職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~

黒水晶

プロローグ3

「アリア、それで結界を張るにはどうしたらいい?」
「今、創造神様が結界を張るための魔方陣を描いています。そろそろ出来上がっているころだと思うので創造神様の神殿に行きましょう」

 アリアがそう言うのでクレアシオン達は創造神の元に向かうこととなった。

◆◇◆◇◆  

 創造神の神殿は神界のほぼ中心に位置し、白亜の大理石で出来ているシンプルでとても美しい細かな意匠が施されている。普段は荘厳な場所なのだが、今は神や天使があちこち動き回っている。

 クレアシオン達が神殿に着いた事に気がついた者たちが手を止めた。そして、……八人の男神たち――ルイードとその取り巻きたち――がクレアシオン達に向かってくる。

 クレアシオンを見る目は完全に見下しており、アリアとイザベラをなめまわすようなに見ている。

 アリアとイザベラが心底嫌そうにし、クレアシオンの後ろに身を隠すと、一瞬、理解出来ないという顔をし、キッとクレアシオンを睨んでくる。

「卑しい魔王が、せいぜいその身体で結界を張って、我々、神の役に立つんだな、安心しろ、お前がいなくなってもそこの二人の事は可愛がってやるよ」
「「「ギャハハハッ」」」

 取り巻きの男神たちが笑っているので気が付いていない、アリアとイザベラの目がゴミを見るような目になっていることを、周りの神や天使たちの反応はクレアシオンになんて事を言うんだ、死にたいのか?巻き込むなよ!?と思っていることを、アリアとイザベラとの関係をずっと見てきた者たちの目が黙って消えろと言っていることを。

 そして、その言動こそが嫌われている原因だと言うことを――

 だが、彼らは、クレアシオンが悪だと考えている。

 たしかに、クレアシオンの神界での立場は最初は悪かった。神々は神ではないはずの彼が持つ強大なユニークスキルや彼の戦闘センスの高さに神界を脅かす存在になるのではと――。実際、クレアシオンが堕ちかけ、神界に向け、宣戦布告をしたことがあり、クレアシオンたった一人に神界は壊滅。全ての神は彼の前になっす術もなく、無力化され、創造神も後一歩のところまで追い詰められていた。

 しかし、幸いにもこの時、彼の目的は、神界を手に入れるという事にあり、創造神以外を殺す気がなかったため、死者はゼロであり、落ち度は神界側にあると殺されかけた創造神本人の言葉により、神界の復興をするということで、お咎めはなかった。

 しかし、神々の中には再びクレアシオンが堕天した場合、神界が完全に滅びる、と危惧し、殺すことを提案する者もいたが、神界全武力で止める事のできなかったクレアシオンをどうやって殺すのだ、と言う言葉により、なりを潜めた。

 そして、最上級神達は秘密裏に調査した。

 だが、解ったのは、料理好きで甘党――休みの日は無断――他の世界に行くときは管理者と神界の役所の許可がいる――で色々な世界を食べ歩き、食べたものを再現するのが趣味で、特に地球の日本のお菓子がお気に入で良く一つのテーマのお菓子を研究食べ歩きして、アリアとイザベラに作ったり、創造神と和菓子を食べながらお茶を飲んだり――ということだ。また、アリアとの関係だが、お互いが好き合っているのは目に見えて解るのになかなか発展しないクレアシオンがへたれだということだけだった、最初は警戒していた神々は二人の関係を生暖かく――娯楽が少なく恒久の時を生きる神の娯楽として――見守っていた。
 
 途中からイザベラも増えたがやっと発展するかっと期待したり。やはり変わらないクレアシオンにやきもきしたり楽しんでいた。

 しかし、それを納得しない者達がいる。比較的新しい神である。アリアは神界のなかでもとても美しい女神だ。イザベラも女神ではないが、とても美しい。そんな彼女たちを手に入れたいと思っている。

 そんな彼らにとってクレアシオンは邪魔な存在だ。

――天使である分際が、身の程をわきまえろ
――下賤な魔王が、なぜ神界にいる?

 と、考えている。今回の結界のことも、彼らの案――創造神も神々も彼らの浅はかな考えを理解しつつも、今回の事件は失敗が許されず、他の者達では出来ないと判断し、彼らの案には無かった結界を張った後、クレアシオンの魂をその世界に転生させることになった――が通ったことで、

――創造神様に認められた。やはり私達は間違っていなかった。あの下賤な魔王を処分することが出来る。

 と、調子に乗っていた。

「二人は私が貰ってやろう」
「あぁ?お前達のようなクズに渡す訳がないだろ?」

 舐めた態度にクレアシオンのこめかみに青筋が浮かぶが、冷静に相手をする。

「天使が女神に釣り合うとでも思っているのか?」

 確かにその通りだ、クレアシオンが今までアリアとイザベラの好意に気がついても、告白しなかったのは神と天使では、アリアと自分とでは釣り合わないと考えていたからだ。だが――

「それは解っている。だからこそ、アリアとイザベラが幸せになれるよう。余計にお前達のようなクズに渡す訳がないだろ?」
「なんだと!?下賤な魔王の分際でやってしまえ!!」
「「「オオッ!!」」」

 ルイードの号令で一斉に各々の神器を引き抜き、飛び掛かってくる男神達、クレアシオンが動こうとしない事から反応出来ないのだと思い、口が歪む。あの噂はデマだったのだと。

 しかし、先頭の三人の神器がクレアシオンに届こうとしたとき、二つの金色の魔法陣が浮かび上がりそこから白銀の剣と漆黒の剣が先頭の三人を神器ごと切り裂いた。男神達は何が起こったのか解らず、呆然としていると、

「おいおい、なんだその顔は?殺そうとしたんだ。殺されても文句はないだろ?」

 魔法陣が大きく成っていき、そこから漆黒の騎士と白銀の騎士が現れた。そして、

『シュヴァルツ、主の前に』
『ヴァイス、主の前に』
「ああ、久しぶりだな?」

 クレアシオンの前に跪き頭を垂れた。漆黒の騎士――シュヴァルツ、白銀の騎士――ヴァイス、どちらも、本当の姿は巨大な龍――どちらが強いか二匹で争っているところ、食料を探していたクレアシオンに敗れ配下に下った命乞いした――である。

 二匹?二人?は頭を垂れながらどちらが多く倒した――真ん中の神は二振りの剣をその身に受け絶命している――か小声で争っている。
 
 周りの者達は、ああ、やってしまった、という表情だ。この二人こそがアリアの言っていた『彼ら』――鬼狐――のトップだ。鬼狐は全て神殺しの能力――クレアシオンが弱らした邪神の止めを刺させて神殺しの称号を付けた――を持つ魔物達で構成されている。

 元々は力の限り暴れ世界を破壊しかけ、それを止め食料確保ようとしたクレアシオンとの戦い一方的な狩りに負けてクレアシオンに忠誠命乞い――最初は命乞いだったが次第に本当の忠誠を誓う――を誓った化け物集団だ。

 各々が神に届き得る存在――神域の魔物――と呼ばれていたもの達だ。出合ったら殺し合う存在がクレアシオンの下に集い、酒を飲み、飯を食べ、楽しそうに笑いあっている。

 一体でも、世界が壊滅するかも知れない、神からしたら、完全なイレギュラーな存在が、神殺しの力を得て、一ヶ所に集っている。神にとっては悪夢だろう。

 因みに、鬼狐は、クレアシオンが魔王神域の魔物の支配者と呼ばれている原因の一つのだったりする。
 
 そんな、彼らだ。クレアシオンを殺そうと――例え、簡単に避けられる攻撃でも――すると、鬼狐が飛んでくるのは目に見えていた。神殺しの力を持つ世界最強の化け物たちだ。巻き込まれれば、ただでは済まないので、神たちは既に全力で逃げ、「創造神様をお呼びしろ!」っと、創造神に丸投げしようとしている。

 呆然としていたルイード達は――

「な、な何をした!?」
「なんだ!?なんだ、お前達は?」 
「か、神である私達に手を出してただで済むと思うなよ」
「ルイード様はじょ、上級神だぞ!!」
「こ、こ、後悔しても遅いぞ!!」

 口では強がって居ても、足が震えている。だが、もう遅い。強欲で傲慢な魔王の大切な者を奪おうとした。主を害そうとした。これだけでクレアシオン達には十分な理由になる。

 クレアシオンの眼の色が赤く染まる。 

 クレアシオンが《神器》ヴェーグを召喚し、握り締め……クレアシオンと騎士二人がルイード達に斬りかかる――

 その時、

「まて、クレア」

 威厳がある声が静かに響く。クレアシオンはヴェーグを送還し、騎士二人はクレアシオンの後ろで跪く。

 先程までとは違う騒ぎに神殿の奥から出てきたのは、創造神だ。

「創造神様!!お助け下さい。いきなり魔王が暴れだし、止めようとした私の友が殺されてしまいました!!」
 
 ルイードが嘘をつき、創造神に助けを求めると取り巻き達も口々に助けを求め、あげくの果ては、如何にクレアシオンが悪いか、自分が正しいかを騙るが――

「クレアシオンがその様な事を理由も無しにするはずがなかろう?」

 と、一蹴してしまった。簡単な話しだ、茶飲み友達――昔の事件からクレアシオンと話す機会があり、そのまま、意気投合――の魔王と、悪い噂しか聞かない神どちらを信じるかということだ。

「そんな……、あいつは魔王ですよ……」
「今は時間が惜しい、話しはここにいた者たちに聞いておる。そなた達の相手をしている時間はない」

 他の神に事情は聞き、全て知っていると創造神に言われ、膝をつくルイード達バカ

「クレア、アリア、イザベラ、ついてきてくれんかの?」

 もう、魔法陣はできたのだろう。クレアシオンは騎士二人に向き直り、

「お前達に命ずる。俺は今から下界に行く――」
『――では、我等も』
「いや、お前達には、俺が留守の間にアリアとイザベラを守ってほしい」
『護衛は他の者に任せ、我等は主とともに』
「いや、出来ない。これは命令だ。鬼狐の名に賭けて守り抜け、俺はしばらく戻ってこれない」
『――御意』

――ついていきたいが、事情があり、主はしばらく帰れない、その間、自分達に主の大切な人を守れという。これは信頼されているということだろう。これに応えるのは従者の勤め、鬼狐の全力を尽くそう。お二人に何あれば、我等は主に顔向け出来まい。例え、相手が最上級神でも、最後の一匹になっても守り抜かねばなるまい。破壊意外なにもなかった我等に居場所を与えて下さった主のために……

 そう心に誓い、魔法陣に消えていく――

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