最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~
アフターエンド
「またしても、俺たちは神を倒すことはできなかったな」
孤高の丘で一人の男がそういった。
その瞳に虚しく反射するのは、彼の仲間たちの遺体、敵の残骸であった。
中には彼が愛していた人間の姿もあった。
ともに進むべきであると、とある男にそう説得され、共感して彼女と戦ってきた。
しかし、その結果は――
「つい果てたか……」
彼はこの現状を、確と目に焼き付けていた。
「私たちは――人間は、神から、旅立てばならんのだ。ひな鳥が巣から飛び出すようにな」
彼のそれが答えでもあり、愛していた少女の理念でもあった。
それをあざ笑うかのように冷たい風が彼に当たる。
血だまりに、そして朝明け。
「エフカの受け売りだ」
風が、微量な風が男の頬に当たる。
吐き出された白い息は、世界の終わりであるかのように空中に舞っては、儚く消えていく。
「タスクよ、私はお前のようにありたかった。死んだと便りも送らずに、お前はもう三年も前にこの世界から消えているがな……」
その声は誰にも届くことはなかった。
世界は夜明けではなく、誰もいない暗闇へと移行した。
☆ ☆ ☆
すべては闇に葬られた。
それはすべての総括者である相座時之氏 守刄の手によるものであった。
彼はそう“判断”したがために、世界は初めからやり直すことになったのだ。
気まぐれではない。
彼の存在理由である佐部タスクの魂を、現実世界へと移動させた。
佐部タスクの魂はソウルパラドックスを未然に防ぐために、平面時空上のただ唯一、何も得ることがなかったタスクの世界線へと送られたのであった。
真世界上のパラレル操作は、平明ヒラキの能力を応用して、確立世界への確変をしたのだ。
ファルスワールドを三度やりなおすことが彼の中でわかっていた。
それは、何度も同じ結末を、そして佐部タスクを“前に進ませること”が自身の魂の昇華が信念であり、彼に与えられたプロセスであり、彼に組み込まれたプログラムでもあった。
そうして今、四度にして組みかえられた世界。
タスクの物語が、始まった。
「現代アクション」の人気作品
書籍化作品
-
-
70810
-
-
439
-
-
93
-
-
1359
-
-
1168
-
-
221
-
-
841
-
-
1978
-
-
104
コメント