最強のFラン冒険者

なつめ猫

衛星都市スメラギへ帰還


お金を寄進してもらってる時に気がついたことがある。一人だけやけに高そうな甲冑を身に着けた騎士がいた。おそらく隊長格かそのへんだろう。

「ふむ、金貨4399枚と端数か……騎士300人の割りにはしょぼいな……」

あとは鉄で作られた鍵なども隊長格の騎士から手にいれたがこんなのもらってもいらないだろ。
まぁお金だけもらってそろそろスメラギに帰るかな……?

「き……きさま……私にぐぎゃあああああああ」

突然斬りかかって来た隊長格の騎士にゴッドブローを打ち込む。
隊長格の腹の部分の鎧が砕け散り俺の拳が隊長格の腹を貫いた。

「ヒール!」

突然何が起きたか分からない隊長格の男は痛みとすぐに痛みが消えたことにパニックになりながらも自分の腹を触って無事を確かめているが……。

ふむ……どうやら、こいつには俺が命名した生活用水系魔法、大瀑布ナイアガラだけでは満足できなかったようだ。やれやれ、仕方ないな。
そこそこお金をもらったしここはヒール講座でもしてやるか……。

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「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。もうひどいことはしません。ぎゃああああああ」

何か言った様だが聞こえんな……。謝罪できるってことはまだ余裕があるってことだ。
そうするともう少しお話しないといけないからな。
魔力で覆ったストレートでそいつの鎧ごと右肩先を消し飛ばす。

「ヒール」

神経、血管、骨、筋肉、皮膚ろ全てが再構成されていき鎧以外は修復される。
隊長格の奴が地面でダンスを踊りながらびぐんびくんしてるが、体にはどこも怪我してる部分はないはずなのだがどうしたのだろうか?分からないな。

2時間ほどしてからどうやら疲れたのか隊長格の騎士は動かなくなった。

「ふむ……」

俺は周囲をぐるりと見渡す。
大瀑布で倒れてた騎士達も全員、目を覚ましていたが相当体を痛めつけられた影響なのだろう。
体を震わせてこっちを見てる。
いけない、このままだと風邪を引く恐れがあるな……。

そこそこ魔力を使うかも知れないがやってみるか?

「ヒール!」

範囲ヒール魔法を発動させる。
だが、俺を見てる騎士達の体はさっきの震えてる状態からさらに悪化して「た、助けてください」とか「だ、だから俺は言ったんだよ」とか「カーネル様があんな姿に」とか「海神ってうわさは本当だったんだとか」エトセトラエトセトラ……。

ふむ、どうやら疲労で幻覚まで彼らは見てるようだ。
これはきちんとヒールしてあげないとだめだな?

「えーコホン、これから皆様に一人づつヒールをしますので動かないでくださいね?」

俺は疲れた人を癒す人なのだ。
お金をもらった以上、やることはきちんとやらなければならない。
さあ仕事を始めよう。

3時間後、俺は衛星都市エルノから旅立った。

そして歩きながら思い出す。

俺が衛星都市エルノから去る際に、たくさんの住人が町から俺が居るほうへ向かってくるのが見えた。
へんなことに巻き込まれると困るのですぐに旅立ったのだが身体強化された目で見てみると、体格がガッシリとした身なりのいい男が何かを指示しているのが見えた。
きっと救護しにきたんだろう。ご苦労なことだ。

まぁ細かい事は気にしないことにしよう。

「俺の旅は始まったばかりだ!」


そして、道中はとくに何もなく進むことができた。
衛星都市スメラギの騎士達がお金を寄進しにきてくれたり、3メートル近いイノシシからお肉を分けてもらったり盗賊の皆様から寄付金を頂いたりと極めて俺の旅は順調に穏やかに進んだ。

「って!穏やかじゃねーよ!どう見ても波乱万丈だろ!?」

俺は、衛星都市スメラギまであと一日の距離で野宿しながら道中の過去を振り返り自分で突っ込んでいた。色々あり過ぎて最近麻痺してるな……。

「さてと……あとは簒奪レースに関してか……」

よく考えたら俺、指名手配されてる状態なんだよな?そんな状態でレース参加できるのか?と思ったんだがこの辺はもう奴隷商人達に任せるしかないな。
一時的に奴隷の枷をつけて参加するのもありだしな……。

「あとは……これか……」

参加する人間をチェックしていく。

ユージーン・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第一王子)
アルト・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第二王子)
ベルヘイム・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第三王子)
カーネル・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第四王子)
マガルタ・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第五王女)
オルトロス・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第六王子)
エメラス・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第七王女)
マガリータ・ド・ルグニカ(海洋国家ルグニカ第八王女)

これを見ながら俺は思ったことがある。
普通の貴族の構成とはこの海洋国家ルグニカの組織形態はずいぶん違うということだ。
普通なら、王女が3人に王子が5人なのだから第五王子と第三王女までで分けられるはずなのだが、おそらくこれは衛星都市に降られてる数字がそのまま第いくつと表記されてそのあとに王子や王女とついてるに過ぎないのだろう。
つまりあくまでも全員が対等な存在だということだ。
だからレースのような催し物をするのだろう。

そして勝者が10年間全ての都市の代表になり国を運営する。
それがこの海洋国家ルグニカの在り方かそんなところなのだろう。
もともとは海賊が集まって出来た国ともアプリコット先生は言ってたからな。
たぶん、そのへんはかなり揉めて今の状態になったんだろうな。

しかし……もう倒した騎士の数はスメラギだけで240人近く、エルノだと200人近くなのにこんなんでレースをする都市の治安を守れるのだろうか?
スメラギの総督府はもう少し考えて騎士団を運営した方がいいと思うんだよな。
お金を寄付してくる分にはいつでもウェルカムだがな……。

そして翌日、俺は衛星都市スメラギに到着した。
もちろん正門なぞ通らずに壁を飛び越えて町に入った。


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