スクールライフCREATORs

石原レノ

生徒会のお手伝いを

「あ、先輩こっちですこっち!」
校舎に到着すると、玄関で見慣れた2人が立っていた。
僕に声をかけてきたのが、高等部1年の環乃琉歌かんのりゅうか。そして彼女の横に立つ小柄な女の子は中等部2年の新野にいのゆかりである。
「待ったかな?僕に用って―」
「喜んで下さい先輩。私は先輩の為に仕事を見つけてきました!」
「……ただ単に手が回らなくなって先輩を頼った始末の人が何言ってんですか……」
「さぁ行きましょう先輩!こっちです!」
ボソボソと何かを言っているゆかりの言葉を遮るように大声を出し、歩み出す琉歌。僕はそんな2人について行った。

「で、あるからして、我が部は体育館の使用を要請します……」
「分かりました…しかし、他の部も体育館の使用を要請しているため、絶対にという約束は出来ません。あくまで今は意見を聞くだけの会ですから」
普通の教室に、文化部の部長と生徒会全員+瞬が集まり、会議の真っ只中。その内容というのも、今度行われる文化部が主催の学園祭、『部活祭(文化部)』に向けてのものだった。天ノ華学園には、文化系部の祭りと、体育系部活の祭りと二種類の祭りが、その他王道の祭りに加えて行われる。その名の通りで、その部活にあった出し物を、指定された場所で行うのだが、この会議はどうもその場所を決めるための会議らしい。どの部活も広い場所を当然のように好み、体育館、多目的ホールの欄に、各部活の名前がびっしりと埋まっていた。
「ね、ねぇ琉歌ちゃん。これ僕いる意味あるのかな…」
会議に参加している事自体場違いに思えてきた僕は、恐る恐る琉歌に問いかけてみるが、琉歌はこちらを見るなりビシッと親指を立てるだけで、全く期待どうりの回答をしてはくれなかった。
そんな琉歌に返す言葉もなく、僕は困り果てながらも再び会議に集中することにした。
この会議の取締役にして、我が校生徒会長の篠飛羅凪咲しのひらなぎさが口を開く。
「これで全ての意見を発表してもらったわけですが、皆さんお気づきかと思います。私達が通うこの高校には、体育館は一つしかありません」
瞬の通う高校は、体育系の部活に力を入れている訳ではない。最低限の施設として、少し大きめの体育館が一つあるだけである。
一応コートは二面あるものの、多数の部活が一緒に使うには少々狭苦しい。
「ですから、各部活動の場所決めは、例年通りくじ引きで行いたいと思います。くじを引く日にちは月曜日の放課後、生徒会室で行います。異論はありますか?」
挙手、口を開く者は誰1人としていない。
「それでは、本日の会議を終了致します」
凪咲の言葉を機に、それぞれが退室する。当然の事ながら生徒会と僕は残っているわけで…。ちなみに、生徒会のメンバーとは、生徒会長と琉歌とは別の副会長とだけ初対面である。
「…琉歌さん」
「は、はい…」
琉歌を呼んだのは、先程説明した生徒会長。篠飛羅凪咲しのひらなぎさである。
「その…隣にいらっしゃる方はあの転校生だと思うんですが…。なぜあなたと…この場に居合わせているのですか?」
凪咲の言葉に、琉歌はビクッと肩を震わせる。
「い、いやぁこれはそのですねぇ…」
「琉ちゃんサボろうとしてまーー」
「ちょおっとゆっか!?それ以上は、それ以上は止めてぇ!」
下心丸出しの琉歌の対応は、その場に居合わせたメンバー全員を呆れさせた。
何より言葉に困ったのは瞬本人である。
「…ろくでなし」
静かに淡々と告げられた現実的な言葉。
その言葉を発したのは、白長髪黄眼の小柄な同級生、白野奏しらのかなでである。
「ちょ、奏先輩!愛する後輩にその言葉はーー」
「大丈夫大丈夫。お姉ちゃんは琉歌ちゃんの味方だよ〜。ろくでなしでも怠惰でも…お姉ちゃんは味方だからねぇ〜」
妙に緩んだ声質と言葉、そう発したのは、同じく同学年の、南風みなみかぜまありである。
弟と妹がいるらしく、姉らしく接することが癖らしい。サラサラとした茶長髪を、指でくるくる巻きながら、柔らかい表情で笑みを浮かべている。
「まあり先輩まで…ってか何か侮辱の言葉増えてませんかっ!?」
「…はぁ。まぁ彼には自ずと頼むつもりでしたが…手間が省けました。天上瞬てんじょうまばた君」
「は、はい…」
凪咲…もとい生徒会長に名前を呼ばれ、少々強張る瞬。そんな瞬に、丁寧に頭を下げる凪咲。
「どうか生徒会のお手伝いをお願いします。あなたの力が必要なのです」
その言葉と同時に、他の生徒会メンバー一同が、瞬に向けて頭を下げる。
気弱な瞬には、断る事など断じて出来るわけもなく……
「……は、はい。僕で良ければ…よろしくお願いします……」
とまぁ、こんな感じで、僕の次の依頼が始まった。   

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