君のことを本当に……?
《胸》……家族の想い
観月は母はなく父は忙しい家で育った。
父子家庭は、やはり父は仕事に家事にとへとへとで、自分に暴力まではなかったものの、暴言や物を壊し、自分が何かを仕出かせば、壊れてしまうのではないかと思っていた。
父が転勤になった時、家族会議で叔母の柚月の家に身を寄せた。
柚月は離婚したばかりで、しかも、夫の浮気だったため慰謝料を受け取っていたが、自立をすると看護師の資格を利用し働いていた。
柚月との生活は居心地は悪くなかったが、まだまだ若く、綺麗なのに姪を引き取って面倒をかけて申し訳ないなぁと思っていた。
「ただいま」
「お返りなさい。観月」
柚月の勤める病院は個人病院で、入院はない。
基本的に定時出勤で、帰宅はその日に受け持つ仕事を終えるとである。
もし、病院に通院している患者さんが不調の連絡をしてきたら、その場合、先生と交代制で電話を担当する看護師の受け持ちである。
これもシフト制なのだが、現在未婚の柚月は土日の、どちらかに仕事を入れていた。
観月には教えていないのだが、観月の父から定期的に入るはずの学費等が、一年以上前から入ってこなくなっていた。
連絡もなく、両親である観月の祖父母もやきもきしている状態である。
慰謝料を崩してもいいが、柚月は勘の良い観月が気づくのではないかと不安でやめていた。
その代わり、土日シフトに入り収入を増やしている。
「柚月姉ちゃん。大丈夫?お疲れ様です」
「いえいえ」
別れた夫との間に子供はいなかったが、観月が娘同然の存在である。
可愛くて仕方がない。
「観月?今日は、腕によりをかけて作ったからね~?」
「本当?」
「本当本当。だから着替えして手を洗って来なさい」
「うん‼」
部屋に入っていく姪を見送り、微笑む。
そして、食事が終わる頃、観月が口を開く。
「柚月姉ちゃん。あのね?クラスメイトの不知火君……」
「あぁ、時々会うきりっとした子でしょ?礼儀正しい、今どきにしてはもの凄くしっかりしていて、かっこいい子よね」
柚月は、どう見ても小柄で小動物系にしか見えない……可愛い姪が苛められたらととても気になっていたのだが、入学早々、不知火祐次と言う少年と出会い、助けて貰って仲良くなったと言ってきたので驚いた。
出来て同性の友人だろうと思ったのだが、助けて貰ったと言う事情を聞き、真っ青になった。
人の波に圧されて潰れそうになっていたのを、救いだして貰ったのだと言う。
小柄で本当に高校生には見えない観月は、体格的にも筋力でも劣る。
助かって、無傷で良かったとホッとしたものである。
それからも女の子の友達の話はなく、苛め?と心配したものの、そうではなく、苦手な英語や理数系の解らないところを先輩や祐次と勉強しているのだと言う。
おしゃれとか考えてもいい年頃なのにと思いつつ見守っていたのだが……。
「あのね?今週末、不知火くんとお出掛けしてもいいかな?それとね。来週も」
「えっ?デート?」
「ち、違うよ~‼」
頬を赤くして必死で首を振る。
そのしぐさは可愛いけれど、先日、
「と、撮って貰ったの……」
ともじもじとしながら、お姫様だっこされている写メと、京都の老舗和菓子店のお菓子を差し出してきた。
「不知火くんの従姉のお姉さんの旦那さんのお店なんだって」
「へぇ~、不思議なご縁ね」
「うん‼あのね?内緒だけど……」
スマホを操作し、別の写真を見せる。
祐次と観月ともう一人……。
「エェェ‼安部媛選手じゃない‼」
「うん‼不知火くんの従姉なの」
「すごいわね。でも一緒に撮って貰って良かったじゃない」
と言う会話をしたばかりである。
「あのね?不知火くんのお父さんの後輩の奥さんが二人目を妊娠していて、もう少ししたら生まれるんだって。でね?買い物に付き合ってくれって」
「まぁそうよね……家具とか大きいし……でも、観月は?」
「ベビー服とか探して欲しいって。初産だった前はつわりとか解らないことが多くて大変で、買いに行ってなかったんだって」
「まぁ、男の子か女の子かもあるしね……」
柚月は頷く。
自分は妊娠経験はないが、友人は大変そうだった。
「で、来週は?」
「あのね?不知火くんの従兄……媛選手のお兄さんたちがいる地域でお祭りがあって、家族と一緒だけど一緒に行かないかって、珍しいものが見られるんだって‼」
普段はおっとりだが、嬉しいと頬が赤くなり、口調が早くなる。
「行ってもいい?」
「……良いわよ。祐次くんは観月のお友達だし。あ、ご挨拶しておこうかしら?」
「えっ?」
「何言ってるの?私は観月の家族だもの。挨拶だけはしておかないと……今週末にお会いできるかしら?」
微笑む。
ただ一人の家族……もし兄と連絡がついたら、親権を譲って貰うつもりである。
まだ正式な親ではないが、養女に迎えて、観月には幸せになって欲しいと思ったのだった。
父子家庭は、やはり父は仕事に家事にとへとへとで、自分に暴力まではなかったものの、暴言や物を壊し、自分が何かを仕出かせば、壊れてしまうのではないかと思っていた。
父が転勤になった時、家族会議で叔母の柚月の家に身を寄せた。
柚月は離婚したばかりで、しかも、夫の浮気だったため慰謝料を受け取っていたが、自立をすると看護師の資格を利用し働いていた。
柚月との生活は居心地は悪くなかったが、まだまだ若く、綺麗なのに姪を引き取って面倒をかけて申し訳ないなぁと思っていた。
「ただいま」
「お返りなさい。観月」
柚月の勤める病院は個人病院で、入院はない。
基本的に定時出勤で、帰宅はその日に受け持つ仕事を終えるとである。
もし、病院に通院している患者さんが不調の連絡をしてきたら、その場合、先生と交代制で電話を担当する看護師の受け持ちである。
これもシフト制なのだが、現在未婚の柚月は土日の、どちらかに仕事を入れていた。
観月には教えていないのだが、観月の父から定期的に入るはずの学費等が、一年以上前から入ってこなくなっていた。
連絡もなく、両親である観月の祖父母もやきもきしている状態である。
慰謝料を崩してもいいが、柚月は勘の良い観月が気づくのではないかと不安でやめていた。
その代わり、土日シフトに入り収入を増やしている。
「柚月姉ちゃん。大丈夫?お疲れ様です」
「いえいえ」
別れた夫との間に子供はいなかったが、観月が娘同然の存在である。
可愛くて仕方がない。
「観月?今日は、腕によりをかけて作ったからね~?」
「本当?」
「本当本当。だから着替えして手を洗って来なさい」
「うん‼」
部屋に入っていく姪を見送り、微笑む。
そして、食事が終わる頃、観月が口を開く。
「柚月姉ちゃん。あのね?クラスメイトの不知火君……」
「あぁ、時々会うきりっとした子でしょ?礼儀正しい、今どきにしてはもの凄くしっかりしていて、かっこいい子よね」
柚月は、どう見ても小柄で小動物系にしか見えない……可愛い姪が苛められたらととても気になっていたのだが、入学早々、不知火祐次と言う少年と出会い、助けて貰って仲良くなったと言ってきたので驚いた。
出来て同性の友人だろうと思ったのだが、助けて貰ったと言う事情を聞き、真っ青になった。
人の波に圧されて潰れそうになっていたのを、救いだして貰ったのだと言う。
小柄で本当に高校生には見えない観月は、体格的にも筋力でも劣る。
助かって、無傷で良かったとホッとしたものである。
それからも女の子の友達の話はなく、苛め?と心配したものの、そうではなく、苦手な英語や理数系の解らないところを先輩や祐次と勉強しているのだと言う。
おしゃれとか考えてもいい年頃なのにと思いつつ見守っていたのだが……。
「あのね?今週末、不知火くんとお出掛けしてもいいかな?それとね。来週も」
「えっ?デート?」
「ち、違うよ~‼」
頬を赤くして必死で首を振る。
そのしぐさは可愛いけれど、先日、
「と、撮って貰ったの……」
ともじもじとしながら、お姫様だっこされている写メと、京都の老舗和菓子店のお菓子を差し出してきた。
「不知火くんの従姉のお姉さんの旦那さんのお店なんだって」
「へぇ~、不思議なご縁ね」
「うん‼あのね?内緒だけど……」
スマホを操作し、別の写真を見せる。
祐次と観月ともう一人……。
「エェェ‼安部媛選手じゃない‼」
「うん‼不知火くんの従姉なの」
「すごいわね。でも一緒に撮って貰って良かったじゃない」
と言う会話をしたばかりである。
「あのね?不知火くんのお父さんの後輩の奥さんが二人目を妊娠していて、もう少ししたら生まれるんだって。でね?買い物に付き合ってくれって」
「まぁそうよね……家具とか大きいし……でも、観月は?」
「ベビー服とか探して欲しいって。初産だった前はつわりとか解らないことが多くて大変で、買いに行ってなかったんだって」
「まぁ、男の子か女の子かもあるしね……」
柚月は頷く。
自分は妊娠経験はないが、友人は大変そうだった。
「で、来週は?」
「あのね?不知火くんの従兄……媛選手のお兄さんたちがいる地域でお祭りがあって、家族と一緒だけど一緒に行かないかって、珍しいものが見られるんだって‼」
普段はおっとりだが、嬉しいと頬が赤くなり、口調が早くなる。
「行ってもいい?」
「……良いわよ。祐次くんは観月のお友達だし。あ、ご挨拶しておこうかしら?」
「えっ?」
「何言ってるの?私は観月の家族だもの。挨拶だけはしておかないと……今週末にお会いできるかしら?」
微笑む。
ただ一人の家族……もし兄と連絡がついたら、親権を譲って貰うつもりである。
まだ正式な親ではないが、養女に迎えて、観月には幸せになって欲しいと思ったのだった。
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