最強のFラン冒険者

なつめ猫

新たなる目標


「さて、どうする?」
(まずは敵の排除が最優先かと思います)

俺のつぶやいた言葉に、レオナの意識が流れこんでいて答える。
まるで頭の中で話し合いをしているようだ。

「排除か……パステル、アリーシャ離れててください」

俺の言葉にパステルもアリーシャも驚きながらも離れてくれる。

(クサナギ殿!まずはコボルト達とあの巨人を離しませんと)

「わかってる!レオナ得意な魔術は?」
(氷系の中級魔術です)

「アイスランスでいいのか?」
(是!)

「アイスランスの制御は任せた!」
(是!)

「俺は、風の魔術を使う!」

俺の周囲に風が収束していき小型の竜巻を形成していく。そこにレオナのアイスランスが無数に形成されていく。

(なんと言う魔力量、これがクサナギ殿の魔力量!)
「ああ、いくぞ!」

俺は右手の手のひらを巨人に向ける。そして魔方式を組み込む。魔力量に物を言わせない新しい魔術。それが神衣状態でみ使用できる融合合成魔術。

中級魔術「サイクロン」と中級魔術「アイスランス」の合成魔術
竜巻の中で激しく打ち付けられた氷が帯電状態を引き起こしそれにより数億ボルトの電圧を作りだす電撃魔法。

「その名も”雷神”!」

巨大な雷が巨人を打ち付ける。生体兵器ならこの魔法は防ぐことはできないはず。

「コボルトさん、もう大丈夫です。撤退してください」
(クサナギ殿、敵の動きから察するにゴーレム系統の魔物に分類されると思われます)

「知識は……理解した!」

自動的にレオナの知識が俺の中に流れ込んでくる。体内に流動するコアを破壊すればいい。つまり、あの技が使えるか。

「レオナ、魔術の制御は任せた!」
(了解しました)

腰から神気で編みこまれた刀”雷切”を抜き出す。
雷切の周囲に中級攻撃魔法であるウォーターランスになる前の水が生成されていく。

巨人が俺たちを脅威に思ったのが近づいてくるがこちらとしては好都合だ。
投擲された光の槍を雷切で切り飛ばしそのまま巨人を頭上から切り裂く、断面にはウォーターランスになる前の水が付着していき最後には雷切が纏っている数十億ボルトの電流により巨人は焼き尽くされ崩れ落ちた。

刀である雷切を鞘に収めた瞬間、体の力が抜けて俺は地面に倒れこんだ。そして俺の横には体が再生されたレオナが倒れていた。

「こ、これは……意識が……」

初めて使った力に耐えられなかったのだろう。
パステルやアリーシャが近づいてくるのが見えるが俺の意識はそこで闇に飲まれた。


「クサナギ様!クサナギ様!」

名前を何度も呼ばれた事でようやく目を覚ました。
どうやらアリーシャに膝枕をされているようだが体中に力が入らない。

「アリーシャ?みんなはどうなったんですか?」

俺は気になったことを確認する。

「パステルも、レオナも無事です。それにコボルトさん達は私たちの前から最初消えた時のようにまた消えてしまいました」

「そうですか……」

ガーディアンと言ってたくらいなのだ。あのステータスで巨人と戦うことができるということは特殊な強化を施しているのだろう。もしかしたら治癒でもさせてるのかもしれない。

「一度、お礼をしにいかないといけないですね」

俺のために戦ってくれたのだ。御礼をしないとだめだな……。

「クサナギ様、それがですね……」

なんだ?アリーシャが突然沈んだ声になってしまったが何かあったのだろうか?

「おーい。クサナギ、起きたのか?ダンジョン埋まっちまったけどこれ掘り起こすの大変だろうなー」

は?今、なんて言った?迷宮がダンジョンが埋まったって聞こえたんだが?
ある程度、魔力が回復したこともあり震える足で立ち上がるとパステルが立ってる方へ向かっていくと綺麗に入り口が土砂で埋まっていた。
しかも、雷切の電撃の影響からなのか石が熱せられていてマグマのように煙が立ち上っている。

そこでグランカスが俺に冒険者プレートを渡すときのセリフを思い出した。たしか問題起こすなよ?みたいな事を言ってた気がした。

「ど、ど、どうしましょう?」

俺は3人に振り返って呟いたが返答はなかった。


2時間後、俺は衛星都市エルノの総督府会議室にいた。
あの後、迷宮入り口で巨人と戦ってたのを見た門番が総督府に報告。騎士団を召集し海爵と共に現場へ到着した後、ダンジョンが埋まったことにショックを受けてた俺と3人の女騎士を保護したのだった。

「クサナギさん、マジで困りますよー。大事な収入源なんですよ!どうするんですかー!」

俺の前に座ってるのは新しく総督府に任命された元奴隷商人のヘポイだった。
マジで困りますよーと言われても俺としても困る。というか何でいつも俺が悪い事にされてるかまことに遺憾である。

「ヘポイさん、よく聞いてください!」

「な、なんですか?」

もう丸め込むしかないだろ?これは不可抗力ですで言い切るしかない。

「私達はたまたま!ダンジョンから出たときに巨人が森から出てきたのを見てこの町が危険だと思い、命をかけて戦ったんです。私達が戦わなかったらきっとこの町は消えてました、ヘポイさんの命も無かったと思います。ですからダンジョンの入り口が埋まったのは必要な犠牲だったんですよ!」

俺の弁論に、一人だけ着いてきたレオナは横で唖然とした顔をしている。こいつ何を言ってるんだ?という顔だ。

だって仕方ないじゃん!こうでも言わないとトンでもない賠償金とか背負わされそうだし。

「ううう……でも財政が……」

「財政なら大丈夫です!」

「え?」

「巨人の死体ありますよね?あれ魔法石ですのでそれを寄付しますよ!それで町の経済をダンジョンが復旧するまで使ってください」

そう俺が倒した巨人の亡骸だが高純度の魔法石に変化していたのだ。レオナの話だと10層付近で取れる魔法石の純度があるらしい。それが10メートルの巨人となれば相当な量だろう。

「本当にいいのですか?」

「ええ、もちろんです。私は市民の方の生活がよくなればそれでいいと思っています。それに町の経済が悪くなる事を私は良しとは思ってません!私は自己利益で動くような人間ではありませんし、またダンジョンが開通する時に伺おうと思っています」

真相がバレないうちにさっさと逃げ出さねば……。
横では、レオナが俺の事を呆れた顔で見ていたが人間そう簡単に変わったりはしないのだよ?レオナくん。

さあ、さっさと海上都市ルグニカへ逃亡じゃなくて移動して魔法帝国ジールにあると言う神代時代の遺跡である生体科学施設へ行こう!すぐ行こう!あ、あとついでに婚約もなんとかしないとな……。





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