TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

三年生、ファンクラブ拡大中

 春。桜が満開に咲き誇り、次々と落ちていく花びらたちが新入生を迎えていく。
 今年は知り合いに新入生がいないので私たちはお休みだったはずですが、何故か新三年生の私が在校生代表として挨拶をすることになりました。
 去年は在校生の挨拶なんて無かったような……? いえ、気にしないでおきましょう。

「では千佳ちゃん、出番になりましたらお呼びしますので」
「あ、はい」
「原稿はちゃんと持ってますか?」
「持ってないです」
「……ど、どどどどうしましょう!? えっと、紙とペンを!」
「九重先生、落ち着いてください。アドリブで大丈夫ですので」
「さ、流石千佳ちゃんですね! でも、本当に大丈夫ですか?」
「はい。任せてください!」

 昨日はメグちゃんと花ちゃんと遊んでいて、正直さっきまで忘れてましたが、うん、なんとかなるでしょ!
 根拠はないけど!

「では、三年生諸弓さんから在校生の挨拶をお願いします」

 おっと出番だ。さっきまで校長先生が喋っていた、体育館の舞台に置いてある式台の元へと歩いていく。
 眼下にはうずうずと動きたがっている可愛い新入生たちと、後ろの方にはカメラやハンカチを片手に見守る親御さんたちが。
 沢山の人の前ですが、特に緊張することもありません。人生二回目を舐めんなよ!

「ご紹介にあずかりました、諸弓千佳です」

 そうして私の存在は、入学初日から新一年生たちに浸透していくのでした。



「いやぁ、さすが千佳ちゃんやな~」
「ん? 湖月ちゃん、どうかしたの?」
「千佳ちゃんの人気が凄いねって言ってたの。入学式で一年生たちの心を掴むなんて、流石千佳ちゃんだよ!」
「えへへ、それほどでも」

 どうやら確認した所、入学式があって三日が経った今日、既にファンクラブの噂を聞きつけた一年生の女の子たちから入りたいと希望があったそうです。
 それを一年生受け持ちの先生、この女性の先生もファンクラブメンバーだそうですが、その先生から九重先生に連絡が入り、更なる規模の拡大が始まりました。

「そういや、中学校に行った先輩たちが広める言うてたで」
「え」
「小学校じゃお姉ちゃんは収まらないからね!」
「商店街にもねぇねのファンクラブのメンバーさんいるよ!」
「あ、この前めぐるさんのお店に行った時、メンバーカードを自慢されましたよ」

 衝撃的な事実を並べてくる皆。
 メグちゃんたち新二年生もクラスにやってきて、徐々に集まってくるファンクラブの子たちも口々にファンクラブの拡大を教えてくれます。
 これはもう、収拾がつかないのではないでしょうか。

「というか、カードを作ってる九重先生が倒れちゃわない?」
「千佳ちゃん! 私の心配までしてくれるんですね!」
「あ、いたんだ」

 先生のはずなのに、ファンクラブの子たちと一緒に教室へ入ってきて完全に混ざってます。

「しかし心配はご無用です。今は他の先生方も手伝ってくれていますので、私の負担は少ないですよ」
「そうですか、なら良かったです」
「千佳ちゃん、天使すぎます!」

 九重先生の私への羨望が痛い。愛が重い。
 いえ、愛ちゃんは重くないですよ、頬を膨らませて睨まないで。

「えっと、それで今は何人くらいいるの?」
「なんぼやったかな~? 先生分かる~?」
「二日前に千人超えました」
「ほえっ!?」

 去年より倍近く!?

「流石千佳ちゃんやな」
「流石千佳ちゃんだね」
「お姉ちゃんだもん!」
「ねぇねさすが!」
「先輩、凄いです」
「もっともっと増やしますよ!」
「お姉さま流石ですわ!」
「千佳ちゃんすごーい!」
「……私が育てた」

 クラスにいるファンクラブの子たちが次々と褒めてきますが、もう慣れたものです。
 若干の照れを残しつつも、私はドヤ顔で佇みます。
 というかいつの間にか莉里ちゃんも来ています。
 逆だよ莉里ちゃん。莉里ちゃんは私が育てた。

「えっと、ファンクラブの子たちに何かお返しとかした方がいいかな?」
「おお! 握手会やな!」
「ツーショットのカメラ撮影とか!」
「一日デート券!」
「ねぇねと添い寝!」
「恵と花、ちょっとこちらでお話しましょうか」
「……千佳アイドル化計画」

 不穏な言葉を言わないでくれるかな莉里ちゃん。
 いや、ちょっと憧れはあるけどさ、手の届かない場所だよ私には。

「では五月に学内で握手会を行いましょう!」
「いつの間にか予定が立てられてる!?」

 このファンクラブも、いつか私の手の届かないものになりそうで怖いです。
 ……学校内のメンバーって確か四百人くらいいたような。
 全員じゃ、ないよね?

「肩、持つかな……」
「えっと、頑張ってください。千佳先輩」

 その後桃ちゃんに抱きついたのは、言うまでもありません。

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