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転生したら美少女勇者になっていた?!

ノベルバユーザー21439

第四十三話-テストを始めます

 さて、という事でやって参りました、お待ちかねのお店”フレシャワ”です。
 ウェンポートに来てすぐに立ち寄った、元気なお姉さんの経営する武器屋だ。


「らっしゃい! ・・・お? アンタらは昨日のお三方じゃないか。一日振りだねぇ」


 入店して早々、ハツラツとした笑顔で出迎えてくれたのは、ここの店主のツナさんだ。
どうやら武器の手入れをしていたらしい。
わざわざ作業の手を止めて俺たちの下までやってくる。
大股で歩く彼女の胸の上で、一歩を踏み出すたびに褐色の大きな乳がバインバイン揺れていた。
 昨日と変わらず元気な良いおっぱいをしています。


「こんにちは。今日はこの子の武器を見繕いに来たんです」


 言いながらエラメリアは俺の背中をつつっと押す。
その動作におや?と首をかしげる。
背中に添えられた腕からは、多少なりとも俺を盾として扱うような強さを感じた。
ちょうどツナさんとエラメリアの間を分断するような位置へと誘導される。
彼女にしては珍しく否定的な行動に困惑するも尋ねるわけには行かず、素直に半歩前へ出るしかない。
 
そういえば昨日、帰り際にツナさんの武器トークに付いていけてなかったとか言っていたし、もしかするとツナさんと対面して話すことに気後れしているのかも知れない。
 
人見知りなんてしなさそうな彼女にしては意外な発見だが、まあ、人間関係にはよくあることだよな。
それに自分の武器を見てもらいに来たわけだし、ここは自分でちゃんと口にするのが礼儀だろう。
 
突き放すような、もとい、突き出すような彼女の反応に適当な理由をつけて納得しつつ、エラメリアに続いて「こんにちは」と頭を下げた。

 
「えっと・・・初めての武器なので、わかんないことだらけなのですが、色々よろしくお願いします」
 

 すると、ツナさんの笑顔がさらにくしゃりと嬉しそうに歪んだ。


「おやまぁ・・・そんな大事なものを、アタシの店でねぇ。本当にいいのかい?」
「もちろんです。昨日の話が本当に面白かったので、最初からここしかないって決めてたんです」
 
 素直な気持ちを伝えると、彼女はちょっと驚いたような顔をしてこちらを見、すぐに柔らかい微笑みを浮かべた。
そしてむんっと力んで体に活を入れ、頼もしい笑顔でにっこり笑う。
 
 
「嬉しい事を言ってくれるね。よし、じゃああんたに合う武器を全力で探しに行こうじゃないか!」


 
 
 
そんなこんなで、店の裏に隣接するようにして設けられている六畳ほどの広間にやってきた。
そこは店内同様に屋根のある屋内って訳でもなく、単純な金網に囲まれた完全なる屋外である。
地面には学校の運動場のように土が固く敷かれており、雑草一本も生えていない殺風景な場所だった。
 
武器を選ぶのを手伝ってくれると言った直後、店の裏から外に出るよう指示された時には聞き間違いかと思ったが、とにかく言われたようにここで待つ。
辺りに何もない場所でこれから何が起こるのかと、ドキドキしながら今しがた出てきた店の出口を睨んだ。
 
 
待つこと十数秒、すぐさま俺たちの後からやってきたツナさんは、なにやら様々な道具の詰まった箱を抱えていた。
見るからに重そうな重金属の箱をあたりまえのように運んでくると、ほいっと気の抜けた掛け声と共にドスンと床に放る。
見ると、箱からチラ見えしていたのは、店で取り扱われていたいくつかの武器類だった。
 
パシパシと手に付いた錆をはたき落としながら、ツナさんはずいずいと箱を邪魔にならないような場所へと足で追いやる。
 
 
「んじゃ手始めに、どの武器があんたに向いているのか調べるテストだよ」
 
 
 そう言って指をパチンと鳴らす。
 すると、地面からムクムクと縦長い塊が顔を出し始めた。
 ぎょっとして慌てて距離をとるも、ツナさんは「まだだよ」と可笑しそうに笑われてしまう。
しょうがないでしょ・・・。
 急にテストとか言い出すんだから・・・。
 
 顔を赤らめつつ、ではどんなテストが待ち受けているのやらと恐る恐る見守る。
 今の間にも結構育ったらしい。
 その薄茶色の物体は徐々に高くなっていき、ツナさんの身長を超えたあたりで静かに動きを止めた。
 見れば、何やら起伏の薄い人間の形をしている。
 
 妙に心当たりがあると思って注視してみれば、前にエラメリアに見せてもらった水の像にどこかしら似ている気がするような・・・。
 そんな感想を抱きつつ、目線でツナさんに説明を求める。
 彼女は視線に頷きを持って返すと、簡単に眼前の物体について説明してくれた。
 
 
「こいつは簡単な魔術で作った、土で出来た人形さ」
 
 
 ぺしぺしと、近所のオバちゃんが我が子を紹介するような気軽さで人形の頭をたたく。
 その度にうっすらと煙のような砂埃が舞っていた。
 
 ふむふむ。土人形ね。
 頷きをもって理解を示す。
 それを確認し、ツナさんは言葉を続ける。
 
 
「そしてこいつを使って、これからあんたにやってもらいたいのが――」
 
 
 言いながらボックスから適当な剣を引き抜き、土の人形なるものに振りかぶる。
 なんだなんだと彼女の頭上にある剣へと視線が流れる。
 
直後、ザシュッと軽快な音が耳を突き、同時に人形の頭から足にかけて一筋の線が走った。
 
 
「一刀両断・・・なんつって」
 
 
 キメッ☆とうっかり口から漏れんばかりに、にやっと笑って振り向いた。
 
 なんだ急に・・・と呆然と見つめる俺たちに気づくと、慌ててそのドヤ顔を引っ込めながら、おかしな行動についての弁解を始める。
 
 
「ま、まあ、つまり今みたいにさ、この人形を相手に武器を使って欲しいんだよ。したら後はアタシがその動きを見て何が一番あんたに向いてるか判断するからさ。簡単だろ? な?」
 
 
 取り繕ったような笑みでぐいぐいと手にした剣を押し付けながら、ツナさんは新たに土の人形を作り直す。
 ボケのつもりかどうかはさておき(どっちにしろ彼女の笑いのセンスはちょっと理解しがたかったが)、求められていることは大体わかった。
 
 まあ要するに適性検査なんだろう。
 
 ツナさんのせいで一時はさめてしまった雰囲気にため息をつきつつ、それでも彼女のキャラはなんだかんだ美味しいところをくすぐってくるなと口の中でつぶやいて目の前の剣を手に取った。
 
 
「っと」
 
 
 あれ、思いのほか重いな・・・。
 いやシャレとかではなく。
 
 いつもとまったく違う取り回しに違和感を覚えて思わず手元の剣を見つめ、すぐさまああと合点がいく。
 失念していたが、普段練習に使っている剣はゾルフに切り出してもらった木製のものだ。
 とっくに乾燥しきったそれは、それこそ木の棒よろしく滅茶苦茶に軽くて逆にとり回しが悪いくらいの代物だ。
 毎晩木登りで筋力をつけている俺にとっては余計に顕著である。
 
 対して、いま手にしている剣は剣先から柄に至るまで完全に金属で出来ており、装飾こそ比較的軽めのパーツで補ってはいるけれど、それでも木製よりかは何十倍もずっしりと重く感じられた。
 
 いつもの感覚で持ち上げていたためにズレてしまった重心を、よっこいせと持ち直すことで調整する。
 
 
「年寄り臭い子供だね」
 
 
 ほっとけ。
 
 とまあ二、三度掌の上で転がすと、いい感じにバランスの取れた持ち方になった。
 
 よし。
 んじゃいよいよテスト開始だ。
 
 
「準備はできたかい?」
「はい、いつでもオッケーです」
「うん、いい返事だ。っても、そんなに肩を張りなさんな。ほんとに簡単なテストだから」
 
 
 そう言われたからといってすっと気が抜けるようなもんでもあるまい。
 テストという単語には元来から緊張する癖があるのだ。
 そもそも武器の適正を調べるテストなんて聞いたことすらなかったんだから、その感覚は倍だ。
 
 
「・・・じゃあ、いきます」
 
 
 腕に力を入れ、重力に逆らうように手を引き上げる。
 肘がこれでもかというほど上がったところで、一瞬、その状態に固定する。
 ちょっと上げすぎたか?
 横目でちらりとツナさんを見やると、彼女は指を顎に添え難しそうな顔で俺の全身を見ていた。
 ・・・まあどっちにしろ、振り下ろさねばテストも何もあるまい。
それを確認したのち、すぐさま土の像に狙いをつける。
 
 
「はっ!」
 
 
 叩き斬るように剣を振り下ろした。
 
 直後、
 
 
——ガシュッ!
 
「うぁっ・・・」
 
 
 ツナさんが見せた時のような良麗な響きとはお世辞にも近しいとは言えない、なんとも間の抜けた音とともに、像の頭頂部から切り込んだはずの剣は横腹辺りから飛び出してきた。
 急に抵抗を失った剣は、先ほどまでの運動エネルギーをすべて携えて何もない宙へと踊りだす。
 握りが甘かったのか、危うくすっぽ抜けそうになった。
 
 反射的に握りなおすも、金属でできた本体は猛犬のように言うことを聞かず。
 引っ張られるようにして俺の体は前のめりになっていた。
 その際しっかり構えていなかった足が重心に耐え切れず、うっかり前のめりになる。
 慌てて体勢を立て直そうにも、後ろに突っ張った状態で固まっていた足では間に合いそうにもなかった。
 あ、転ぶ・・・。
 
 気が付いた時には地面が頬をかすめていた。
 ずしゃっと鈍い音を立てて砂塵が舞う。
傍から見たら剣に振り回されているような情けない恰好で俺は肩から地面に着地していた。
「ずしゃっ」というか、「べしゃっ」って感じの見苦しさだ。
 
 
「てて・・・」
 
 
 偶然にもほとんどのダメージがアーマーのおかげで地肌に届くことはなかったが、内側に巻くような強い打撲感が肩から全身に駆け巡る。
 痛めた部分をさすりなら、そういえばテストはどうなったのかとはたと気が付く。
 慌ててツナさんの方を見上げると、彼女はあきれたように首を振っていた。
 
 
「だから言ったじゃないか。気を張りすぎだよ、あんた」
「う・・・」
 
 
 テスト前のさりげない一言にはこういう失敗を見越してのことだったのか・・・。
 ツナさんのヒントを一蹴してしまった己を恥じ入る。
 
 けれど、やっぱりこういう状況に慣れていないせいか、勝手に体が強張ってしまうのだ。
 こればかりは意識的に変えられるものではない。
 さらに今手にしているものは、普段使っているものとはかけ離れた取り回しと戦闘力を誇る剣だ。
 言い訳をするつもりはないが、さすがにこれでは単純な動きも満足に行えないだろう。
 慣れるまでに結構な時間を有すると思う。
 武器の適正を測るためのテストだったが、これでは単に武器を振ることもままならない。
 
 最初から大きな壁にぶち当たり、呆然としていると、自然と歯の隙間から空気が漏れてきた。
 悔しさによるものではない。
 これはどちらかというと、あきらめに似た何かなのだ。
 
 
 昔からの癖で、何か簡単には成しえない事柄に直面した時、浅い溜息をついてごまかすことが度々あった。
そしていつしかそれは、自分自身への諦めを促す合図みたいなものになっていた。
けれど、やはり見る人が見れば我慢ならないほどそれは不快なものだったらしく、幾度となく咎められた記憶がある。
 
 しかし定着してしまったものは仕方がない。
 だから俺は、あからさまなため息をつく代わりに、歯の隙間から吐き出すようにして自分の意志を押し流すことで、ことあるごとにどうしようもない物に対して拒絶するような行動をとっていたのだ。
 
 今もまた、肺の中の空気が減れば減るほど、当初から煌いていた炎が小さくなっていくのを感じる。
 微かな脱力感と共に、麻薬のような無責任な安心感が身体を蝕んでゆく。
 きっかけはなんでもいい。
 小さな歪みが過去の失敗や自己保身を通して、結局人をダメにしてしまう。
 正直この程度のミスでさっさと投げ捨ててしまっていいものかと悩む余地もあろうが、何事も諦めてしまえば楽になれることを知っている体は言うことを聞かない。
 
 もう、いっかな・・・。
 別にこれだけが全てって訳でも無いしな。
 魔術しにても何にしても、やりたいこと、やらねばならないことはいくらでもある。
 別に剣術ばかりに気を取られなくても、まだまだ道はある・・・。
 このあたりでやめてしまってもいいんじゃないだろうか。
 
 
 と、半ば剣を放り出さんとしていたその時だった。
 
 
「ステフ!」
 
 
 よく響く美しい声が、閉じられかけた小さな穴から飛び込んできた。
 はっとして声の主に顔を向ける。
 
 見れば、エラメリアが、しまったと言わんばかりの顔で口を押えてこちらを見ていた。
 しかしすぐに首を振っていつもの凛とした顔に戻ってくると、単なる先生とは違う、温かみのある微笑みを浮かべて励ましを送る。
 
 
「ステフ、いつもの要領ですよ。練習してきたことを忘れないでください」
 
 
 大切な仲間からの助言。
 本人は隠しきれているつもりかもしれないが、ハラハラと当の本人よりも落ち着きなく飛んでくるその声は、さながら子を見守る母のよう。
 いつも通りのちょっと過保護なその姿に、ちょっぴり苦笑いが漏れたり。
 すると、ふとささくれ立つ逆方向に高ぶっていた気持ちがいできて、握りしめた手にわずかな余裕が生まれた。
 張り詰めていた心にも隙間が生まれ、消えかけていた炎が息を吹き返す。
 
 
「・・・うん、次は大丈夫」
 
 
 すらりと口をつく言葉に、偽りはないとひとつ頷く。
 
 極めて平常に努めて、エラメリアに何てこと無いとアピール。
 立ち上がって土に汚れた肩や尻を適当にはたく。
 
 
「さっきはちょっと、力みすぎてた」
 
 
 そう心にもない言い訳で場をごまかしながら。
 エラメリアに向け、問題ないよと親指をビシッと立ててグッドサイン。
 ついでに笑顔もおまけしてやると、それに安心したのか、彼女も大きな胸の前でグッとこぶしを握り締めて応援してくれる。
 
 ごめんな、エラ。
 またまた迷惑かけて。
 危うくまた昔の自分に逆戻りするところだった。
 
 背がちっこくなったとはいえ、なんだかんだ中身は19歳男子だ。
 こんなことでいちいち拗ねていては、成せるものも成せまいて。
 まあ、そのせいで今まで散々な目に合ってきたんだけど・・・。
 過去のことはいいか。
 
 
 一呼吸を置き、気持ちをできる限り落ち着ける。
 えっと・・・確か構えは、獲物に対してハの字だったっけな・・・。
 ゾルフに教えてもらった注意事項を、懸命に頭の中で思い浮かべて。
 
 
 肩幅に開いた足は、重心を安定させるために、開きすぎず閉じすぎず。
 剣先をまっすぐに保ち、脇を緩く締める。
 丁度眉間の先に来るように、肩から腕にかけて微調整。
 
 ・・・うん、こんな感じ。
 
 日頃の鍛錬の成果か、じっくり丁寧に思い起こせば正しいその姿を体が思い出す。
 微々たる違和感、されど見過ごせない感覚を是正しようとじりじりと変化していく。
 そして体がベストな姿勢を飲み込んだ時、無意識のうちに剣が振り上げられていた。
 その速度は、すっと声に出して表現できそうなほど的確である。
 悩まされていた剣の重さすら、もはや気にも留まることが無かった。
 
 相対するは自分より頭二つほど大きな土の像まと
 
 その全貌を認識した途端、斬った!と確信に近いイメージを脳に焼き付けながら、剣を垂直に振り下ろしていた。
 
 
 
 時間にしてわずか一秒にも満たず。
 反動で浮きそうになる体を、「ひゅっ」と体内の気圧を調節することで沈め。
 剣先が像の頭に触れる、その瞬間。
 
 まるで時が止まったかのように、いや、俺が一瞬先を生きてきたかのように、まったく狙った通りの軌跡を描き、ゆっくりと目の前を通過していく。
手ごたえは、さながら空を切るかのように柔らかく優しく。
それでも確実に土の像を両断していく。
 
 
「おおっ?!」「あっ!」
 
 
 誰のかもわからないような声が何となく聞こえたような気がして。
 
 一筋の光が無機質な肉体のド真ん中を走り抜けた。
 
 
 
 
 再び我に返った時、剣は地面すれすれのところで、あらかじめそうであったかのような落ち着きを持って静かにその動きを止めていた。
 
 
「えっ?」
 
 
 思わず自分の口から疑問符が漏れる。
 何が起こったのかよくわからず呆然としていると、数舜遅れて目の前の像がサラサラと無情にも崩れ去った。
 そして何事もなかったかのように、その場には俺たち三人の姿が取り残される。
 
 
「なに、今の」
 
 
 恐る恐る振り向いてエラメリアの顔を見ると、彼女はわぁ~っと拍手で俺の検討を讃えてくれていた。
 
 
「とっても綺麗な形でしたよ、ステフ!」
 
 
 ・・・あれ? とくにツッコミはナシ?
 
 続いてツナさんの顔を見やるも、彼女もまた文句なしの全力の笑顔で俺のことを褒めてくれる。
 
 
「ああ、あんたはなかなかスジのある子だった! こりゃあ武器選びも楽しみだ」
 
 
 あ、あらら?
 違和感を感じたのは俺だけかしらん。
 
 特に何の反応も示すことなくぼーっと突っ立っている俺を怪訝に思ったのか、二人は首をかしげて見つめてくる。
 ヤダ、そんなに見ないで。
 
 うっかり二人の目を直視してしまい、なんだか気恥ずかしくなって何でもないと手を振って応じる。
 「うまくいって良かったよ」なんて言いながら、平気な顔をして二人の元まで戻っていく。
 
 まさしく夢見心地でいたあの瞬間に起きた出来事は気のせいだといわれても頷く他なく、二人の反応も全く何も気づいてないようだったから、俺は自分の錯覚だと思い込むことにした。
 何事もなければそれでいっか。
 
 そんな俺の心境を知る由もない二人は、撫で繰り回すようにして俺の剣さばきを口々に賞賛した。
 抵抗しようにも、二人の気迫がそれを許さない。
 まるで初めて二足歩行に成功した小児のような扱いだ。
 ちょっと、あれっぽっちのことでそこまで褒められるのも気が引けるし照れるを通り越して恥ずかしいのでやめて欲しいのですが・・・。
 
 身をよじる程度の恥ずかしさに内心いい気持ちでいながら、二人に程々におもちゃにされていると、ふと思い出したようにツナさんがその手を止めた。
 
 
「そうだ、テストの続きをするんだった。あんたの撫で心地が良すぎて完全に忘れてたよ」
 
 
 撫で心地て。
 遺憾の意を表明したくなるような物言いだ。
 それはさておき、この数秒の間に俺も本来の目的を忘れていた。
 まあ、理想の美人二人と戯れてたら仕方のない話ですよね、うん。
 基本は本能に忠実な健全男子(童貞)です。
 
 
 てなわけで、最後にエラメリアにひと撫でされた後、再びツナさんが作った土の像の下まで近寄っていく。
 今度は武器を変え、槍での挑戦だ。
 これから先の武器は今までの人生で実物に触れたことも見たこともないようなものになっていくので、ツナさんにそう相談したところ、彼女は大丈夫大丈夫と手を振って応じた。
 
 
「肉付きや骨の形で人の得意武器って変わってくるもんなのさ。だからあんたも気にせず、一番やりやすい動きでそのそいつ土の像を攻撃してみな。あとはこっちで見るからさ」
 
 
 とのことである。
 
 まあ、それならこちらとしても特に申し入れることはない。
 さっきの一連から良くも悪くも緊張感が抜けた身体に喝を入れ、改めて手にしている槍に意識を向ける。
 
 当然のことだが、剣と違って槍はリーチが長い。
 持つ部分をちゃんと意識しておかないとうまく攻撃が繰り出せない。
 しかも注意を払うべきはそこだけじゃなく、槍の安定と同時に目標に向けての突きも行わねばならないのだ。
 そもそも今の俺は身長が低すぎるので、自分の身長よりも幾ばくか長い武器を使うのには不向きなのである。
 無理して体を捩っても、せいぜい腕を捻るのが関の山。
 そんな芸当、いったい誰ができようか・・・!
 
 しかし俺はやって見せる。
 やらなければならないのだ。
 時間のことは気にしなくていいと二人が言うので遠慮せず試行錯誤を重ねる。
 
 力強い仲間&ツナさんを背に、ちょっとやそっとじゃへこたれなくなった精神力を持って俺は槍を突き出す。
 テストはまだまだ長引きそうだった。

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