暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第126話 〜クマ〜 朝比奈京介目線
朝起きると、ソファーでは晶が寝ていた。
その隣でアメリア王女が晶の頭を撫でている。
晶の寝顔なんて見るのは久しぶりだ。
「……晶がここまで無防備に寝ているのは珍しい」
そう言うと、アメリア王女は少し肩を揺らして俺を見た。
その瞳はどこか悲しげだ。
何かあったのだろうか。
「あれ?アメリアちゃん早起きやなぁ!あたしが一番乗りやと思っとったのに!」
「……そうね、よく眠れなくて」
聞こうとすると、起きてきた上野に遮られた。
晶の頭を撫でたまま、朝から騒がしい上野に答える。
その目は先ほどのものとは違って、愛おしさにあふれたようなものだった。
「うわっ!織田君のこんな無防備な姿は初めて……いや、久しぶりに見たわ!」
言い換えた上野の言葉にああと納得する。
晶はクラスでも有名な眠り姫だったからな。
毎回起こしに来る先生だったり、怖い先生の授業の時だけは起きているが、それ以外の授業の時は大抵寝ている。
どうして毎回テストで赤点を回避できるのか不思議だった。
まあ、それを知っているのは俺くらいだが。
他のクラスメイトが知れば、カンニングをしていると騒がれていただろう。
俺も、晶がバイトの合間を縫って勉強をしていると知るまでは少しそう思っていたのだが。
「私が知らないアキラ……。気になるわね」
喰いつくアメリア王女の反応に、女子同士の会話になりそうだったので俺は早々に退散することにした。
「俺は別の部屋にいる。外に出るときは呼べ」
「うわっ!?朝比奈君おったん?」
先ほどからやけに俺を無視していると思ったら、どうやら上野は俺の存在に気づいていなかったらしい。
「最初からいた」
一応答えて、部屋の外に出る。
景品の受け渡しはお昼ごろ。
受け取るのはアメリア王女とラティスネイル、そしてなぜだか男性の部で一位に輝いた佐藤だ。
どうやら男性の部に出場した人は、ほとんどがボディービルダーのような筋肉ムキムキなマッチョばかりで、投票のほとんどが佐藤に集まったらしい。
俺たちも作戦のうちには入れていたが、佐藤が本当に入賞するとは思わなくて、一位と聞いたときには思わず二度見してしまった。
ここ数日、津田からの情報を俺たちなりに考え、探ってきた。
探れば探るほど、ウルクのギルドマスターであるグラムが関係していることが濃厚になっていく。
歴代のコンテスト優勝者が行方不明になっていることにグラムがかかわっていることはもはや疑いようのない事実だ。
そして、あちら側はそれを隠す努力すらしていない。
情報屋も使わずに、俺たちのようなただの冒険者にも情報は集めることはできたからな。
むしろ情報屋の方に回される方に気を使っていたようで、そちら側から情報を集めていたクロウたちはまだ完全にはグラムの仕業だと感づいてはいないだろう。
晶たちに伝えるか、伝えないか、俺たちは考えてきた。
「決心がついたのか?」
部屋を出てすぐそばの壁にもたれかかっていた佐藤に頷く。
晶の目の下のクマ、日に日に濃くなっているのを俺が見過ごすわけがなく、知らせるべきだという佐藤たちに俺はずっと反対してきた。
もちろん、晶たちに知らせてアメリア王女と佐藤の警備を固めるのが一番いい。
だが、今日の晶を見て決心をした。
「晶には知らせない。……まあ、あいつも馬鹿ではないから何らかの手は打っているはずだ」
「何らかの手?」
俺の言葉に佐藤は首を傾げた。
俺は頷いて、唇に人差し指を当てた。
「気づいているか?昨日から夜の姿が見えない。どこかでアメリア王女を護衛しているか、それとも情報を集めに出ているかは分からないが、晶の願いで動いているのは間違いないだろう」
まあ、どちらにせよ、黙っていたことの言い訳は考えないとな。
佐藤は納得したのか、頷いた。
「晶のことを俺たちの中で一番理解しているのは君だ。なら、その通りにしていた方がいいのだろう」
俺は苦笑する。
佐藤も晶と過ごしてきた時間はほぼ一緒だろうに。
「アメリアさんは上野さんに任せて、俺たちは最終確認に移ろう。部屋でみんなが待っている」
ああと返事をして、俺は佐藤の後に続いた。
晶のあんな寝顔、ここ最近では見たことがない。
俺たちの方が先に寝るし、起きるのも先だ。
早寝早起きなのか、寝ていないのかのどちらかだろう。
どちらにしても、健康を害していいるのは見ていると分かるが。
アメリア王女のそばがよっぽど安心するのだろうか。
とにかく、今だけでも休めているようでよかった。
アメリア王女のおかげだな。
晶もアメリア王女に出会ってからどこか丸くなった気がする。
まあ、その分アメリア王女に何かあれば一番の危険人物に早変わりするが。
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