TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

リンファ先輩に包み込まれる

 物部リンファ先輩は、五年生の転入生。
 親御さんの転勤について行く形で、私たちが住む街へとやってきたようです。
 性格は穏やかでマイペース、ゆっくり喋って語尾が伸びるというおっとり具合。
 少し大きめな細い縁の眼鏡はよくずれるようで、頻繁に掛け直します。
 眼鏡を掛けているのは単純に目が悪いため。

「皆、千佳ちゃんのファンクラブに入ってるんだねー?」
「そうですね。学校の女子生徒は殆ど入っているらしいです」
「桃ちゃんは物知りなんだねー。よしよしー」
「う、……ほぁぁ」
「桃ちゃんがリンファ先輩の毒牙に!?」
「……物部先輩、桃を離して」

 放課後の教室で、いつものメンバーへとリンファ先輩を紹介しました。
 皆いい子なのですぐに仲良くなって、一人ずつリンファ先輩の聖母のような母性に惹き込まれていきます。
 むむ、これは私のお姉ちゃんポジションが奪われる予感!

「ほら皆! 私が優しく包み込んであげるから!」
「きゅ、急にどうしたの、千佳ちゃん」
「ほらほら、愛ちゃん。お姉ちゃんの胸へ飛び込んでおいで!」
「え、えっと」
「ほらほらほら!」
「えいっ」

 まるでバスケのディフェンスのように腰を落として、両手を広げてジリジリと迫っていくと愛ちゃんが私の胸に飛び込んできてくれました。
 そして背中に手を回して、ぎゅ―っと抱きしめます。
 柔らかい感触をぐへへと味わっていると、私たち二人に影が差しました。
 好敵手、リンファ先輩の入場です。

「わー、私もぎゅーってするよー」

 まずい! と思ったときには既に時遅し。
 愛ちゃんを抱きしめている私ごと、リンファ先輩に包まれました。
 綺麗に膨らんだ柔らかさと、身体全体から溢れ出る母性が私たちを惑わせます。
 あぁ、リンファお母さん……。

「お姉ちゃんたちずるい! 私も混ざる!」
「花も!」

 そうしてやってきたメグちゃんと花ちゃんに、リンファ先輩は一度抱擁を解除してから、四人全員を包み込むように抱きしめ直しました。
 全員でほわぁと温泉に浸かったときのような吐息を漏らします。

「リラクゼーションやな」
「わ、私も」
「……桃は駄目」

 傍目で私たちを観察する湖月ちゃんと、リンファ先輩の甘い蜜に誘われようとする桃ちゃんを抱きしめて止める莉里ちゃん。
 まだファンクラブの子たちが残っている教室は、普段とは違った特異な空間へと生まれ変わります。
 リンファ先輩に抱きしめられ、目を線にして頬を緩ませる私を見たファンクラブの子たちは、次第に列を形成し始めました。

「あれー? 皆どうしたのー?」
「次お願いします!」
「私たちも抱きしめてもらっていいですか?」
「お姉さまのお姉さま……。えっと、リンファお姉さまとお呼びしてよろしいですか?」

 あれ、これ乗っ取られてない?
 恐るべき事態が発生したのかもしれない、それにリンファ先輩の母性に負けて、皆の前で蕩けちゃったし。
 ……でもぉ、落ち着くんだよねぇ。

「千佳ちゃん、すごく可愛い顔してるよ!!」
「柚梨ちゃん先生! 写真早く!」
「任せてください!……はい、撮れました! ぐふっ、これは鼻血ものですね」
「は~い、これも千佳ポイントで交換できるプロマイドにするで~」
「私、この前交換しちゃったよぉ! 欲しいなぁ」
「へへーん。我慢して貯めてきてよかった! 先生! 交換したい!」
「わ、わたくしもお願いしますわ!」
「拙者も!」

 なんだか周りが騒がしいけど、まぁいいやぁ。
 ……ふわぁ、おやすみぃ。



 ――その蕩けた千佳ちゃんプロマイドと、聖母リンファの胸で眠る千佳ちゃんプロマイドは、通常のプロマイドより割高のポイントで交換されるのであった。

「うふふー。私もファンクラブに入ったしー、プロマイド目指して頑張ろー」

 リンファ先輩がこの学校に馴染むまで、一日掛からなかった。

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