暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第103話 〜再会〜
「………ん」
目を覚ますと、あれから何日経ったかは知らないが、外は真っ暗だった。
見覚えがある部屋だと思ったら、俺が『影魔法』で魔力を枯渇させたときに寝させてもらっていたクロウの家の一室だ。
隣の部屋からはアメリアと夜、クロウの声がした。
アメリアの元気そうな声を聞いてホッとする。
あのあと迷宮を出た俺たちは、ボロボロの体を引きずってクロウの家へ向かった。
マヒロやアウルムが迷宮から去ったのかも確認していない。
が、おそらくもういないだろう。
「さてと、まずは食べて寝ろ。話はそれからだ」
家に着いた途端そう言って、クロウは俺たちに果物やパンを差し出した。
魔族二人との戦闘に何時間かかったかは知らないが、お腹が空いていたため、ありがたくいただく。
だが、そこからの記憶が無い。
布団に入った覚えもないからきっと誰かが運んでくれたのだろう。
ご飯の途中に寝るほど疲れきっていたのだろうか。
『影魔法』を使うといつもこうだな。
「……お前たちの主人が起きたようだぞ」
隣の部屋でクロウがそういう。
バタバタと音がして、アメリアと夜が部屋に入ってきた。
隣の部屋の明るい光に俺は目を細める。
「アキラっっ!!」
『主殿っ!!!』
光に目が慣れていない状態で飛びかかられて、俺は呆気なく布団に戻る。
やはりまだ全快ではないみたいだ。
「アキラ、私……私っ」
俺の胸元に顔を擦り付けて声を震わせるアメリアの頭を撫でる。
残念ながらかける言葉が見つからない。
意図したわけではないのは知っているが、俺は死にかけた。
『影魔法』が治癒してくれなければ今頃土の中だっただろう。
アメリアは俺が何を言っても自分を責める気がする。
こればかりは時間が癒すのを待つしかないな。
「夜、俺はどれくらい寝ていた?」
定位置とばかりにさっそく肩に飛び乗る夜に聞くと、夜はやれやれと首を振った。
なんか仕草がムカつく。
『今回は一日だけだったぞ。この前ほど魔力を消耗しておらんかったから、きっと疲労だろう。が、俺とアメリア嬢は数時間で目を覚ましたというのに、情けないなぁ』
アメリアのどんよりとした空気を払うためにわざと言っていると分かってはいるが、ムカつく。
ああ、ムカつく。
その気持ちを抑えて、俺はどうにか拳を下ろした。
「で、なんかあったか?」
丸一日何もなかったなどはありえないだろう。
俺が聞くと、アメリアと夜はハッと顔を強ばらせた。
「それについてはこっちで話せ。お前に来客だ」
クロウの声に顔を向けると、戸口に思いもよらない人がいた。
俺は驚いてかけていた布団をはね飛ばす。
衝撃で夜は肩から落ちた。
いつもなら抱き上げたりするが、今はそれどころではない。
「ジール副団長!?」
「ああ、久しぶりだな」
駆け寄ると、相変わらずの苦労性っぽい顔をしたジール副団長が苦笑する。
最後に見たような騎士の鎧姿ではなく旅用の軽装だったが、たしかにレイティス国の副騎士団長だったジールだ。
そして俺の肩口からアメリアと夜を見た。
夜は肩から落とされたことをぷうぷう文句言っていて、アメリアがそれを慰めている。
ジール副団長は優しく微笑んだ。
「いい仲間に出会えたようだな」
俺は照れくさくなって頬をかく。
なんというか、ジール副団長に隠し事はできない。
サラン団長以上のエスパーだからな。
「まあ、はい」
はっきりしない俺の返事にますます笑う。
再び俺の肩に乗った夜はニヨニヨと俺の顔を覗き込んできた。
『素直にいい仲間だと言ってみたらどうだ?主殿』
やはりムカつく。
俺は夜の首根っこを掴んで布団に投げた。
ギャオギャオと喚く猫は放っておこう。
アメリアに手を差し出す。
「アメリア、行くぞ」
「う、うん」
アメリアは恐る恐る俺の手をとる。
少しぎくしゃくしているが、その手はいつものように暖かい。
隣の部屋へ入った俺はさらに驚くことになる。
来客はジール副団長だけではなかった。
俺は椅子に座っている人物を見て目を見開く。
「よ、晶」
「京介……」
レイティス城に残してきたクラスメイトのうち七人がそこに居た。
勇者の佐藤と、京介と……あとは分からない。
召喚されたときにクラスメイトの名前と職業は覚えたが、色々なことがあってあれからそんなに経っていないのに全て忘れてしまった。
クラスメイトの方は俺の顔よりも俺と繋がれているアメリアの手に目線が行っている。
「なんでここに?」
俺は京介の向かいの席に座りながら聞く。
生憎と俺はクラスメイトたちの質問に、聞かれてもないのに答えるような性格ではない。
「俺のスキル『勘』が晶がここにいるといっていた。それと、腕のいい鍛冶師のところへ行こうとウルへ渡る船の中でジールさんと会ったからだ」
ジール副団長はクロウと知り合いで、ちょうどここに来る途中だったらしい。
そこでここを目指していた京介たちと一緒に来たのだろう。
性格はともかく、クロウは間違いなく腕のいい鍛冶師だからな。
「ジール副団長は城を離れても大丈夫なのか?」
続いて俺が聞くと、ジール副団長は居心地が悪そうに体を揺らした。
「あー、そのことなのだが、もう副団長と呼ぶのはやめてくれ。騎士は辞めたからな」
と、衝撃の言葉を発した。
俺は目を瞬かせる。
たしかに、前より口調が柔らかくなっているとは思ったが、まさか騎士を辞めていたとは。
「いや、辞めたというより辞めさせられたんだ。どうやら王は我ら騎士団が邪魔だったようだからね」
なるほどと俺は頷く。
サラン団長が亡くなった今、城最強はジール副団長で、だから城に居なければいけないだろうと思ったのだが、心配いらないようだ。
「で、クロウ。なぜこんなにも勢揃いしている?」
偶然にしてはできすぎているだろう。
視線を向けると、クロウは顔を顰める。
「知るか。私が呼んだのはジール坊だけだ。そこのガキどもは勝手についてきた」
ジールさんはクロウに“ジール坊”と呼ばれているのか。
見た目的にあまり差がないように見えるからか、凄い違和感だ。
「他の六人はともかく、俺は晶と合流するために来た。晶、一緒に行ってもいいか?」
俺の肩に夜が飛び乗る。
『先程も言ったが、ダメだ!主殿の相棒は俺一人!どこの骨か分からん輩にそう易々と譲れるか!!』
隣の部屋まで聞こえてきた夜の声はこれが原因だったらしい。
アメリアの声は夜を宥めるものだったのか。
京介がどこの馬の骨かは俺がよく知っているけどな。
どちらかと言うと夜の方がどこの馬の骨か分からない気がする。
「俺は晶に聞いている。すまないが夜は黙っていてくれ」
『気安く名を呼ぶな!』
“アドレアの悪夢”と恐れられる魔物の威厳はどこへやら。
そして京介、無口設定どこへ行った。
あまりにも饒舌だからクラスメイトたちは目を白黒させて京介を見ている。
とりあえず耳元でうるさかったので再び首根っこを掴んでテーブルの上に落とした。
「悪いが、言い争いは外でしろ。目覚めたばかりで声が頭に響く」
まさに鶴の一声。
そういっただけで言い争いはピタリと止む。
感心したようにアメリアがこちらを見た。
「体は大丈夫なのか?晶」
そこで初めて、今まで見ないようにしていた勇者が口を開いた。
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コメント
にせまんじゅう
晶…動物虐待では…
ストレスマッハ
やっと勇者組と会えたのと副団長が無事で良かった…