TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

こいつ、変態だ!

 様々な国の人々が行き交う国際空港の待合スペース。
 アリシアママに先導されてやってきたそこには、何処か見た記憶がある黒髪ポニーテールの女性が居ました。

「マナカ! お待たせシマシタ!」
「べ、別に待ってなど無いさ。そ、それでその、後ろの皆さんが」
「紹介シマスネ! 私の姉の家族デス!」

 どうやらアリシアママの知り合いらしく、私はその言葉に続いて自己紹介をすることにしました。

「諸弓千佳です。あの、何処かでお会いしたことありま」
「ぐはっ!?」
「ええええ!? どどど、どうしたんですかー!?」

 私が質問しようとすると、その女性は鼻から血を吹き出し綺麗なスーツを汚しながら床に倒れ込みました。
 空港の職員さんが急ぎ足でこちらへ向かっています。

「ああ、気にしなくて大丈夫デスヨ! いつものことナノデ!」

 と思ったらアリシアママにそう言われてそそくさと帰ってしまった。
 いや、鼻血出てるのは大丈夫じゃない気が……。

「ぐふぅ、我が生涯に一片の悔い無し……」
「大丈夫ですか!? アリシアママ、この人誰なの!?」
「誰って勿論、チカ達が通っている学園の理事長デスヨ?」
「……あ。何処かで見たと思ったら、パンフレットで」

 確か学園に入学する際に見たパンフレットの一頁目に写真が載っていたはずです。
 若いのに凄いなぁとは思ってたけど、こんな所で会うとは。

「って、理事長さん! 大丈夫ですか!?」

 私は自分の服に血が付くことも忘れて、理事長さんの身体を起こしました。
 意識はあるので待合のベンチに誘導して、少し顔を俯かせて私の手で鼻を指で摘みます。
 大丈夫かな、と理事長さんの顔を覗き込むと。

「上目遣いッ!! キュートで面倒見の良い千佳ちゃん、ヤバすぎるッ!!」

 そのギラギラした目に、思わず手を離して十歩程距離を取りました。



「本当にすみませんでした! 千佳ちゃんのご家族様にとんだご迷惑を」

 一度アリシアママにトイレに連れて行かれた理事長は血に汚れていない新しいスーツに着替え、鼻血が止まった状態で戻ってきました。
 理事長は先程とは打って変わって、キリッとした表情を見せています。

「い、いや、いいんですけど。大丈夫ですか学園長?」
「ありがとう千佳ちゃん。いやぁ生の千佳ちゃんは破壊力凄いね。抱き付いていいかな?」
「……お母さん、この人怖い」
「千佳ちゃんっ!?」

 理事長が思わずお母さんの背中に隠れました。
 まさか理事長さんがこんなに変態だったなんて……。

「今日はマナカも一緒に行くので、仲良くしてあげてクダサイ!」
「よろしくお願い致します。千佳ちゃん、よかったら私の隣の席に」
「お姉ちゃんは私とお母さんで守る!」

 尚も近付こうとする理事長にメグちゃんが立ちはだかります。
 妹に盾になってもらうなんて、お姉ちゃん失格だよ!

「ふぅ、理事長。節度ある距離感でお願いします」
「物凄い否定されてるっ!? わ、私何か悪いこと」
「マナカは変態ですカラ。仕方ありマセン」
「……ごほん。改めまして、今回の旅行のチケットを取らせて頂いた桜望さくらもち愛架まなかです。私も向こうに行く予定がありましたので、途中まで同行させていただきます」

 背筋が伸びた理事長はとても丁寧に挨拶をしてくれました。
 でも、初対面が最悪なのでどうやって覆らないような。

「お姉ちゃんを怖がらせないで!」
「恵ちゃん、私は千佳ちゃんファンクラブの出資者で」
「お姉ちゃん! 愛架さんの隣に座ろう!」
「手の平回った!?」

 まさかの愛する妹が敵になってしまった……。
 でもまぁ、ファンクラブのスポンサーなら少しは役得が無いといけないか。
 唯でさえプロマイドとかカレンダーとか、最近になっては千佳ちゃんマウスパッドまで作ってるみたいだし、結構お金使ってそうだもん。
 というか理事長はファンクラブが一杯グッズを作っていることを容認してるんだよね?

「理事長」
「愛架ちゃんで」
「……理事長」
「愛架ちゃんで」
「……愛架ちゃん」
「はい!」

 理事長改め愛架ちゃんの圧力に負け、名前で呼ぶことになりました。

「愛架ちゃん、ファンクラブのお金って大丈夫なのかな?」
「勿論。私はこう見えても資産家だからね。あれくらい軽いものさ」

 どうやら愛架さんはお金持ちみたいです。
 まぁ本人がいいならいいか。

「その内千佳ちゃんの全国ツアーライブをする位は大丈夫だよ」
「いや、しないから。……計画してないよね?」
「……ひゅーひゅー」

 下手な口笛でそっぽを向く愛架ちゃん。
 後でその計画取り消させないと、私が恥ずかしい!

「あ、そろそろ搭乗の時間デス! 皆行きまショウ!」
「そうだな。搭乗口はこっちだ、付いて来てくれ」
「いや、そっちは出口デスヨ」
「……冗談だ、今度は間違えない」
「そっちは国内線デスヨ」
「……案内してくれ」

 愛架ちゃん、どうやら方向音痴のようです。
 そんな性格のバラエティーが豊富な愛架ちゃんを加え、私達は飛行機へと搭乗するのでした。

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