最強のFラン冒険者
遥かなる天秤
「貴様の攻撃が当たるのは良しとしよう。だが何故、私に干渉するほどの力が貴様にある?どうしてだ?外に戦ってる貴様の仲間連中と力を共有してると言ってもそれは個人の力を数万倍程度に増幅したに過ぎないだろう?我の力は……神威は今まで我の信者が虐殺してきた数億人の人間そして現存する信者数十億人分の力がある。なのに何故、我に匹敵するほどの力を貴様は持っている?」
「長生きしてる割には……違いますね。ヤハウェ、貴女こそ人間という存在を理解していない。誰かから奪った力が完全な力だと思っているのですか?」
「なんだと?」
「私は、たくさんの人と出会って会話して気がついたのです。人は理解しあう事で誰もが想像できない力を発揮する存在だと言う事を。だから奪って奪って手に入れた力が十全たる力だと思うのは……」
私は太刀を小太刀に変化させる。
そして言葉を選んで発言する。
「それこそ、傲慢だと私は思うんです」
「ククククク、ハハハハッハハハ。なるほど、どうやら貴様の使ってる神威と私が真似た神威は別物のようだ。なるほど……貴様は以前、私が言った力を本当の力を手に入れたのだな」
「本当の力なんて存在しません。この力は……。誰かを守りたい。未来を守るため。好きな人を守るため。大切な誰かを守るため。そのための力です!」
私の言葉にヤハウェの表情が歪む。
「どうして貴様は我と同じ存在に関わらず、そこまで人間を肯定的に受け止める事ができるのだ!!」
ヤハウェは叫びながら肉薄してくる。
振られてくる白銀の長剣を小太刀で弾きながら目まぐるしく私とヤハウェの立ち位置が変わっていく。
「我も人間をずっと見てきた。だが、人間は誰かを貶める事を平気で行いその結果、自ら滅んだ。大陸を消滅させた結果を我に押し付けてな!」
「!?」
「そうだ、我は元は人をずっと見守ってきた。その結果がなんだ?高次元存在の力が欲しいからと我を無理矢理降臨させた結果、我に願ったことはなんだ?願ったことは自分の存在を引き上げる為だけを、あの愚かのアルファは願ったではないか?」
「……つまり大陸を消滅させたのは……」
「そうだ、アルファの願いを叶えた結果に過ぎない。あの者はこの娘の体を開放するより自己の保身に走ったのだ」
「……」
「見てみるか?我が地球に来た経緯を……何故、我がこれほど離れてる惑星に来たのかを」
ヤハウェはそれだけ言うと私から視線を離して長剣を持っていない左手で音を鳴らした。
そして漆黒の世界の色合いが変化しそこには石造りの町並みが広がっていた。
「そうだな……我は地球に召還されたのだ。愚かな者どもによってな」
光景が私の目の中に飛び込んでくる。
権力者たちが作り上げた教会システム、その神として曖昧な儀式の上に召還されたのがヤハウェであった。ただ、特別の力を持たない人間にとって高次元存在であるヤハウェを見る事は彼らには不可能であった。
それでも神として偶像として召還されたヤハウェは彼らの神として御神体として存在した。
だがそれは決して素晴らしい者ではなかった。
何故ならキリスト教と言うのは権力者が民衆を統率し洗脳するための道具に過ぎなかったからだ。
権力者が自分たちの力を増大させるために、自分たちの幸福を追求するために邁進させるための物に過ぎなかった。
ヤハウェは、そんな事は望んではいなかった。
何度も彼らに説いた。
だが彼らにその言葉が通じる事はなかった。
何故なら彼らは神という存在を信じていないからだ。
多くの血が流れた。
多くの命が失われた。
自分たちの権力を求めるために、そのためだけに赤十字軍を作り自分達と違う宗教を弾圧し同じ人間だった人間を虐殺しそれを神の為だと言い、言い訳をし自分達の行いから目を背けて邁進した。
長い長い長い年月は、ヤハウェが人間を見限るには十分な年月であった。
「……ヤハウェ。貴女は後悔しているのですか?」
「後悔……そうか、後悔か……たしかに我は後悔しているのかも知れないな。最初から人間という存在を消滅させておけばここまで問題は大きく成らなかったかも知れないからな」
「貴女は、本当は人を……」
「そうだな、だが……」
振り返ってきたヤハウェの表情を見て私は息を飲んだ。
そこにはもう決断した表情が浮かんでいた。
言葉ではもう止められない。
私とヤハウェは互いに距離を置く。
「貴女は、理想に裏切られた。だから全てを消滅させようとした……そうではないのですか?」
私の指摘に、ヤハウェは吐き捨てるように語り掛けてきた。
「そうだ、この体を魂をヤハウェと呼ばれたこの女を帰してやるから手伝えと命令した時、希望に満ちたアルファの顔は傑作であった。自分が集めた人間から作られた神核が全てを無にするトリガーになると理解もせず考えもせず活動したその姿は……我と同じく滑稽で愚かな者であったよ」
私は、ヤハウェの言葉に唇を噛み締める。
結局、全ては些細な行き違いで生まれた歪みが生み出した物に過ぎなかった。
結局、誰もが加害者であり被害者でもあったのだ。
「私は、全てを終わらせます」
そう、もうこんな事は終わらせないと行けない。
「いいだろう。貴様と我が力どちらが上か決めよう」
ヤハウェから放たれた無数の光の玉を私が展開した空間の断層が飲み込み消滅させていく。
転移した先で私が振るった小太刀を、ヤハウェは長剣で受け止める。
放たれた空間振動を、小太刀から変化させた蒼穹の弓の波動により相殺した。
「やはりな……」
それだけヤハウェが言うとその力が数千倍に跳ね上がるのを私は感じた。
「―――ツ!」
私は転移神術でその場から飛びのくと同時にそこには虚無が存在していた。
「やはり防げぬか?」
「一体、何を……?」
私はヤハウェの姿を見て理解してしまった。
「視て理解したか?我が信者を全員、その存在を食らっただけだ。浅ましく自らの分も弁えず他者を虐げ排斥し押し付けた我が信者の魂、命、存在を食らっただけだ。貴様を殺すにはこの方法しか考えつかなかったが仕方あるまい?」
「それは……間違っています。誰かを犠牲にして何かをするなんて間違っています。たとえどんな場合があったとしてもそれは……それはとても悲しく間違ってる事です!クラウス様!!」
私の言葉に呼応するかのように、周囲にクラウス様、エメラス、アリア、コルク、レオナが転移してくる。
クラウス様が私につけたストーカー魔術もとい転移魔術。
それは私がクラウス様を必要とした時に発動する魔術。
外の世界と隔絶されている神域であっても外から干渉することが唯一可能な魔術。
「それが貴様の源泉か?それが貴様の力の源か?それこそが貴様の……」
「貴女は勘違いしています」
私は、世界と隔絶されていた間の情報を神威を通して共有する。
「仕方ありませんね。でも必ず戻ってきてください」
私はアリア・スタンフォールと手を繋ぐ。
「分かったよ、アンタには仮を貸しておいてやるよ。だから必ず戻ってこいよ!」
エメラスが私とアリアが繋いだ手の上に手を置いてくる。
「ユウティーシア、後は任せた。だけどひとつだけ言っておいてやる。お前の帰りを待ってる奴はたくさん居るって事だけは忘れるなよ?」
私はコルクの言葉に頷く。そしてコルクはエメラスの手の上に自身の手を載せてくる。
「ユウティーシア殿、また戻って来られましたら旅を致しましょう。ですから必ず戻ってきてください」
レオナがコルクの手の上に手を載せてくる。
「クラウス様……」
「ユウティーシア……」
私は一度だけ近づいてきたクラウス様に口付けをしてもらった後に、私は彼に言葉を紡ぐために口を開く。
「私は必ず戻ります。ですから……待っていてください」
「分かった。だから必ず戻ってこい。ユウティーシア」
私はクラウス様の言葉に頷き、本来の力を解放する。
「精霊神化!」
私は言葉を紡ぐ、
発動するのは世界を構成する元素であり私達の魂の色・
”火”、”水”、”土”、”風”、”闇”、”光”
全ての元素の力と心が集まり重なり本来の事象すら改変する力となる。
私達が融合した姿は、今までのように成長した姿ではなく私本来の姿であった。
黒髪、黒眼の本来の私、ユウティーシアの姿。
そして手には神器たる武器すら所持していない。
でも、私には分かる。
自分の力の本来の使い方が。
「世界の破壊」
私は叫ぶ。
それにともない、ヤハウェの神域が崩壊していく。
「―――貴様、何をした?一体何を?」
事象変化を理解できずに私へ問いかけてくる。
私はその問いかけに微笑みで返す。
「なるほどな……それが貴様が求めるものか……」
世界が白く染め上げられていきヤハウェが作り上げた神域が消滅した。
「長生きしてる割には……違いますね。ヤハウェ、貴女こそ人間という存在を理解していない。誰かから奪った力が完全な力だと思っているのですか?」
「なんだと?」
「私は、たくさんの人と出会って会話して気がついたのです。人は理解しあう事で誰もが想像できない力を発揮する存在だと言う事を。だから奪って奪って手に入れた力が十全たる力だと思うのは……」
私は太刀を小太刀に変化させる。
そして言葉を選んで発言する。
「それこそ、傲慢だと私は思うんです」
「ククククク、ハハハハッハハハ。なるほど、どうやら貴様の使ってる神威と私が真似た神威は別物のようだ。なるほど……貴様は以前、私が言った力を本当の力を手に入れたのだな」
「本当の力なんて存在しません。この力は……。誰かを守りたい。未来を守るため。好きな人を守るため。大切な誰かを守るため。そのための力です!」
私の言葉にヤハウェの表情が歪む。
「どうして貴様は我と同じ存在に関わらず、そこまで人間を肯定的に受け止める事ができるのだ!!」
ヤハウェは叫びながら肉薄してくる。
振られてくる白銀の長剣を小太刀で弾きながら目まぐるしく私とヤハウェの立ち位置が変わっていく。
「我も人間をずっと見てきた。だが、人間は誰かを貶める事を平気で行いその結果、自ら滅んだ。大陸を消滅させた結果を我に押し付けてな!」
「!?」
「そうだ、我は元は人をずっと見守ってきた。その結果がなんだ?高次元存在の力が欲しいからと我を無理矢理降臨させた結果、我に願ったことはなんだ?願ったことは自分の存在を引き上げる為だけを、あの愚かのアルファは願ったではないか?」
「……つまり大陸を消滅させたのは……」
「そうだ、アルファの願いを叶えた結果に過ぎない。あの者はこの娘の体を開放するより自己の保身に走ったのだ」
「……」
「見てみるか?我が地球に来た経緯を……何故、我がこれほど離れてる惑星に来たのかを」
ヤハウェはそれだけ言うと私から視線を離して長剣を持っていない左手で音を鳴らした。
そして漆黒の世界の色合いが変化しそこには石造りの町並みが広がっていた。
「そうだな……我は地球に召還されたのだ。愚かな者どもによってな」
光景が私の目の中に飛び込んでくる。
権力者たちが作り上げた教会システム、その神として曖昧な儀式の上に召還されたのがヤハウェであった。ただ、特別の力を持たない人間にとって高次元存在であるヤハウェを見る事は彼らには不可能であった。
それでも神として偶像として召還されたヤハウェは彼らの神として御神体として存在した。
だがそれは決して素晴らしい者ではなかった。
何故ならキリスト教と言うのは権力者が民衆を統率し洗脳するための道具に過ぎなかったからだ。
権力者が自分たちの力を増大させるために、自分たちの幸福を追求するために邁進させるための物に過ぎなかった。
ヤハウェは、そんな事は望んではいなかった。
何度も彼らに説いた。
だが彼らにその言葉が通じる事はなかった。
何故なら彼らは神という存在を信じていないからだ。
多くの血が流れた。
多くの命が失われた。
自分たちの権力を求めるために、そのためだけに赤十字軍を作り自分達と違う宗教を弾圧し同じ人間だった人間を虐殺しそれを神の為だと言い、言い訳をし自分達の行いから目を背けて邁進した。
長い長い長い年月は、ヤハウェが人間を見限るには十分な年月であった。
「……ヤハウェ。貴女は後悔しているのですか?」
「後悔……そうか、後悔か……たしかに我は後悔しているのかも知れないな。最初から人間という存在を消滅させておけばここまで問題は大きく成らなかったかも知れないからな」
「貴女は、本当は人を……」
「そうだな、だが……」
振り返ってきたヤハウェの表情を見て私は息を飲んだ。
そこにはもう決断した表情が浮かんでいた。
言葉ではもう止められない。
私とヤハウェは互いに距離を置く。
「貴女は、理想に裏切られた。だから全てを消滅させようとした……そうではないのですか?」
私の指摘に、ヤハウェは吐き捨てるように語り掛けてきた。
「そうだ、この体を魂をヤハウェと呼ばれたこの女を帰してやるから手伝えと命令した時、希望に満ちたアルファの顔は傑作であった。自分が集めた人間から作られた神核が全てを無にするトリガーになると理解もせず考えもせず活動したその姿は……我と同じく滑稽で愚かな者であったよ」
私は、ヤハウェの言葉に唇を噛み締める。
結局、全ては些細な行き違いで生まれた歪みが生み出した物に過ぎなかった。
結局、誰もが加害者であり被害者でもあったのだ。
「私は、全てを終わらせます」
そう、もうこんな事は終わらせないと行けない。
「いいだろう。貴様と我が力どちらが上か決めよう」
ヤハウェから放たれた無数の光の玉を私が展開した空間の断層が飲み込み消滅させていく。
転移した先で私が振るった小太刀を、ヤハウェは長剣で受け止める。
放たれた空間振動を、小太刀から変化させた蒼穹の弓の波動により相殺した。
「やはりな……」
それだけヤハウェが言うとその力が数千倍に跳ね上がるのを私は感じた。
「―――ツ!」
私は転移神術でその場から飛びのくと同時にそこには虚無が存在していた。
「やはり防げぬか?」
「一体、何を……?」
私はヤハウェの姿を見て理解してしまった。
「視て理解したか?我が信者を全員、その存在を食らっただけだ。浅ましく自らの分も弁えず他者を虐げ排斥し押し付けた我が信者の魂、命、存在を食らっただけだ。貴様を殺すにはこの方法しか考えつかなかったが仕方あるまい?」
「それは……間違っています。誰かを犠牲にして何かをするなんて間違っています。たとえどんな場合があったとしてもそれは……それはとても悲しく間違ってる事です!クラウス様!!」
私の言葉に呼応するかのように、周囲にクラウス様、エメラス、アリア、コルク、レオナが転移してくる。
クラウス様が私につけたストーカー魔術もとい転移魔術。
それは私がクラウス様を必要とした時に発動する魔術。
外の世界と隔絶されている神域であっても外から干渉することが唯一可能な魔術。
「それが貴様の源泉か?それが貴様の力の源か?それこそが貴様の……」
「貴女は勘違いしています」
私は、世界と隔絶されていた間の情報を神威を通して共有する。
「仕方ありませんね。でも必ず戻ってきてください」
私はアリア・スタンフォールと手を繋ぐ。
「分かったよ、アンタには仮を貸しておいてやるよ。だから必ず戻ってこいよ!」
エメラスが私とアリアが繋いだ手の上に手を置いてくる。
「ユウティーシア、後は任せた。だけどひとつだけ言っておいてやる。お前の帰りを待ってる奴はたくさん居るって事だけは忘れるなよ?」
私はコルクの言葉に頷く。そしてコルクはエメラスの手の上に自身の手を載せてくる。
「ユウティーシア殿、また戻って来られましたら旅を致しましょう。ですから必ず戻ってきてください」
レオナがコルクの手の上に手を載せてくる。
「クラウス様……」
「ユウティーシア……」
私は一度だけ近づいてきたクラウス様に口付けをしてもらった後に、私は彼に言葉を紡ぐために口を開く。
「私は必ず戻ります。ですから……待っていてください」
「分かった。だから必ず戻ってこい。ユウティーシア」
私はクラウス様の言葉に頷き、本来の力を解放する。
「精霊神化!」
私は言葉を紡ぐ、
発動するのは世界を構成する元素であり私達の魂の色・
”火”、”水”、”土”、”風”、”闇”、”光”
全ての元素の力と心が集まり重なり本来の事象すら改変する力となる。
私達が融合した姿は、今までのように成長した姿ではなく私本来の姿であった。
黒髪、黒眼の本来の私、ユウティーシアの姿。
そして手には神器たる武器すら所持していない。
でも、私には分かる。
自分の力の本来の使い方が。
「世界の破壊」
私は叫ぶ。
それにともない、ヤハウェの神域が崩壊していく。
「―――貴様、何をした?一体何を?」
事象変化を理解できずに私へ問いかけてくる。
私はその問いかけに微笑みで返す。
「なるほどな……それが貴様が求めるものか……」
世界が白く染め上げられていきヤハウェが作り上げた神域が消滅した。
「ファンタジー」の人気作品
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