暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第93話 〜邂逅〜
第八十階層のボスを瞬殺した俺たちは順調に第九十階層に進んだ。
第九十階層のボスも魔法無効化能力を持っており、なんかでっかいゴーレムみたいなやつで夜刀神の刃が通らないという事件があったが、今回も魔力で殺った。
ゴーレムの最後の渾身の一撃が、気を抜いていた俺を直撃したが、リアが咄嗟に結界を張ってくれたおかげで無傷だ。
もし攻撃が俺に当たっていたら、さすがの俺の防御力も防ぎきれずに骨折はしていただろうから、本当にリアには感謝している。
「……あと三階層」
夜がさらに加速して、今第九十八階層にいる。
夜の疲労も限界に近い。
「主殿……おそらく俺は辿り着けたとしても戦闘には参加できない。アメリア嬢を頼んだぞ」
俺は返事の代わりに夜の首元をポンポンと叩いた。
「リア、念の為夜と俺、そしてアメリアが見えたらアメリアにも結界を張ってくれ。自分にも忘れるなよ」
魔族との戦闘で、周囲にどれくらいの被害が出るか分からない。
保険ではあるが、おそらく役に立つと思う。
「了解です!」
どんどん魔族の気配が強くなっている。
近くにいるのは間違いない。
凄まじい濃度の魔力に吐き気すら感じるが、リアが結界を張ってからは緩和された。
『……っ!いたぞ!!!!』
ついに、夜が魔族――アウルム・トレースに追いついた。
ニコニコと子供のような笑みをうかべた。、緑色の髪と瞳の少年。
結界越しでも分かる、強大な魔力。
夜が言っていたアウルム・トレースの特徴とピッタリ合致している。
そして、アウルムの側には、力なく横たわるアメリアが浮かんでいた。
「おおー!まさか追いつかれるとは思ってなかったよー。君、魔力の枯渇で三日間くらい意識なかっただろ?」
こちらを見た瞬間にぺちゃくちゃと、聞いてもいないことを喋りだす。
精神年齢も見た目通りらしい。
「さすが魔王の右腕、ブラックキャット様だ。まさかターチーに変身してくるとはねー。でも、君は疲労困憊でもう戦えないよね?まさか人族と獣人族ごときが魔族の相手をするなんてこと、言わないよねー?」
色々と言いたいことはあるが、まずツッコミたい。
魔王、部下の命名下手かよ!
たしかに今の夜の姿はチーターっぽいし、足も早いけど、さすがにターチーはないわ。
今のところまともっぽいのはポセイドンだけだぞ。
あれはあれでおかしな所が多々あったが。
「よく話す口だな。察しの通り人族と獣人族が相手するが、なにか不満か?」
挑発するように口端を上げると、面白いくらいに乗ってくれた。
「はー?人族と獣人族が力を合わせたところで所詮は劣等種。魔族に勝てるわけないって歴史から学ばなかった?勇者ならまだ希望はあったかもしれないけど、君って見たところ暗殺者でしょ?そんで奥の獣人族は後衛どころか守り手ときた」
一人でお腹を抱えてヒーヒー笑うアウルム。
俺は“夜刀神”を両手に構える。
「フフフッ!君のこと知ったときは、普通に殺してやろうって思ってたけど、やっぱりやめるよ」
ふっと笑顔を引っ込める。
あたりに濃厚な殺気が満ちた。
リアが震えながら夜の陰に隠れている。
「愛する王女様の目の前で嬲り殺してやる。お前を殺せるし、王女様の拷問になるし、一石二鳥だよね」
「やれるもんならやってみろよ。俺は魔族を見るのは初めてなんだ。せいぜい楽しませてくれ」
アウルムの背後に第九十九階層への階段がある。
逃がさないようにしなければいけない。
混乱に乗じて出口を塞げと念話で夜に指示して、“夜刀神”を握り直す。
手に汗が滲んでいる。
口ではどうとでも言えるが、俺は今、この世界に来て初めて死の恐怖というものを感じている。
震えこそないが、死を覚悟していることは確かだ。
「その生意気な口、二度と開けないようにしてあげるよ」
「その気色悪い顔、二度と動かせないようにしてやる」
一瞬止まり、二人は同時に駆け出した。
ギィィィンッ
金属同士がぶつかり合う音が響く。
二人を中心に風が吹き荒れた。
いつの間にかアウルムの手には細長い槍が握られている。
迫り合いの向こうで、アウルムが驚いたように目を見開き、そしてとても嬉しそうに笑った。
「なるほどね、君が魔族相手に大口を叩く意味がわかったよ。僕の攻撃をちゃんと受け止めた人間は初めてだ。少しは楽しめそうだね!」
力ずくで押し切られ、俺の体は吹き飛ばされる。
が、俺は一回転して地面に無事着地した。
にしても、そこいらの女子よりも細い腕をしてるのにパワーは下手をすればサラン団長以上かもしれない。
ということは、俺が知っている中で一番だ。
「考えてる暇なんてないよ!ほらほら次々!!」
子供特有の高い声に狂ったような音が混ざる。
アウルムの目は瞳孔が開き、エメラルドを爛々に輝かせていた。
こいつ、幼い形をしているが戦闘狂か。
「グッ!!」
大上段から振り下ろされた槍を“夜刀神”を前で交差させて受け止めたが、衝撃で地面が割れ、両足が地面に少し沈んだ。
「アハッ!僕相手にこんなにもつなんて、魔族でもなかなかいないよ!」
「そりゃー……どうもっ!!」
渾身の力で槍をはね上げる。
さて、先程から防戦一方でなかなか反撃に回れないが、そろそろ俺の番だ。
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コメント
にせまんじゅう
いや敵が強っよいだけだと思う。
白兎
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いいね
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晶なんで弱いの?
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ターチー?