君のことを本当に……?

ノベルバユーザー173744

《希望》

「……うぅ〜眠たい」

 出産後の第一声が、これの蛍に、ビデオを回していた祐也や主治医と看護師は唖然とする。

「ゆーやぁ……寝て良い?」
「寝る前に、写真撮るけん、赤ん坊抱っこしてくれ」
「……うーん。えぇ〜!どうしよう!ゆーやに似てない!何でぇぇ!どうしよう!うちが浮気したって疑われたら!」

 祐也は頭を抱え、助産に付き添っていた祐也の母のせとかが大爆笑する。

「蛍ちゃん。大丈夫。誰も疑わないわよ。おほほほほ!」
「お母さん、だってぇぇ……何で?うちに似たん?酷い!」
「顔しかめんで、笑顔で撮らせんか。一生残さんといかんのやけん」
「うぅぅ……」
「赤ん坊に渋い顔せんのや。蛍。可哀想やろ」

 祐也はたしなめ写真を撮ると、スマホでも撮り、友人や家族に送った。

「うふふ〜孫、初孫〜!」

 せとかは抱き上げ、

「まぁまぁ、坊やちゃん、可愛い〜。せとかおばあちゃんですよ〜あぁ、おばあちゃんって呼ばれるのは、嫌だわぁ。やっぱりせとかちゃんかしら〜」
「母さん。おいおいおい!揺さぶるなぁぁ!」
「あぁ、そうだったわ。坊やちゃん。可愛いわねぇ」
「母さん!もう看護師さんに渡してくれ!頼むけん!」

祐也は頼み込み看護師に預ける。

 そして、外で待機していた父親と妹二人の元に向かう。

「おめでとう。祐也」
「ねぇねぇ、お兄ちゃん!赤ちゃんは?」
「小さいけん保育器。写真送ったで」
「わぁ……兄ちゃんに似てないねぇ」
「本当。蛍ちゃんに似たんやねぇ」

 スマホを確認する。
 そうすると、処置をした蛍と保育器の赤ん坊が出てくる。

「うわ……小さいなぁ。これ位やったら、小型犬の……」
「父さん。仕事忘れてくれんかな。孫息子やで」
「そう言えば、祐次ゆうじも小さかったなぁ……」

 覗き込む父親に、

「お祖父様ですか?」
「はい……初孫ですわ」
「抱っこは後でお願いしますけど、本当に可愛らしいお利口な坊やちゃんですよ」
「そうですか……」

朔夜は頬を緩ませる。

「嬉しいなぁ……えぇ子やなぁ」
「では、また後でお部屋にお連れしますね」

 娘たちが撮っている横で、将来じじ馬鹿決定と化した朔夜に、

「父さん!母さんが赤ん坊を振り回そうとしたんで?」
「だって可愛かったんだもの〜」
「……私も抱きたい!」
「あら、ダメよ。お父さん。お仕事でしょ?帰らないと」
「えぇぇ!」
「じゃぁ、帰りましょうね。媛と紅はどうする?」

落ち込む夫を押しながら二人の娘を見る。

「うちは大丈夫。媛は?」
「休む事伝えた」
「なら良いわね。行きましょうね」

 両親は出て行き、3人は蛍の病室に向かうのだった。

 出産後完全熟睡してしまった蛍をベッドに移した祐也は、一応持ってきていたベビーグッズを出していく。
 しかし2ヶ月後だったこともあり……。

「あぁ、足りん……それに、こんまいし揃えた産着が合わんが……」

 ため息をつく。

 エイプリルフールに生まれた赤ん坊は、一学年上となる。
 あれだけ小さいと、しばらく入院となるはずである。
 お金はあるが、準備が足りない。
 困ったと頭を抱える。

 すると、電話が鳴り、

『もしもし、祐也?』
「あぁ、めぐみ母さん……生まれたで、孫」

実母である。
 ちなみにこちらに帰省しており、再婚した夫と祐也の異父弟妹がいる。

『あのね?写真見たけど、小さい子ね?』
「そうなんよ」
『あのね、せとか姉さんに言ってみて頂戴。捨てていないのなら、未熟児用のベビー服とかあると思うわ』
「えっ?媛も紅も未熟児じゃなかったって……」
『祐次妊娠した時、切迫早産で入院しとったんよ。で、ギリギリまでお腹で育てたものの未熟児だったの』

 思い出す。



 祐也もその頃はゴタゴタしていたが、当時はほぼ日本語を忘れ、入院している女性が誰か、日本に連れて帰ってくれたのがだれかも解らなかった。
 で、解ったのは、スラング混じりの英語を理解してくれた今の両親に引き取られること。
 入院している女性は実母で、時々来るのは実母の夫で、ニコニコと笑ってくれる人。
 周囲は恐怖と暴力、食事を与えられない、満足に勉強もさせてもらえなかった祐也には、殴らない、逆に癇癪を起こしても抱きしめてくれる二人の父にどうして怒らないのか不安だったし、三食ちゃんと祐也の分を作ってくれ、笑う養母が不思議だった。

「いただきます、ご馳走さま、ありがとうございます。よろしくお願いします。と、朝昼晩の挨拶しとってわろたらかまんのや。祐也」

 二つ上の一平は頭は叩かないが、グイグイと頭を下げる。
 細身なのに、逃げようとしたら即捕まり、

「逃げんな!全く!師匠!こいつが俺の弟の祐也です。これから一緒に通います。よろしくお願いします。ほら、祐也!昨日教えたろが、よろしくお願いしますだぞ」
「よ、よろしく……お願いします……」

兄の真似をし頭を下げると、細身の男性が目を見開くと笑顔になる。

「偉いの〜?祐也言うたか?ちゃんと挨拶できるんは、ええことや。わしは武田伊佐矢たけだいさやや。祐也と一平たちに武術を教える。かまんな?」
「はい!祐也も返事や」
「は、はい!よろしくお願いします!」

 ほとんど日本語は忘れていたが、兄に妹二人に母に教わり、そして、伊佐矢の妻の安佐子あさこが、お茶を持ってきたり、汗を拭くタオルを持って来るのを、慌てて引き戸を開けたり、お盆を受け取る。

「まぁ、だんだん……祐也やったねぇ。おばさんは安佐子です。よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします。ゆ、祐也です」
「えぇ子やなぁ」

 晩に、父に、

「お、おとさん、安佐子さん、に、ニホンチャ、お盆、重い、受け取った。みんな、あげた。私、だんだん……て。だんだん……これ?」

階段を示す。
 朔夜は微笑み、

「同じ段々だけど、安佐子おばあちゃんの言うただんだんは、この地域の言葉で、だんだんは『ありがとう』って言う意味や。お茶碗の載ったお盆をおばあちゃんから受け取って配ったんか?」
「う、うん!……あ、はい!」

頷く。
 するとクシャクシャと頭を撫で、

「偉いぞ。祐也。ちゃんとお手伝いできたんやなぁ。それに、すごいやないか。安佐子おばあちゃんの言葉を覚えて。賢いなぁ」
「おとさん……ししょー、私、通う。ご挨拶ちゃんとする。良い?」
「かまんよ。祐也がやりたいことをやるんがええ。でも学校は半年してからやな」
「学校……」
「祐也は日本語とか勉強せないかん。寛爾かんじが、教員免許持っとるけん、教えてもらい。教科書はあるけん」

寛爾と言うのは実母の夫で、元々父として引き取ってくれる予定だったらしい。
 大人が苦手な祐也だが、力持ちだが優しい彼に慣れていた。

「祐也。喧嘩になった時に英語のそのスラングで喧嘩したらいかんで?」
「どして?向こう、バカ、言った。にいちゃん、おとさん、おかさん、寛おとさん、めぐおかさん、言った。イヤ!おとさん、寛おとさん悪ない!悪ない!」

 必死に訴える義理の息子に、寛爾は抱きしめる。

「祐也は優しいなぁ……暴力じゃなくて、言葉で言い返そうとしたんやなぁ……」
「……私、日本語、ヘン。みんな笑う……にいちゃん言う、すごい……」
「祐也は優しいえぇ子や。朔夜父さんやせとか母さんだけじゃなく、俺や愛まで父さん、母さん言うてくれるんやな」
「違う?……殴る?蹴る?飯抜き?髪、服切り刻む……針で刺す……」
「そんなことせん!絶対に!もう、忘れ!」

 寛爾は頭をクシャクシャと撫で、繰り返す。

「父さんたちは祐也の幸せだけ祈っとる。祐也が幸せならかまんのよ……」
「良い子する……」
「元々ええ子や、祐也は。いつも通りでかまんよ」

 その言葉にホッとした。

 ちなみに、兄と上の妹紅は野生の勘で祐也が何を言いたいのか理解してくれたが、幼い媛は、何故かノートと鉛筆を持ってきて、

「ゆうやお兄ちゃん。書いて!媛読むから。お兄ちゃんとお話しする!」

と、祐也の文字を必死に訳し、

「お母さん〜祐也お兄ちゃんが、お水欲しいって」
「あらあら。喉が渇いたのね。ごめんね?はい、お水。媛もお水でいい?」
「うん!お兄ちゃんと一緒」

と言ってくれるようになった。
 祐也は、媛には実際頭が上がらなかったりする。

 しかし、媛は媛で、

「祐也お兄ちゃんのお陰で、一平お兄ちゃんと紅お姉ちゃんが暴走するのを止めてくれてありがたかったぁぁ……二人とも野生の生き物だから。でも、祐也お兄ちゃんは野生になりきれなかった一般人。まだ理解できるもん」

と思っていたことを兄は知らない。

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