最強のFラン冒険者

なつめ猫

神は言った、右の頬を叩かれたら左の頬を殴り返せと


高さ10メートル近くもある広い倉庫内では、草薙と男達が対峙していた。
両者ともまったく動かないその姿は千日手を思わせるがただ単に、草薙が全力で攻撃したら男達がどうなるか想像がつかなかった事もあり手を出しにくかっただけであった。逆に男達は、少女がどんな頑強な男であっても上級魔法師を超える特級魔法師ですら動きを封じる奴隷の枷を破壊された事を見て動きが取れなかった。

うーむ、どうしよう。
まずは、あれだな……。

「貴様ら不敬であるぞ!この我が何者か知らぬ訳では無いだろうな?」

男達の頭の中には疑問符が浮かぶ。
男達の雇い主からは上級魔法師だから捕まえて調教しろとしか言われてないのだ。
それが蓋を開けて見ればドラゴンですら動きを封じてしまう奴隷の枷を破壊ではなく消し去ってしまったのだ。
その光景を見て思考停止に陥るのも致し方ないと言えるだろう。

「やれやれ……どうやら分かってないようだな?」

草薙はゆっくり男達に向かって歩き出す。
男達はその姿を見ながらもまったく魔力どころか存在感すら感じない事に恐怖を感じ始めた。
そして、草薙は地面に落ちていた建材の一部であろう石を拾い手に取る。

「さあ、お前らにも見せてやろう。これが神(物理)の力だ!」

草薙は頭上に石を投擲した。
投擲された石は、音の壁をぶち破り衝撃破を伴いながら天井を粉砕し空に消えて行った。

「さあ?どうだ?」

俺は男達を見ると男達は訳が分からないよと言う表情をしていたがすぐに顔を引き締めてきた。

「あ……あの……あのくらい上級魔法師くらいなら誰でも出来る。お前らかかれ!」

すごくどもりながらもそこそこ質のいい服を着た男が命令を下す。
倉庫中で奴隷を調教していた男達も集り、腰から獲物を引き抜き草薙に突き付けた。
その数は70人近い。恐らくここの倉庫にいた人間が全員集まってるのだろう。

うーむ、おかしいな?船で威嚇した時はきちんと平和的にお話できたはずなんだが……。
あまりまじめに攻撃すると大変な事になるかもしれないし、どうするか……あ、そういえば回復魔法の実験に使えるかも知れないな、ならそこそこ壊れても問題ないか。

3人ほどの男がカットラスを振りかざしてきたので俺は魔力量2億を全て身体強化に使う。
丹田を通し神経、内臓、骨、筋肉、血流、皮膚までまんべんなく循環するように意識する。
そして、いつもと違う事に気が付く。
以前は白く薄い膜で体が覆われていたが、今回は見た目が変わっていない。
少し慌てたが、振り下ろされたカットラスが3本とも俺の服の上で止まっていた。
なるほど、そういう事か……。

「ば……バカな……。攻撃が……」

どうやら着てる服まで強化されているようだ。
男達がかなり動揺している。
俺は手を振るって3本のカットラスを粉々に砕いた。
砕かれた破片が周囲に舞い上がりそれを見た男達の顔色が変わるのが見えた。

「海神クサナギに手を出した不敬、その体に刻め!ゴッドアッパー!ゴッドストレート!ゴッドリバーブロー!」

一人が宙を舞い天井を突き抜けてお星さまになり、頬を殴られた男がムンクの叫びのような顔をしながら空中を回転しながら壁を突き破って消え、お腹を殴られた男が横回転しながら地面を転がっていって泡を吹きながら打ち上げられた魚のようにピクピクしている。

……シーン。

その光景を見ていた男達の動きが止まった。

「お……おい……。こ、こいつやべーんじゃ……ぐへっ!」

某妖怪の兄弟のごとく親指から打ち出した指弾がそいつの獲物を破壊する。そして破壊された際の物理エネルギーが周囲を巻き込んで男を含んだ4人の男達が壁に叩きつけられた。

「ま……魔法か?魔法なのか?なんなんだよ、これなんなんだよ?あいつからまったく魔力を感じない、いったいどうなってるんだ?」

ついに男達が恐慌状態に陥ったようだが、まだ7人しか倒してないんだがあとひーふーみー61人もいるじゃないか……。
これはかなり楽しめそうだな?

「ひいいいいいやめてくだふげら」

「ま、まってくだぶへっ」

「に、にげぶへっ」

などなど汚い声が聞こえてくるがまあ気のせいだろう。

「あとはお前一人だけだな?」

俺の言葉に最初は威勢のいい事をほざいてた気がする男はすでに失禁しガタガタ震えていた。

「ど……どうしてなんだ?お前からは魔力をまったく感じないのにどうして……?」

ふむ、どうやら魔力消費量が2億になると他の人には感知できなくなるらしいな。

「知りたいか?貴様ら人間程度が神の気(魔力)を感じられるわけがないだろう?さあ、神罰(物理)の時間だ」

俺は震える男の足を踏み抜いた。
盛大にグシャっと言う音が響くと同時に虫の喚き声が聞こえてきたが気にしない。

「どうした?そんなに顔を歪めてそんなに嬉しいのか?」

俺は精一杯のやさしい笑顔で語り掛けてやるが男はすでにやめてくださいやめてくださいと言ってる。
本当に人の話を聞かない奴だな仕方ない。
俺はもう片足も踏み砕いてあげた。これでこっちの話を聞いてくれるだろう。
ひぎいいいいとか泣いてるが気にしない。

「さて、貴様に聞く事は一つある。我を捕まえよと依頼してきた首謀者は誰だ?」

「い、依頼人の事は話さん!そ……それが奴隷ギルドの矜持だっ!!」

ふむ、なかなか楽しめそうだな。ヒールの練習相手になってもらうか。

「分かった、話したくなったらいつでも言ってくれて構わないからな?ヒール!」

足の筋肉組織や神経、骨を学校時代になった本を思い出し魔法を使用する。そうするとあら不思議、怪我をする前の状態になりました。
男はえ?え?え?と納得しない顔をしている。
でも、一回だとヒールが良く分かんないな。仕方ない、彼はきっと頑張ってくれるはずだ。
心を鬼にして男の足を再度踏み砕く。

「ひぎやあああああああああああ」

男の叫びが倉庫内に響き渡るが男の部下はお星さまになったり打ち上げられた魚になったり壁のオブジェクトになったりしてる。
死んではいないが、とてもじゃないがこの回復講座には参加できないだろう。まことに残念だ。

「ヒール!」

「お…お前…ま、まさか……」

男が真っ青な顔してようやく俺がしたい事に気が付いたようだ。
まったく惜しいな、もっと早く気が付けば楽にしてあげたものを……。

そしてまた足を踏み砕く。絶叫が倉庫内に響き渡る。

「ヒール」

そしてまた足を踏み砕く。絶叫が倉庫内に響き渡る。

「ヒール!」

そしてまた足を踏み砕く。絶叫が倉庫内に響き渡る。

「ヒール!」

そしてまた足を踏み砕く。絶叫が倉庫内に響き渡る。

「も、もうやめてください。なんでもぐぎゃああああああああ」

ふむ、何か虫が言ったようだが気のせいだな。まったく中々強情な奴だ。

「ヒールっ!」

「助けてもうたすけぎゃあああああ」

何か聞こえたが最近耳が遠くなっていけないな。

「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」「ヒール」

気が付けば男は疲れて寝てしまっていたようだった。
まったく仕方のないやつだ。
こんなに幸せそうに白目のまま涎を垂らしてまで寝るなんて日本だったら解雇ものだぞ?

「おい、起きろ」

男は俺を見た瞬間、失禁し気絶をした。
酷い奴だ。美少女の顔を見て気絶するなんてもうすこしデリカシーと言いのを持ってもらいたいものだな。




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