最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-
第17話「焦って外に出るのは死亡フラグ」
軽井沢春太は走っていた。校門を潜り、通学路を抜け、街道を駆け巡って彼は例の公園を目指してひたすら猛進する。
……と、その前に。彼は別の目的達成のために走っていた。
彼には、"力"が必要だった。
軽井沢の"通常の"身体能力は、一般人のそれと大した変わりはない。
彼自身の異能の力を使えばその限りではないが、軽井沢は走るなどの激しい運動をする際に、能力は使いたくなかった。
理由は、単純に疲れるからである。
先天的に瞬発力に自身のある軽井沢春太は、逆に持久力に欠ける部分があった。一度のリアクションを取るのに、莫大なエネルギーが必要となるのだ。
……しかし、今は緊急事態。エネルギー消費を渋っている暇はなかった。
それでもどうしても今あるエネルギーを使いたくなかった軽井沢は、近辺のあちこちを走り回り、"ある物"を血眼で探していた。
「くそッ、この間は近くの商店街に置いてあったのに無くなってたよ! 確かに需要は少ないだろうけど、今の僕には必要な代物なのにさっ!!」
軽井沢は、いくら走っても見つからないソレを、それでも懸命に探し続けた。
そして、
「……ッ! へっ、とうとう見つけたぜ!!」
額に汗を浮かべながら、軽井沢はようやくお目当の代物を探し出した。
住宅街の電柱のそばにあるソレは、うっかりすると見逃してしまうくらい主張無く、それでいて当たり前のように存在していた。誰の目に触れられて、しかし多くの人々はそれの横を静かに過ぎ去るだろう。
異質といえば異質、キワモノといえばその通りであるそれを、だが軽井沢春太という少年は、密かにソレを欲しているのだ。
「まさかこんな住宅街の人通りの離れた場所に設置されていたなんてなぁ。これじゃあ誰もここで買おうとは思わないだろうに」
そう一人で呟いて、軽井沢はその自動販売機の前に立った。
「ふふっ、ようやく見つけたぞ。"自動販売機・極み"!!」
『自動販売機・極み』
一見ただの自動販売機に見えるそれは、実は販売している商品のラインナップが、全てゲテモノばかりだという、少し変わった自動販売機なのだ。
例をあげれば、スッポンスープ、アジの干物味コーラ、女子高生がかいた汗を吸った制服を洗った時に使った洗剤の香りがするおでん、デス・ソース等、どれもこれも一般人にはハードルが高すぎる商品ばかりが取り揃えられているのだ。
そんな自動販売機の事を、一部のマニアの間では自動販売機の究極形態、"自動販売機・極み"と呼ばれるようになり、その存在は需要の低さから年々姿を消していき、幻の自動販売機とされるようになった。
しかし、それでもその自動販売機を必要とする者は、確かに存在している。
軽井沢春太も、その一人だった。
「僕には、どうしてもこいつが必要なんだよ。キワモノばかりを取り揃えている、"自動販売機・極み"でしか取り扱っていない最強のエナジードリンク。この、"ミリオンエナジードリンクΩ"がなッッ!!!!」
『ミリオンエナジードリンクΩ』
原材料、産地、製造社名。それらの情報が一切書かれていない謎の多いそのドリンクは、なんと1,000,000kcalという、想像を絶する程のカロリーが入っている。
常人では一口飲んだだけで発狂してしまいかねないドリンク。ミリオンという冠にふさわしいその商品を愛用する者は、誰もいないだろう。
そう、軽井沢春太以外は。
「この僕のエネルギー消費は、南極で冒険する探検家さんより消耗が激しいからねぇ。特に戦闘時には並みの食事程度ではとても補えない」
だからこそのミリオンエナジードリンクΩである。
これから公園に向かう際に、万が一に戦闘になった時の保険として用意しておきたいのだ。
もうあまり時間がない。早く公園に行かなくてはならない。
軽井沢はポケットに手を入れ、財布を取り出そうとした。
「……っ!? なん……だと……!?」
財布が、、、無かった。
絶望だった。
軽井沢の心臓が、大きく跳ねる。信じられなくても、その真実は決して嘘とは言ってくれなかった。
あまりに無慈悲な現実に、軽井沢は思わず膝をついてしまう。
「くそッ、まさか将棋部の部室に置き忘れたのか!? 焦って外に出たから、焦って外に出たからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」
絶体絶命の危機ッ!! 果たして軽井沢は、無事ミリオンエナジードリンクΩを購入することが出来るのだろうか!?
……と、その前に。彼は別の目的達成のために走っていた。
彼には、"力"が必要だった。
軽井沢の"通常の"身体能力は、一般人のそれと大した変わりはない。
彼自身の異能の力を使えばその限りではないが、軽井沢は走るなどの激しい運動をする際に、能力は使いたくなかった。
理由は、単純に疲れるからである。
先天的に瞬発力に自身のある軽井沢春太は、逆に持久力に欠ける部分があった。一度のリアクションを取るのに、莫大なエネルギーが必要となるのだ。
……しかし、今は緊急事態。エネルギー消費を渋っている暇はなかった。
それでもどうしても今あるエネルギーを使いたくなかった軽井沢は、近辺のあちこちを走り回り、"ある物"を血眼で探していた。
「くそッ、この間は近くの商店街に置いてあったのに無くなってたよ! 確かに需要は少ないだろうけど、今の僕には必要な代物なのにさっ!!」
軽井沢は、いくら走っても見つからないソレを、それでも懸命に探し続けた。
そして、
「……ッ! へっ、とうとう見つけたぜ!!」
額に汗を浮かべながら、軽井沢はようやくお目当の代物を探し出した。
住宅街の電柱のそばにあるソレは、うっかりすると見逃してしまうくらい主張無く、それでいて当たり前のように存在していた。誰の目に触れられて、しかし多くの人々はそれの横を静かに過ぎ去るだろう。
異質といえば異質、キワモノといえばその通りであるそれを、だが軽井沢春太という少年は、密かにソレを欲しているのだ。
「まさかこんな住宅街の人通りの離れた場所に設置されていたなんてなぁ。これじゃあ誰もここで買おうとは思わないだろうに」
そう一人で呟いて、軽井沢はその自動販売機の前に立った。
「ふふっ、ようやく見つけたぞ。"自動販売機・極み"!!」
『自動販売機・極み』
一見ただの自動販売機に見えるそれは、実は販売している商品のラインナップが、全てゲテモノばかりだという、少し変わった自動販売機なのだ。
例をあげれば、スッポンスープ、アジの干物味コーラ、女子高生がかいた汗を吸った制服を洗った時に使った洗剤の香りがするおでん、デス・ソース等、どれもこれも一般人にはハードルが高すぎる商品ばかりが取り揃えられているのだ。
そんな自動販売機の事を、一部のマニアの間では自動販売機の究極形態、"自動販売機・極み"と呼ばれるようになり、その存在は需要の低さから年々姿を消していき、幻の自動販売機とされるようになった。
しかし、それでもその自動販売機を必要とする者は、確かに存在している。
軽井沢春太も、その一人だった。
「僕には、どうしてもこいつが必要なんだよ。キワモノばかりを取り揃えている、"自動販売機・極み"でしか取り扱っていない最強のエナジードリンク。この、"ミリオンエナジードリンクΩ"がなッッ!!!!」
『ミリオンエナジードリンクΩ』
原材料、産地、製造社名。それらの情報が一切書かれていない謎の多いそのドリンクは、なんと1,000,000kcalという、想像を絶する程のカロリーが入っている。
常人では一口飲んだだけで発狂してしまいかねないドリンク。ミリオンという冠にふさわしいその商品を愛用する者は、誰もいないだろう。
そう、軽井沢春太以外は。
「この僕のエネルギー消費は、南極で冒険する探検家さんより消耗が激しいからねぇ。特に戦闘時には並みの食事程度ではとても補えない」
だからこそのミリオンエナジードリンクΩである。
これから公園に向かう際に、万が一に戦闘になった時の保険として用意しておきたいのだ。
もうあまり時間がない。早く公園に行かなくてはならない。
軽井沢はポケットに手を入れ、財布を取り出そうとした。
「……っ!? なん……だと……!?」
財布が、、、無かった。
絶望だった。
軽井沢の心臓が、大きく跳ねる。信じられなくても、その真実は決して嘘とは言ってくれなかった。
あまりに無慈悲な現実に、軽井沢は思わず膝をついてしまう。
「くそッ、まさか将棋部の部室に置き忘れたのか!? 焦って外に出たから、焦って外に出たからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」
絶体絶命の危機ッ!! 果たして軽井沢は、無事ミリオンエナジードリンクΩを購入することが出来るのだろうか!?
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