親友(自称)}がこちらをじっと見ている。ツッコミ待ちのようだ。
   
   ツッコミをする  YES
            NO⬅ 』

『天使達はNOを選択した。しかし、最上級神の威光により、その選択は取り消された。天使達はパワハラではないかとざわついている。伝説の弁護人(自称)最上級神秋天雨月尊{クレアシオンの親友(自称)}がこちらをじっと見ている。ツッコミ待ちのようだ。

   ツッコミをする  YES⬅
            YES⬅』


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こう見えても最上級武神です。最上級武神です!!最上級武神なんです!!

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