最強のFラン冒険者

なつめ猫

人間 VS 偽りの神

「ばかな……転生させた人間が私たちに歯向かうなど想定外だ。こんな事がありえるわけが……貴様一体何をした!?」
 アルファは、すさまじく動揺しており私に叫んでくる。
 アルファの周囲にいる熾天使達は、アルファのその行動に驚いているようで成行きを見守ってるように見える。

「……何をしたですって?アルファ、貴方こそ何を私達にした仕打ちを忘れたんですか?神核を作るために多くの人を殺害してそこから得られる人を構成するエネルギーを集め力にしようとしたじゃないですか?」
 私の言葉に、アルファはようやく気がつき私を睨み付けてきた。

「そうか!草薙友哉、貴様が!我々が2000年以上に渡り集めてきた物を奪いとっていったのだな!」
 その言葉に私は肩を竦める。

「奪い取って言ったとは心外です。そちらのセキュリティが甘いからです。それに……私利私欲で他者を傷つけて手に入れた物を自分達の物のように言うなんて頭おかしいんじゃないんですか?」

「き……き……きさま……言うに事を書いて神に向かって……頭がおか……おかしいだと!?」
 さらに私は頭を振る。

「やれやれです。煽り耐性も無いんですか?それなのに交渉役するとか笑っちゃうんですけど!クスクス」
 私は煽りつつ、空間に断層を作る。
 作られた断層にアルファから放たれた空間振動刃が飲み込まれ霧散する。

「なんだと!?」

「口では勝てないから手が出たんですか?本当に身勝手で前からアルファ事は気にいらなかったんですよね」

「―――貴様は殺す!……くっ!?」
 アルファの宣言と同時に、ノーチラスからの砲撃がアルファの近くに直撃貫通し後方の神兵をなぎ払っていく。

「まさかアレは!貴様……一体……どこの世界に転生していた!?」

「さあ?馬鹿正直に教える必要があるのですか?」
 私は話しながらも蒼穹の翼を背中に展開する。
 座天使級の天使達から放たれた光球が数千の数、私や船体に向かってくる。

 両手の二刀流小太刀を蒼穹の弓に変換する。
 飛来してくる光球に蒼穹の弓の弦を引いて射線軸を合わせる。

「射抜け!蒼穹の矢」
 絞られた弦から開放された不可視の矢が波動となって周囲の空間をなぎ払う。
 巨大な閃光と爆発が周囲を覆い座天使級からの攻撃を全て相殺するだけではなく座天使、大天使級の神兵も消滅させていく。

「な……ん……だと!?たった一撃で……三千近くが消滅だと?そんな馬鹿な?やつには神核は見当たらないはずなのに何故だ?」

「アルファ!今はそれより奴を殺す事が最優先事項だろう。あれはマズい、それにあの船は星間航行能力も有してるはずだ」

「―――っ!?ガブリエル!そんな事は分かっている!!」
 アルファに話しかけた熾天使ガブリエルが、その手に3メートル近い巨大な炎のツルギを顕現させた。
 ほかの熾天使も私を見ながら武器を顕現させていく。
 不可視の風の弓に、金色に光る黄金の弓を持つもの。
 凍てつく氷の刃の刀身を持つ者に華麗に装飾された拳銃を持つ熾天使や漆黒の杖を持つ者もいる。

 私は、弓を消して蒼穹色をしたグロッグを作り出し左手に持ちながら右手には蒼穹色をした刀を編み出し握る。

「物質生成、変換能力まで持つとは、錬金スキルでも得たのか?」
 私に肉薄してきた熾天使ガブリエルがそのツルギを私に振るいながら語りかけてくるけど……。

「申し訳ありませんが、彼方の相手は私じゃないんですよ?」
 私の言葉に初めてガブリエルの表情が歪むと、それと同時に声が聞こえてくる。

「ユウティーシア殿!いきます。神威!!」
 レオナの言霊と同時に私とレオナ以外の世界が時が凍りつき、私の体から分岐したもう一人の私とレオナが混ざりあう。私の力はレオナの器を満たし神器と貸す。
 空間を支配していた物質を食らい尽くし体の再構築を行い周囲の元素を変換し水の竜巻がその場で弾ける。
 そこには蒼穹の髪と瞳をしたレオナが存在していた。
 レオナの体が存在が基礎として編みこまれた為か腰に携えている透き通るような刀を抜く仕草は私をベースとしていた神衣より遥かに優雅でいて洗練されている。
 世界が動きだすと同時にレオナの姿が消える。
 そして、私とガブリエルの間に転移神術で移動してくると紫電を纏った氷結刀身で、ガブリエルのツルギを受け止める。

「貴様は!?」

「某は海洋国家ルグニカ騎士団所属レオナ!」
 レオナはガブリエルのツルギを巧みに捌き弾くと数百に及ぶ氷結の槍を形成しガブリエルに向かって放つ。それらをガブリエルが炎を纏って消そうとする。

「くっ!?何故、消しきれない?」
 ガブリエルは、飛来する氷結の槍を消滅させる事ができずに被弾していくのが見て取れる。単分子構造から作られている水系の亜種魔術でありその上位でもある氷結系魔術、さらに魔術を超える魔法すら越える神術の領域の技。
 それをガブリエルは理解していない。

 ガブリエルの窮地を見て白い銃身を持つ熾天使が近づこうとした所で

「勝手に先走るんじゃないよ!ぶっつけ本番だけど行くよ!神威!!」
 エメラスが発した言霊が世界を、そして時すら停止させる。
 漆黒の闇が周囲を覆い私とリンクする。
 リンクした私の音素として、そして人としての魂の一部が分離しエメラスを主人格として融合し再構成されていく。
 編みこまれていくのは漆黒の闇色の神器たる銃身。
 そして、エメラスの肉体情報をベースに私の本来持つ力が彼女に加わる。
 髪と瞳の色が蒼穹に染まり彼女の周囲に蒼穹の蒸気が生まれる。
 そして神威化が完了すると同時に世界が砕けエメラスがその姿を現す。
 すでに3人神威化した事で互いの知識や経験、戦闘技術が遅延劣化ゼロで共有されている事で周囲の戦況状況の把握だけに留まらずお互いの力を急速的に高めあっていくのを感じる。
 それは2人だけの神衣だけでは感じたことの無い力。

「3人だけの同時並列神衣でこれだけの力を……」
 私は自分の身が纏う力を満ちてくる力を感じて驚いてしまう。
 その力は2人だけの時の数十倍、数百倍の力を感じる。

 脳裏にはエメラスが打ち出した重力子弾が、白い銃身を持つ熾天使の翼を打ち抜いてる姿が映し出された。

「まさか!ウリエルの光の翼を打ちぬける存在がいるだと?」

「ラファエル、浮き足だつな!しかし……これはどういうことだ?」
 私は彼らの言葉を聞きながら考察する。

(ユウティーシア、どうやら彼らは作られた時に属性と名前のコンセプトを持たされて作られたようです。おそらくそこに打破する方法があるのでしょう)

 ティアの言葉に私は頷く。
 すでに後方からのはコルク、アリア、クラウス様の気配を感じる。

 思い通りに行かずに私を睨みつけながら攻撃を仕掛けてくるアルファに転移で近づくとその体に小太刀で切りつけた。

「…くうっ!こんな馬鹿な事があっていいのか?神と戦うだと?貴様は……」
 私は左手で握っていた拳銃を回転させるとアルファを睨みつけた。

「知っていますか?相手を傷つけていいのは、傷つけられる覚悟のある奴だけなんですよ?」

 私はアルファに向けて宣告した。



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