最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-
第3話「板挟み」
「いやいや、まさかあそこで胴体を薙ぎ払われるとは予想外だったよー。流石の僕もちょっと痛かったよ。チクっと痛かったよー」
「チクってレベルじゃなかったですよね!? あんな倒され方して心臓止まるかと思いましたよ!!」
中鉢は泣き叫んで軽井沢を抗議していた。
あれだけグロテスクに断裂されたにも関わらず、瞬く間に復活した軽井沢に言い表せない怒りが募ったのだろう。その気持ちは分からなくもない。恐怖現象をまぢかで目撃した末『ドッキリでしたー!』と言われた様な気分である。
「ちょっと待ってよ、僕は悪くないじゃん。悪いのはどう考えてもこの生徒会長。僕は被害者のはずだ、斬られたし。なあ、秋人もそう思うだろう?」
「春太、中鉢に謝れ」
「だからなんで!?」
軽井沢が理不尽な批判を受けている最中、和室にはもう1人の女子学生が正座で待機していた。
大和撫子と言われても過言ではない容姿をした天願寺響鬼は、この場にいる中で一番和室にいるのにふさわしい人物であった。しかし彼女は将棋部ではなく、寧ろその将棋部を疎ましく思っているのである。
「……もうそろそろ要件を言っていいか?」
「えww あ、まだ居たんですか生徒会長ww 悪いですけど僕ww ヤリマン処女は生理的にNGなんで即刻帰ってもらえ『瞬神剣!!』
瞬間、
軽井沢の全身が、真っ直ぐ脳天から足元に掛けて断裂された。
……しかし、軽井沢の分かれた身体は、まるで粘着物の様にぴったりとくっ付き、あっという間に元の姿に戻ってしまった。
「おやおやぁ。これは僕としたことが、少し言い過ぎてしまった様ですね。お詫びして粗茶をどうぞ」
軽井沢は天願寺に、先ほど買ってきたお茶(紙パック)を差し出した。
それを握りつぶしたくなる衝動を抑えて、天願寺は紙パックにストローを突き刺す。
「……先日、生徒会が企画している『お悩み相談BOX』の手紙が何者かによって盗まれた。犯人の目星は付いている。軽井沢春太、お前には重要参考人として生徒会に来てもらう」
「この僕を集団リンチにする気かい? はっはー、拒否するるぅ!!」
軽井沢は即座に樋口の後ろに隠れ、不動の意思を露わにした。
鬱陶しそうにしかめっ面になる樋口は、軽井沢を押し退けながら天願寺の方を向いた。
「生徒会の奴らが来るのはいつものことだが、お前だけが来るのは珍しいな天願寺」
「生徒会は今込み入った活動がないからな。他のメンバーは、生徒会活動以外の用事で忙しんだ。……あと、生徒会がいつもの様にここへ来るのは、お前たちが毎度毎度問題を起こすからだ!」
「だってさ中鉢ちゃん。気をつけないとダメだよ?」
「私も共犯者になってる!? 確かに部員ですけど!?」
中鉢木葉は、将棋部の一員であると同時に、生徒会執行部のメンバーでもあった。
しかしこの二つのグループ、カクカクの事情もあって互いに争い合うことが多く、中鉢はその中で板挟みになることも多々あった。
「木葉は悪くないだろう!? 将棋部の問題活動はお前たちがこの高校に入ってからのことなんだからな!!」
「だとしても中鉢ちゃんはこの部活の一員なんだ。だからこそ彼女にも責任はあるってもんさ。先輩の責任は、後輩の責任。逆もまた然り!!」
「……! 貴様、やはり根っこの底まで腐った下郎だな!! こんな奴の元に木葉を置いておく訳にはいかん!!」
「だ、大丈夫ですよ天願寺会長。軽井沢先輩口だけですから」
「あれ? もしかして僕、信用されてない?」
「二つの意味でな」
樋口はつまらなさそうに彼らの悶着から目を離し、視線を将棋本に移した。
軽井沢と生徒会が言い争うのは、ここではよくあることだった。同じ様な話ばかりする彼らに、樋口は飽き飽きしている様子だ。
「あ、秋人が暇そうにしている。しょうがないなぁ〜、僕がカマってあげるとしよう」
「ちょっと待て軽井沢春太!! まだ話は終わってないぞ!?」
天願寺の制止を無視し、軽井沢はひたすら本を黙読している樋口に纏わりついた。
軟体動物にのしかかられた様な気分になりながら、樋口はうざったるい軽井沢を将棋盤の角で殴った。
「チクってレベルじゃなかったですよね!? あんな倒され方して心臓止まるかと思いましたよ!!」
中鉢は泣き叫んで軽井沢を抗議していた。
あれだけグロテスクに断裂されたにも関わらず、瞬く間に復活した軽井沢に言い表せない怒りが募ったのだろう。その気持ちは分からなくもない。恐怖現象をまぢかで目撃した末『ドッキリでしたー!』と言われた様な気分である。
「ちょっと待ってよ、僕は悪くないじゃん。悪いのはどう考えてもこの生徒会長。僕は被害者のはずだ、斬られたし。なあ、秋人もそう思うだろう?」
「春太、中鉢に謝れ」
「だからなんで!?」
軽井沢が理不尽な批判を受けている最中、和室にはもう1人の女子学生が正座で待機していた。
大和撫子と言われても過言ではない容姿をした天願寺響鬼は、この場にいる中で一番和室にいるのにふさわしい人物であった。しかし彼女は将棋部ではなく、寧ろその将棋部を疎ましく思っているのである。
「……もうそろそろ要件を言っていいか?」
「えww あ、まだ居たんですか生徒会長ww 悪いですけど僕ww ヤリマン処女は生理的にNGなんで即刻帰ってもらえ『瞬神剣!!』
瞬間、
軽井沢の全身が、真っ直ぐ脳天から足元に掛けて断裂された。
……しかし、軽井沢の分かれた身体は、まるで粘着物の様にぴったりとくっ付き、あっという間に元の姿に戻ってしまった。
「おやおやぁ。これは僕としたことが、少し言い過ぎてしまった様ですね。お詫びして粗茶をどうぞ」
軽井沢は天願寺に、先ほど買ってきたお茶(紙パック)を差し出した。
それを握りつぶしたくなる衝動を抑えて、天願寺は紙パックにストローを突き刺す。
「……先日、生徒会が企画している『お悩み相談BOX』の手紙が何者かによって盗まれた。犯人の目星は付いている。軽井沢春太、お前には重要参考人として生徒会に来てもらう」
「この僕を集団リンチにする気かい? はっはー、拒否するるぅ!!」
軽井沢は即座に樋口の後ろに隠れ、不動の意思を露わにした。
鬱陶しそうにしかめっ面になる樋口は、軽井沢を押し退けながら天願寺の方を向いた。
「生徒会の奴らが来るのはいつものことだが、お前だけが来るのは珍しいな天願寺」
「生徒会は今込み入った活動がないからな。他のメンバーは、生徒会活動以外の用事で忙しんだ。……あと、生徒会がいつもの様にここへ来るのは、お前たちが毎度毎度問題を起こすからだ!」
「だってさ中鉢ちゃん。気をつけないとダメだよ?」
「私も共犯者になってる!? 確かに部員ですけど!?」
中鉢木葉は、将棋部の一員であると同時に、生徒会執行部のメンバーでもあった。
しかしこの二つのグループ、カクカクの事情もあって互いに争い合うことが多く、中鉢はその中で板挟みになることも多々あった。
「木葉は悪くないだろう!? 将棋部の問題活動はお前たちがこの高校に入ってからのことなんだからな!!」
「だとしても中鉢ちゃんはこの部活の一員なんだ。だからこそ彼女にも責任はあるってもんさ。先輩の責任は、後輩の責任。逆もまた然り!!」
「……! 貴様、やはり根っこの底まで腐った下郎だな!! こんな奴の元に木葉を置いておく訳にはいかん!!」
「だ、大丈夫ですよ天願寺会長。軽井沢先輩口だけですから」
「あれ? もしかして僕、信用されてない?」
「二つの意味でな」
樋口はつまらなさそうに彼らの悶着から目を離し、視線を将棋本に移した。
軽井沢と生徒会が言い争うのは、ここではよくあることだった。同じ様な話ばかりする彼らに、樋口は飽き飽きしている様子だ。
「あ、秋人が暇そうにしている。しょうがないなぁ〜、僕がカマってあげるとしよう」
「ちょっと待て軽井沢春太!! まだ話は終わってないぞ!?」
天願寺の制止を無視し、軽井沢はひたすら本を黙読している樋口に纏わりついた。
軟体動物にのしかかられた様な気分になりながら、樋口はうざったるい軽井沢を将棋盤の角で殴った。
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