暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第171話 〜救出1〜
わずかな月明かりが町を照らし、人が完全に寝静まった夜。
俺は先日殺したグラムの屋敷の近くに来ていた。
一旦町を出たのだが、やることを思い出して俺だけ戻ってきたのだ。
クロウとリア、アメリアは町の外で野営をして待っていてくれている。
夜はいつものように俺の肩に乗っていた。
「ここか……」
俺はグラムの屋敷の近くで街中でありながら人気が無く、不自然に人の目に留まらないように結界が張られている場所で足を止める。
何もないように見えるその場所を『世界眼』を持つ俺からは隠しきれなかったようだな。
もし俺が“人を隠すなら”自分の近くで、なおかつ地下に隠すだろう。
扉さえ完全に見えないようにすれば、大抵の人は地下への入り口があるなんて気づかない。
皮肉なことに、俺とグラムは何かを隠す際の思考回路が似ているらしい。
それに、入り組んだウルクという町は何かを隠すのに最適な地形だった。
「『影魔法』――起動」
指示したとおり、『影魔法』は結界のみを喰らう。
それ以外には一切被害がなかった。
俺はいまだに『影魔法』がどういう魔法なのか知らないでいるが、実用性の高さから多用している。
おそらくサラン団長が見れば目を輝かせることだろう。
……いや、そういえば、『影魔法』が俺の言うことを聞くようになったのはサラン団長が死んだあとからだったか。
パリンとガラスが割れるような音がして、結界が破られる。
先ほどまで何もなかった場所に扉が出現した。
おそらく視覚を惑わすタイプの結界だろう。
「夜、準備はいいか?」
『ああ、主殿。いつでもいいぞ』
夜に声をかけてから、俺はその扉を開けた。
中は薄暗く、月明かりでぎりぎり足元が見えるくらいだ。
埃っぽくて、日常的に人が通っているとは思えない。
扉を開けるとすぐ階段があり、どこかの地下につながっているようだった。
グラムのことだから何か仕掛けをしていると思っていたのだが、扉を隠していた結界のみだったらしい。
少し拍子抜けだ。
まあ、結界のみでも十分隠れていたから、普通の人間は見つけられないかもしれないが。
ふと違和感を感じて扉の内側を見ると、外側にはあったドアノブがなかった。
ということはここにいる人間は幽閉されていると考えていいだろう。
下に行くほど濃くなっていく闇の中をコツコツと俺の足音だけが響く。
人が一人通れるくらいの幅の階段はまだうっすらと足元が見える。
何か灯りを持ってくるべきだったかな。
一歩一歩警戒して階段を下りながら俺は少し考えこんだ。
俺がここに来たのにはもちろん理由がある。
クロウのせいで流れるようにウルクを出てしまったために忘れていたが、俺はエルフ族の人にさらわれた家族を助けてほしいと頼まれていた。
俺はその時、“俺の行く道に転がっていれば拾ってやる”というような回答をしたと思う。
暗殺をするとき、ざっとだが建物の構造を確認したが、その時には隠し扉に気付いていた。
それを俺は暗殺をしたあとの衝撃やらなんやらで放っておいてしまったのだ。
これでは約束を破ってしまったことになる。
ということで、わざわざ戻ってきたというわけだ。
「……まああいつらも、できることなら自分たちで助けに行きたいと思っていただろうし」
俺に置き換えてみる。
もし母さんや妹の唯が攫われて、助けに行けないこともないのに他のしがらみがあって行けないとき、他の人間に託そうと思うだろうか。
いや、今の俺なら自分で動くだろう。
ましてやあいつらは獣人族より長生きし、そして魔力もあるエルフ族だ。
種族同士の対立を避け、断腸の思いで俺に託したエルフ族の願いを捨てることはできなかった。
『何か言ったか?主殿』
「いや、何でもない」
地下二階分くらいは階段を下りただろうか。
ようやく階段の終わりにたどり着くことができた。
暗闇にも慣れた目がようやく階段以外のものをうつす。
「……そこに誰かおるそ?」
どこかの方言のような妙なイントネーションの言葉が響く。
「また薬作ってってたかっとるそ?前にも言ったけど、私はもう人をダメにする薬なんか作らんけぇ!ご飯ももういらん。人を壊す薬作るくらいなら死んだ方がましじゃ!この人たちもはやく家に帰したって!」
震えた声だったが、しっかりと芯の通った覚悟を決めたような声だった。
「……そうか、お前がアマリリス・クラスターか」
夜がくすねてきた書類に書いてあった、“強化薬”を作ったとされる何代か前のコンテスト優勝者。
リアたちもその存在を知らないながらも探していたようだが、まさかこんな目と鼻の先にいるとは思わなかったのだろう。
まさに灯台下暗しってやつだな。
そういえば、受付で身分証の提示を求められたとき、俺たちは冒険者の証であるドッグタグを見せたが、大抵の身分証には職業も一緒に記載されてあった。
もちろん本人確認の意味もあったのだろうが、職業の確認という理由もあったのかもしれない。
ただの女を製薬師だと見抜いて利用しようとするなんて頭脳が、あいつらにあったとは思えないし。
「……誰?姿を見せて」
俺の声に、アマリリスの声が怯えたものに変わる。
俺は近くの壁に掛けられた松明に魔石を使って火をつけた。
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