最強のFラン冒険者

なつめ猫

ユウティーシア公爵令嬢断罪される

「貴女ね!クラウス様の婚約者って言うのは!!」
 クラウス殿下に連れてきてもらって休んでいたら突然、宣言された。よく見ると青い髪が良く映える美女だ。

「はい、そうですが何か?」
 なんだよ、疲れてるんだよ。休ませてくれよという空気を醸し出すが、納得されない様子。

「わたくしはアリス・ド・ヴァルキリアス!次期王女です!!」
 隣の国の人間か、それが何で夜会に顔を出してるんだ?とりあえず挨拶を返しておいた方が良いか。

「お初に御目にかかります。私は、ユウティーシア・フォン・シュトロハイムと申しますわ。
どうかユウティーシアと呼んでください」
 女は俺を睨めつけるように見てきているが、俺はどうしたらいいのだろう。
でもきっと、婚約者ってのはと聞いてきた所からしてあの王子が好きなんだろうな。

「アリス様は、クラウス殿下が好きなんですか?」
 俺の言葉にアリス様は顔を真っ赤に染め上げて文句を言うと側付と思われるメイドと部屋を出ていった。女王予定なのに騎士とか連れてなくて大丈夫なのか?

 それに俺が怒られた理由がまったく分からん。きっとクラウス殿下何かしたのかのだろう。きっとそうだ。

 それより婚約問題を何とかしないと家から出られなくなりそうだ。どうやって出奔したべきか……。

 何かハプニングがあって押し付ける相手がい……いた!さっきの女にクラウス殿下押し付ければいいんじゃね?隣国から来るってことは何かしら仕掛けてくるだろ。

 しばらく待っていると、20代後半の男性がノックの後に部屋に入って来るとクラウス殿下がエスコート出来なくなったので代わりに案内すると言ってきた。

「分かりました。お願いしますわ」
 俺は男の後をついていく。夜会場までの距離はそこまで遠くはなくすぐに煌びやかなホールに出た。クラウス殿下が来るまで待ってればいいかと思い、待ってると唐突にホールに鳴り響いていた音楽が消えた。

 先ほど、数度誰かが手を叩いた音がしたがそれが合図の可能性がある。そしてホール内の空気が変わるのと感じとった。企業のプレゼンをしてた時のような緊迫した空気。何かが起きると俺の直観が告げている。

「初めてまして!私は、アリス・ド・ヴァルキリアスと申しますわ!!」
 さっき俺の所に来たアリスが自分の名前を高々に上げていた。俺が習った各国の情報だとヴァルキリアスって大国だった気がする。そんなところの姫さんが大々的に名前を名乗ったら内政干渉問題に発展する気がするんだが……。

 うーむ、わからん。

「今回は、私が敬愛する曾祖母のハデス公爵家の縁でこちらに参加させて頂きました」
たしかハデス家ってうちの国の三大公爵家の一つだったよな?ということは、つまり祖国に遊びに来たってことか?それにしても……。

「曾祖母様の故郷でありますリースノット国に来ることは夢でありました。豊な実りと誠実で国を本気で憂い民を愛する貴族。賢王と名高い国王陛下とその再来とまで言われ国民に愛されるクラウス殿下。私は、今までにないほどの感激に打ち震えました」
 俺はそれを見ながら嫌な予感しかしない。このパターンってあれだよな?あれしかないよな?

「ですが!先日、私は聞いたのです。今、この国で魔法石取引を独占し他の貴族の方々の安寧を脅かす者がいると!!」
 お父様!魔法石の話が出ましたよ!とても悪者扱いされている。どうすんのコレ?周りの貴族達も息を呑んでアリスの話聞いてるし。

「さらには、その貴族は独占し得た財力に物を言わせ血筋だけの魔力の素質も教養もない娘を婚約者に仕立てあげようとしているとも聞きました!」
 間違いなく俺の事だ。お父様、言われたい放題ですね。

「わかります!たしかにこれは内政干渉かも知れません!」
 間違いなく内政干渉だろと俺は心の中で突っ込みながらもアリスの話を聞く。さてどうしたものか……。

「ですが、私の曾祖母はリースノット国の血を引いております。私にとってもこの国は母国なのです」
 お前さっきヴァルキリアスの名前出したじゃん、母国って言うなら名前出したら駄目だろ。まあ俺の鋭い突っ込みは心の中で留めておいて周りを見ると何故か皆さん、感心してらっしゃる。きっと自身ありげに語った事で貴族達の心を掴んだのだろう。

「これは私にしか出来ない事だと思っております!魔法石取引を独占してるのは三大公爵家の一角のシュトロハイム家です。その力はあまりに強大です。守らないと行けない家族がいるこの国の貴族方々は迂闊には動けません。

だからこそ、私はハデス公爵家の血縁であると同時にヴァルキリアス王家の第一継承権皇女アリスとしてここに告発したいと思います」

 もう何が何だが……突っ込みどころが多すぎてどうしよう。そんな事を考えると背中を後ろから押された。履きなれてないヒールだった事もありよろけたままアリスの前に出てしまった。

「ユウティーシア嬢、あなたはクラウス殿下の婚約者ですわよね?」
 アリスは何故かすごく誇らしげに俺に話しかけてきた。夜会場全ての視線が俺に向けられてきた。……早く帰りたい。




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