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君のことを本当に……?

ノベルバユーザー173744

《心》……大切なもの

 何でだろう……。

 彪流たけるは茫然としていた。
 ただ、ツイッターに同級生が彼女らしい女の子……後で気がつくと同級生の観月みづきだった……と子供と歩いていたのをツイッターに、

『同じ学校の不知火しらぬいが彼女と子供と歩いてる』
『しかも子供用品売り場に行ってるけど、何買うんだろう?』

と送っただけ。

 それなのに、どうして?

 今現在、消去すればいいと思っていたがスマホを取り上げられ、何故か、目の前で告白合戦が始まり、テレテレモジモジと二人はしている。

 二人がくっついたのならいいではないか……。

と思っていた。
 電話を切った祐次の父親と名乗った男性は振り返ると、厳しい表情で、

「……個人情報を悪用したと、君のご家族に連絡したよ。お祖父様かな?慌てて、ご両親がアメリカにいるから戻るように連絡するそうだよ」
「えぇぇ?な、何で‼俺は‼」
「これを見て言える?」

祐次がテーブルに置いていたスマホを、赤ん坊の父親だと言う青年が操作して見せる。
 LINEの文章をスライドさせながら、

「この文章、どう?『ツイッター見たぜ』『お前、未成年なのに、子供いるのか?』『うわっ!最低‼』『お前……』これ以上は、読むのも嫌になるね。このメッセージを、何も知らない祐次は、受け取ってどう思う?困惑するし、その上、この何もしていない祐次の名誉を貶めることになるって解らないのかい?」
「だ、だって、普通……」
「普通ってなんだい?」

寛爾かんじは激怒していた。

「私の息子の情報を写真を、安易にネットに流して、ツイッターを見てみるといい‼きっと、このLINEよりも酷いことが書かれている‼それに、LINEは個人を固定できるけれど、ツイッターは拡散する‼」
「じゃ、今から訂正と削除……」
「出来るか‼馬鹿が‼これを見るがいい‼」

 寛爾のポケットに戻していたスマホのLINEを見せる、

『君の息子、大丈夫か?』
『まだ高校生なんだろう?』
『学校は良いところに行っているのに、辞めるしかないだろうね、残念だけど』
『君も大丈夫か?仕事に影響は?』

と言った文章が並んでいた。

「君が私の息子のあてずっぽうな情報を、ツイッターで広めるから‼こんなことになるんだ‼どうしてくれる⁉私の息子は何もしていない‼それなのに、この偽りの情報で、ここから一歩出てみろ‼何て言われると思う?家にも戻れない、外にも、学校にも行けない‼もし、君が拡散した写真で観月ちゃんのことが分かれば、観月ちゃんが、その家族が同じようになるんだ‼」

 ダーン‼

テーブルを叩く。

「この程度も解らなかったのか?ネットの恐ろしさを、理解できないのか?君の家族はそんなことを教えないのか?」
「……す、済みません……」
「今更だ‼迎えにこられる君の家族にお伝えする‼私たちの仕事も、家も、全て失ってしまうことになる‼君の安易なこの行為が、私たちの家族を追い込んでいくんだ‼」

 寛爾は拳を握りしめ、項垂れる。

「私は、めぐみを愛していて……子供たちには苦しい目を遇わせたくなくて……」

 その呟きに、彪流はようやくことの重大さを思い知ったのだった。



 しばらくして、6人の男女と、真っ青な顔の彪流の祖父母が姿を見せる。

「も、申し訳ございません‼」
「本当に、本当に……‼」

 頭を下げ続ける彪流の祖父母に、姿を見せた6人のうちの一人が、

「申し訳ありません。私は、大原嵯峨おおはらさがと申します。被害者の弁護士です」
「えぇぇ‼」

弁護士まで呼ばれているとは思ってもいなかった彪流は真っ青になる。

「今回の件は悪質です。祐次くんの名誉毀損……拡散してしまった偽りの情報の為に、正直に正しいことを述べても、噂は噂を呼び、祐次くんの身に何が起きるか解りませんので、申し訳ありませんが、謝罪では意味がありません」
「で、ですが……」

 着物姿の上品な老婆に、嵯峨は繰り返す。

「貴殿方のお孫さんが、被害者の少年にされたのは、いいじめよりも卑怯で狡い、最低の行為です。解りませんか?ツイッターを調べましたが、祐次くんの名前は一気に広がっていますよ?祐次くんのお父さんが元武道家として有名で、お父さんの名誉も貶められている‼今更、謝罪をされても、無理なんですよ‼」
「ツイッター……と言うのは……」
「お二人はご存知ありませんか……世界中に広がるインターネットのInstagramインスタグラム……無料の情報共有できるシステムと思って下さい。そこには写真を貼り付け、140文字まで文章を書きこみ送ると誰でも情報を見ることができます。まさしく『世界中』です。ある国の大統領や首相などが『呟いています』ね?あれですよ。安易に通称やペンネームで『呟く』ことができ、本名ではないので、誰が言っているのか解らない。でも、情報は一気に広がるでしょう?」
「う、うちの孫がしたと……」
「本人が言いましたよ」

 哲哉てつやがうんざりとしたように答える。

「何が悪いの?と言いたげでした。祐次くんのところに届くメールでもLINEにも酷いことを書かれて、解りますか?私の娘を抱いて、私の知人の娘さんと話している写真です。それを、貴方のお孫さんが送った為に、『ツイッター見たぜ』『お前、未成年なのに、子供いるのか?』『うわっ!最低‼』『お前……』と書かれてどう思います?しかも、貴方のお孫さんの通っている学校の同級生ですよ?二年生で、来年は受験‼どう影響すると思うんです‼」
「彪流‼」
「喧嘩はご自宅でどうぞ。祐次。葵衣あおいもおいで」

 前に出てきた一人の青年が、祐次と観月を守るようにして出ていく。
 後ろを追いかけて出ようとした葵衣は、

「お兄ちゃんも子供っぽいことするけど、貴方は本当の子供みたい。本当に最低‼」

と言い、兄たちを追いかけていったのだった。

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