最強のFラン冒険者
ユウティーシア(前編)
 領主ズールの部下でもあり城塞都市ハントの守備隊長であるイスカが一礼してテントから出た後、数時間に渡って治療をしてると、バズーの父親であるバルスさんがテントに入ってきた。
「聖女様、こちらにバズーは居ますか?」
「そういえば、まだ来られてないです……ね!?」
返答をしてる途中で俺は立ち上がる、何を数時間何も考えずに治療をしていた?テントの外を出て空を見上げるとすでに夕刻に差し掛かろうとしている。テントの外には何故か誰もいない、先ほどまで喧騒が聞こえていたのに出た瞬間、世界から音が消えていた。
そんな無音の世界で音が生まれた。振り返るとそこには紫色の長髪を後ろで束ねたレオナと、見たことがない白銀の髪を長く伸ばしてる女性が立っていた。
「ユウティーシア様」
レオナは俺を、ユウティーシアと呼んだ。
「―――レオナ?」
「はい、何でしょうか?ユウティーシア様」
そう言いながら俺にレオナが近づいてくる。どこかいつもと様子が違う……。そんなレオナが腰からブロードソードを抜く。
「レオナ、いつもと町の様子が違うのです。貴女なら分かりますよね?」
俺の言葉にレオナは無表情で答えず近づいてくる。
「申し訳ありません、クサナギ殿」
レオナの握っていたブロードソードが、
「え……どういうこと……です……」
俺の胸元に差し込まれていた。剣先から滴り落ちる血がレオナが持つ刃を伝い地面に零れ落ちていく。
力が急速に抜けていき魔力がまったく使えない。体が言う事をきかない。
レオナをみるとその表情は……。
喉奥から血が沸きあがってきて口元から血が溢れる。
息が出来なくなり意識が朦朧とし始める。
そこでようやくレオナと一緒にいた金髪の女性が言葉を発した。
「アウラストウルスの証明、貴女には失望したわ。せっかく手塩をかけて作ったのに人間みたいな低俗な感情を持つなんて、人形は人形らしく居ればいいのに。レオナ、この役立たずのゴミから神核を引き抜きなさい」
レオナがゆっくりと近づいてくる。もう目を開けてられてない……ただ、冷たい刃が俺の体に突き立ったのだけは何故か分かった。
「聖女様!聖女様!」
うっすらと目を明けると、そこには俺を心配そうに見てきてるバズーやバルス一家や町の皆が居た。体にまったく力が入らない。それよりも魔力がまったく感じられない。いったいどうなって……。
「―――ゴフッ」
そこで俺は血を吐いた。
誰かが何かを言ってる気がするが耳鳴りしかせず声が聞こえない。
ゆっくりと体の奥底から冷えていくのが分かる。
きっと血が失われ続けているのだろう。
何故、自分が刺されたのか理解ができない。
そんなに俺は嫌われていたのだろうか?
意識がぼやけてくる。これが死ぬと言う事なのだろうか……。
まぁ……もういいか……。
「ユウティーシア!」
気配から察するに誰かが走ってきて俺を抱きかかえたのが分かった。
ただ、嫌がおうにもなく俺の意識はそこで途切れた。
広大な何もない白い空間がそこにはあった。
あらゆる全ての物を存在しておらず意識すらそこでは確立してはいなかった。
ある日、一人の少年の夢を見た。
彼は自分が好きだった人を事故で守れなかった事をずっと悔やんでいた。
気になり彼の様子を見続けた。
彼は、異なる世界に渡り邪神を倒して世界を救った。
ただ、世界は彼にはやさしくは出来ていなかった。
強すぎる力は不幸を呼び寄せる。
時の王は、彼を暗殺しようとしたが彼は強すぎた。
彼を殺そうとした国は英雄の力により滅びてしまう。
それは彼を呼び寄せた少女をも巻き込んで殺してしまう。
彼は、自らの過ちや愚かさを悔やみ科学と言う誰でも等しく使える力を作り上げた。
時は流れたが彼は生き続けていた。
最悪の人を2度に渡り失った彼の心は壊れていた。
ただ、生きて……贖罪のために彼は生き続けた。
それを、じっと見続けた。
決して老いることの無い体と万能とも呼べる化学と呼べる魔法を作り上げた彼。
そう、彼は世界の力を有していた。
違う、彼は結果的に有してしまった。
そして世界を作り変えるためにその力を使った。
宇宙を星を世界を神を人を法則を作った。
それを神々は、アウラストウルの証明と言った。
「――――――うっ……」
口の中が苦い、私はゆっくりと眼を開けた。そこには私を心配そうに見つめているクラウス殿下がいた。
「ユウティーシア、どこか体の痛い所はないか?」
私は、クラウス殿下に聞かれて頭を振る。
「大丈夫です。それよりここは?」
部屋の中を見渡すと見覚えのある部屋な気がする。
「ここはシュトロハイム家の、君の部屋だよ。俺が転移魔法で連れてきたんだ。疲れてるだろうからしばらく休んでるといい」
私はクラウス殿下の言葉に頷き体中の力を抜く。とても体が重い、それに空気がすごい淀んでいるように感じられて息苦しい。
すぐに咳き込んでしまい手で口元を覆う。すると手のひらに血痕がついていた。
血がついていた手を見るとクラウス殿下は取り乱した。
「ユウティーシア!しっかりしてくれ」
とても必死に私の意志を繋ぎとめようとしてくれてるのが分かる。でも、もう無理なのが分かる。
クラウス殿下の言葉がやけに遠くに感じられる、体中からどんどん生きるための力が抜けていく気がする。
―――――――――
――――――
―――
「こんにちは、名前をつけてあげないといけないわね」
彼女はそう呟くとしばらく考えこんでいた。
「そうね、あなたは創造主が居たという証明をする存在ですもの。それにあやかって私もアナタを作ったのだから、アウラストウルスの証明と名づけましょう」
彼女はそう呟くとこちらを見てきたが何を考えてるのかよく分からない。
「やっぱり知識が無いと何の反応も示さないのね。不便よね?」
それから色々な人の知識と人生を見せられた。
特に見せられたのは草薙雄哉と言う男の人生だった。
彼は、大切な人を失ったと言う罪悪感から自分の存在を否定し続けて生きていた。
誰とも関わりを持とうともせず、関心をもたず、ただそこに在るだけの存在。
まるで同じだった。
「アウラストウルスの証明、あなたみたいな人ね?気になるの?」
彼女が何を言ってるのか理解が出来ない。気になると言えば気になるかもしれない。
でも何故か彼からは懐かしい匂いがした。
「そうね、そろそろあなたにも役目を与えないとね?丁度いいわ、この男の知識を覚えなさい」
彼女の言葉に従って草薙雄哉という人間の人生と知識を覚えることにした。彼は、自分を否定して生き続けて決して、人と交わろうとしない。人を信じない、自分すら信じない、大事にしない。大抵の生き物が持っている存在の肯定がない。
それはとても僕と似ている。
「そろそろ出来たかしら?」
彼女は話しかけてきた。僕は頷くように彼女の周りを飛び回った。
「今日から貴方は草薙雄哉分かったわね?あなたの仕事は私たちの世界を侵略してきた異星人が集めてる万能エネルギーを奪う事。そのためには手段は問わない。ただ、忘れないで!アナタは感情を持ったら存在できなくなる物質なのだから、決して人には過度に干渉しない事。いいわね?」
彼女の言葉に僕は頷いた。だってそれは本当の事なのだから、僕が彼女に選ばれた理由は僕たち音素が持つ思考共有故だから。
それはとても便利で他の生物に成りすます事が出来るから。
でもそれは成りすますだけで決して生物には慣れない、だって生物には感情があるのだから。
「念のためにアナタには、精神の調停者をつけましょう。それでアナタを保護しましょう。もし失敗したら分かってるわね?」
僕は彼女の言葉に分かったと伝える。
彼女は満足そうに頷く。
「今からアナタを、地平線上の境界に飛ばすわ。そこで貴方は本来の草薙雄哉として生きるの。でも使命は忘れないで、アナタの使命は全ての祖の万能エネルギーたる神核とその副産物である神衣を得る事。この2つを手に入れたら、すぐに戻ってくる事」
僕は頷く。僕はそのためだけに作られたのだからそれをするのは当たり前。
「基礎となった草薙雄哉の知識と人生から作られる人格データを見る限りでは問題ないと思うけど、何かあったら精神の調停者に神格の回収をさせるからそしたらアナタは無理せずに消えていいからね」
僕は頷く。どっちにしても僕はそれでしかないから人でも無い生物でもないただの世界を構成する古い古い時代の生き残り音素だから。
そして、俺(僕)の前に彼がアルファがその姿を現した。
「聖女様、こちらにバズーは居ますか?」
「そういえば、まだ来られてないです……ね!?」
返答をしてる途中で俺は立ち上がる、何を数時間何も考えずに治療をしていた?テントの外を出て空を見上げるとすでに夕刻に差し掛かろうとしている。テントの外には何故か誰もいない、先ほどまで喧騒が聞こえていたのに出た瞬間、世界から音が消えていた。
そんな無音の世界で音が生まれた。振り返るとそこには紫色の長髪を後ろで束ねたレオナと、見たことがない白銀の髪を長く伸ばしてる女性が立っていた。
「ユウティーシア様」
レオナは俺を、ユウティーシアと呼んだ。
「―――レオナ?」
「はい、何でしょうか?ユウティーシア様」
そう言いながら俺にレオナが近づいてくる。どこかいつもと様子が違う……。そんなレオナが腰からブロードソードを抜く。
「レオナ、いつもと町の様子が違うのです。貴女なら分かりますよね?」
俺の言葉にレオナは無表情で答えず近づいてくる。
「申し訳ありません、クサナギ殿」
レオナの握っていたブロードソードが、
「え……どういうこと……です……」
俺の胸元に差し込まれていた。剣先から滴り落ちる血がレオナが持つ刃を伝い地面に零れ落ちていく。
力が急速に抜けていき魔力がまったく使えない。体が言う事をきかない。
レオナをみるとその表情は……。
喉奥から血が沸きあがってきて口元から血が溢れる。
息が出来なくなり意識が朦朧とし始める。
そこでようやくレオナと一緒にいた金髪の女性が言葉を発した。
「アウラストウルスの証明、貴女には失望したわ。せっかく手塩をかけて作ったのに人間みたいな低俗な感情を持つなんて、人形は人形らしく居ればいいのに。レオナ、この役立たずのゴミから神核を引き抜きなさい」
レオナがゆっくりと近づいてくる。もう目を開けてられてない……ただ、冷たい刃が俺の体に突き立ったのだけは何故か分かった。
「聖女様!聖女様!」
うっすらと目を明けると、そこには俺を心配そうに見てきてるバズーやバルス一家や町の皆が居た。体にまったく力が入らない。それよりも魔力がまったく感じられない。いったいどうなって……。
「―――ゴフッ」
そこで俺は血を吐いた。
誰かが何かを言ってる気がするが耳鳴りしかせず声が聞こえない。
ゆっくりと体の奥底から冷えていくのが分かる。
きっと血が失われ続けているのだろう。
何故、自分が刺されたのか理解ができない。
そんなに俺は嫌われていたのだろうか?
意識がぼやけてくる。これが死ぬと言う事なのだろうか……。
まぁ……もういいか……。
「ユウティーシア!」
気配から察するに誰かが走ってきて俺を抱きかかえたのが分かった。
ただ、嫌がおうにもなく俺の意識はそこで途切れた。
広大な何もない白い空間がそこにはあった。
あらゆる全ての物を存在しておらず意識すらそこでは確立してはいなかった。
ある日、一人の少年の夢を見た。
彼は自分が好きだった人を事故で守れなかった事をずっと悔やんでいた。
気になり彼の様子を見続けた。
彼は、異なる世界に渡り邪神を倒して世界を救った。
ただ、世界は彼にはやさしくは出来ていなかった。
強すぎる力は不幸を呼び寄せる。
時の王は、彼を暗殺しようとしたが彼は強すぎた。
彼を殺そうとした国は英雄の力により滅びてしまう。
それは彼を呼び寄せた少女をも巻き込んで殺してしまう。
彼は、自らの過ちや愚かさを悔やみ科学と言う誰でも等しく使える力を作り上げた。
時は流れたが彼は生き続けていた。
最悪の人を2度に渡り失った彼の心は壊れていた。
ただ、生きて……贖罪のために彼は生き続けた。
それを、じっと見続けた。
決して老いることの無い体と万能とも呼べる化学と呼べる魔法を作り上げた彼。
そう、彼は世界の力を有していた。
違う、彼は結果的に有してしまった。
そして世界を作り変えるためにその力を使った。
宇宙を星を世界を神を人を法則を作った。
それを神々は、アウラストウルの証明と言った。
「――――――うっ……」
口の中が苦い、私はゆっくりと眼を開けた。そこには私を心配そうに見つめているクラウス殿下がいた。
「ユウティーシア、どこか体の痛い所はないか?」
私は、クラウス殿下に聞かれて頭を振る。
「大丈夫です。それよりここは?」
部屋の中を見渡すと見覚えのある部屋な気がする。
「ここはシュトロハイム家の、君の部屋だよ。俺が転移魔法で連れてきたんだ。疲れてるだろうからしばらく休んでるといい」
私はクラウス殿下の言葉に頷き体中の力を抜く。とても体が重い、それに空気がすごい淀んでいるように感じられて息苦しい。
すぐに咳き込んでしまい手で口元を覆う。すると手のひらに血痕がついていた。
血がついていた手を見るとクラウス殿下は取り乱した。
「ユウティーシア!しっかりしてくれ」
とても必死に私の意志を繋ぎとめようとしてくれてるのが分かる。でも、もう無理なのが分かる。
クラウス殿下の言葉がやけに遠くに感じられる、体中からどんどん生きるための力が抜けていく気がする。
―――――――――
――――――
―――
「こんにちは、名前をつけてあげないといけないわね」
彼女はそう呟くとしばらく考えこんでいた。
「そうね、あなたは創造主が居たという証明をする存在ですもの。それにあやかって私もアナタを作ったのだから、アウラストウルスの証明と名づけましょう」
彼女はそう呟くとこちらを見てきたが何を考えてるのかよく分からない。
「やっぱり知識が無いと何の反応も示さないのね。不便よね?」
それから色々な人の知識と人生を見せられた。
特に見せられたのは草薙雄哉と言う男の人生だった。
彼は、大切な人を失ったと言う罪悪感から自分の存在を否定し続けて生きていた。
誰とも関わりを持とうともせず、関心をもたず、ただそこに在るだけの存在。
まるで同じだった。
「アウラストウルスの証明、あなたみたいな人ね?気になるの?」
彼女が何を言ってるのか理解が出来ない。気になると言えば気になるかもしれない。
でも何故か彼からは懐かしい匂いがした。
「そうね、そろそろあなたにも役目を与えないとね?丁度いいわ、この男の知識を覚えなさい」
彼女の言葉に従って草薙雄哉という人間の人生と知識を覚えることにした。彼は、自分を否定して生き続けて決して、人と交わろうとしない。人を信じない、自分すら信じない、大事にしない。大抵の生き物が持っている存在の肯定がない。
それはとても僕と似ている。
「そろそろ出来たかしら?」
彼女は話しかけてきた。僕は頷くように彼女の周りを飛び回った。
「今日から貴方は草薙雄哉分かったわね?あなたの仕事は私たちの世界を侵略してきた異星人が集めてる万能エネルギーを奪う事。そのためには手段は問わない。ただ、忘れないで!アナタは感情を持ったら存在できなくなる物質なのだから、決して人には過度に干渉しない事。いいわね?」
彼女の言葉に僕は頷いた。だってそれは本当の事なのだから、僕が彼女に選ばれた理由は僕たち音素が持つ思考共有故だから。
それはとても便利で他の生物に成りすます事が出来るから。
でもそれは成りすますだけで決して生物には慣れない、だって生物には感情があるのだから。
「念のためにアナタには、精神の調停者をつけましょう。それでアナタを保護しましょう。もし失敗したら分かってるわね?」
僕は彼女の言葉に分かったと伝える。
彼女は満足そうに頷く。
「今からアナタを、地平線上の境界に飛ばすわ。そこで貴方は本来の草薙雄哉として生きるの。でも使命は忘れないで、アナタの使命は全ての祖の万能エネルギーたる神核とその副産物である神衣を得る事。この2つを手に入れたら、すぐに戻ってくる事」
僕は頷く。僕はそのためだけに作られたのだからそれをするのは当たり前。
「基礎となった草薙雄哉の知識と人生から作られる人格データを見る限りでは問題ないと思うけど、何かあったら精神の調停者に神格の回収をさせるからそしたらアナタは無理せずに消えていいからね」
僕は頷く。どっちにしても僕はそれでしかないから人でも無い生物でもないただの世界を構成する古い古い時代の生き残り音素だから。
そして、俺(僕)の前に彼がアルファがその姿を現した。
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