職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~

黒水晶

×天使が征く⭕まおうさまが征く~オークに溢れた洞窟~

 焦げ臭い臭いと血の臭いがして、燃え尽きた小屋の残骸に火が少し燻っているなか、咀嚼音が響いている。暴食のアギトをフル稼働で使い、死んだゴブリンを食べているのだ。だが、暴食のアギトは食べるというより、飲み込むように食べている。それが気になっのかソフィアが質問した。

「暴食のアギトの様子が少しおかしいですよ?」
「……うぷっ、ゴブリンは不味いからな……うぷっ飲み込んでるんだよ……」

 おかしいのは暴食のアギトだけじゃなかった。暴食のアギトは補色対象の力や感情が強ければ強いほど旨く感じるという味覚をもつ。逆を言えば弱ければ弱いほど不味く感じてしまう。

「不味ければ食べなければいいじゃないですか?」

 彼女は彼の背中を摩りながら、食べなければいいじゃないか?と言う。そもそも、相手のステータスの一部を自分の物に出来る、といってもゴブリンでは程度が知れている。不味さは返ってくるリターンに対して割りに合わなさすぎるぐらいだ。今のクレアシオンの力をコップに入った水に例えると、ゴブリンから手に入る力は水一滴にも満たさない。

「俺は暴食で強欲だからな」

 にかっと、笑いクレアシオンは暴食のアギトを使い、食べきった。彼とて食べたくはない。だが、弱い時は好き嫌いはしてられない。早く強くなってゴブリンなんて食べる必要がないぐらいに強くなってやる、と食べ続けた。ゴブリンの村一つ滅ぼし、平らげるのにかかった時間はさほどなかった。  

「よし、次!!」

 彼はソフィアに果物をアイテムボックスから出してもらい、口直しをしてから、ソフィアに道案内をしてもらい、早急に潰す必要のあるゴブリンやオークの集落に行った。

◆◇◆◇◆

「レベルが……上がらない……」

 クレアシオンはガクッと項垂れた。ゴブリンやオークの集落を合わせて六つほど潰したというのに、レベルが7になっただけだった。レベルは上がれば上がるほど上がりにくくなっていく。

「まぁ、弱い魔物ですから……」

 そう、ソフィアが慰めるが、

「お前が言うなよ……」

 ソフィアのレベルは16に成っていた。クレアシオンが狩りをしている間に、少しでもレベルを上げておけ、と言われて逃げ惑う魔物を殺してレベルを上げていたのだ。クレアシオンの方が多く殺しているはずなのに、ソフィアのレベルの方が高く成っていっていた。

「……人によって、レベルの上がり具合や、能力の上昇率も――」
「――極端過ぎないか?」

 人によって、レベルが上がるのに必要な経験値が変わってくる。そして、レベル上昇に伴うステータスの上がり具合も人によって、かわり、レベルが高くなると上がりにくくなる分、ステータスの上昇率も良くなっていく。だが、クレアシオンのレベルの上がりにくさは異常だった。彼が見習い天使だったころ、初めて魔物を殺してレベルを上げたときのころはうろ覚えではあるが、もっとレベルは上がりやすかったはずだった。転生前は神域の魔物や邪神をいくら殺してもレベルは百数十年上がらなかったが……。

「もう、遅いし次で最後にするか」
「それがいいですね。私はレベル酔いをしてきましたし……」

 レベル酔いとはレベルが急激に上昇した時に、ステータスが急に上昇し、脳が体についていかないことにより起こる症状だ。レベルが短時間に上がるほど、症状はひどくなってしまう。ソフィアの顔色が少し悪くなっていた。

「レベル酔いか……。じゃあ、次は参加しなくていいぞ」
「よろしいのですか?次は一番大きな集落ですよ」

 次にいこうとしていたのはオークが多数集まっている周辺最大の集落だ。おそらく、この集落から出ていって作られたものがクレアシオンが潰していった集落なのだろう。ここさえ潰してしまえばあとは小規模な集落の集まりだ。

 今夜中に全て潰す必要はないし、できないので数日に別けて殺ろうとクレアシオンは考えている。彼が思っていたより、ソフィアからの情報ではゴブリンやオークの数が多く、スタンピードを起こしそうだったので大きな集落のみ潰していた。

「ハッ、経験値を独り占めしたいだけだ」

 クレアシオンは、そう言い、コシュタ・バワーを召喚し走り出してしまった。ソフィアは驚いた顔をしたあと、微笑んでお辞儀をした。そして、消えていった。実体化をといたのだ。

◆◇◆◇◆

 最後のオークの居場所は洞窟だった。散り散りになったのは恐らく、洞窟が狭くなったからだろう。洞窟の外には二匹の見張りがたち、辺りを警戒していた。

 洞窟の周りには動物の骨などが捨てられている。

 クレアシオンは洞窟の入り口の上から近づき、下の見張りのオークをみる。

「……いい装備をしているな」
『そうですね……』

 これまでのオークと違い、まだ新しい武器だった。恐らく、人から奪ったばかりのものだろう。オークに武器を手入れする知能などないのだから……。

「はっ!」
「ぐぎゃ!?」 

 クレアシオンは飛び降り、オークの首に手をかけ、落ちる勢いを利用し、剣で首を落とした。

「ブヒ――――」
「――黙ってろ」

 もう片方のオークは、突然の襲撃に驚くことなく、冷静に仲間を呼ぼうと鳴き声をあげるが、クレアシオンの投擲した剣が喉に刺さり、死に絶えた。

「……嫌に、冷静だったな」
『これは……っ!?』
「無理をするな」

 やはり、先程まで殺してきたオークと違う。まるで訓練をしたように、状況判断ができ、それに冷静に対処する用に教え込まれているようだ。異変に気づいたソフィアは【マップ】と【敵感知】を使おうとするが、レベル酔いで頭痛がして、まともに使えなかった。

『ですが……!』
「洞窟の規模からして上位種が生まれていたとしても、オークキングじゃない」

 これは確実に上位種が生まれていると考えて良いだろう。上位種が統率を取っているのなら、ここまでオークが増えていた理由がわかる。彼は洞窟の周りにまで集落を広げず、集落が幾つも乱立していた事から、そこまで強い上位種じゃないと判断した。だが、このまま放置すればオークキングが生まれたとしても不思議じゃない。

「あー、また寝不足か……」

 クレアシオンは見張りのオークを装備ごと暴食のアギトで食べていく。少しでもステータスを上げ、エネルギーを蓄える為だ。装備ごと食べたのは装備が彼には大きすぎるからだ。

 彼は九尾化してから洞窟に侵入した。



ありがとうございました。

今日中にあと一話投稿します。ほんとはこの話で終わるはずが長くなってしまい半分にしたためです。神託の儀が遠いぜ……クレアシオン、そんなに嫌か?

「職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く