最強のFラン冒険者
暗躍する主人公(後編)
きっと素晴らしい都市なのだろう!と思ってた時期が俺にもありました。
何と言う事でしょう。
まったく活気の無い市場に失業者のごとく道に転がっている浮浪者や物乞い。
さらには貿易港にはまったく船がありません。
ふう……もう帰っていいかな?
「さて……まさかこんな状態になってるとは誠に遺憾です」
俺は町に入る前の時の事を思いだす。
町の広さは、丘の上から見た限りだと四方が1キロメートル弱と言ったところだった。
あとは道が、城壁の門から中央に配置されている総督府までつながってる形になっており北側には水産・工業・商業・海軍関係の建物が集まっており南側には住居が立ち並んでいた。俺は南側から市民権を落としたと説明して仮の滞在所を発行してもらった。
そのお値段がなんと金貨10枚!普通の町だと金貨1枚とグランカスから聞いていた事からびっくりした。思わず、門番の人に苦情を言いそうになったのは堪えた。
これから総督府のトップに合わないといけない事もあり、お金を払うのがもったいないからと言って城壁を乗り越えるわけにはいかないのだ。
そして思いだし終了。
奴隷解放を謳ってる都市だからどんな都市だと思えば、奴隷を使わないだけで他にはまったく力を注いでいない模様。
奴隷は人権問題とか色々あるが、所謂働き手でもあり富の一極集中を促してしまうがある程度は町にお金を落とすのだ。
つまり消費がそこそこ発生しその消費を支えるために物が流通し経済を発展させる。
俺が奴隷を派遣社員のような雇用で働かせて給料を払ってお金を市場に回そうと考えてるのは、雇用を生み出さないと経済は回らないからだ。
ただ単に、奴隷を解放しましたとか扱いませんだけだと経済は発展するどころか治安の悪化にもつながる。
おそらく門番が入場料として金貨10枚を取ったのも都市の財政がかなり切迫してるからなのだろう。
でも、市民権を落とした!入場料金貨10枚って日本円に直すと10万円なんですが?商業取引でかける関税金とかどれだけなのか想像もつかない。
はっきり言わせてもらって、うん……帰っていいかな?ってレベルなんだが……。
「とりあえず冒険者ギルドに行ってみるか……」
総督府北にある市場から西側には商業と工業施設が並んでいる。
市場から続く石畳を歩いていくが、道端にはいるわいるわ物乞いとか浮浪者とかばっかりいる。
しかも皆さん、目がギラついている。
まぁ、総督府スメラギの連中にわざと見つかりやすいように黒いドレスに金のアクセサリーという踊り子服と言う完全舐めプ状態で旅してたから男共のギラつく目も分からなくはない。それに袋の中にはジャラジャラと金銀銅の硬貨がたくさん入ってるし……。
でも俺を見てるだけで手を出してこないのは賢明だと言っておこう。
襲ってきたらもれなく、ゴッドブローを打ち込むからな。
市場から5分ほど歩くと白い壁と赤い屋根の建物が見えてきた。
建物の大きさは、コンビニ3個分くらいか?しかも高さは4階ほどある。
俺は初めてみた冒険者ギルドを見て、少しだけ感激して情報が必要だったのでそのまま中に入った。
扉を開けると酒場が併設されてるような事もなく日本の田舎の役場のような感じだった。
「すいません、少しいいですか?」
俺は2つあるカウンターの一つに近づき窓口に座っていた20代半ばの女性に声をかけた。
女性は暇だったのか俺の声で目を覚ますとすぐにこちらを見てきた。
「あ、はっ……はい!なんでしょうか?今は討伐の依頼も雑務系の仕事ももまったくありません。申し訳ありません」
「い、いえ……」
おい、どうなってんの?依頼も雑務系の仕事も無いとか相当やばいんじゃないのか?
あれ?これって……かなりやばいんじゃ……。
「あの冒険者登録とかって出来ますか?身分証明賞を無くしてしまったので……」
「ああ、そういう事ですか?冒険者の身分を作りたいんですね。それでは市民「いえ、そういえば落とした場所を思い出しました」」
「そうですか」
シュンという音が聞こえてくるくらいに意気消沈したお姉さんを見ながらギルドの中を見ていく。
ふむー。よく分からないな。
この世界のギルドの立ち位置が今一分からない。
「お姉さん、じつは小さい頃に冒険者の身分証明賞を無くしてしまったのでギルドととかの情報をお伺いしたいのですがいいでしょうか?」
俺は袋の中から金貨を1枚、カウンターの上に置く。
そうするとお姉さんが金貨をもらってくれた。
「何でも聞いてください!スリーサイズ以外なら教えますよ?」
「あっ……はい……」
1時間後、俺はギルドから出て近くの飯屋に寄っていた。
その飯屋は水すら銀貨1枚を取るすばらしいサービスをしてくれた。
席に座りながらさっき冒険者ギルドでお姉さんに書いてもらった記事を読んでいく。
・冒険者ギルドは独立採算性であり所属している国に帰属する。(つまり国が運営管理の決定権を保有している。超法規的な力を持つような国を跨ぐ組織ではないってこと)
・冒険者ギルドは、迷宮と町や町の外で手に入れた素材などは冒険者の身分証を呈示しない限り買取はしない。(つまり俺みたいな身分不確定な人間からは物を買いませんよって意味)
・冒険者ギルドでの登録有効なのは、登録した国内でのみ有効。(つまりは国を移動したらその都度、冒険者の身分証を取らないといけない)
・冒険者ギルドに所属してるギルドメンバーの身分は保証するが発行には必ず市民権が必要。無くした場合には総督府、もしくはそれに準ずる組織で発行する事。
・冒険者ギルドは冒険者同士の諍いには基本不干渉。(つまり自己責任)
・冒険者ギルドでのランクはSからFまでありそれぞれ受けられる仕事の内容が異なる(ここは仕事が無かったようだが……)
・冒険者ギルドで期限付きの仕事を受領した場合には、期限が切れた場合に達成金の1割のお金を収めるペナルティが存在する。
「ふう……やっぱり市民権が必要か。俺の本来の名前が使えればいいんだが……って?どうやって名前を判別してるんだ?」
魔法的な神秘的な何かできっと判別してるんだろうな……。
それよりも、ここの総督府どうなってるんだ?
これは明らかに運営方法ミスってるだろ、上に立つ者が無能なのは罪だぞ?
「すいませーん、お会計をお願いします」
「はいはい」
恰幅のいい女将さんが出てきたので水の代金である銀貨1枚を渡す。
「それじゃ失礼します」
「ちょっと待ちな!」
出て行こうとしたら呼び止められた。まだ何かあるのか?と後ろを振り返る。
「席代チャージ量で金貨2枚足りないよ」
キャバクラかよ!と心の中で俺は突っ込んだ。
これは早く総督府に顔出さないとな……。
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