スクールライフCREATORs

石原レノ

助言

「はぁはぁ……」
キツかった。今はその一言しか考えることも、発する事も出来ない。
決心をしたところまでは良かった。しかし問題はその先にあったのだ。數十分かけてやっとの事でゆかりを見つけたと思えば、目があった瞬間に颯爽と逃げ去ってしまうのだ。それも僕が追いつけないようなスピードで…。
かれこれ三回見つけては追いかけっこを繰り返しているが、追いつける兆しすらない。
正直僕の体力も限界に近かった。
「なんでゆかりちゃんあんなに足速いんだろう…全く追いつける気がしない…」
肩で息をしながら頬を伝う汗を拭き取る。周りから不審な目で見られるが、気にしている暇はない。息が整うよりも前に、僕は再度ゆかりちゃん大捜査線を再実行した。
「確かこっちの方に逃げたと思うんだけどなぁ…」
「人探し?」
誰もいない廊下の道を、僕は1人歩いていた。今日行われる祭では使わない棟なはずなのに、僕の背後から声がかかる。
「…生徒会長」
僕に声をかけてきたのは、僕が通う天ノ華学園の生徒会長である、篠飛良凪咲しのひらなぎさだった。凪咲は腰に手を当てながらこちらを見つめている。
「私のことは名前で呼んで。その方が親しみやすいでしょ?瞬君」
「は、はぁ…」
「話を戻すけど、瞬君は誰か探しているのかしら?」
そこで僕は、いままでのいきさつを、事件の発端を除いて打ち明けた。全て聴き終わったところで、凪咲は「ふぅん…」と言いながら口を開く。
「つまり瞬君がゆかりちゃんにいかがわしい事をしたのね」
「なんでそうなるんですか!僕今ちゃんと説明しましたよね!?」
「その説明には肝心な部分が抜けているように思えたのだけれど?」
凪咲の痛い質問に、僕は顔をしかめる
その反応を見た凪咲は、予想通りとでも言いたげにため息をこぼした。
「で、でも本当にいかがわしい事なんてしていません!本当です!」
「別にそこまで疑ってはいないわ。あなたには本当に感謝しているし、何にせよあなたにそんな事出来ないことくらい重々承知しているもの」
まるで全てお見通しとでも言いたげな一言に、僕は言葉を詰まらせる。
「ゆかりちゃんなら屋上の方にかけて行くのを見たわ。急いで行けば間に合うんじゃないかしら」
「ほ、本当ですか!?」
凪咲の言葉を聞いて、僕は目を見開いた。
「生徒の代表たる生徒会長が嘘なんてついてたら、それこそ問題になるわ」
そう言いながら、凪咲は僕の横腹をバシッと叩く。行って来いという合図らしい。
「ありがとうございます凪咲先輩!!」
一目散に駆け抜けて行った僕の背中を見送り、凪咲は1人優しい笑みを浮かべる。
「さて、可愛い後輩のために仕事しなくちゃね」   

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