最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~
61話
両者の全てをかけたような圧倒的な攻撃が炸裂したのだった。
まるで空間が捻切れたような音が、辺り一面に鳴り響く。
ひとつ残像がまばたきもできないような速度で死角へと移動したのだった。
男は、それを感覚を研ぎ澄ませ、回避した。
「やるじゃあ――ないか」
前進にオーラを纏っている男はつぶやいた。
男の前に倒れかかった右手の前には、弾丸が時がとまったように、ぴたりと止まっている。
あまりの妖力にその空間はねじ曲がっていたのだ。
それはまさに、時空さえも捻れてしまうような力であったのだ。
二丁の銃を持った男は、その攻撃のような防御に驚く。
「これが、全てを超越した超魔道因果率魔力の力だ」
十二支族全てを従えたというだけあった。
その男の周りには、明らかに違う力が漂っている。しかしあいつと似ていたと二丁の銃を持った男は、思い出していた。
あの反則返しのような攻撃であったのだ。
その攻撃、いいや特性のようなものがある程度は一緒だ。
全てが因果応報のように返ってくるのが、あの男の特性である。
「それがどうしたんだよ!!」
かわす、しかしその攻撃は顔面へとぶち当たった。
頭の骨格を支えている、脊髄がトマトを潰したように、飛び散り四方八方に飛び散るやいなや、人間の頭の形をしたものは、後方にぶっ飛んだ。
「だからなあ!!」
しかし、その体は地面を根に伸ばしたように張り付いている。
「俺を殺してみやがれッ!!」
その体は、すぐさま再生を始めた。まるで、絶望感があった。
「直接、触れることによる。組織破壊の陣円を君に展開したはずだが……」男の顔はニヤりと上へと向いた。「まさかここまで真化していたとは――恐れてしまうよ」
見下したような見下げた態度で彼は言った。
「そりゃ、どうも」
言い放った後、銃を正面へと向ける。
わかっていた、ただ勝てない相手であると。
それは何度、繰り返しても同じ結末だと、まるで全てを経験したかのように、わかっていたことだったのだ。
「それでも君は立つんだろう。なあ、いまさら逃げてもいいんだ。こんな君が歩む運命なんて」
一歩ずつ、進んでいく。
まるで、全てを潰さんが如く。
「まあな、あいつらに会ったんだから、そりゃあ、感覚的にもわかるだろうよ」なんで、あの二人に会えたのかわかった気がする。「全てお見通しだったんだな、おまえら!!」
不敵に笑う。そこには晴れ渡るような、まっすぐな笑みが浮かんでいた。
「貴様を何度でも殺す――行くぞッ!!」
「ああ、あいつら全てのために、俺がいるんだよなッ!!」
物理法則すらも壊したような何かが、こちらへと向かってくる。
何度も、その攻撃は、細胞一寸すら残すことなく、空気中の大気と大差ないような、”なにか”。
反撃を試みるが、しかし、攻撃手段の銃すらも、ことごとく砂鉄いいや、ホコリへと変えていく。
「もうやめたらどうなんだ?」
結果をわかっていたように、その男はポツリとつぶやいたのだった。
体は、手加減を加えているのか、ちれじれの肉塊のようなものになったのかと、目の前に落ちたモノでわかった。
「誰が……誰がやめるん――」
意識が遠のいていくのがわかった。これまでも食らったことのないようなダメージだったのだ。
別に痛みなんて慣れていた。
まさか、ほんとうに体が再生できなくなるなんて……
体がどのような攻撃にさらされたなんて、わからない。ただ、手加減をしているようだ。
まるで遊んでいるように。
「ウジ虫みてえだよな」
自虐をした。ただの感想にすぎなかった。
「君への対策なんて、簡単だったんだよ」頭を踏みつけ、やつは鍔を吐くように、言い下した。
「で、でもなぁ!! まだ息があるみてえなんだよ」
左手が動いていた。確かにまだ戦えている。
「ヴァルプの素材に、その核はなんなんだ? それだけが、疑問なんだよね」髪の毛を掴んでいた。体ごと持ち上げられているようだ。「君は機械のようなものなんだよ。なんだって、その体について、君自身もよくわかるだろう」
依然、十二支族を従えた男は、表情変えずして、その顔にはなにも映ってはいない。
「この状態でも君は戦うというのかね?」
確かにこの目の前の男の言うとおり、僕の体では戦うことはできないだろう。「潔く、くたばりたまえ」
何回も味わったような気がしていた。このまま、僕が倒されるのをなんども見てきたのだろう。そんな光景に彼は飽き飽きしていたのかもしれない。
突然、そんな気がしていたんだ。
「そんなものは思い上がりなんだろうよ」
一度、その左手が、自信の力ではないような宇動きをしていたのだ。
まるで、なにかからの伝達。結末を覆してほしいと、誰か大勢の声が聞こえたのかもしれない。
「ここでやらねえと、俺らに失礼なんだろうな」
ここで物語を違うモノへと変えなければならないんだよ、と彼はその瞬間に悟ったのだった。
目の前の男はニヤリと笑みを浮かべた。
「その状態で何ができるんだい?」
しかし、その体は再生を始めた。
「ああ、そうなんだな。僕は何度もここで足踏みしてきたんだな」
全ては、ほんものでまがいもの。
やっと真相にたどり着いたんだ。
「ここまでしてわからないなんて、僕ってほんとうにバカなんだな」
「やっとわかったんだなこの間抜け面」
奴は、立ち上がる僕をずっと待っていたかもしれない。
「さあ、再戦だ」
「ああ、今度こそ」
両者は言葉を交わして、頭突きをする。
片方はもろく、まるで果実がトラックに弾かれたように、脳味噌を花火のように飛び散らした。
流星が流れる時間が過ぎたとき、頭は元にあったかのように再生している。
「人は気持ちだけでここまでなれるんだな」
「そんな君を、俺は見たかったんだよ」
ダイヤモンドに拳をぶつけ続けるような戦闘が始まったのだった。
地獄の上には、ボロボロの二人が立っていた。
タスクの肉体は、何度も再生を行い。そのたびに地面には肉塊が飛び散るも、破竹の早さで蒸気と化して消えていく。
タスクという男には、武器がなくなっていた。
しかし、その体を武器にして戦っていた。
愚直なまでのその姿勢に、対峙していた男は反吐が出そうになりかける。
しかし、こんな男であったと安堵すらしていた。こんな男が何度も挑んできたなと。
「スタフェリアがいたあのとき――君は僕との二人に勝ってみせたんだ」
左肩が吹きどぶ。
体制を立て直し、右手を振りかざした。
「よくやってたと思うぜ、あのときの僕はッ!!」
しかし、その攻撃すら、粉塵となるような同時相殺によって、血しぶきの爆散へ。
「しかし、君への対策すらも、容易に越えてくるとは」呆れかえるような声音。「気概だけで、どうとなるその能力。君はたしかに選ばれたものだ」
そうなのかもしれない。この世界自体、この僕のために作られた世界だったのかもしれない。
「僕だけじゃないはずだよ」
僕にバイクを渡してくれたあいつも…… そうなんだ。みんなが、そして僕が選ばれている世界なのだ。
「でも、ここまでみんなが僕の為に待ってくれていたんだ。だから、この繰り返しもこれで終わりだよ」この目の前の天野路 夜久という人間が、幾度も僕の目の前に立っていたのかもしれない。しかし、もうみんなが待っているんだ。この僕を。だからいい加減に、こんなものは終わらさないと。
「さあ、いこうか――これがこの物語の佳境」
「ううん、まだ僕たちは続いていくのかもしれない」
天野路はかすかに笑っていた。
「これでよかったのよね?」
遠い彼方で、何かを感じ取っていた女性がつぶやいたのだった。
「ああ、これでいいんだ」
その男は相座時之氏と呼ばれるっこの世界の管理者。かつてタスクだった男。
「私の世界というより――あの子の世界は、どうなるの?」
夕焼けがあたりを照らしていた。
「このまま続いていくんだ。この世界もまた、あのときの俺に観測されているからな」
そんなセリフを世界につぶやいたようでもある。そうイアは感じ取った。
相座時之氏と呼ばれていた検体に、世界に彼はつぶやいたのだった。
「いま、連絡が入った。エマはもう一人の俺と過ごすことになった」
だまって、その朝焼けを眺めている。
「私は行くわ、やることがあるから」
ヘルメットを右手に背負い込むように持つと、バイクにまたがった。
「タスクのことを頼む」
「なによ、あなた死ぬわけじゃないんでしょ――管理者さん」
笑って俺を見ている、エマがいるようだと俺は錯覚してしまった。
「さよならは言わないわ」
「ああ」
夢を――夢を見ていたんだ。
いや、これは俺にとっては現実だ。
あとはアイツ…… 俺次第だ。
時が止まってしまったかと錯覚してしまうくらいに、同じ時を過ごしたような実感が二人にあった。
一人は、何度もその体を砕かれ。
一人は、滝に叩かれている岩のように。
依然として、世界が変わらないかのように、その光景は流れている。
「MPみてえなもんはねえのかよこの怪物」
「君の気力のほうが化け物だよ」
タスクの攻撃は食らわないにしても、しかし着々と、相手天野路の体力は削りとられていた。
しかし、そんな索敵も与えないようにと、怒濤の攻撃を与えていく。
なんども吹き飛び、攻撃すらする腕すらも木っ端みじんになる。
この絶対を打ち砕かなければならない。
「だりゃあ、はやく終われよッ!!」
「ぎぃ、ここにきて根勝負とはねえッ!!」
なんども立ち上がるタスクを前に、天野路は唾を飲む。なんどもこの境遇ならば倒せていたとわかっているのにも関わらず、なぜだか、ここで達がるタスクに歓喜していたからだ。
そんなことはないと、フラフラのタスクの顔面に拳を入れ込んだ。
ドーナツのような光景になった。
「頭はやめてくれや、しゃべれなくなるだろうがよぉ」
ああ、イかれていると笑わずにはいられない天野路であった。
それからも一方的な攻撃が続いていく。
だんだんと両者の攻撃は止まっていった。
「最後なんだからそのバリア壊してくれ」
「その前にその気持ちが壊れてくれないかな」
互いのクロスカウンターが初めて入った。
タスクの腕は、なぜなのか吹き飛ばない。
「ついにMP切れたんだな!!」
「君のように気力馬鹿じゃないんだよッ!!」
お互いに歯と血反吐を吐き捨てて、言い合った。
「お手上げだ。君は運命に打ち勝ったんだよ」
「これで、終わりなんだね」
なんだか呆気なかった。でも何かを変えるってそんなことなのかもしれない。
戦闘体型をとっていない天野路を見て、僕は急に体中の力が抜けたのだった。
「まさか、君の核がスタフェリアだったなんて」
横の男はよくわからないことを言っていたのだった。
「全部終わったんだよね?」
「ああ、君の勝ちだよ。タスク」
朝だった。それは綺麗な朝だった。
まるで空間が捻切れたような音が、辺り一面に鳴り響く。
ひとつ残像がまばたきもできないような速度で死角へと移動したのだった。
男は、それを感覚を研ぎ澄ませ、回避した。
「やるじゃあ――ないか」
前進にオーラを纏っている男はつぶやいた。
男の前に倒れかかった右手の前には、弾丸が時がとまったように、ぴたりと止まっている。
あまりの妖力にその空間はねじ曲がっていたのだ。
それはまさに、時空さえも捻れてしまうような力であったのだ。
二丁の銃を持った男は、その攻撃のような防御に驚く。
「これが、全てを超越した超魔道因果率魔力の力だ」
十二支族全てを従えたというだけあった。
その男の周りには、明らかに違う力が漂っている。しかしあいつと似ていたと二丁の銃を持った男は、思い出していた。
あの反則返しのような攻撃であったのだ。
その攻撃、いいや特性のようなものがある程度は一緒だ。
全てが因果応報のように返ってくるのが、あの男の特性である。
「それがどうしたんだよ!!」
かわす、しかしその攻撃は顔面へとぶち当たった。
頭の骨格を支えている、脊髄がトマトを潰したように、飛び散り四方八方に飛び散るやいなや、人間の頭の形をしたものは、後方にぶっ飛んだ。
「だからなあ!!」
しかし、その体は地面を根に伸ばしたように張り付いている。
「俺を殺してみやがれッ!!」
その体は、すぐさま再生を始めた。まるで、絶望感があった。
「直接、触れることによる。組織破壊の陣円を君に展開したはずだが……」男の顔はニヤりと上へと向いた。「まさかここまで真化していたとは――恐れてしまうよ」
見下したような見下げた態度で彼は言った。
「そりゃ、どうも」
言い放った後、銃を正面へと向ける。
わかっていた、ただ勝てない相手であると。
それは何度、繰り返しても同じ結末だと、まるで全てを経験したかのように、わかっていたことだったのだ。
「それでも君は立つんだろう。なあ、いまさら逃げてもいいんだ。こんな君が歩む運命なんて」
一歩ずつ、進んでいく。
まるで、全てを潰さんが如く。
「まあな、あいつらに会ったんだから、そりゃあ、感覚的にもわかるだろうよ」なんで、あの二人に会えたのかわかった気がする。「全てお見通しだったんだな、おまえら!!」
不敵に笑う。そこには晴れ渡るような、まっすぐな笑みが浮かんでいた。
「貴様を何度でも殺す――行くぞッ!!」
「ああ、あいつら全てのために、俺がいるんだよなッ!!」
物理法則すらも壊したような何かが、こちらへと向かってくる。
何度も、その攻撃は、細胞一寸すら残すことなく、空気中の大気と大差ないような、”なにか”。
反撃を試みるが、しかし、攻撃手段の銃すらも、ことごとく砂鉄いいや、ホコリへと変えていく。
「もうやめたらどうなんだ?」
結果をわかっていたように、その男はポツリとつぶやいたのだった。
体は、手加減を加えているのか、ちれじれの肉塊のようなものになったのかと、目の前に落ちたモノでわかった。
「誰が……誰がやめるん――」
意識が遠のいていくのがわかった。これまでも食らったことのないようなダメージだったのだ。
別に痛みなんて慣れていた。
まさか、ほんとうに体が再生できなくなるなんて……
体がどのような攻撃にさらされたなんて、わからない。ただ、手加減をしているようだ。
まるで遊んでいるように。
「ウジ虫みてえだよな」
自虐をした。ただの感想にすぎなかった。
「君への対策なんて、簡単だったんだよ」頭を踏みつけ、やつは鍔を吐くように、言い下した。
「で、でもなぁ!! まだ息があるみてえなんだよ」
左手が動いていた。確かにまだ戦えている。
「ヴァルプの素材に、その核はなんなんだ? それだけが、疑問なんだよね」髪の毛を掴んでいた。体ごと持ち上げられているようだ。「君は機械のようなものなんだよ。なんだって、その体について、君自身もよくわかるだろう」
依然、十二支族を従えた男は、表情変えずして、その顔にはなにも映ってはいない。
「この状態でも君は戦うというのかね?」
確かにこの目の前の男の言うとおり、僕の体では戦うことはできないだろう。「潔く、くたばりたまえ」
何回も味わったような気がしていた。このまま、僕が倒されるのをなんども見てきたのだろう。そんな光景に彼は飽き飽きしていたのかもしれない。
突然、そんな気がしていたんだ。
「そんなものは思い上がりなんだろうよ」
一度、その左手が、自信の力ではないような宇動きをしていたのだ。
まるで、なにかからの伝達。結末を覆してほしいと、誰か大勢の声が聞こえたのかもしれない。
「ここでやらねえと、俺らに失礼なんだろうな」
ここで物語を違うモノへと変えなければならないんだよ、と彼はその瞬間に悟ったのだった。
目の前の男はニヤリと笑みを浮かべた。
「その状態で何ができるんだい?」
しかし、その体は再生を始めた。
「ああ、そうなんだな。僕は何度もここで足踏みしてきたんだな」
全ては、ほんものでまがいもの。
やっと真相にたどり着いたんだ。
「ここまでしてわからないなんて、僕ってほんとうにバカなんだな」
「やっとわかったんだなこの間抜け面」
奴は、立ち上がる僕をずっと待っていたかもしれない。
「さあ、再戦だ」
「ああ、今度こそ」
両者は言葉を交わして、頭突きをする。
片方はもろく、まるで果実がトラックに弾かれたように、脳味噌を花火のように飛び散らした。
流星が流れる時間が過ぎたとき、頭は元にあったかのように再生している。
「人は気持ちだけでここまでなれるんだな」
「そんな君を、俺は見たかったんだよ」
ダイヤモンドに拳をぶつけ続けるような戦闘が始まったのだった。
地獄の上には、ボロボロの二人が立っていた。
タスクの肉体は、何度も再生を行い。そのたびに地面には肉塊が飛び散るも、破竹の早さで蒸気と化して消えていく。
タスクという男には、武器がなくなっていた。
しかし、その体を武器にして戦っていた。
愚直なまでのその姿勢に、対峙していた男は反吐が出そうになりかける。
しかし、こんな男であったと安堵すらしていた。こんな男が何度も挑んできたなと。
「スタフェリアがいたあのとき――君は僕との二人に勝ってみせたんだ」
左肩が吹きどぶ。
体制を立て直し、右手を振りかざした。
「よくやってたと思うぜ、あのときの僕はッ!!」
しかし、その攻撃すら、粉塵となるような同時相殺によって、血しぶきの爆散へ。
「しかし、君への対策すらも、容易に越えてくるとは」呆れかえるような声音。「気概だけで、どうとなるその能力。君はたしかに選ばれたものだ」
そうなのかもしれない。この世界自体、この僕のために作られた世界だったのかもしれない。
「僕だけじゃないはずだよ」
僕にバイクを渡してくれたあいつも…… そうなんだ。みんなが、そして僕が選ばれている世界なのだ。
「でも、ここまでみんなが僕の為に待ってくれていたんだ。だから、この繰り返しもこれで終わりだよ」この目の前の天野路 夜久という人間が、幾度も僕の目の前に立っていたのかもしれない。しかし、もうみんなが待っているんだ。この僕を。だからいい加減に、こんなものは終わらさないと。
「さあ、いこうか――これがこの物語の佳境」
「ううん、まだ僕たちは続いていくのかもしれない」
天野路はかすかに笑っていた。
「これでよかったのよね?」
遠い彼方で、何かを感じ取っていた女性がつぶやいたのだった。
「ああ、これでいいんだ」
その男は相座時之氏と呼ばれるっこの世界の管理者。かつてタスクだった男。
「私の世界というより――あの子の世界は、どうなるの?」
夕焼けがあたりを照らしていた。
「このまま続いていくんだ。この世界もまた、あのときの俺に観測されているからな」
そんなセリフを世界につぶやいたようでもある。そうイアは感じ取った。
相座時之氏と呼ばれていた検体に、世界に彼はつぶやいたのだった。
「いま、連絡が入った。エマはもう一人の俺と過ごすことになった」
だまって、その朝焼けを眺めている。
「私は行くわ、やることがあるから」
ヘルメットを右手に背負い込むように持つと、バイクにまたがった。
「タスクのことを頼む」
「なによ、あなた死ぬわけじゃないんでしょ――管理者さん」
笑って俺を見ている、エマがいるようだと俺は錯覚してしまった。
「さよならは言わないわ」
「ああ」
夢を――夢を見ていたんだ。
いや、これは俺にとっては現実だ。
あとはアイツ…… 俺次第だ。
時が止まってしまったかと錯覚してしまうくらいに、同じ時を過ごしたような実感が二人にあった。
一人は、何度もその体を砕かれ。
一人は、滝に叩かれている岩のように。
依然として、世界が変わらないかのように、その光景は流れている。
「MPみてえなもんはねえのかよこの怪物」
「君の気力のほうが化け物だよ」
タスクの攻撃は食らわないにしても、しかし着々と、相手天野路の体力は削りとられていた。
しかし、そんな索敵も与えないようにと、怒濤の攻撃を与えていく。
なんども吹き飛び、攻撃すらする腕すらも木っ端みじんになる。
この絶対を打ち砕かなければならない。
「だりゃあ、はやく終われよッ!!」
「ぎぃ、ここにきて根勝負とはねえッ!!」
なんども立ち上がるタスクを前に、天野路は唾を飲む。なんどもこの境遇ならば倒せていたとわかっているのにも関わらず、なぜだか、ここで達がるタスクに歓喜していたからだ。
そんなことはないと、フラフラのタスクの顔面に拳を入れ込んだ。
ドーナツのような光景になった。
「頭はやめてくれや、しゃべれなくなるだろうがよぉ」
ああ、イかれていると笑わずにはいられない天野路であった。
それからも一方的な攻撃が続いていく。
だんだんと両者の攻撃は止まっていった。
「最後なんだからそのバリア壊してくれ」
「その前にその気持ちが壊れてくれないかな」
互いのクロスカウンターが初めて入った。
タスクの腕は、なぜなのか吹き飛ばない。
「ついにMP切れたんだな!!」
「君のように気力馬鹿じゃないんだよッ!!」
お互いに歯と血反吐を吐き捨てて、言い合った。
「お手上げだ。君は運命に打ち勝ったんだよ」
「これで、終わりなんだね」
なんだか呆気なかった。でも何かを変えるってそんなことなのかもしれない。
戦闘体型をとっていない天野路を見て、僕は急に体中の力が抜けたのだった。
「まさか、君の核がスタフェリアだったなんて」
横の男はよくわからないことを言っていたのだった。
「全部終わったんだよね?」
「ああ、君の勝ちだよ。タスク」
朝だった。それは綺麗な朝だった。
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