君のことを本当に……?
《手首》
救急車に運ばれる愛に、
「私がついていきます‼」
と柚月が手をあげる。
「どの病院でしょう?どれ位、時間がかかりますか?」
「ここから一番近い、総合病院に運びます」
ピシッ……
一瞬眉間にシワを寄せた嵯峨だが、平常心に戻り、
「寛爾さん。行きましょう。運転します」
「あてが着いていくさかいに、おとうはん、おかあはん。雛菊たちをよろしゅう」
「俺も行きまひょか?」
主李の声に、紫野は従弟を見る。
「優希がおるやろ?おってあげ」
紫野は嵯峨と寛爾を連れて駐車場に急ぐ。
「病院は……解りますか?」
「あぁ、あてら……特に標野はよういっとる」
運転席に座りつつ、告げる。
「大原総合病院。嵯峨の実家や」
「……は?病院?」
隣の席でメールをしている嵯峨を見る。
嫌そうに、
「もう20年帰ってません。愛さんと柚月さんのことがなかったら、帰るつもりはありませんでした」
「そやさかい、よう知らん寛爾はんに噛み付くな。寛爾はん。あんなぁ……嵯峨は長男で、一応正妻の息子。下に伏見言うて……てておやがお妾はんに生ませた子がおって……伏見は母親が再婚するて、置いてったんや。で、おかあはんに分け隔てのう育てられたんやけど、婆はんが、嫁である母親に浮気を許したの何だのといびり、伏見を折檻して……てておやは仕事が忙しいの何のと傍観するだけ。それでもって無理矢理医者にされそうになったんを、高校卒業後におかあはんと伏見と東京に逃げてな……」
「言わんでいい……」
「知っとってもろた方が、よかろ?おかあはんは20の時やったかいな……長年の労苦で亡くなり、伏見も……葬式に顔も見せはらへんかったおとうはんたちには複雑なんや……」
「こんで良かった。いつでも逝ってくれ思とるわ……遺産放棄しとるさかい、籍だけや」
吐き捨てる。
「……ここに来るのも、本当は胸くそ悪うてあかんわ。仕事やと割りきることもできひん……情けないことや。……柚月さんをだしにしてしもた……。でもようよう言える。あの二人に、籍を抜いて貰うわ」
「嵯峨……個人病院ってのは、院長だけやのうて、医療法人やさかいに、理事長他おるはずや。まぁ、嵯峨が今から医大ってのはあかんやろう。でも、院長の息子ならある程度関わらんとあかん……」
「あては弁護士や。医師になろうとした伏見を受け入れんかったんは、向こうや」
「嵯峨も理事になることはできるんやないか?」
「忙しいのに、余計に増やすんはやめてくれへんかなぁ」
本気で嫌そうに顔をしかめる。
「今はこの事案と、観月ちゃんのことを錦に伝えておく……電話かける」
話を打ちきり、電話を操作する。
「……もしもし、錦」
『また、仕事増やすの?』
「違う。愛さんが倒れて……大原総合病院に運ばれている。寛爾さんとサキと追いかけている」
『エェェ‼大丈夫なの?』
情に厚い錦は、本気で心配そうである。
「柚月さんが付き添われている」
『あ、そっか。柚月さん、看護師だものね。でも、大丈夫なの?』
「診断書を書かせる。提出する。入院も必要だと思う」
『そうね。あ、そうそう。柚月さんの両親にお会いしたわ。息子さんの結婚知らなかったみたいで、観月ちゃんを脅したこととか、伝えておいたわ。そうしたら、首を掴んでぶら下げていたぶったり、手足を縛って押入れに閉じ込めたり、していたみたいね。夜泣きが一時期激しかったらしいわ。高所恐怖症なんですって、観月ちゃん』
「……柚月さんが話していた。何度か殺してしまいたいと思ったらしい」
低い声で囁くと、けろっと、
『そりゃそうよ。母親だもの。子供の方が大事よ。柚月さんは、兄よりも観月ちゃんを選んだ。自分が母親だと決めたのよ。でも、このままでは実の父親の方がお金も仕事もあるし、親権といい、今回の事件の裁判の慰謝料をバカ親が取り上げるでしょうね。それを阻止するには、一つ……二つかしらね』
「……柚月さんが仕事をしていること……」
『それだけじゃないわ。観月ちゃんが十分に生活できる財力のある父親がいること……柚月さんが再婚することね。その方が有利だわ』
錦は言い放つと、
『まぁ、そんな相手がいればね?頑張りなさいな。嵯峨。じゃぁね。人の色恋に口出しする程暇じゃないのよ』
とかちゃんと電話を切った。
「……クソッ」
スマホを睨み付ける。
「嵯峨。そろそろ到着や。駐車場は混んどる。あては一回おいはんの家に帰るさかいに。迎えに来る。電話しいや」
「あぁ。じゃぁ、寛爾さん」
車から降りると、目を伏せ大きく息を吐くと歩き出した。
救急車が運ばれていった場所は大体解る。
医師や看護師などの邪魔はしないように向かっていく。
すると、嵯峨が会いたくない人間が立っていた。
いや、
「なんや、一般人が何をしとるんや‼」
と、愛に付き添う柚月にシワの寄った顔でねめつけている。
「一般人ではありません‼看護師です‼事情があり退職していますが、すぐに再就職するつもりです‼それよりも、医師を‼」
「あてや‼」
「ならば、すぐに診察を‼」
「何も知らんで、命令せんで貰えんかな?」
老齢の医師に、柚月が食って掛かる。
「四の五の言わずに急患を診なさい‼問答の暇はないんですよ‼貴方は医師ですか?それともただの地蔵さんですか‼地蔵なら出ていきなさい‼」
邪魔です‼
柚月の剣幕に、周囲の看護師や若手の医師が真っ青になる。
この病院の絶対権力者に食って掛かる、しかも華奢な女性である。
「何が地蔵はんや‼」
「それともお人形ですか?役に立つ医師を呼んで下さい‼」
患者優先の柚月の言葉に、吹き出しそうになりつつ、
「失礼します。柚月さん。愛さんは?もし、ここで突っ立っている全く役に立たない医師や看護師で、愛さんの病状が悪化したら、転院させましょう。それとももう、行きましょうか?電話しますし」
「そうしてください。全く動かない……苦しんでいる患者に何もしないなら、救急患者を受け入れないで下さいませんか?非常に迷惑です‼」
柚月は厳しい顔で吐き捨てる。
「大原さん。今すぐもう一度救急車を」
「そうですね……本当に、ここで突っ立って何してるんでしょうね?」
電話を掛ける。
「もしもし。救急要請を。大原総合病院に搬送された患者を、医師や看護師が全く動いてくれないのです。転院を。よろしくお願い致します」
「何を言っている‼診ないと言っていない‼」
「見ていませんし、動いてませんよね?」
嵯峨は嘲笑する。
「耄碌しましたか?大原院長?では、救急車を至急要請よろしくお願い致します」
電話を切り、
「救急車が来るまで、出入り口で待機しましょう。では、院長先生」
「嵯峨‼」
「……仕事中ですよね?仕事もせず、緊急の患者さんにも対応せず、何をされておいでですか?それに失礼ですが、軽々しく人の名前を呼んで欲しくないのですが?貴方と私の間に、名前を呼ばれる筋合いも縁もありませんが?失礼」
「いい加減に……」
「こちらから縁を切りたいと書類を送っても、返答がなかったのはそちらでしょう?後日、正式に弁護士をたててよろしくお願い致しますね?失礼します」
立ち去ろうとすると、一人の医師が、
「こちらに‼転院よりも、こちらで治療を致します。どうぞ、急いで‼看護師‼対応が遅い‼」
と、指示しながら連れていった。
「嵯峨……」
「……寛爾さん。失礼。電話をしに出ます」
「解りました。待っています。柚月さんも出てくるでしょうし」
嵯峨を見送り、寛爾は緊急診療室を見つめる。
「……電話にもでん‼手紙も帰ってくる。会うことも拒絶する……‼」
苦しげに吐き捨てる老人……院長に、寛爾は、
「自分勝手に生きた人間が、そのように言うそうですよ。相手を思いやることも出来ないのなら解放して差し上げたら如何です?」
「何やて‼」
「人の意見も聞けない、過去の遺物……そんな風になるなとおっしゃられていた貴方が、なられているのですね?宇治先生?」
「……もしかして、不知火か?」
「もしかしなくてもそうですが?昔は、お母様やお父様のことを文句ばかりでしたが、今度は息子さんを自分がなりたくないといっていた親になって束縛されているようですね」
酷薄に笑う。
大原宇治……過去に、寛爾がかかっていたスポーツドクターだった人である。
個人病院の跡取り息子として医者になったものの、実家には帰らずスポーツ選手のチームドクターとして怪我をする選手を診ていた。
昔、一時期付き合いがあったのだが、久しぶりに再会してみれば……変わるものである。
その上、今まで気がつかない程、親子は似ていなかった。
嵯峨は鋭い眼差しではあるものの、柔和な顔立ちは母親に似たらしい。
「そう言えば……私の後輩の輝……妊娠して柔道を辞めましたね?輝の主治医でしたよね?輝は?」
「う、五月蠅い‼」
「……やっぱり。輝の子供は貴方の子供でしたか。輝が3才位の子供を、抱いて歩いていたのを見たことがあります。輝の子供が嵯峨さんの弟でしたか……」
「不知火さん‼伏見の……お母さんをご存知だったんですか‼」
背後から愕然とした声が響く。
寛爾は首をすくめる。
「旧姓、吉岡輝。現在は南本輝監督」
格闘技の元代表で、現在は監督として率いている。
今でも大スキャンダルである。
嵯峨は言葉を失ったのだった。
「私がついていきます‼」
と柚月が手をあげる。
「どの病院でしょう?どれ位、時間がかかりますか?」
「ここから一番近い、総合病院に運びます」
ピシッ……
一瞬眉間にシワを寄せた嵯峨だが、平常心に戻り、
「寛爾さん。行きましょう。運転します」
「あてが着いていくさかいに、おとうはん、おかあはん。雛菊たちをよろしゅう」
「俺も行きまひょか?」
主李の声に、紫野は従弟を見る。
「優希がおるやろ?おってあげ」
紫野は嵯峨と寛爾を連れて駐車場に急ぐ。
「病院は……解りますか?」
「あぁ、あてら……特に標野はよういっとる」
運転席に座りつつ、告げる。
「大原総合病院。嵯峨の実家や」
「……は?病院?」
隣の席でメールをしている嵯峨を見る。
嫌そうに、
「もう20年帰ってません。愛さんと柚月さんのことがなかったら、帰るつもりはありませんでした」
「そやさかい、よう知らん寛爾はんに噛み付くな。寛爾はん。あんなぁ……嵯峨は長男で、一応正妻の息子。下に伏見言うて……てておやがお妾はんに生ませた子がおって……伏見は母親が再婚するて、置いてったんや。で、おかあはんに分け隔てのう育てられたんやけど、婆はんが、嫁である母親に浮気を許したの何だのといびり、伏見を折檻して……てておやは仕事が忙しいの何のと傍観するだけ。それでもって無理矢理医者にされそうになったんを、高校卒業後におかあはんと伏見と東京に逃げてな……」
「言わんでいい……」
「知っとってもろた方が、よかろ?おかあはんは20の時やったかいな……長年の労苦で亡くなり、伏見も……葬式に顔も見せはらへんかったおとうはんたちには複雑なんや……」
「こんで良かった。いつでも逝ってくれ思とるわ……遺産放棄しとるさかい、籍だけや」
吐き捨てる。
「……ここに来るのも、本当は胸くそ悪うてあかんわ。仕事やと割りきることもできひん……情けないことや。……柚月さんをだしにしてしもた……。でもようよう言える。あの二人に、籍を抜いて貰うわ」
「嵯峨……個人病院ってのは、院長だけやのうて、医療法人やさかいに、理事長他おるはずや。まぁ、嵯峨が今から医大ってのはあかんやろう。でも、院長の息子ならある程度関わらんとあかん……」
「あては弁護士や。医師になろうとした伏見を受け入れんかったんは、向こうや」
「嵯峨も理事になることはできるんやないか?」
「忙しいのに、余計に増やすんはやめてくれへんかなぁ」
本気で嫌そうに顔をしかめる。
「今はこの事案と、観月ちゃんのことを錦に伝えておく……電話かける」
話を打ちきり、電話を操作する。
「……もしもし、錦」
『また、仕事増やすの?』
「違う。愛さんが倒れて……大原総合病院に運ばれている。寛爾さんとサキと追いかけている」
『エェェ‼大丈夫なの?』
情に厚い錦は、本気で心配そうである。
「柚月さんが付き添われている」
『あ、そっか。柚月さん、看護師だものね。でも、大丈夫なの?』
「診断書を書かせる。提出する。入院も必要だと思う」
『そうね。あ、そうそう。柚月さんの両親にお会いしたわ。息子さんの結婚知らなかったみたいで、観月ちゃんを脅したこととか、伝えておいたわ。そうしたら、首を掴んでぶら下げていたぶったり、手足を縛って押入れに閉じ込めたり、していたみたいね。夜泣きが一時期激しかったらしいわ。高所恐怖症なんですって、観月ちゃん』
「……柚月さんが話していた。何度か殺してしまいたいと思ったらしい」
低い声で囁くと、けろっと、
『そりゃそうよ。母親だもの。子供の方が大事よ。柚月さんは、兄よりも観月ちゃんを選んだ。自分が母親だと決めたのよ。でも、このままでは実の父親の方がお金も仕事もあるし、親権といい、今回の事件の裁判の慰謝料をバカ親が取り上げるでしょうね。それを阻止するには、一つ……二つかしらね』
「……柚月さんが仕事をしていること……」
『それだけじゃないわ。観月ちゃんが十分に生活できる財力のある父親がいること……柚月さんが再婚することね。その方が有利だわ』
錦は言い放つと、
『まぁ、そんな相手がいればね?頑張りなさいな。嵯峨。じゃぁね。人の色恋に口出しする程暇じゃないのよ』
とかちゃんと電話を切った。
「……クソッ」
スマホを睨み付ける。
「嵯峨。そろそろ到着や。駐車場は混んどる。あては一回おいはんの家に帰るさかいに。迎えに来る。電話しいや」
「あぁ。じゃぁ、寛爾さん」
車から降りると、目を伏せ大きく息を吐くと歩き出した。
救急車が運ばれていった場所は大体解る。
医師や看護師などの邪魔はしないように向かっていく。
すると、嵯峨が会いたくない人間が立っていた。
いや、
「なんや、一般人が何をしとるんや‼」
と、愛に付き添う柚月にシワの寄った顔でねめつけている。
「一般人ではありません‼看護師です‼事情があり退職していますが、すぐに再就職するつもりです‼それよりも、医師を‼」
「あてや‼」
「ならば、すぐに診察を‼」
「何も知らんで、命令せんで貰えんかな?」
老齢の医師に、柚月が食って掛かる。
「四の五の言わずに急患を診なさい‼問答の暇はないんですよ‼貴方は医師ですか?それともただの地蔵さんですか‼地蔵なら出ていきなさい‼」
邪魔です‼
柚月の剣幕に、周囲の看護師や若手の医師が真っ青になる。
この病院の絶対権力者に食って掛かる、しかも華奢な女性である。
「何が地蔵はんや‼」
「それともお人形ですか?役に立つ医師を呼んで下さい‼」
患者優先の柚月の言葉に、吹き出しそうになりつつ、
「失礼します。柚月さん。愛さんは?もし、ここで突っ立っている全く役に立たない医師や看護師で、愛さんの病状が悪化したら、転院させましょう。それとももう、行きましょうか?電話しますし」
「そうしてください。全く動かない……苦しんでいる患者に何もしないなら、救急患者を受け入れないで下さいませんか?非常に迷惑です‼」
柚月は厳しい顔で吐き捨てる。
「大原さん。今すぐもう一度救急車を」
「そうですね……本当に、ここで突っ立って何してるんでしょうね?」
電話を掛ける。
「もしもし。救急要請を。大原総合病院に搬送された患者を、医師や看護師が全く動いてくれないのです。転院を。よろしくお願い致します」
「何を言っている‼診ないと言っていない‼」
「見ていませんし、動いてませんよね?」
嵯峨は嘲笑する。
「耄碌しましたか?大原院長?では、救急車を至急要請よろしくお願い致します」
電話を切り、
「救急車が来るまで、出入り口で待機しましょう。では、院長先生」
「嵯峨‼」
「……仕事中ですよね?仕事もせず、緊急の患者さんにも対応せず、何をされておいでですか?それに失礼ですが、軽々しく人の名前を呼んで欲しくないのですが?貴方と私の間に、名前を呼ばれる筋合いも縁もありませんが?失礼」
「いい加減に……」
「こちらから縁を切りたいと書類を送っても、返答がなかったのはそちらでしょう?後日、正式に弁護士をたててよろしくお願い致しますね?失礼します」
立ち去ろうとすると、一人の医師が、
「こちらに‼転院よりも、こちらで治療を致します。どうぞ、急いで‼看護師‼対応が遅い‼」
と、指示しながら連れていった。
「嵯峨……」
「……寛爾さん。失礼。電話をしに出ます」
「解りました。待っています。柚月さんも出てくるでしょうし」
嵯峨を見送り、寛爾は緊急診療室を見つめる。
「……電話にもでん‼手紙も帰ってくる。会うことも拒絶する……‼」
苦しげに吐き捨てる老人……院長に、寛爾は、
「自分勝手に生きた人間が、そのように言うそうですよ。相手を思いやることも出来ないのなら解放して差し上げたら如何です?」
「何やて‼」
「人の意見も聞けない、過去の遺物……そんな風になるなとおっしゃられていた貴方が、なられているのですね?宇治先生?」
「……もしかして、不知火か?」
「もしかしなくてもそうですが?昔は、お母様やお父様のことを文句ばかりでしたが、今度は息子さんを自分がなりたくないといっていた親になって束縛されているようですね」
酷薄に笑う。
大原宇治……過去に、寛爾がかかっていたスポーツドクターだった人である。
個人病院の跡取り息子として医者になったものの、実家には帰らずスポーツ選手のチームドクターとして怪我をする選手を診ていた。
昔、一時期付き合いがあったのだが、久しぶりに再会してみれば……変わるものである。
その上、今まで気がつかない程、親子は似ていなかった。
嵯峨は鋭い眼差しではあるものの、柔和な顔立ちは母親に似たらしい。
「そう言えば……私の後輩の輝……妊娠して柔道を辞めましたね?輝の主治医でしたよね?輝は?」
「う、五月蠅い‼」
「……やっぱり。輝の子供は貴方の子供でしたか。輝が3才位の子供を、抱いて歩いていたのを見たことがあります。輝の子供が嵯峨さんの弟でしたか……」
「不知火さん‼伏見の……お母さんをご存知だったんですか‼」
背後から愕然とした声が響く。
寛爾は首をすくめる。
「旧姓、吉岡輝。現在は南本輝監督」
格闘技の元代表で、現在は監督として率いている。
今でも大スキャンダルである。
嵯峨は言葉を失ったのだった。
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