最強のFラン冒険者

なつめ猫

神衣 VS 熾天使

 ―――神衣化の状態では、人間の細胞は音素に書き換えられる事から宇宙空間で生身で戦っても死ぬことはない。メディデータは、精神エネルギーと精神核が主成分で作られており酸素を必要としない。よって生身でも宇宙空間で死ぬことはない。

「……え?」
 つまり生身で死ぬのは私だけ?他の人は生身でも問題ないと……?
 メディデータすごいです。
 宇宙服無しで生きていけるとかすごいんですけど。

「頭上のモニターに、3次元グリッド座標としてを敵の陣形を映し出します」
 管制システムを見ている男からの声がブリッジ内に響き渡る。
 それと同時に頭上のモニターに敵の陣形が表示されていく。
 私はそれを見ながら、草薙友哉の行動を見ていた時に得た知識と照らし合わせていく。

「鶴翼の陣ですね。相手は、敵対する相手を誘い込んで包囲殲滅する作戦をとっているようです」
 私は草薙友哉の知識から見繕った中でこれだと思った物を伝える。

「なるほどな」
 私の言葉を聞きながら頭上に表示されている敵の陣形をクラウス様は見ていると。

「神威の試運転には丁度いいかもな。エメラス、中央部に艦を突撃させ相手にわざと包囲させ中心部から神威化した高火力で敵を殲滅蹂躙しそのまま次元移動を行う作戦というのはどうか?」
 作戦を立案しているクラウス様を見ながら私はアイテムボックスからこっそり旅の途中で購入していたお菓子を食べて英気を養う。

 ―――生体兵器との接触まであと僅かです。これよりノーチラスは戦闘状態に移行します。

 ブリッジ内に音声が響き渡ると同時に壁が反転して巨大なスクリーンが現れていく。床もスクリーンになり外の宇宙の様子が直接見れるようになる。

 ―――全方向モニター起動しました。これより兵装を開放します、乗員は速やかに各セレクションに移動してください。
エンジン内圧力上昇、タキオン粒子からのエネルギーを精神エネルギーに変換します。次元相転移エンジンを起動を確認。主兵装への動力路を開きます。

敵までの距離……、1分後に接触します。
乗員は移動速度の減速に備えてください。

 前面に新しく作られたモニターには、見渡す限りドミニオン級生体兵器の姿が表示されている。

「しくじるんじゃないよ!攻撃開始!」
 エメラスの言葉と同時に男たちは、自分達の前に座っているパネルを操作していく。

 モニター上では、ドミニオン級の巨人が弾け駆逐されていく様子が見て取れる。
 そこで3連主砲から放たれた砲撃を受け止めた存在複数、モニター上に表示された。

 輝く光の翼を持つ人と変わらない存在。
 そして、その中には私を転生させたアルファの姿もあった。

「敵の照合を開始。確認できましたぜ!一階級生物兵器:熾天使セラフと表示されていますぜ」
 男の言葉がブリッジ内に響き渡るが、それよりも私は彼らの姿を見て一瞬で理解した。
 あれは元々は人間。それも人の魂を虜囚して作り上げた存在。

 ―――熾天使セラフの存在を感知。神代文明の対神格兵器を一体で全て破壊した存在。上位次元に全ての存在を位置づけている為、神衣以外での攻撃は効果がありません。

 私は最後まで聞かずにブリッジを飛び出す。

(ユウティーシア、落ち着いて)

「落ち着いています。でも……あれを見て思わなかったのですか?」
 私は胸に手を当てながら走る。
 私には見えた。
 虜囚されている人の魂が痛みを叫びながら従わされてる姿が。
 あんなのを使うなんて正気じゃない。
 あんなのは絶対に許したらいけない。

(だからこそ、落ち着かないと駄目。神威は乱れた心ではその真価を発揮しないわ)
 彼女の言葉を聞いて私は、船外に通じる扉の前で立ち止まり深呼吸する。
 何度も深呼吸して気がつく。
 思っていたよりずっと頭に血が上っていた。

「ティア、すいません。思ってたより私は頭に来ていたようです」

(ええ、そうね。だからこそ、彼らは止めないといけないわ。人の運命を自己の都合だけで弄るなんてそんなのはどの精霊も神々も許していないわ)
 私は、ティアの言葉に頷く。
 そして扉の横に設置されているパネルに手を触れると内ドアが開くのを確認してから中に体を滑り込ませる。そして部屋の船外に通じる最後の扉の上の数字から10から減っていくのを見る。
 数字が1になったと同時に……。

「ティア、いきます!」
(ええ、いいわよ!)

「(神衣)!!!」

 世界が時が止まり、私の体が音素へと還元されていきそれらが風の元素を纏っていき再構成されていく。
 再構成された肉体は20歳まで成長していく。
 光り輝く蒼穹の長い髪は腰まで届いており見開かれた瞳は空の色をしている。
 神衣が成功すると同時に外ドアが開く。

 私は無音の宇宙空間にその身を投げ出す。
 すると、ノーチラスはその場で1千万の生物兵器を相手に戦闘を開始していた。

「「まずは、アルファを倒します!」」
 私は両手にそれぞれ蒼穹の小太刀を生みだす。
 そして宇宙を作り上げているダークマターを変換し風にし推進力に変え6人のセラフに近づく。
 私の接近に気がついた一人の熾天使がこちらに転移してくる。

「エンハスか?こちらが確認しているのと特徴が違うようだが、ここで処理する!」
 男が作り上げた不可視の刃を私は避ける。

「なんだと?」
 男は驚いているが私には彼が空間を切り裂いたと言う事が分かる。
 そして私は彼に告げる。

「「私の名前は、ユウティーシア・フォン・シュトロハイム。人の魂を、命を、運命を弄ぶあなた達を倒すために来たわ」」
 男は私の名乗りに驚く。
 その隙をついて私も神術を発動させる。

「―――!?ば、ばかな……」
 男の体が左右に分かたれていく。
 すると男の体はその場から転移して私から離れた。

「私と同じ能力だと?貴様は一体……」
 呟いてる男を見ながら、私は右手に携えている小太刀を男に向ける。

「「だから言ったでしょう。貴方達を倒すために私は転生した地から戻ってきたの!」」


 私の言葉に、ようやく無関心だったアルファはこちらへ視線を向けてきた。

「その魂の色……まさか……そんな……馬鹿なことが……貴様は草薙くさなぎ友哉ゆうやか!?」


 驚愕の表情をしながらアルファは言葉を発した。


 ようやく私利私欲の為に、誰かを傷付け殺す事を厭わないアルファのその顔が見れた事に……私は満足げに微笑み返した。




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