最強のFラン冒険者

なつめ猫

湖上都市の夜祭

「ヒール!」

俺は杖を持ちながら初級回復魔術を唱えるが、術式形態は神代の杖を利用した魔術を超える魔法を越えるよく分からない物なので困っていた。でも病に侵された人が直るからそのへんはスルーしておくことにする。

「子供を救っていただき、ありがとうございます」
 あまり栄養状態の良くない母親がお礼を言ってくるので俺はアイテムボックスから昨日、購入しておいた果物をいくつか出して渡す。

「これでも食べてください。あとは栄養をとっておけば良くなりますから」

「お姉ちゃん、ありがとう!」
 俺は子供の頭を撫でながら身体強化魔術の応用で衰えていた体組織を無言で修復する。

「それでは次の方を――――――」
 しばらく治療をしていると、治療を待っている人達の後方がやけにざわついていた。しばらくすると列を作ってる人々の間から総督府の長官リュゼルグ・バーマメントが3人の兵士を連れて現れた。

「ここにいらっしゃたのですか。てっきり総督府の方へ直接、報奨金を取りに来られると待っていたのですが来られないようでしたのでお持ち致しました。もちろん砂漠を緑ある草原や森や川に戻して頂いたのですからかなり色をつけてありますし医療のうぶっ」
 俺は、身体強化魔術を最大にまで高めてリュゼルグの口を手で塞いだ。こいつ、こんな所で何言ってるんの?それ知られたら俺が涙を流して慈善活動させられてたのが全部無駄になるだろ!もう少し空気読めよ!

「嫌ですわ、何を仰られてるのか分かりませんわ」
 俺は、ここでその話はするな!あとで総督府に取りにいくぞと目配せで総督府長官リュゼルグに合図を送る。それを見たリュゼルグもしばらく考えていたようだが頷き返してくれた。

「そうでしたか……このリュゼルグ。己の未熟さをこれほど痛感した事はありませんでした」
 ――――――あれ?何か話の流れが……。

「さすがは教会を建て直そうとしてる教皇アリア様がお認めになられた本物の聖女様だけはありますね。私は聖女クサナギ様、貴女をお金に目が眩むような人間だと思い込んでいたようです。たしかに無料でこのような診療所を作り治療を施しているのですから……」
 それは誤解だ!以前使った無料で治療します看板を間違えてアイテムボックスから出して、それをレオナが設置したから無料になってるだけなんだ!俺はお金がほしいし!!

「私を試していたのですね?救うに値する人間かどうかを!民を守るために対価をきちんと払うという紳士的な態度が取れるかどうかをあの夜、見定めていたのですね」
 ――――――見定めてないし!お前、約束したよな?お金払うって!!

「分かりました。このリュゼルグ、聖女クサナギ様にお渡しする予定でありましたこの金貨24000枚を民のために使わせていただきます!聖女クサナギ様のご好意を忘れることは致しません」
――――――あ……あの……。

「皆の者!ここに居られる聖女クサナギ様から、たった今!この金貨24000枚を、このルゼンドに寄付して頂けると話があった。そこで不肖このリュゼルグは、この日を聖女クサナギの日と決めたいと思う」

「――――――あ……あの……はなしを……」
 俺は震える手でリュゼルグの口上を止めようとするが

「さすが聖女様だ!」
「おおお!総督府主催で今日は1日祭りらしいぜ!」
「聖女クサナギ様のおごりでだー!」
「砂漠を消したのも聖女様の力らしい」
「え?まじか!?」
「俺はわかってたぜ!完治が無理だって言われてた病も治すんだしな」
「おおおおおお」
「くそ、これが本当の悪党の力か」
「兄貴!さすがは裏の組織が手を出すなって言ってた大物は違いますね!」
「くそ、悔しいが完敗だぜ!」
「クーサナギー!」

 最後のクサナギと言い出した奴の大声に釣られて市場はクサナギコールが鳴り響く。とてもお金を請求できる雰囲気じゃない……。
 そこに俺の肩に手をおいたレオナが俺を見て頭を振った。

「これは、もう諦めるしかないですね」
 レオナの言葉は、報奨金のためにがんばってた俺の心を打ち砕いた。
 そしてその後、俺はぶちきれて町を覆う極大回復魔法を越えるぽい魔法で気管支系の病気だけじゃなくあらゆる病や怪我を治してホテルの一室に戻って引き篭もった。

「クサナギ殿、何か食べないとだめですよ?」

「……」
 今、俺は傷心中なのです。放っておいてください。ベットの上で体育座りをしてると寝室のドアノブ部分がパキッと音を鳴らした。そしてレオナが入ってきた。

「クサナギ殿、少し表でも見ませんか?」

「いい……」
 レオナがため息をついたのが分かったけど、今日は静かに放置しておいてほしい。そんな俺をレオナは抱きかかえるとテラスへと連れていき

「下を町を見てみてください」
 仕方ないな。俺はホテルのテラスから下を見る。
 そこには、俺が始めてここに来た時に感じた時のような鬱屈した感じも閉塞感もなかった。
 町の至るところにキャンドルが置かれていて町全体を明るく照らしている。
 総督府が手配したと思われる多くの露店が並んでいて誰もが料理を手に取って食べて踊りを歌を披露していた。

「クサナギ殿、たしか以前にクサナギ殿は言いませんでしたか?お金は使う事で経済をまわすそこに意味があると。たしかに金貨24000枚は大金です。
ですがこれだけ多くの人々を幸せに出来るのでしたらその使い道は間違ってるとは某には思えません。
それは誇って良い事ではないでしょうか?
クサナギ殿は、この情景を見てどう思われますか?」
 決まってるじゃないか。俺が提供したお金で料理が配られてるのだ。だったらすることは一つだろう?

「レオナ、少しでも投資したお金は回収しないといけません。提供されてる料理を食べにいきましょう!」

「お供いたします」
 まったく仕方がない。
 本当に仕方ない。
 今回の報酬は、異世界の貿易都市がキャンドルにて彩られてる情景と人々の熱気で手を打とうじゃないか。

「レオナ、早く行きませんと料理がなくなってしまうのです!」
 俺は外行きの服に着替えてホテルをレオナを共だって出た。

 その日の祭りは、夜遅くまで続いた。




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