暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第10話 〜異世界〜
「……珍しいですね」
ジール君はそう言って、掴んでいた襟首を離した。
特に体制も崩さないまま立ち上がる私を忌々しげに見ながら、服に付いた埃を払ってくれる。
払うくらいならそもそも引きずらないでほしいなぁ……。
と、思いつつも言葉には出さない。
私偉い。
「くだらないこと考えてないで返事をしてもらえますか」
時々、彼は本当はエスパーではないかと疑っている。
心を読まないでほしいなぁ。
「私が一人に固執することが、かい?」
「それもありますが、あなたのあれほど楽しげな顔、久しぶりに見ました」
「……そう」
確かに、久しぶりに笑ったかもしれない。
いつもは作り笑いしか浮かべていない顔が、久しぶりの本当の笑顔のせいで、少し表情筋が痛い。
それほど、彼は面白く、また彼の話も面白かった。
「どんな話をされていたのです?」
「彼らの世界の話さ。その代わり、私からはこの世界のことについて話した」
アキラ君の話は、暗雲の立ち込めた中の一筋の光のように感じた。
ここだけの話だが、私は彼らの事を少し疑っていた。
勇者召喚という秘術が代々王家に伝わっていることも、過去に異世界から勇者が召喚され、魔王を倒したことも知っている。
だが、現物を見ないと信じない性分のせいか、王女と数人の宮廷魔道士が、勇者召喚に成功したとの知らせを受けても、信じられなかった。
この目で見ても、心の奥底では信じていなかったように思う。
どれだけ頑ななんだ、我が心。
彼の話を聞いて、ようやく喉の奥のつっかえが取れた気がした。
「それほど面白かったのですか?」
「うん。その昔、“賢者”とも呼ばれた私が全く知らない、未知の話だった」
「サラン様が知らない……」
団長呼びが昔の呼び方に変わっているほど衝撃を受けたらしい。
「ちなみに、その内容とはどのような物なのでしょう?」
「そうだね、……魔法ではなく、科学という物が栄えている世界の話さ」
そして、私はアキラ君が話した通りの言葉をそのままジール君に話す。
ようやく話し終えたとき、ようやく王城内の自室に辿り着いた。
「にわかには信じられませんね。……動く鉄の箱に、空飛ぶ鉄の塊。一瞬で世界各地に伝わる情報、遠く離れた場所でもリアルタイムで声を届けられる薄い板」
「私もそう思うよ」
事務室の椅子に腰掛けて、眉間を揉む。
ジール君が気を利かせて入れてくれた水を、有難く一気飲みした。
「ありがとう。……でも、アキラ君の目は、嘘をついている人の目じゃなかった」
これは自慢だが、虚偽を見分けられる位の目は持っている。
伊達に騎士団長をしていない。
「貴方がそう言うのであればそうなのでしょう。……それで、彼をどうするおつもりで?」
「彼ね、自分の実力を隠してる。本当は勇者よりも強いんじゃないのかなぁ。気配遮断をMAX状態で持ってるらしいし」
「Lv.MAX……ですか?ですがそれは伝説の勇者様だけにしか辿り着けなかった領域では……」
そう、この世界の住人はLv.9が最高スキルレベル。
そもそもLv.7以上に上がる人すら稀である。
だが、異世界から来た者はその壁を平然と越えていく。
モルガン人と異世界人との決定的な差はそれだ。
「私は〝観察眼〟系のエクストラスキルは持っていないから定かじゃないけど、これも嘘ではない」
「しかし、何故国王達が介入に動かないのです……なるほど。」
「そう。彼は“気配隠蔽”を使って水晶の儀を受けなかった。スキルを使い慣れているばかりか、頭もいい」
もしここに彼がいたら、きっと全力で首を振っていただろう。
「彼を、こちらの陣営へ入れるおつもりで?」
「うん。それと、彼を鍛える。鍛えると言っても、彼が自らに課しているメニューの、無駄な部分を削ぎ落として、必要なことをさせるだけだけど」
一応メニューは聞いたが、おおよそ信じられない内容だった。
かなりストイックな子だ。
ジール君は私の決定に異論を挟まず、頭を下げて退出していった。
さて、明日からも忙しくなるなぁ。
「暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
649
-
799
-
-
6
-
8
-
-
4,548
-
4,059
-
-
1,259
-
8,383
-
-
69
-
32
-
-
1,660
-
2,934
-
-
1,473
-
1,406
-
-
94
-
356
-
-
132
-
154
-
-
7,414
-
1.5万
-
-
1,916
-
3,761
-
-
2,605
-
7,282
-
-
1,828
-
5,328
-
-
3,176
-
5,063
-
-
688
-
1,092
-
-
1
-
0
-
-
3,630
-
9,417
-
-
54
-
388
-
-
1,588
-
4,186
-
-
3,063
-
1.4万
-
-
552
-
490
-
-
387
-
438
-
-
3
-
59
-
-
1,922
-
3,286
-
-
9,870
-
1.4万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
169
-
156
-
-
584
-
801
-
-
1,233
-
911
-
-
503
-
668
-
-
1,512
-
2,512
-
-
132
-
279
-
-
168
-
148
-
-
142
-
265
-
-
884
-
2,383
-
-
5,013
-
1万
-
-
1,167
-
1,963
-
-
1,584
-
2,757
-
-
6,617
-
6,954
-
-
917
-
1,033
-
-
2,157
-
7,288
-
-
9,533
-
1.1万
-
-
122
-
415
-
-
8,094
-
5.5万
-
-
168
-
553
-
-
2.1万
-
7万
-
-
8
-
25
-
-
2,705
-
3,670
-
-
9,627
-
1.6万
-
-
2,414
-
6,662
-
-
804
-
720
-
-
1,700
-
2,593
-
-
1,114
-
180
-
-
51
-
198
-
-
11
-
4
-
-
3,135
-
3,383
-
-
640
-
2,339
-
-
3,137
-
1.5万
-
-
1,036
-
1,314
-
-
1,037
-
2,522
-
-
246
-
1,381
-
-
420
-
637
-
-
1,492
-
2,229
-
-
1,253
-
1.2万
-
-
9,139
-
2.3万
-
-
789
-
1,518
-
-
3,521
-
5,226
-
-
6,162
-
3.1万
-
-
3,578
-
9,627
-
-
7,689
-
1万
-
-
600
-
220
-
-
2,787
-
1万
-
-
2,388
-
9,359
-
-
6,028
-
2.9万
-
-
6,119
-
2.6万
-
-
159
-
398
-
-
6,573
-
2.9万
-
-
9,295
-
2.3万
-
-
4,171
-
7,850
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
562
-
1,070
-
-
2,845
-
4,948
-
-
1,023
-
1,713
-
-
8
-
102
-
-
5,074
-
2.5万
-
-
1,435
-
3,537
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,627
-
1.6万
-
-
9,533
-
1.1万
-
-
9,295
-
2.3万
-
-
9,139
-
2.3万
コメント
ノベルバユーザー602604
ランキング一位なので読ませてもらいました。面白くて続きが気になる良い作品ですね。