むかしばなし
りゆう
ベオは最初、シエラの事をゴーレムを使役する魔女だと思っていた。その為にいつも通り明るく振る舞い、機嫌を損ねず怪しまれないようにしていた。
もちろんセイレンと農作の小話と雑談で盛り上がったので最初は悪い魔女ではないと思っていた。
だがシエラに殺された時に考えが変わった。
妖しく微笑み自分の腹部を何度も突き刺す彼女の顔は、痛覚と恐怖の前に『なんて美しいんだ』と一層思わせるほどに煌びやかであった。
見たことない美しさ。
感嘆し息をするのすら忘れるほどに。
5千年も生きてきて久しぶりの感情の奥底から湧く潤のようだった。
そして話を聞けば自分と同じ不死で城から出れない呪われた身だという事だ。
城に閉じ込められた不死で狂気の美女。
今まで見たこともない『伝説』で、なおかつベオが会ったこともない同じ不死の人間。
惚れたのもあったが、それとは違って特殊な思考と彼女自身に興味が湧いた。
どうして狂気に走ったのか。
どうして自ら凶行を行なったのか。
シエラと会話したその夜の間に少しずつそれが知りたくなった。シエラに関する情報が知りたくて仕方なくなった。
そうして悩んだ末にこの城で働くことに決めたのだ。
もちろんセイレンからは直接聞けばいいと言われてしまうが、それに対してベオは「それでは本当の話が聞けない」と言った。
何のことかとセイレンは思ったっがベオが話に区切りをつけて仕事に集中し始めたのでその日はそれだけで終わる。
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