君のことを本当に……?
《決意》……家族として
手当てを終えた穐斗は両親と醍醐の車で帰っていく。
その後ろを追いかけ、走っていく。
盆地であるこの町は、周囲が山々があり、日が沈むのが少し早く、その代わりと言うように、山並みを赤く染める。
次第に暗くなるものの、先の車を追いかけて戻っていく。
そして、学校ではなく、その横を通り抜けていくのを、宇治が、
「どこに行くんかいな?」
「観月が待ってますよ。さっき、電話で連絡しておきました」
「観月が?」
「昨日は私たちと見たのですが、今日はおじいちゃんと見るんだとはしゃいでいましたよ」
「蛍……言うてたなぁ。タクシーの運転手はんも」
思い出す。
すると運転席の嵯峨が、ちらっと父を見て、
「えぇ。源氏蛍だけでなく平家蛍も見られます。昔、4人で行きませんでしたか?おとうはんが珍しく仕事がのうて、あてらも甚平はんを着せてもろて、おかあはんと」
「あぁ、行ったなぁ……でも、ちいそうて、弱々しかったなぁ……」
「ここは本当に昔から多いので有名だったそうですよ。で、それからも祐也くんや醍醐たちが、荒れた山を整備して、川をきれいにして、増やしていったんだそうです。今年は特に綺麗で……観月は目をキラキラさせて笑ってました。もうすぐですよ」
醍醐の車が停まっている隣に車を停めた嵯峨は、
「薄暗いので気を付けてくださいね」
と、柚月を下ろし、そして父に手を差し出す。
「あ、あぁ……わぁぁ!な、何や?」
スゥッと横を通りすぎた小さい命に、目を見開く。
「おとうはん。源氏蛍やがな……」
「いや、それに驚いたんやない、あれや!そ、空の星なんか?蛍か?」
「ここは結構空気が澄んでいるので、星も良く見えますが、森から降りてくるんですよ」
「おじいちゃん!」
テディベアを抱いた観月が駆け寄ってくる。
「おじいちゃん!こっち、一杯いるよ!」
「じいちゃん、気を付けて。足元暗いからさ」
少年から青年になりつつある、だが凛とした眼差しが印象的な少年が迎えに来る。
「あてはまだ若い!」
「あははは!じゃぁおっちゃんって呼ぼうか?あ、そっか、初めましてでした。俺は不知火祐次と言います。母を助けて戴いてありがとうございます。観月と同じ学校です」
「はぁぁ!あの不知火の息子か?……余り似とらんな?体型もほっそりしとるし……」
「母に似てるんです。妹の方が父に似ていると思います。でも、母をありがとうございます。先生のお陰です」
「それよりもものすごい剣幕で、あてに説教した柚月にお礼を言いなはれ。的確な判断のお陰や」
「まぁ……お父さん……」
頬を赤くする柚月に、宇治は笑う。
「あれは凄かったわ……ん?」
フワリフワリとほのかな灯りが宇治の回りを舞う。
そして、肩にそっと留まった。
「……恋人を探しにいかんかいな……」
告げるが、蛍は留まったまま、優しい光を放つ。
「何か、じいちゃんにまっとったよって言いよるんやろか?」
「あてを?……美園か?伏見やろか……?」
宇治は手を伸ばし、そっとすくうようにすると、手のひらに乗っている命の灯火に囁く。
「心配せんでかまへん……傍におるさかいに。おいきや」
手の中でチカチカと光った蛍は小さな羽を広げ、川辺へと飛んでいき、他の蛍と紛れていった。
「……綺麗やなぁ……。お墓の美園も伏見も見とるやろか?」
「……そうやなぁ……今年は一番綺麗よって、おかあはんは喜んではるやろ……」
「おじいちゃん。こっちこっち!昨日一番綺麗だった場所。祐次くんと三人で見に行こう?」
「おとうはんらは?」
「二人で見てるもの」
いつの間にか手を繋ぎ空や川辺を見ている両親を示し、祖父と手を繋ぎ歩き出した。
が、
「ウワッ!観月!またこけよる!」
「そそっかしいと言うか、おっとり嬢はんやなぁ、おばあはんに似とるわ」
「ご、ごめんなさい」
転びかけた観月のもう片方の手を握り、祐次は笑う。
「じゃぁ、一緒に行くか」
祖父と孫たちは、良く見えるその場所まで歩いていくのだった。
その後ろを追いかけ、走っていく。
盆地であるこの町は、周囲が山々があり、日が沈むのが少し早く、その代わりと言うように、山並みを赤く染める。
次第に暗くなるものの、先の車を追いかけて戻っていく。
そして、学校ではなく、その横を通り抜けていくのを、宇治が、
「どこに行くんかいな?」
「観月が待ってますよ。さっき、電話で連絡しておきました」
「観月が?」
「昨日は私たちと見たのですが、今日はおじいちゃんと見るんだとはしゃいでいましたよ」
「蛍……言うてたなぁ。タクシーの運転手はんも」
思い出す。
すると運転席の嵯峨が、ちらっと父を見て、
「えぇ。源氏蛍だけでなく平家蛍も見られます。昔、4人で行きませんでしたか?おとうはんが珍しく仕事がのうて、あてらも甚平はんを着せてもろて、おかあはんと」
「あぁ、行ったなぁ……でも、ちいそうて、弱々しかったなぁ……」
「ここは本当に昔から多いので有名だったそうですよ。で、それからも祐也くんや醍醐たちが、荒れた山を整備して、川をきれいにして、増やしていったんだそうです。今年は特に綺麗で……観月は目をキラキラさせて笑ってました。もうすぐですよ」
醍醐の車が停まっている隣に車を停めた嵯峨は、
「薄暗いので気を付けてくださいね」
と、柚月を下ろし、そして父に手を差し出す。
「あ、あぁ……わぁぁ!な、何や?」
スゥッと横を通りすぎた小さい命に、目を見開く。
「おとうはん。源氏蛍やがな……」
「いや、それに驚いたんやない、あれや!そ、空の星なんか?蛍か?」
「ここは結構空気が澄んでいるので、星も良く見えますが、森から降りてくるんですよ」
「おじいちゃん!」
テディベアを抱いた観月が駆け寄ってくる。
「おじいちゃん!こっち、一杯いるよ!」
「じいちゃん、気を付けて。足元暗いからさ」
少年から青年になりつつある、だが凛とした眼差しが印象的な少年が迎えに来る。
「あてはまだ若い!」
「あははは!じゃぁおっちゃんって呼ぼうか?あ、そっか、初めましてでした。俺は不知火祐次と言います。母を助けて戴いてありがとうございます。観月と同じ学校です」
「はぁぁ!あの不知火の息子か?……余り似とらんな?体型もほっそりしとるし……」
「母に似てるんです。妹の方が父に似ていると思います。でも、母をありがとうございます。先生のお陰です」
「それよりもものすごい剣幕で、あてに説教した柚月にお礼を言いなはれ。的確な判断のお陰や」
「まぁ……お父さん……」
頬を赤くする柚月に、宇治は笑う。
「あれは凄かったわ……ん?」
フワリフワリとほのかな灯りが宇治の回りを舞う。
そして、肩にそっと留まった。
「……恋人を探しにいかんかいな……」
告げるが、蛍は留まったまま、優しい光を放つ。
「何か、じいちゃんにまっとったよって言いよるんやろか?」
「あてを?……美園か?伏見やろか……?」
宇治は手を伸ばし、そっとすくうようにすると、手のひらに乗っている命の灯火に囁く。
「心配せんでかまへん……傍におるさかいに。おいきや」
手の中でチカチカと光った蛍は小さな羽を広げ、川辺へと飛んでいき、他の蛍と紛れていった。
「……綺麗やなぁ……。お墓の美園も伏見も見とるやろか?」
「……そうやなぁ……今年は一番綺麗よって、おかあはんは喜んではるやろ……」
「おじいちゃん。こっちこっち!昨日一番綺麗だった場所。祐次くんと三人で見に行こう?」
「おとうはんらは?」
「二人で見てるもの」
いつの間にか手を繋ぎ空や川辺を見ている両親を示し、祖父と手を繋ぎ歩き出した。
が、
「ウワッ!観月!またこけよる!」
「そそっかしいと言うか、おっとり嬢はんやなぁ、おばあはんに似とるわ」
「ご、ごめんなさい」
転びかけた観月のもう片方の手を握り、祐次は笑う。
「じゃぁ、一緒に行くか」
祖父と孫たちは、良く見えるその場所まで歩いていくのだった。
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