TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

皆と共にお揃いを

 今年も最後の月がやってきました。
 寒さも厳しくなっており、制服とコートだけでは体調を崩してしまうので、数年前から使っているもこもこのマフラー、手袋を着用するようになりました。

「あっ」

 そんなある日、登校しようと手に取った手袋に、穴が開いていました。
 流石に長年使ったことと外に遊びに行く時にも着けていたことで、限界を迎えたのでしょう。
 靴下などであれば簡単な修繕が可能ですが、このもこもこの生地では難しいでしょう。

「どうしたのお姉ちゃん?」
「ちょっと、手袋が破けちゃって」

 私は穴が開いた部分をメグちゃんに見せるように持ちました。
 すると、話を聞いたお母さんが家事を中断してやってきます。

「長いこと使ってたものね。今度ショッピングに行きましょう!」
「うん。もっと大切に使ってあげればよかったな」
「お姉ちゃんはいつも大切にしてたよ! お姉ちゃんのせいじゃないよ!」
「ふふ、ありがと。メグちゃんは優しいねぇ」
「えへへー!」

 慰めてくれるメグちゃんを撫でて、三人で買い物の予定を立てます。
 ……そういえばメグちゃんも長い間使ってるよね。
 ここはお母さんに頼んでお揃いのものを買わせてもらおう!



「ってことがあったんだ」
「ええな~。うちも千佳ちゃんとお揃いほしいわ!」
「愛も欲しいよ!」
「そうだね。私も欲しいし、何か考えてみよっか」

 沢山の女の子たちに囲まれた休み時間、私たちはそんな会話を繰り広げます。
 しかし、お揃いと聞いてはファンクラブの皆も黙ってはいられません。

「わ、わたしもほしいです!」
「わたくしも、お姉様と!」
「わっちも欲しいでござる!」

 三人でお揃いが欲しかったのか、湖月ちゃんと愛ちゃんは少し機嫌が悪くなっています。
 なので、二人の耳元で囁きます。

「今度の休日、三人でお揃い探しに行こうね?」
「……! 約束やで!」
「うん! 楽しみにしてるよ!」

 二人の機嫌を治してから、私は考えます。
 皆が手を挙げるとなると、皆の保護者への迷惑とお金の掛かるものは却下。
 学校内で身に着けることができ、且つお金を掛けずに皆に行き渡るものってあるかな?

「うーん、何がいいかな?」
「はい! アクセサリーがいいです!」
「アクセサリーって一杯あるよね、何がいいかな?」
「ネックレスとか!」
「そんなの作れないよー!」
「あ、皆。お金の掛かるものは駄目だからね。お父さんお母さんたちを困らせてはいけません」
「流石、千佳ちゃん!」
「お姉さま、素晴らしいお考えですわ!」
「イエス、マイプリンセス」

 やめろ、忠誠を誓おうとするんじゃない。

「それなら、折り紙とかいいんじゃない?」
「でも直ぐ壊れちゃうよ」
「壊れにくいものってお金掛からない?」
「そうだよね。うーん」
「た、例えばだよ? ち、千佳ちゃんのもうは」
「逮捕!」
「千佳ちゃん警察だ、大人しく投降せよ!」

 私の毛を狙った変態な六年生の女の子は、同学年の女の子たちに何処かへ連行されていきました。
 千佳ちゃん警察ってなんですか。
 そしてそんな先輩たちと入れ替わるように、九重先生がやってきました。
 するとクラスにいる生徒たちが、私を含めて時計を確認します。
 あ、まだ時間あるのね。

「皆さん、集まってますね」
「九重先生。どうかしましたか?」
「ファンクラブの顧問として、ファンクラブの証を作りました! なので皆さんお渡しいたしますね」
「ええ!? いつの間に!?」
「空き時間にコツコツと、です」

 そうして九重先生から手渡されたのは、型紙で作られたメンバーカード。
 私の分には、会員ナンバー000と書かれています。
 顔写真などが載っているわけではありませんが、代わりに九重先生が丹精込めて描いたであろう、可愛い私のデフォルメイラストがあります。

「す、すごい!! 九重先生! 絵上手だったんですね!」
「ありがとうございます! 張り切って描いちゃいました」
「大事にします!」

 そうしてファンクラブ総勢四百名に配られたメンバーカードが、皆と私のお揃いという形に収まりました。
 皆、筆箱や制服のポケット、また家で厳重に保管しているそうです。
 ただ、変態の先輩が神棚に飾ったとお聞きしたので、今度止めてもらうように言わないといけません。
 神様は、私の恩人だからね!



「うふふ、千佳ちゃんに褒められました」

 そしてその夜、ファンクラブ特典として湖月ちゃんから渡された写真に頬擦りをする女性の姿があった。
 教員としての仕事とカード作りに励んだ彼女の苦労は、こうして報われていくのです。

「さて。新しく入りたいって数学の宮田先生が言ってましたね。もう一枚作りましょうか!」

 こうして、ファンクラブの拡大は始まるのであった。

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