最強のFラン冒険者

なつめ猫

王宮庭園での一幕

世界で唯一の神級魔法師か、どうするべきか?」
 国王陛下の言葉を聞いてすぐに動いたのはウラヌス卿だった。

「我が魔法騎士団で鍛えればすぐにでも世界最強の魔法師になるでしょう。そうすれば他国との交渉が有利になりますし知力を見ても魔道具作成が可能になるかも知れません」
 ウラヌス卿は興奮気味に語っているがそれはどうなんだろう?一人だけ強くても物量で押しつぶされたどうにもならないと思うんだが……この世界の事情をまだ勉強してないから何とも言えないな。一人無双出来る環境ならまた違ってくるだろうし。
 それにしてステータス1と表示されていたけどアルファの所で弄ってたステータスは有効だったのかもしれないな。 

「私としては反対だな。個人が武力として突出してればそれだけ他国に危機感を抱かせ悪戯にユウティーシア嬢の身が危険に晒される事になるだろう?」
 そうハデス卿は持論を述べてきたが俺としては、ハデス卿の案を押したい。もちろん魔法師が使う魔術を覚えて自立もしたいから魔術も教えてほしい。

「二人とも、あまり将来の事を考えても仕方あるまい。ユウティーシア嬢に魔力があった。今回はそれだけでいいではないか?それに軍備に関しては問題はあるまいて」
 国王陛下は、二人の意見を無い物として処理したいようだな。

「ユウティーシアには、白色魔宝石のみ作らせる方向にして魔術関連の書物に関しては一切触れさせない方向でいきます。これだけの魔力量を保持してる状態で魔術が使えればどれだけの大惨事が起きるか想像も出来ません。それに夫婦喧嘩になった際に魔術など使われたらクラウス様も困るでしょう」
 お父様の説明に3人とも頷いているのが見える。それって俺には魔術を教えない方向で決まったって事か?それって……。

「たしかに白色魔宝石さえあれば国民の魔力量の増加も出来ますし、白色魔宝石を持たせた状態で魔術を使わせれば最大魔力値が上がりますからね」
 ウラヌス卿は語りながら俺を見ていたが……。

「ここにユウティーシア嬢がいますが、大事な国家機密を聞かれても大丈夫なのでしょうか?」
 ウラヌス卿がすごく真っ当な事を言ってるが確かにと俺も思った。

「5歳の子供に分かる訳があるまい、シュトロハイム卿から聞いているが白色魔宝石を300個近く部屋の机の中に隠してたらしいからな」

「300個とは!?やはり唯の綺麗な石と思って増やしていたのですね。宝石が好きな女性が多いようにユウティーシア嬢も女の子なのですね」
 国王陛下とウラヌス卿が共に納得したように頷きあってるがそれは違う、作ると眠くなるから子供のうちは本当に睡魔との戦いなのだ。だから少しでも起きてられるようにと纏めて作っておいただけなのだ。

「シュトロハイム卿、これからの軍議には幼子には退屈だろう。近衛兵と女官に城内の庭園でも案内させよう」
 国王陛下はすぐに女官2名と近衛兵2名を呼び出し、俺を執務室から追い出した。

「ユウティーシア様、今日の庭園はすごく綺麗なのですよ?」
「ユウティーシア様は殿下とご婚約していらっしゃるのですよね?」
 などと二人の女官が案内された庭園で、何度も話しかけてくるがうっとおしくてたまらない。これが貴族の令嬢の普通の生活だとしたらやばいな。

「あれは……?」
 庭園内をウンザリとしながら歩いていると、金髪の少年が一人、庭園内に設置されたベンチに座っているのを見かけた。何をしてるのか気になって近づいていくと、少年は血まみれの子犬を抱いていて「僕にもっと魔力があれば助けられるのに」と呟いていた。
 たしか俺の作る白色魔宝石は最大魔力値を引き上げるような事をさっき執務室で言ってた気がする。

「クラウス様、お体が汚れております」
 俺についてきた女官がクラウスに近づき子犬を見て顔を真っ青にしていたのを俺は見ていたが、それより気になったのがこの少年が俺の未来の旦那様らしい体の線は細いが顔は将来とてもイケメンになりそうな素質を持ってる気がする。まぁ王族なら渡してもいいだろう。俺は近くに落ちていた小石を拾いストールで隠しながら白色魔宝石を生成する。

「クラウス様」
 俺はクラウス様へ声をかける。
 泣いていたせいだろうか?目が真っ赤だ。俺は生成した白色魔宝石をクラウス様へ差し出し受け取ってもらう。

「これは?」
 クラウス様が気になって俺を見てくるが……。

「おまじないです。その石を持ったまま魔術を使ってみてください。きっと上手くいくはずです」
 俺の言葉にしばらく理解が追いついていないようだったクラウス様が頷き魔術を行使しようとするとクラウス様の体が白く光り始めた。それと同時に子犬の傷が一瞬で治り血の跡まで消えていた。クラウス様は驚いて俺を見てきたがその場で力尽きたように倒れてしまった。

それから庭園どころか城内はすごい騒ぎになって、俺はお父様に怒られて国王陛下様やハデス卿やウラヌス卿は呆れた顔をしていた。
すぐに俺はシュトロハイム家に馬車で戻される事になって家でも勝手に白色魔宝石を渡さないようにときつく怒られた。別に未来の国王陛下なんだから魔力量が増えてもいいと思うんだがここまで怒られるとは予想外だった。




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