職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~
忘れてた訳じゃないよ。ほんとだよ。
「で、私を召喚したわけですか?」
「……はい」
正座をするクレアシオンの目の前には腕を組むメイド――――ソフィアがいた。彼がソフィアを召喚し、現れると同時に正座をさせられたのだ。なんで、数週間も放置したのだ、と。彼女も帰り辛く、召喚されるのを待っていたのだ。だが、待てど暮らせど召喚されず、最初の内はクレアシオンの事でなぜ、感情的になってしまったのか、と自問自答し、心の整理をしていたが、あまりにも召喚されないので、他にいく宛もなく心細くなったりしていた。
放置したことを怒られてから事情を説明した。エレノアが魔力過剰症になってしまったこと。治すために必要な薬の材料を取りにダンジョンに行くこと。五日で死に至る病と言われているが、五日ももつ保証は何処にも無いため、猶予は三日と考えていることを伝えた。
「……それに、レベルが上がったみたいですね?」
「オークとゴブリンをしょうしょう……」
鑑定を使い、会わないうちにクレアシオンのレベルが上がったことにソフィアは気がついた。
「私がいない間にレベルを上げて、【魔王】から【糖帝】にジョブチェンジしたのですか?……私はあんなに悩んでいたと言うのに」
最後の方は小声になり、クレアシオンに聞こえなかったが、自分が悩んでいた間に、その元凶が変なスキルや称号を取得していたかと思うと少し怒りが沸いてきた。
しかも、数週間も自分の事を放置して、取得したと考えたら余計に怒りたくなった。
「言っても仕方ないですね。急ぐのでしょ?」
ソフィアは説教をしている場合ではないと、自分に言い聞かせた。
「ああ、頼む」
クレアシオンは彼女に向けて頭を下げた。その姿からは必死さが伝わってくる。それは、眷属にする態度ではなく、ただ切実に協力を求めている。彼女にはそれが自分の作った距離をまざまざと見せられているようで、話を逸らした。
「それにしても、バカですか?場所もよくわからないのに飛び出して……」
「……つい」
クレアシオンはエレノアが倒れた時からどうしたらいいか焦っていた。病名位は症状からある程度絞ることができ、最悪を想定して対処できるように動こうとしたが、治療法までは記憶に無かったのだ。病名、タイムリミット、薬の材料、ダンジョンの存在。この情報だけで飛び出してきたのだ。
「では、少し待っていて下さい」
「今すぐいくぞ?」
ソフィアはアレクシスに乗り、飛び立つ準備をしているクレアシオンに向かって待ったをかけた。当然、今すぐにでも薬草を手に入れたい彼は少し苛立ちげに何をするつもりなのか聞く。
「転移先をご主人様の家に登録しておきます」
「……転移系のスキル持ってたのか?」
彼女は転移系のスキルを持っていなかったはずだ。彼のステータスを鑑定したあと、鑑定したが、転移系のスキルは持っていなかった。そうなると、会わないうちに取得したことになる。この系統のスキルはそんな簡単に修得できるような物ではないはずだ。
「いえ、先程、召喚された時に魔法陣を解析して取得しました」
「凄いな……。これで少しはダンジョンに割ける時間も増えるか」
ソフィアはたった一回、クレアシオンにいきなりされた召喚を解析して転移に使える部分を応用して転移系のスキルを取得したのだ。これは【叡智】と【鑑定】をもつ彼女だから出来たことだ。鑑定で足元に現れた魔法陣の効果を読みとき、叡智で必要な情報を引き出し、足りない部分を補い、転移の概念を確立してスキルとして取得したのだ。
クレアシオンは、転移が出来ることに驚きはしたが、使える物は使うのが彼のやり方だ。すぐに、帰りの時間を短縮出来る、と考えた。
「じぁ……いくぞ!」
『かしこまりました。ご主人様』
クレアシオンはアレクシスに乗って、ソフィアは実体化を解いて北に向かって空を駆けた。
◆◇◆◇◆
『ここです。ですが……』
ソフィア達は目的のダンジョンにたどり着いた。【マップ】と【叡智】を持つソフィアにしてみれば、何処に目的地があるのか探すのは朝飯前だった。だが、彼女の顔は優れない。何故なら……
「邪気……。めんどくさいな」
ダンジョンから邪気が漏れ出していたのだ。これは、ダンジョンが悪魔か魔王によって侵略されて、邪神のダンジョンに作り変えられたか、魔物が生まれる時に集まる魔素の渦に邪気が混ざり、邪に属する魔物が生まれ、ダンジョンボスからダンジョンを奪おうとしているか、ダンジョンを奪い、ダンジョンが堕ちてしまったか、だ。
『どうしますか?』
ソフィアは邪気に満ちたダンジョンを一瞥してから、クレアシオンに指示を仰いだ。どうするか?とはダンジョンを攻略するか、他のダンジョンをさがすか、ということだ。
「ここを攻略する」
クレアシオンは迷わずにそう答え、地面に胡座をかいた。アイテムボックス(力業)から様々な肉を取りだし、地面に置いて、料理をしていく。
「ダンジョンが変質したら薬草はないのではないですか?」
彼女は実体化をして、料理をしている彼に向かって他を探した方がいいのではないか?と聞くが、
「ダンジョンが堕ちてもそこから取れるアイテムは基本変わらない」
ダンジョンが堕ちてしまっても、そこから取れるアイテムは変わることがほとんどない。魔物も系統は変わらない。恐らく、魔族が侵略して邪神のダンジョンに作り変える場合も、邪に属する魔物がダンジョンを奪った場合も、元からあるダンジョンコアを元に作ったほうが効率が良いからだと思われる。
ダンジョンが出来る原因は大きく分けて三つあった。大量の魔素が集まり、ダンジョンコアが生まれる。神が試練の為に造る。邪神が邪気を集めて悪魔を増やすために造る。何れにしても、人為的に一からダンジョンを造ることは不可能だ。
元からあるダンジョンコアに魔素を集めるのではなく、邪気を集めるように書き換えればいいだけなので、魔族がダンジョンを造る時に使う常套手段だ。なので堕ちてもダンジョンのアイテムも魔物の系統も変わる訳がない。ただ変わるとしたら、悪魔が生まれると言うことだけだ。
「……どうして、料理をしているのですか?」
ソフィアは少し睨みながら、質問をした。急いでいた訳ではないのか?と。あれだけ急いでいたにも関わらず、何を大量に料理を作っているのだ、と。
「腹が減っては戦は出来ない」
「確かに、時間的には夕方ですが……、量を考えてください。時間が惜しいのではないですか?」
ソフィアの疑問は最もだ。クレアシオンは【暴食】を持ってはいるが、大量の食べ物を食べなければいけない、と言うようなことは全くないのだ。大量に食べるのはエネルギーを補給するため、もしくはステータスを少しでも上げるためだけだった。
あと、食べることが趣味、と言うことは彼女も薄々は気がついてはいるが、時間が無いときにまで大量に食べる意味がわからなかった。
「事情が変わった」
「変わった、とは?」
エレノアを助ける事を諦めるのか?と彼女はクレアシオンを睨んだが、それは間違っていた。
変わった、とはダンジョンのことだ。長老が言うには村人に薬草を取りに行かせたが、戻って来なかった、と言うことだった。ダンジョンが堕ちて魔物が変わったことで対処が出来なかったのだろう。
クレアシオンは焼いていた肉を皿に盛り付け、笑った。
「ダンジョンの攻略法を教えてやるよ」
その笑顔に彼女は嫌な予感しかしなかった。彼女が見た最後の笑顔とは、殺気こそ放っていないが、オークリーダに見せた凍りつくような殺気を放つ笑顔に似ていたからだ。
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「……はい」
正座をするクレアシオンの目の前には腕を組むメイド――――ソフィアがいた。彼がソフィアを召喚し、現れると同時に正座をさせられたのだ。なんで、数週間も放置したのだ、と。彼女も帰り辛く、召喚されるのを待っていたのだ。だが、待てど暮らせど召喚されず、最初の内はクレアシオンの事でなぜ、感情的になってしまったのか、と自問自答し、心の整理をしていたが、あまりにも召喚されないので、他にいく宛もなく心細くなったりしていた。
放置したことを怒られてから事情を説明した。エレノアが魔力過剰症になってしまったこと。治すために必要な薬の材料を取りにダンジョンに行くこと。五日で死に至る病と言われているが、五日ももつ保証は何処にも無いため、猶予は三日と考えていることを伝えた。
「……それに、レベルが上がったみたいですね?」
「オークとゴブリンをしょうしょう……」
鑑定を使い、会わないうちにクレアシオンのレベルが上がったことにソフィアは気がついた。
「私がいない間にレベルを上げて、【魔王】から【糖帝】にジョブチェンジしたのですか?……私はあんなに悩んでいたと言うのに」
最後の方は小声になり、クレアシオンに聞こえなかったが、自分が悩んでいた間に、その元凶が変なスキルや称号を取得していたかと思うと少し怒りが沸いてきた。
しかも、数週間も自分の事を放置して、取得したと考えたら余計に怒りたくなった。
「言っても仕方ないですね。急ぐのでしょ?」
ソフィアは説教をしている場合ではないと、自分に言い聞かせた。
「ああ、頼む」
クレアシオンは彼女に向けて頭を下げた。その姿からは必死さが伝わってくる。それは、眷属にする態度ではなく、ただ切実に協力を求めている。彼女にはそれが自分の作った距離をまざまざと見せられているようで、話を逸らした。
「それにしても、バカですか?場所もよくわからないのに飛び出して……」
「……つい」
クレアシオンはエレノアが倒れた時からどうしたらいいか焦っていた。病名位は症状からある程度絞ることができ、最悪を想定して対処できるように動こうとしたが、治療法までは記憶に無かったのだ。病名、タイムリミット、薬の材料、ダンジョンの存在。この情報だけで飛び出してきたのだ。
「では、少し待っていて下さい」
「今すぐいくぞ?」
ソフィアはアレクシスに乗り、飛び立つ準備をしているクレアシオンに向かって待ったをかけた。当然、今すぐにでも薬草を手に入れたい彼は少し苛立ちげに何をするつもりなのか聞く。
「転移先をご主人様の家に登録しておきます」
「……転移系のスキル持ってたのか?」
彼女は転移系のスキルを持っていなかったはずだ。彼のステータスを鑑定したあと、鑑定したが、転移系のスキルは持っていなかった。そうなると、会わないうちに取得したことになる。この系統のスキルはそんな簡単に修得できるような物ではないはずだ。
「いえ、先程、召喚された時に魔法陣を解析して取得しました」
「凄いな……。これで少しはダンジョンに割ける時間も増えるか」
ソフィアはたった一回、クレアシオンにいきなりされた召喚を解析して転移に使える部分を応用して転移系のスキルを取得したのだ。これは【叡智】と【鑑定】をもつ彼女だから出来たことだ。鑑定で足元に現れた魔法陣の効果を読みとき、叡智で必要な情報を引き出し、足りない部分を補い、転移の概念を確立してスキルとして取得したのだ。
クレアシオンは、転移が出来ることに驚きはしたが、使える物は使うのが彼のやり方だ。すぐに、帰りの時間を短縮出来る、と考えた。
「じぁ……いくぞ!」
『かしこまりました。ご主人様』
クレアシオンはアレクシスに乗って、ソフィアは実体化を解いて北に向かって空を駆けた。
◆◇◆◇◆
『ここです。ですが……』
ソフィア達は目的のダンジョンにたどり着いた。【マップ】と【叡智】を持つソフィアにしてみれば、何処に目的地があるのか探すのは朝飯前だった。だが、彼女の顔は優れない。何故なら……
「邪気……。めんどくさいな」
ダンジョンから邪気が漏れ出していたのだ。これは、ダンジョンが悪魔か魔王によって侵略されて、邪神のダンジョンに作り変えられたか、魔物が生まれる時に集まる魔素の渦に邪気が混ざり、邪に属する魔物が生まれ、ダンジョンボスからダンジョンを奪おうとしているか、ダンジョンを奪い、ダンジョンが堕ちてしまったか、だ。
『どうしますか?』
ソフィアは邪気に満ちたダンジョンを一瞥してから、クレアシオンに指示を仰いだ。どうするか?とはダンジョンを攻略するか、他のダンジョンをさがすか、ということだ。
「ここを攻略する」
クレアシオンは迷わずにそう答え、地面に胡座をかいた。アイテムボックス(力業)から様々な肉を取りだし、地面に置いて、料理をしていく。
「ダンジョンが変質したら薬草はないのではないですか?」
彼女は実体化をして、料理をしている彼に向かって他を探した方がいいのではないか?と聞くが、
「ダンジョンが堕ちてもそこから取れるアイテムは基本変わらない」
ダンジョンが堕ちてしまっても、そこから取れるアイテムは変わることがほとんどない。魔物も系統は変わらない。恐らく、魔族が侵略して邪神のダンジョンに作り変える場合も、邪に属する魔物がダンジョンを奪った場合も、元からあるダンジョンコアを元に作ったほうが効率が良いからだと思われる。
ダンジョンが出来る原因は大きく分けて三つあった。大量の魔素が集まり、ダンジョンコアが生まれる。神が試練の為に造る。邪神が邪気を集めて悪魔を増やすために造る。何れにしても、人為的に一からダンジョンを造ることは不可能だ。
元からあるダンジョンコアに魔素を集めるのではなく、邪気を集めるように書き換えればいいだけなので、魔族がダンジョンを造る時に使う常套手段だ。なので堕ちてもダンジョンのアイテムも魔物の系統も変わる訳がない。ただ変わるとしたら、悪魔が生まれると言うことだけだ。
「……どうして、料理をしているのですか?」
ソフィアは少し睨みながら、質問をした。急いでいた訳ではないのか?と。あれだけ急いでいたにも関わらず、何を大量に料理を作っているのだ、と。
「腹が減っては戦は出来ない」
「確かに、時間的には夕方ですが……、量を考えてください。時間が惜しいのではないですか?」
ソフィアの疑問は最もだ。クレアシオンは【暴食】を持ってはいるが、大量の食べ物を食べなければいけない、と言うようなことは全くないのだ。大量に食べるのはエネルギーを補給するため、もしくはステータスを少しでも上げるためだけだった。
あと、食べることが趣味、と言うことは彼女も薄々は気がついてはいるが、時間が無いときにまで大量に食べる意味がわからなかった。
「事情が変わった」
「変わった、とは?」
エレノアを助ける事を諦めるのか?と彼女はクレアシオンを睨んだが、それは間違っていた。
変わった、とはダンジョンのことだ。長老が言うには村人に薬草を取りに行かせたが、戻って来なかった、と言うことだった。ダンジョンが堕ちて魔物が変わったことで対処が出来なかったのだろう。
クレアシオンは焼いていた肉を皿に盛り付け、笑った。
「ダンジョンの攻略法を教えてやるよ」
その笑顔に彼女は嫌な予感しかしなかった。彼女が見た最後の笑顔とは、殺気こそ放っていないが、オークリーダに見せた凍りつくような殺気を放つ笑顔に似ていたからだ。
ありがとうございました。
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