最強のFラン冒険者

なつめ猫

エピローグ

 バスのブレーキ音と共に窓ガラスが砕け散乱する。
 そこで俺は目を覚ました。
 バスの中を見渡すと荷物などが転がっていて怪我人がいるように思われた。

 10分後、バスから全員が出て点呼を取ると10メートル以上もの崖から転落したにも関わらず怪我人は誰もいなかった。
 これは奇跡だと言わんばかりだった。
 電波が届かない場所にも関わらずすぐに警察や消防車などが駆けつけて俺達は助かった。
 俺達は、簡単に警察に事件のことを聞かれるとすぐに用意されたバスへ案内された。
 まるで事故があらかじめ分かっていたようだと警察は言っていたのを聞いて俺も不思議に思った。

 翌朝、ニュースで警察へ通報があったのが事故が起きる前に通報があったと報道されていた。
 通報者は女性らしいが公衆電話からだったらしい。
 目撃者の証言によるととても美しい黒髪の女性だったとニュースで流れていた。

 そういえばと思い出す。
 修学旅行前にそんな女性にあった事があった。
 女性には、この道は今日は良くないから通らない方がいいと言われて普段は通らない道から自宅に帰った日があった。
 ふとその時にあった女性かと思ってしまったが……俺は頭を振ってそれを否定した。
 どうせ空似だろう。
 日本人ならいくらでも黒髪なんているからなと俺はニュースを見ながら朝食を食べた。



「貴方、お帰りなさい!実験が認められたのね?」

「ああ、これで多くの人が救われる」
 ヤハウェの言葉にアルファが頷く。

「でも貴方の助手さんって女性なのよね?大丈夫なの?」

「え?疑って?」

「もう、気にするに決まってるでしょ!」
 ヤハウェの言葉にアルファが頭を振る。

「その心配はないよ。手伝ってくれた女性はすぐに居なくなってしまったからな」

「もったいないわね」
 ヤハウェの言葉にアルファは頷きながらそれでもと思う。

「きっと彼女はもっと大事な事があるんじゃないかな?だから俺に協力してくれたんだと思う。それにアレルやリメイラールも協力してくれるようだしな」

 私は二人の様子を見た後に時空間移動魔法で元の世界へ戻った。
 そして……。




 王城に戻った私を出迎えたのはメイド達であった。

「ユウティーシア様!今日は、各国の方々が集まる大切な日です。すぐにご用意をしてくださいませ」
 私は傍付きとメイドにより着飾られた。
 そして夜会場に続く道で、あの男に出会った。

「…ロウトゥ……」
 私の言葉を聞いて彼は、寄りかかったまま私へ視線を向けてきた。
 寄りかかるのを止めた後、彼は私へ一礼してくる。

「アリス皇女殿下の母君とユリアの村を不の因果から解き放ってくれた事を感謝する」
 私はその言葉を聞いて驚いた。
 彼には事象に干渉した後の記憶が残ってることに。
 記憶が残ってるのは私が神衣契約した人に限られるのに。

「ククク、貴女のその顔を見られたのは行幸。ここまでやられるとはさすがにこちらの想定外でしたから」
 それだけ言い残すとロウトゥは、その場から姿を消した。
 まったくとことん得体の知れない男だと言う事だけ私は理解した。

夜会場に続く部屋に入ると、すでにクラウス様が部屋の中で待機していた。
そしてその横では退屈そうにしていた娘が私に気が付くと走ってくる。
私は屈んで娘を抱きしめる。

「お母様!今日は、お母様の騎士だったレオナさんとか来るの?」

「ええ、ヤハウェ。今日はレオナと会えるわよ?でもあまり色々聞き出したら駄目よ?」
 そう色々黒歴史がある。
 だからあまり聞き出されると母親の威厳が崩れてしまう。

 そうしているとクラウス様が近寄ってくる。
 どうやら私達の入場の時間が近づいてきたようだ。

 娘を抱きながら夜会場へ通じる通路を歩きながらホールに入ると多くの視線が私達に注がれた。
 そこには今まで出会った人達が居る。
 コルクやアリアを筆頭としたセイレーン連邦の方々やお姉さま!と抱きついてくる某国の皇女様に海洋国家ルグニカのグランスを筆頭とする元奴隷商人の人やレオナにその同僚のアリーシャやパステルの顔も見える。

 そしてアリス皇女殿下にアリス皇女殿下の付き人であるユリアや事象を変換させて救った事で生きる可能性を生み出したカリナ・ド・ヴァルキリアスも居る。

 私は多くの方を見渡していくと一角にエメラスやその取り巻きを見つけた。
 どうやらエメラスは世界が改変された事、惑星として作り上げられた世界アガルタにおいて新しい大陸を発見したらしく、すでにエルアル大陸と名前をつけたらしい。
 そして国を作ると今回は出資金を各国に頼むために出席したらしい。
 たくましいと言うか何というか……。

「ユウティーシア、君の話を皆が待っているよ?」
 クラウス様の言葉に私は頷く。
 そう今日から世界は少しだけ変わる。

「皆様、私の呼びかけにお集まりいただきましてありがとうございます。今回、私達はお互いの国をより良い方向へ持っていくために全ての国で国同士の連帯を強めて行きたいと想いました。
 そこで私はこの世界に住まう全ての国々から人種差別、奴隷制度を廃止し各国お互いが助け合う組織を作る事を提唱したいと思っております」
 私は一呼吸置いて組織の考えていた組織名称を発言しようとしたところで。

「お母様!国連だよね?」
 と胸に抱いていた娘のヤハウェに言われてしまう。

「……え、ええ……」
 とても微妙な感じで娘に宣言されてしまったけど、多くの拍手と賛同が得られた事もあって私はそれでいいかと思う。

 

―――まだまだ……私達、人間の冒険は始まったばかりなのだから。



 

コメント

  • ノベルバユーザー255476

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