暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第167話 〜二刀流〜 朝比奈京介目線
「どういうことだ」
たどり着いた場所を見回して俺はそう呟く。
木の幹につけた目印は変わりがなかった。
目印がなくても俺は通った木々の特徴を覚えていたし、正確に進んできたと確信している。
目印を付けた順番とは逆に進めば、集合場所に戻ることができるはずだった。
だというのに、たどり着いたのは集合場所である少し開けた場所ではなかった。
「ど、どういうことだよ!!」
和木が吠える。
ぐるりと首を回してこちらを見た。
「騙したのか!朝比奈!!」
目印をたどって戻ってきたのは先頭に立って歩いていた和木が一番理解しているはずだ。
おそらく混乱しているのだろうと思う。
だが、この状況での混乱は命取りになる。
俺は周囲を警戒して腰に差した白い刀、“白龍”を抜いた。
「和木君落ち着いて。囲まれてるよ」
再び何かを言おうと口を開いた和木は細山の静かな声に固まった。
俺は細山が囲まれていることに気づいていると思わず驚く。
思いの外、細山の索敵範囲は広いようだ。
体内で毒素を分解できることといい、治癒師にしてはかなり有能だな。
「二人とも俺の間合いから出るなよ」
左、右とせわしなく瞳を動かしてあたりを警戒する。
今まで戦ってきた魔物では比にならないほどの濃い死の気配が漂ってきた。
これはまずいかもしれない。
「来た!」
細山の声と共に俺は“白龍”を振り抜く。
かろうじて目で追えるくらいの速さだ。
これでは後ろの二人を守りながら戦うのは少し厳しいかもしれないな。
しかも、敵の姿はまだ見えない。
木の枝のように見えたが木の魔物だろうか。
「……守りながら戦うのは苦手なんだが」
後ろの二人には聞こえないくらいの声量でぼやく。
俺の職業は騎士ではなく侍だ。
守ることではなく、相手を斬ることが専門である。
つまり俺の防御力はかなり低い。
今までは津田が後ろの戦闘員ではない三人や後衛職の七瀬を守っていたから俺と佐藤で戦闘に専念できたが、津田がいない今、二人を守るのは俺しかいないのだ。
いなくなるとわかる有難さってやつだな。
「そろそろ姿が見えるはず……」
後ろで細山がつぶやく。
確かに、敵の殺気と気配は徐々に近づいてきているが、その姿はまだ見えない。
いや、これは……。
「しまった!」
後ろを振り返りざまに二人の後ろに迫っていた木の魔物を斬り捨てる。
その枝は二人のすぐそばまで近づいていた。
「木の魔物だ!枝に気をつけろ!」
敵が分かったとはいえ、木なんてそこら中にいくらでもある。
そもそも、魔物と本当の木との区別がつかない。
囲まれているからか、気配が至る所に散らばっている。
「仕方がない。全部斬るか」
もう一振り、腰に差していた刀を抜く。
こちらは職業がわかった時にレイティス城で渡された刀だ。
片手に一振りずつ、『二刀流』のスキルだ。
夜な夜な練習していたのだが、完全に習得したわけではない。
が、一振りを両手で振るうよりも確実にこちらの方が手数が多い。
防御のことを考えないように、攻撃される前にすべて倒す。
「こんなときに言う事じゃないとは思うんだけどよ、朝比奈ってこんなに脳筋だったっけ?」
「う、うーん?」
後ろで二人が何か言っているようだが、集中している俺には聞こえていなかった。
「二刀流――『桜吹雪』」
大きな風が吹き、満開の桜が散っていくような縦横無尽に様々な方向、角度から斬りかかる技。
こちらにのばされた枝が細々に斬られた。
それでもまだ魔物本体には届いていないだろう。
枝を斬られた魔物が上げる痛そうな声がそこかしこから聞こえる。
だから、邪魔な枝がない今のうちに決める。
「二刀流――『鎌鼬』」
突風が吹き荒れる。
後ろで細山の小さな悲鳴と和木の驚いたような声が聞こえる。
風が止んだあとその場には、切り倒されたたくさんの木があった。
そこに生命の気配はない。
今の攻撃で木の魔物はすべて倒してしまったらしい。
俺はふぅと息をついて納刀した。
「すげぇな、朝比奈」
振り返ると、傷一つない姿で和木と細山が立っている。
今回は本当に危なかった。
城から出た直後俺ならと思うと無傷でいることが信じられないくらいだ。
俺も着実に強くなっているらしい。
「さっきは疑って悪かったな。冷静じゃなかった」
「いや、いきなりだったからな。慌てるのも無理はない」
和木は軽薄そうではあるが、実際は自分の悪いところは素直に謝ることができるやつだ。
今時、素直に自分の非を認めることができるのは貴重なのではないだろうか。
こういうところは好ましいと思う。
召喚される前の生活ではまず関わることがなかったからか、今になって見えてくるクラスメイトのいいところがたくさんあって楽しい。
「これからどうしようか?せっかくつけた目印は多分木の魔物が移動して変わっちゃってるよね」
俺は細山の言葉にあたりを見回した。
そしてある一本の倒れた木に近づく。
「……いや、そうでもないようだぞ」
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