TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

千佳ちゃん、妹のお願いを聞く。

「な、なんじゃこりゃー!!」

 メグちゃんのお願いを聞く事になった私は、ヒルデちゃんに連れられて一階のとあるお部屋にやって来ました。
 その部屋に置かれているのはなんと!

「め、メイド服がこんなに沢山……」
「使用人が使う備品室なのですが、スペアとして一つのサイズにつき二十着は用意されているのですわ!」

 私のような小学生も着れるサイズから、メイド長のペトラさんも着れるとっても大きなサイズまで揃っています。
 しかもそれが洋服屋さんのようにハンガーに掛けて連なっており、無駄に広い部屋がそれで埋め尽くされているのでビックリです。

「それで……私はこれを?」
「ふっふっふっ、わたくしにお任せ下さいませ。着させてあげますわ!」
「い、いやあああ!? じっ、自分で着れるからぁ! 脱がさないでぇ!」
「ぐっへっへへ、じゅるり」
「助けてっ、誰か!」

 鼻息荒く近付いてくるヒルデちゃんの顔を手で抑えつけようとしますが、小学三年生の身体では中学二年生に対抗出来ません!
 しかし私には救いの女神が居たのです。

「お呼びでしょうか。千佳お嬢様」
「ぺ、ペトラさああああああん!!」
「ひぃっ!? ど、どうしてペトラが此処に居ますのぉ!?」

 そうしてベアトちゃんがペトラさんに首根っこを掴まれ猫のように連れて行かれたのを確認してから、私は着崩れた服を一度直してからメイド服を手に取ります。
 これで落ち着いて着替える事が出来る……。
 あ、愛する天使メグちゃんのお願いなのでメイド服を着る事に拒否感はあまりありません。

「……これはどうやって着るんだろう? ボタンで留めるのかな?」
「お呼びでしょうか。千佳お嬢様」
「うわぉ!? ビックリしたっ!?」

 私の独り言に返事をしたのは、いつの間にか部屋に入って来て私の後ろに立っていたペトラさん。
 身長が大きい事もあって迫力が違うから、止めてよ!
 小学三年生にして心臓止まるかと思ったよ!

「それでは私が手取り足取り腰取り教えて差し上げますね」
「ベアトちゃんの時と事態が全く好転してない!?」

 ……あ、ペトラさんは特に意地悪する事も無くちゃんとメイド服を着させてくれました。
 着替えた後に写真を撮られた事はこの際気にしません。



「――いいよぉ! いいよお姉ちゃん! 次は上目遣いだよお姉ちゃん!」
「あ、うん……」

 だってメグちゃんによる撮影会が行われるのは目に見えていたんだもの……。
 拝啓ドイツのお友達を巡っているお父さん、お母さん。私は今笑えているでしょうか。
 メグちゃんがカメラを構えてから既に一時間、いつの間にかメイドさんたちやベアトちゃん、クリス、キャロルも参加しています。
 多分今の私は目のハイライトが消えていると思いますが、いつになったらドイツの事を教えてくれるんですか。
 私はいつになったら、メイド服を脱げるのですか……。

「お姉ちゃん、顔下がってるよ! ほら!」
「はい……」
「お嬢様! ピースですわ、ピース!」
「ぴーすぅ……」
「千佳! スカートを摘まんでカーテシーなのねん!」
「かーてしー……って何……?」
「千佳、俺と肩組んで撮ろうぜ!」
「メイド関係無いよね……」
「千佳お嬢様! この鼻眼鏡を着けて下さい!」
「それはもう……宴会芸だよ……」

 それから追加で三十分、私はメイド服で様々なポーズを取ったり本職のメイドさんたちとツーショットを撮ったり、クリスとシャロルにご奉仕しているシーンをやらされたりしましたとさ。
 とほほ、絶対ファンクラブの皆にも共有されるよぉ……。



「それではドイツ講座を始めますわ!」
「いえーい!」
「いえーい、なのねん!」
「いえーいだぜ!」
「いえーい……」

 ランチとお菓子の時間が過ぎて、嫌な思い出が詰まった学習室へとやって来た私たちの前で、教壇に立った丸眼鏡を装着したベアトちゃんの号令に声を上げます。
 残念ながら、誠に残念ながら私は未だにメイド服です。
 だって、だってメグちゃんが涙目になってお願いって言ってくるんだもん!
 嘘の涙だって分かっててもお姉ちゃんとしてはお願いを聞くしか無いんだよぉ!

「お嬢様方、ご当主様がお帰りになられました」
「あ、ドイツ講座終了ですわ!」
「始まっても無いのに……!?」

 こうしてドイツ講座は急遽中止となり予定よりも早く帰ってきたご当主、つまり私たちのお祖母ちゃんを出迎えに行く事になりました。
 どんなお祖母ちゃんなんだろ、と気になった私とメグちゃんは皆と共に玄関へ。
 そう、私はお祖母ちゃんに気を取られて忘れてしまっていたのです。

 ――今も私が、メイド服を着ている事に。

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