TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

うごめけ理事長! 迫りくるチケット!

「――さてアリシア。飛行機のチケットはこれで良かったか?」
「ありがとうデス、マナカ」

 とある学園のとある部屋。
 金色の髪をポニーテールに纏めたアリシアと、その部屋の主である女性が話をしていた。

「それで、写真は持ってきたんでしょうね?」
「勿論デス」
「私のコレクションには私生活の千佳ちゃんが少ないからね。それにアリシアが秘密裏に撮影したものは誰も持っていない一級品」
「絶対に外にはバラさないで下さいヨ? 私がチカに怒られるのは嫌だからネ?」
「勿論だ。私の寝室に飾る事にするよ」

 犯罪すれすれ、いや殆ど犯罪な会話をする二人が手に持つのは数日後に出発する飛行機のチケットと写真のデータが入ったマイクロSD。
 それをお互いに交換し、アリシアはチケットの枚数を確認、もう一人の女性は自分の机にあるノートパソコンにSDを挿入して、数枚の写真を表示する。
 因みに、デスクトップの背景は千佳が今年の運動会で走っていた時の写真だったりする。

「ぱ、パジャマ千佳ちゃん、だと!? ぐへ、ぐへへへ」
「マナカ、いつか捕まりマスヨ?」
「捕まらないな、何故なら私は」

 写真を見詰める血走った目をアリシアへと向け、彼女はこう言い放った。

「私の名前は桜望さくらもち愛架まなか! この小中高一貫で桜餅学園の理事長にして、千佳ちゃんファンクラブゴールド会員だ!」

 彼女、千佳達が通っている学園の理事長である愛架はドヤ顔でファンクラブの会員カードを掲げる。
 それを見てアリシアは。

「そこまでチカが大好きなのに、どうしてお話しに行かないのデスカ? 理事長権限ならそれくらい出来そうデスガ」
「千佳ちゃんと話すなんて畏れ多い! 私は影で見守るだけでいいのさ」
「で、本音はナンデスカ?」
「いや、だって、何度かお話しに行こうとしたよ? でも、でもさ? いざ話すとなると何を話せばいいか分からないし、多分本物の千佳ちゃんに近付いたらそれだけで鼻血出す自信あるんだぞ?」
「……とんだチキンデスネ」

 愛架はこの桜餅学園の他にも複数の会社を持っている凄腕の経営者である。
 しかしその実、憧れのアイドルに手汗を濡らすチキンなのだった。

「で、でも、この機会で千佳ちゃんと話すんだ。ふぅ、もう緊張してきた」
「マナカも行くのでしたネ。では次は空港で?」
「ああ。アリシアは自分の家に一回帰らなくていいのか?」
「大丈夫デス。態々ロシアを経由するのも馬鹿らしいデスカラ」
「分かった。それでは千佳ちゃんによろしく伝えてくれ。いや待った。やはり私と千佳ちゃんの出会いはもっと運命的な」
「はいはい、分かったデスカラ。チカには内緒にしておきマスヨ」

 理事長室から出たアリシアは日本で暮らしていた時の旧友マナカが、異常な程に変態になっていた事を再度確認して溜め息を吐く。
 そして可愛い姪っ子チカを思い、こう呟いた。

「チカ。もしかしたらこの学園には、不審者がいるかもしれマセン……」

 冬休みの到来と共に、千佳へとやって来る新しい運命。

「マナカは置いておいて、久し振りに全員揃うのデスネ。楽しみデス」

 アリシアの手に握られた飛行機のチケットは七枚。
 そこに書かれたフランクフルト空港ドイツ行きの文字とスケジュールを千佳が知るのは、数分後の話。

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