君のことを本当に……?

ノベルバユーザー173744

《足》

 何かが聞こえ、キャハキャハと笑い声に、

「ごはーん‼」
祐次ゆうじ兄ちゃん、起きろ~」
「グハァァ‼上に乗るな~風早かざはや那岐なぎ。お前たちがすると、だぁぁ‼六花りっかあぁぁ‼」

祐次の悲鳴に、観月みづきは目を覚ました。
 すると、女の子たち……いや、その中に穐斗あきと……もいる。

「あ、おはようございます……」
「観月ちゃん。晩御飯だよ~?」
「はい、お姉ちゃん。上に着てねって」
「ありがとう」

 カーディガンを羽織ると微笑む。
 腕に抱いていたテディベアを見ると、

「おはよう……えっと、風遊ふゆさんが作られたから、風月ふうげつ……」
「観月。おはよう」

 近くに聞こえる声がどこかで聞こえた声に似ていた気がする……が、はっとすると、隣の布団で子供たちとバタバタ遊んでいる。

「こらぁ‼今日は風早もか‼外で遊んでこんかったんか~‼」
「遊んだらいかんって、父さんが言ったんだもん‼一応、僕はいいけど、那岐と穐斗がいかんって」
「穐斗がとろくさいんよ」
「……ウッ……ご、ごめんなさい……」
「穐斗はかまんのよ。悪ないで?」

 幼馴染みで年の近い男の子3人のうち、風早はしっかり者、穐斗はおっとり、那岐はやんちゃ坊主らしい。
 他の子は皆女の子だけに、男の子3人で結束は固いのだが、身体能力の面と性格で合わないらしい。

「穐斗くん、この子、風遊さんに戴いたの。初めまして、風月と言います。よろしくお願い致します」

 ベアにぺこんっと頭を下げさせる。
 目をキラキラさせて、いつも抱いているテディベアを寄せると、

「初めまして。弁慶と義経です。よろしくね」

えへへっ

嬉しそうに照れ笑う。
 その間に祐次が小さい子供たちをだっこし、手を伸ばす。

「観月。いこや。晩御飯食べな元気でんで?」
「あ、うん‼」

 手を握りしめ、隣の部屋に向かう。
 すると、もう終わりになる山菜の料理や、タケノコ料理を初めとして幾つもの料理が所狭しと並んでいる。

「うわぁ……凄いです……」

 呟くと、晴海はるみが、

「家は家族皆で食べるんよ。大丈夫かね?観月ちゃん」
「あ、はい。よく眠れました」
「それは良かったわ。食べれんかったら、食べれる分だけお食べや?寝よる間に皆でいよったんやけど、祐次はひなのとこに、葵衣あおいほたるのとこに、観月ちゃんはここにおるといいわ」
「は、はい……でも、申し訳なくて……」
「気にせんでええ」

 蛍の祖父、麒一郎きいちろうは笑う。

「観月は家の子や。おうたことはないけどな、柚月ゆづきさんも家の子や。親が子を守らんでどないするんで。じいちゃんや兄ちゃんらに気兼ねせんで、ここにおりや」
「……ありがとうございます」
「ほら、冷める前にお食べや?」

 蛍に箸とご飯の入った茶碗を渡される。

「戴きます」

 が、驚いたのは、先に手を合わせて食べ始めた祐次の食欲に唖然とする観月である。

「す、凄い……」
「いや、俺より、ひな兄ちゃんみてみいや。滅茶苦茶食べるけん」

 よく見ると3人の青年のなかで、細身で理数系風の日向ひなたは、マナーはとてもいいのだが、バランスよくかなり食べている。
 引き締まっているが3人の中でがっしりした祐也もガッツリ……とは言え、肉類よりも山菜類が好物らしいが食べている。
 醍醐だいごは見た目に反してがっつり肉食である。

「……凄い……」
「ん?あぁ、俺達の食事か?」

 見た目は冷たそうだが、穏やかな性格らしい日向が微笑む。

「俺たちは普段は田畑を耕したり、猟犬の調教や、山を見回っているんだ。地域は昔、財産分与で手離した人の土地を他の人が買うんで、あちこちに土地が点在しとって、見えとるだけでも、こっちの山、あっちの山……山を二つ越えた辺りにもじいちゃんの土地もあるし……」
「最近は勝手に山に入って、山菜を根こそぎとったり、自生する山野草や風蘭ふうらんを盗掘するバカがおるんや」

 醍醐はため息をつく。

「あての家にも盗掘されんように、こっちに一時的に移して育てよるんやけど、よう来るわ……この下の……昼間来たやろ?この道を突き当たりまで行くと、祐也の家の土地になるんやけど、そこにようけ山菜や珍しい花が咲きよったのに全滅や。野生の蕗や三つ葉、ゼンマイ、わらび、家で食べる分の畑のわさびも獲られたわ」
「……えぇ‼」
「あてらの土地や。一応手入れと言うか、春はタケノコ、ふきのとう、蕗や石蕗つわぶきて、採れるように日当たりよくしたり、冬はあてら3人とじいちゃんが猟銃免許を持っとるけん、猟犬連れて山に入って猪を獲る」
「最近は猪が暖冬が続くせいか、増えていかんのや……。一応言うてなかったけど、その肉、猪なんよ」

 観月はきょとんとし、

「美味しいです‼それに、思った程癖がないんですね。でも、凄いと言うか……生きているってそういうことなんですね。でも、大変だと思うのですが、かっこいい……えーと、町の生活は目まぐるしいですが、でも、こういった故郷があって、おじいちゃんやおばあちゃんやお兄さんたちがいて、祐次くんも葵衣ちゃんも羨ましいです。暖かくて……初対面で迷惑しかかけない私に、こんなに優しくて……」
「何いよん」

ただすは少女を抱き締める。

「迷惑どころか、私なんて息子しかいないもの……あぁ、こんな可愛い娘が欲しかった……」
「ひなにお頼みや、すぅ先輩」
「いかんのよ~‼醍醐くん。ひなちゃん、『もう、風早と俺の苦労も考えてくれ……』だって。酷いでしょ?」
「まぁ、先輩と那岐がおったら……」
「お前の面倒を見る風遊さんと、祐也の苦労に比べたらましやな」

 冷たく日向は告げ、黙々食べている祐次に、

「祐次。明日は俺と祐也が山に入って間伐材や、折れとる木を薪にする為に持って降りるけん、今日はよう寝て明日頑張れよ」
「うん‼」
「お前のことだ、考えたところで醍醐程悪どうなれんわ。頭を使うんは、醍醐にさせなあかん。で、観月ちゃんは葵衣と、この下にある小さい店がある。風遊さんや、ばあちゃんたちの手伝いをしてくれんかな?」
「て、手伝いって……」
「ここの下には保育園と隣接して、俺が運営しよる図書館と、風遊さんのテディベアや委託を受けて預かったハンドメイド作品を売りよるんと、テディベアやハンドメイドの作る教室と、祐也の考えたこの地域の野菜などを販売する産直市に喫茶店がある。ドッグランもあって、それに保育園もある言うて、町からお母さんが子供を送りに来て、教室や食事にとなぁ」

観月は口を開ける。

「凄いです……こんな綺麗なとこに、そんなんが……」
「まぁ、試行錯誤を繰り返して、最近軌道に乗り始めたよ」

 祐也が苦笑する。

「手伝う言うか、遊んどいで。皆がどう感じるか気になるけん。お願いするわ」
「はい‼」

 観月は頷いたのだった。

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