最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~

緒賀 実弦

51話

 時は2か月後に戻り、僕はいつものように、実習カリキュラムをこなして、下校の準備をしていた。
 簡易カバンに、筆記用具などを入れていく。
 このヤングサンクションズは、アメリカの州にある普通の高校とは変わらない制度を取り入れている。
 成績ではあまり、支給金額が変わらないにしても、個人のランク成績や、チームでのランクで配給が変わってしまう。
 Fランクの僕は、ギリギリ生活できるほどの金額しかもらうことができない。
 それに比べて、僕よりも成果を上げていないチームの連中がズルく思えた。
 まあ僕が同じチームである、彼ら彼女らに助けられているというのはあるけれど……
 まあその話は置いておいて――――
 能力者による傭兵学校にも関わらず、このようなことをするのは、時代に合わないなと、なんとなくともそう思いながら、出入口のゲートを出た。
 鉄格子の策を出たあたりで、トウマが僕を待っていた。

「よう、いつものようにシケたツラしてんな」

 手を挙げて、どうやら僕を待っていたかのようだ。

「ん? なんだお前か」

 いつものようにトウマは俺の隣を歩いていく。
 今日は、ミライと一緒にはいないようだ。

「あの昨日来た官僚の会議の時、わかるか?」

 トウマは、意気揚々と質問を投げかけた。

「官僚……? ああ、たしか、次期大統領に僕たち能力者の存在を発言させるかという話だったな」

「ちげえちげえ、その秘書がかなりの美人だったんだよ、ナイスバディの」

 違うのかよ、なんだあ、また下半身がピキつく話かよ……
 トウマと話をしていると、僕もそのような人間になってしまう。
 だから…… なんていうか……
 頭を掻きながら、僕はトホホとなった。

「おい、風があの子のパンツをッ!!」

 トウマが、大声で、自身の目の前を指さしていた。僕は彼につられてみる。

「な、なんだって!?」

 目の前を歩いていた、美女の下半身についているカーテンがめくりあがっていたのだ。

 それは、お尻と表現するには、それは完璧な形であった。しかしながら、それは、お尻よりもお尻らしいといえる。それが如実に表れているのが、この立体系を感じさせるような、お尻を横断するしわである。それはまた、世界地図を横断している赤道のようなものでもあった。まさにお尻の赤道はこのしわのあたりであると、誰もがそう思うかのようなしわの付き方である。そして二つのやわらかそうな肉の付き方。大きくなったマシュマロが二つ付いているといっても疑いはしないだろう二つの山。脂肪が良い感じについており、あきらかに触ったSEがサラリだとか、すべすべ、だとか、もっちりだとか、そんな感じのSEがつくに違いない。またここまでお尻の形を描写してきたが、パンツのチョイスもなかなかのものであった。それは、明らかに、男性向け、いいや清純な高校球児を狙っているかのような、清楚な色、そして形をしているパンツだ。腰回りのお肉にちょっとだけ食いついているようなところが、まったくもってけしからん。ちょっとだけ、サイズがあっていないのか、食いつき気味に、パンツの位置が高いと思ったところもよかった。彼女はパンツを上げるときは、しっかりと上へと、上げる派の人間なのだろう。思春期の女性のお尻というものは、少々あどけなさがありながらも、それもまた楽しめるといったものだ。しかしながら、この目の前の女の子のお尻は、お尻といっても完璧すぎるくらいに完璧なお尻であったのだ。それがまた、お尻であるのか、それまたお尻であるとしても、僕にはお尻以外にはお尻にしか見えない。思春期の真っ最中の僕と、トウマは、圧倒的に釘付けになったのだ。

 まるでお尻に穴が開くんじゃないのかというくらいにだ。まあ確かにお尻には穴があr

 というわけで、秋風ナイス!!
 そして、めっちゃ白だった。

「イイしわだったぜ」

「わかる、今どきのフィギュアでもあんなものは拝めない」

 僕とトウマの鼻の下は伸びきっていた。
 するとすぐさま、目の前に道路に落ちていた、小石が二つ浮かんでいる。
 ん?となった僕たちは、目の前の女の子を見た。ピクピク目元が動きながらも、笑っていた。
 一瞬の出来事、そして不意であった。





「「あたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」





 両者の股間に小石がものすごい勢いで、それも第三のモ〇スターボールになる勢いでぶつかってきたのだった。
 二人は痛みに悶えていた。
 まさか、あの子がサイコキネシスの使い手だったなんて……
 しかもかなり上達している能力の使い方。
 明らかにAランク相当の実力であると、地面に転がりながら、頭のなかで考えていた。
 そして、フルパワーでぶつけてきたら、僕たちの股間は、量子分解をしていただろう。





「ボールがぁあああ、俺のボールがあああああああ、みっつになっちまううううううううう!!」





 トウマは、絶叫していた。
 僕もまた、すさまじい不意の激痛に、転げまわっていた。
 男の急所にぶち当てるこの女……
 圧倒的に、そして壊滅的に、ただものじゃない!!

 地面で、芋虫のように転がっていた僕たちを、彼女は見下すように、唾を両者にかけてどこかに消えていった。



 そうしてしばらくして痛みは無くなった。


 しばらくして、痛みが引いてきた僕とトウマだった。
 いつのまにやら、あの女の子はどこかに消えてしまったらしい。

「やべえ、さっきまでのこと振り返ると、ちょっとどきどきしてきたかも……」

 トウマが、女性らしい両足を外に向ける座り方で、そんなことを言ってきた。

「しっかりしろトウマ! お前はまだ助かるはずだ」

 僕はただただ、泣いていた。



 そのまま二人は、お互いの自宅へと帰っていった。
 自宅といっても、つくりが容易なマンションで、簡単に隣の部屋が何をしているのか、わかってしまう。一応貞操の概念は、処罰がきっちりとしているために、男女ともに淫らになることはない。
 たぶん。
 僕の住んでいるところは、6畳半の家であった。
 簡単な扉が付いた衣類かけ。キッチン、そして炊事場、テレビ、真ん中にはちいさなテーブルが置いてある。日本の文化にあるような部屋と同じような配置となっていた。というよりも、昔は日本に住んでいたために、意識せずとも、このような配置になってしまったのはどうしようもないことである。
 トイレは共同であった。シャワーは、近くのトレーニング施設で借りることができる。
 Fランクはこのような、貧困な生活をしている。ランクが上がれば、バスルームとトイレが付いた、部屋へと移動することができるのだ。
 とにかく、実力至上主義であるのだが、僕にはこのような待遇はない。
 まあ、僕がいろいろとやらかしてしまったからというのもあるのだけれどね……
 頭を切り替えて、僕は、30インチのブラウン管テレビの電源をつけた。
 特にいつもと変わらないニュース番組ばかりのチャンネルであった。
 僕たち能力者たちは、娯楽の情報のいろいろなものが規制の対象となっている。
 特に娯楽番組というものは、人間の感性を麻痺させるような効果があると、授業で習ったからだ。
メディアというものは、大衆を扱う便利な道具にしかならないという趣旨の項目だったような気がする。
 だからといって、僕たちは楽しみがあるのかといえば、表ではスポーツだけということにもなった。だが、いいかげんな大人が(僕たちの教員である)、博打などを教えているために、博打が、ここでは主な娯楽となっている。
 人間というものはどこにいても変わらないと、僕はそう思うのだ。
 結局僕たちのような賭博にさえ興味がないものは、女性のケツをガン見するようなことしか、楽しむことがないのだろう。
 そんなことを考えていると、無性に眠たくなった。
 出動というものは、いついかなる時でもあるものだ。だからこそ、先月の出動から、軽い休暇のようでもあった。
 特にすることもなく、図書館へ向かった。
 このまま、こうしてぼうっとしているのも、僕にはできないことであるからだ。
 とにもかくにも、何かに対して動かなければ、この過ぎている一秒一秒が、もったいなく感じてしまう。
 それに僕は、ここから、この学園都市から出てみたいという願いもあった。
 遠征を任されている歴代の勇士たちのような、生活をしてみたいものだ。
 ヤングサンクションズというものは、世界各地どこにでも出動している、マーズという組がある。それは、一通りの任務、訓練、そして個人の強さ、チームランクに貢献したものが、入ることができる。
 その組は、まあ僕たちの間では、勝ち卒業組と呼ばれて、世界各国の裏側の戦争へと送りこまれる。
 だから、世界旅行ができるという人たちなのである。
 僕も入って、この施設とはお別れしたいものであった。
 卒業組になるには、個人ランクをDまで上げ、チーム総合得点を、トップ十まで入れば、参加することができる。
 もし外れてしまえば、この都市施設を支えているあの教壇の先生や、もしくは、南ブリテン大国とブラジルの最前線に送られている。
 結局僕たちは、普通の兵よりも扱えるということで、どこにでも呼ばれれば、世界平和のためならば参上していた。
 そんな僕たちは、これからも、平和という見せかけの奇跡のために、戦い続けるのかもしれない。
 人間というもは、いつの時代にも、どこまでも戦いに満ちている線路の上を歩いている。
 そこには、その先には、犠牲者というどうにもならない惨劇があった。
 見せかけの平和も、あっさり壊れてしまう。
 そんな世界情勢だったのだ。
 この世界は。

 そんな世界だからこそ、僕らのような能力者が率先して導いていかなければならない。
 僕たちがした独裁の上には、僕らは、平和に浸りきっている人たちから後ろから刺されるだろう。
 それでも、この世界は、誰かがやらなければならない世界なのだ。
 核の脅威は、能力者による謀略線で簡単に無力化できるものだ。
 いくら最新鋭の兵器を作ってしまっても、ひとたび工作の上手い能力者が、敵国へと忍び込んで、簡単にどうにかしてしまう。
 だから今どきの戦争は、戦略によるものではないくて、一人一人の戦術線と昔に少しだけ逆戻りしたようだった。
 少し昔の話をすると、国連能力者連合組織とうたっておきながら、アメリカにその本部を建ていた。
 故に直接的に敵対する組織が生まれた。アメリカに反発していた共産主義能力者が作り出した(表上でとされている)トリックスターズ。
 こうなってしまうのも多分だけれどどうしようもないことだと思うのだ。
 世の中にはどうしようもないことが、あるけれど、このことに関しては、誰にも攻めようがないものである。
 僕のような、すぐあきらめてしまうような人間がいるからこそ、こんなにも世界は争いだらけなのかもしれない。
 そうこうしている内に図書館へと着いた。

 僕は図書館につくと、いつもの席へと向かった。
 あまり本を読んだことがないために、頭を鍛えるためにも習慣的に図書館に通っている。
 読んでいるのは推理小説。
 日本語が多少読めるため、本は日本語で書いているものしか読んでいない。
 手に収まるちいさな文庫本を本棚から選んで、くつろぐように座った。
 あまたを鍛えるといっても、体を動かすのもいいが、頭を柔軟にするのは推理小説だと思っている。たしかに文を追うことは、凝り固まった頭になってしまいがちであるが、それも程度の問題だ。
 何事もやりすぎはよくない。
 ほどほどにすればいいわけでもあるのだ。
 何よりも、推理小説を読破すると、頭がよくなったという錯覚をする。だいたいが、僕の錯覚であるために、本当に読んで頭がよくなったのかと聞かれれば、わからないとこたえるだろう。
 だが、意識的な考え方は、なんとなくとも、すっきりするような気がしていたのだ。
 一緒に推理を楽しむのもいいが、ただ眺めるようにして、主人公が、推理していく様を読んでいるのも、なかなかいいものである。
 日々の雑音を消すには、僕にとって推理小説を読むことは、なくてはならないものとなっていた。
 しかし、そんな僕の楽しみを奪うかのようにあの女の子、ナイスボディーのプリティーキュートな女の子は、すべてを、僕の楽しみをぶった切るようにして、話しかけてきた。

「あッ!!」

 僕は、その声につられて顔を上げた。女性がこちらを見て驚いたということだけは、目の前で立ち尽くしていた人影を見て、察することができた。
 なんなんだろうかという疑問を持ちながら、本から目をそらした。
 映像が、目から入ってくる映像が、ちょうど真正面を向いたあたりで、彼女は声を上げた女性は、僕を見ていた。

「ちょっとお話をしませんか?」

 顔が近い。
 彼女の顔がはっきりと、それも細部に至るまで、頭の記憶をぶち込むところに、どんなエラーでさえもなくなってしまうほどの距離と衝撃があった。
 ついでに手を握られていたために、彼女の攻め立てるような要求に、答えない男の子はいないだろう。
 凛とした目、そして口は小さいながらも、纏まっており、中でも印象的であったのは、若干ではあるが下の唇のほうが、上の唇よりも大きく見えた。大人の女性のようでもあるが、しかし、どことなく、あどけなさがある。
 この顔はどこかで見たことがあるような気がしていた。
 どこであったのか、なかなか思い出せない……
 思い出そうと躍起になっていたが、彼女の乱暴な扱いで、僕はこの図書館を出た。


 図書館のはずれにあった森林の休憩所の椅子へと二人は座った。

「ちょっと…… 失礼ですが、どなたさまでしょうか?」

 僕は誰とも知らずに、この質問をしていた。
 結局のところ、10秒足らずで考えてみても、なかなか思い出すことはなかった。
 しかしどことなく、その顔が懐かしいようにも見えた。
 知っているようで知らないような女性だ。

「自己紹介からですね」

 彼女はおおらかな笑顔を浮かべて、そう言った。
 一つ、咳払いを右手で押さえながらする。一呼吸をして、彼女は口を開いた。

「イア・ホーパ・アクェイというものです」

 おしとやかそうな声音で、自己紹介をしたのちに、僕の足元に落ちていた棒切れを僕の目の前に、今にでも発射してしまいそうな武器のように浮かんでいた。
 これだけで僕は、彼女が能力者であるとわかった。
 サイコキネシス系の能力者であった。
 ということは…… あの時のパンツが見えた……

「あ、あ、あ、あの時の…… ごめなさい!! なんでもしますから」

 なんでもするとは言っていない。

「いえいえ、別に減るものじゃないですし」

 あの…… 笑いながら答えていますけど木の棒はより一層、僕の目と鼻の先を字で行くように近づいていますよ……
 正直めっちゃ怖かった。

「ところで用というものは?」

 僕は切り替えて、イアという女性が何をするのか聞いてみることにした。

「私ってね、物を自由に操ることができるのよ」

 僕の目の前に浮かんでいた木の棒は、コンクリートの地面へと刺さった。
 ひぃッと僕は驚き、そしてなんで刺さったんだという考えになる。
 そんな考えを遮りながらも、イアは話を続けていた。

「だから、物がどんな末路を迎えてしまうのかわかってしまうの……」

 なんとも不思議なことを言っている彼女だった。
 僕からすると、彼女が、なんでこのようなことを言っているのか、わからず仕舞いだ。
 僕に対して何を求めてこのようなことを言っているんだろうか。
 目的が不明なだけに、イアという女性が何を見ているのかきになってしまった。
 気になってしまうほどの彼女の悲しそうな眼をしていたからだ。

「なぜ…… そんなあなたが僕に話しかけるということはわけがあるんですか?」

 言葉を詰まらせ、そして選びながら、彼女が言わんとしていることを聞いてみた。

「パンツを見られて…… そのとき私を見たでしょ? 一瞬、私の心の中で、あなたを見たら、とても懐かしく感じたのよ。まるで、昔の恋人のような気がしたの」

 突拍子もなく、彼女はそんなことを言ってきた。それと同時に何かを、よくわからないものを見ている、それも未来を見ているかのように、いいやこれは違う世界を見てきたかのように彼女はそう言ったのだった。
 僕には彼女がなぜこのようなことを言っているのかわからなかった。
 でも…… 僕にもまたわかるような気がしていた。
 だからこそ黙って彼女の発することを聞いている。

「ごめんね、別に私は前世を信じるような、ファンタジーな頭を所持してはいないよ」

 でもねと彼女は、思いつめていたかのように、言葉を発しだす。

「あなたがとても、懐かしく感じたのよね。あなたのことなんて何もわかっていないのに、一度も話
したこともないのにさ。こんな私を笑ってくれる?」

 茶化している彼女。どうにも茶化さずにはいられないほどに、彼女の中では、僕を見つけたことは衝撃があったのかもしれない。

「そうなんですか、別に笑いません」

 彼女はどうも、僕と同じ年代のような気がしていた。

「いきなり話すのにも、あなたの友達の前で、そんなことは言えないじゃない。だからこの図書館で一日に二度も会えるなんて、驚いたわ。それと同時に確信してしまったのよ」

 恥ずかしさがあるようで、おおらかそうにも、すこしだけ声のトーンが落ちてきた。

「そうなんですか。おパンツ、めっちゃよかったですよ」

 僕はふざけるようにそう言った。どうやら彼女は僕の冗談もわかっているようだった。

「もうッ!! 変態さんですねあなたは」

 顔を赤くして、木の枝を、僕の顔へと飛ばしてきた。
 やめて。めちゃいたい。

「そういえば僕の名前はまだでしたね」

 僕はそう言って、髪の毛に突き刺さった葉っぱを取り、自己紹介をした。

「水流タスクです」

 イアを見た。イアもまた僕の顔をしっかりとみている。
 夕日が確かに二人を照らしていた。
 まるで何かを祝福するかのようでもあったのだ。

「タスクさんか…… それじゃあ本題に入りましょうか」

 本題に…… 物の結末が見えるという彼女の言葉。
 それならば、彼女がこれから教えることは、僕の未来のことということか。
 言葉を続ける。



「あなたのこと…… 教えてあげるね。 このまま大切な人を失うか、それとも、運命にあらがって戦うか」








 彼女、イア・ホーパ・アクェイのその言葉には、重い鎖がついているかのようであった。

「最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く