TSカリスマライフ! ―カリスマスキルを貰ったので、新しい私は好きに生きることにする。―

夕月かなで

運動会!あーん合戦

 運動会の中でも一番特別感溢れるもの、そうそれは学校でレジャーシートを引いて、家族で食べる昼食です。
 中学生辺りからは皆、家族と一緒に食べるとか恥ずかしいっ!
 とか言い出すのでしょうけど、現在まだ小学生の私たちには関係ありません。
 去年のメンバーに莉里ちゃんと桃ちゃん、そしてその両親を加えた大所帯で、お父さんたちが事前に取っておいてくれた中庭のスペースへ座ります。

「待ちに待ったお弁当だ!」
「……まるでさっきまでの事が無かったかのような元気」
「な、なんのことか分からないね!」

 後ろは振り向かないスタイルなんです。
 さっき決めました。トイレで。

「おお~!相変わらずママたちの料理は美味しそうや!」
「吃驚しましたよ千佳先輩。まさか皆の家族で一つのお弁当を作るなんて」
「ふっふっふ、お母さん主導のスーパーデラックスでスペシャルなお弁当だからね!」
「千佳ちゃん、手伝ってもないのにそんなに威張っちゃ駄目だよ」

 輪の形になった私たちの中心には豪華なお弁当がお披露目しています。
 ピクニックやこういった行事の為にお父さんが購入した三段の重箱と、複数の保存容器も使っているようで、五家族分という大量の質量が私たちを攻め立てます。

 お弁当の定番から揚げに、ハンバーグからコロッケ、普段は弁当に入ってこない肉巻きも入っています。
 どれも美味しそうで、どれから手をつけるか迷うね!

「お姉ちゃん、からあげ美味しいよ!」
「ねぇね! オススメ!」

 から揚げを口にしたメグちゃんと花ちゃんが私に勧めてきます。
 お弁当のくせにカリカリさを保っており、衣の外側からでも肉のプリプリさ見えます。
 きっとこれを一口噛めば溢れる肉汁と油の濁流に呑まれ、鶏肉のサッパリさと味付けに加えられた柚子胡椒のアクセントが私を包み込むことでしょう!

「うま~!」
「美味し~! 愛、初めて食べたよ!」

 一方、肉巻きを食べた湖月ちゃんと愛ちゃんは垂れ下がる頬に手を当てて、美味しさを噛み締めています。
 アスパラガスや人参を軸に一つの芸術のように巻かれた豚肉、そして野菜と肉が互いに生み出す味のハーモニーは、一度ジューシー且つベジタボーな世界へ私を連れて行ってくれることでしょう!

「……やはりおかずと言えば、ハンバーグ」
「姉さん、こっちのコロッケも美味しいですよ」

 更に莉里ちゃんはハンバーグを、桃ちゃんはコロッケを食べては互いに食べさせ合っています。
 是非私も混ぜてほしい。
 ごほん、そのお母さんの特製ミートソースに絡められた牛肉ミンチの塊はしっかりと焼き上げられているものの、噛めば噛むほどその繊維のような隙間から肉汁が溢れ出し、口内を蹂躙するかの如く、舌の上を暴れ回ることでしょう!

 桃ちゃんが食べているコロッケは、作られてから数時間経っていると言うのにサクサクのホクホクです。
 その見た目だけで涎が出てくるような輝く衣の中に、ジャガイモを中心に牛肉と豚肉を混ぜたコロッケの具が詰まっています。
 衣の歯応えと、具の口に強く残る味わいは、この弁当の中でも随一のバラエティ性を見せてくれるでしょう!

「これは迷うなぁ……」
「千佳ちゃん、早く食べないと無くなっちゃうよ?」
「なんや千佳ちゃん、腹がペコちゃんやろ! はよ食べよ!」
「そうだね、料理は逃げないから全部食べよう!」

 私は箸を取ろうとします、が。
 見渡しても私の箸も、皿もありません。

「ねぇね! はい、あーん!」

 そんな私の疑問を置いていくように、花ちゃんがから揚げを私に差し出してくれました。
 可愛い妹からのあーん、これはもう食べて、花ちゃんまで食べてしまう他ありませんな!

「お姉ちゃん、あーん」

 私がから揚げを味わい、その美味しさに蕩けながら飲み込むと、次はメグちゃんがサラダに乗っていたゆで卵を差し出してきます。
 ありがとうと言いながら口へと含むと、ゆで卵に塗られたマヨネーズが口に広がります。

「ち、千佳先輩。ど、どうぞ」
「あーん、って言って!」
「な、なんでそんなの言わなきゃならないんですか!」
「いいじゃん! 一回だけでいいから! お願いします!」
「わ、分かりましたから土下座しないでください!ほ、ほら、あーん」

 桃ちゃんがコロッケを差し出してくれますが、どう見ても一口サイズじゃない。
 ここでそれを指摘するのもなんだと思ったので、箸を噛まないように気を付けながら、半分ほど齧り取ります。

「美味しいー!」
「こ、これを食べれば、わ、私も、間接……はむっ」

 私と桃ちゃんとでコロッケを味わっていると、次は愛ちゃんと湖月ちゃんがハンバーグを差し出してきました。
 どちらもハンバーグです。

「ち、千佳ちゃん。あーん」
「千佳ちゃん、あーんや!」
「ありがと!」

 幸いにも両方のハンバーグのサイズが小さかったので、連続で二人のハンバーグを口に入れて味わいます。
 おお、これまた美味!

 と、ここまでくれば私も期待してしまいます。
 最後の一人、莉里ちゃんにあーんをしてもらえれば、ここに私のあーんハーレムが完成するのだから!
 むふふと笑っていると突然背後から出てきた手が両肩を掴み、後ろ方向に引き倒されます。
 そして、私の視界に莉里ちゃんの顔が大きく映ります。

「……はい、千佳。あーん」
「あ、んッ!?」

 そう、それは某細長いお菓子を使ったゲームのように。
 莉里ちゃんは口で挟んでいた肉巻きを私の口へと持っていき、私の唇のギリギリで肉巻きを噛み千切りました。
 余りの光景に私は理解が追いつきません。
 えっ? 何が起きた?

「な、な、なななな!?」
「莉里ちゃん! 何やってんねん!」
「……大人の、あーん」
「何処で覚えてきたんや!?」

 とりあえず、よく分からないんだけど。

 今、死んでもいいくらいには幸せです。



「はッ!? あれは、さっきのは、り、莉里ちゃん! さっきのは!?」

 気を失っていた私が蘇り、直ぐ様莉里ちゃんに確認を取ろうと思い振り返ると。

「……ごめんなさい、ごめんなさい」
「反省や!」
「もう! 姉さんはズルいです!」
「莉里ちゃんはそこで反省だからね!」

 正座をして謝り倒す莉里ちゃんと、腕を組んで莉里ちゃんを叱る皆がいました。
 いや、お父さんお母さん、笑ってないで助けて。

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