転生したら美少女勇者になっていた?!
第三十二話-風呂すげえ
ペツァニカに付き添われ、階下にあるという風呂場まで向かう。
途中バッフムルドさんが作業をしていた一階を通過し、さらにもう一段下の地下一階までやってきた。
「着いたよー」
「お、おお!」
最後の一段を踏み鳴らすと、途端にもわっとした蒸気にあてられる。
一瞬視界が見えなくなるものの、それもすぐのことで、どこかに湯気を吸収する装置でもあるのかすぐさま肌に張り付いていた水気は消えていく。
明瞭になった視界で改めて確認すると、そこは日本でもよく目にする銭湯の入り口みたいな場所だった。
左右に赤と青の暖簾が掛かっており、文字が読めない俺でもどちらへ向かうべきかすぐにわかるようになっている。
・・・はい、今回はボケませんよ。
わかってます、赤の暖簾でしょ?
はぁ・・・
覚悟を決め、恋愛経験の無い男子にありがちな、女子風呂に足を踏み入れるという背徳感に少しドキドキしながら赤の暖簾をくぐる。
と、すぐさま後ろから焦ったような声が飛んできた。
「ちょっとステフ! どこに行くの? そっちは男性風呂だよ!」
「逆なんかい」
頬を赤らめながら指摘するペツァニカに返事をし、改めて青い暖簾をくぐった。
・・・うん、無いね、背徳感。
やっぱり色の感覚って大事なんだなあと思いながら今しがた通った暖簾に触れる。
湿気を存分に吸ったそれは、ごわごわしていてなんだか懐かしい気持ちにさせられた。
小学校の頃に家族と一度だけ行った、旅行先の温泉を思い出す。
あの頃は家族みんなが仲が良かった。
学校に居場所は無くても、家では暖かいご飯が待っていた。
それだけで充分救われていたんだろうなと、どこか他人事のように考えながらペツァニカにくっついて奥へと進む。
折れ曲がった廊下を進んでいくと、まず目に入ったのは木で出来た棚だった。
「見ての通り、これが服を置く所ね」
「うん」
流石にこれくらいなら用途は分かる。
続いて棚と隣り合うようにして設置されていた器具のもとへ連れて行かされる。
「そしてこれが洗濯機」
「う、うん?」
見せられたのは、胸辺りまである大きめの白い箱だった。
てっぺんの真ん中あたりに丸い穴が開いており、スライド式の蓋で閉じられている。
側面には四角い穴と、その真下にカゴも置いてあった。
ぶっちゃけ俺の知っている洗濯機とは似ても似つかない。
「これが洗濯機? どうやって使うんだ?」
見たところ機械のスイッチや電力を供給するためのコンセントも無い。
どこからエネルギーをもらっているのだろうか。
そもそもこの世界には電化製品という物すらあるかどうか怪しい。
本当に動くのか、洗濯機。
俺の不安げな反応を見て面白がっているのか、ペツァニカはニヤニヤと鼻に着く笑みを浮かべて洗濯機の正面に立った。
「使い方は簡単、まずは上の蓋に手を置きまーす」
言いながら手を伸ばし、蓋に手をかざす。
すると、それに呼応するかのように洗濯機(?)が唸り声をあげ、先端から淡い光を出し始めた。
その光は先ほど部屋の鍵を開けた時に見たものと似ている。
魔力を吸い取る仕組みだったのだろうか。
数秒ほどそうした後、洗濯機は充分な魔力を得たのか自身の音を潜め、同時に上の蓋が奥へとスライドする。
ぽっかりとした穴が姿を見せた。
「次にこの穴に洗いたいものを入れます。防具とかの金属は入れちゃダメだよ」
そう言ってポケットから自分のハンカチを取り出すと、おもむろにその穴の中へと放り込む。
ヒュコッと小気味よい音がして、ハンカチが穴の中に吸い込まれていった。
「あとは待つだけ。洗濯が終わると下の穴から出てくるよ」
言われるままに待つことしばし。
ヒュンヒュン普段耳にしないような不可思議な音色が一定時間続く。
それはペツァニカの鼻歌と上手く調和しており、いつの間にか聞き入ってしまっていた。
二分ほど経った頃だろうか。
ペツァニカの鼻歌が止み、俺も我に返る。
「できた! ほら!」
下からこぼれ出てきたハンカチをすいっと掬うと、ペツァニカは嬉しそうに広げたそれをこちらに見せてきた。
流されるままに手に受け取り、まじまじと見つめる。
「綺麗になってるでしょ?」
「本当だ・・・」
入れる前のハンカチを見てなかったから何とも言い難いのだが、とりあえずそう言っておく。
しかし、ちゃんと見てみると確かに汚れらしきものは一切見当たらなかった。
綺麗に折りたたんでいた時のシワすらちゃんと取れているのだから、それは大したものであろう。
お礼を言って返すと、ペツァニカはそのままくしゃりとポケットにねじ込む。
見栄え的には最初より汚く感じられた。
ガサツだ・・・。
「こんな感じかなー。どう? わかんないとことか無い?」
「ああ。洗濯機は俺でも使えると思う」
そう伝えると、彼女は満足したように一度大きく頷き、
「ん、おっけー。じゃあ、いよいよお風呂の方を紹介するね!」
そう言って洗濯機や棚が置いてある面とは反対側の、曇りガラスで隔たれた空間へと足を進めて行った。
何気に自分が洗濯機使う際の事を考えてわくわくしながら、俺もペツァニカについて行く。
背後から役目を終えたと言わんばかりに、洗濯機の蓋を閉じる音が聞こえてきた。
ペツァニカがガラリと入り口を開けると、そこには店の規模にはそぐわない広々とした浴場が待ち受けていた。
縦長の造りで、正面奥には浴槽がででんと一つ。
そこに続く道のりには、綺麗に積まれた腰掛けや桶がある。
シャワーの様なものも完備されており、ある壁の一面からは突き出た筒状の物がいくつか覗いていた。
そしてその上部には、正面に座れば丁度自身が見えるであろう高さまで鏡が嵌められている。
わざわざ中に入ることまではしなかったが、ペツァニカが指さしであれこれ教えてくれた。
「見ればほとんど分かると思うけど、左が湯突、それから順に浴槽、桶などなどだね」
ほう、あれは湯突って言うのか。
そのまんまだな。
「タオルとかは?」
「タオルはこっち」
そう言って今しがた開けた入り口の真横を指し示す。
見ると、そこには数枚ほど積まれたタオルが、物置き台に乗せられて鎮座していた。
「湿気対策の魔術は施してあるから心配しなくて大丈夫だよ。体を拭いてから外に出てね」
「わかった。色々とありがとう」
「どういたしまして~!」
そう言って二カッと笑うと、来た道を上機嫌で戻っていく。
俺も彼女に続いた。
先ほどの服を置く棚の前まで戻ってきたとき、改めてペツァニカは確認を取る。
「大体わかったかな?」
「うん、一人でもなんとかなりそう」
「なら良かった。何かあったらいつでも呼んでね。当分の間は上にいると思うから」
その言葉に頷いて答える。
正直早く風呂に入りたくてたまらなかった。
予想以上に豪華な造りで、自分でもびっくりするぐらいわくわくしている。
ペツァニカはそんな俺の様子を見て「よし!」と掛け声を上げると、
「それじゃ、ごゆっくり~!」
元気な声で出口の方へと消えて行った。
この広い空間に一人、残される俺。
元気な子がいなくなったからか、途端にその場は静かな雰囲気に包まれ、謎の孤独感に苛まれる。
なんだか手持ち無沙汰な思いで周囲をぐるりと見回す。
そうしていると、ふと例の洗濯機が目に入った。
無機質なそいつは、なんだかんだで俺の好奇心をくすぐってくる。
システムは知れたとはいえ、やっぱり自分でも実践してみたいと思うのは仕方がないことだろう。
「・・・とりあえず入るか」
誰へともなくそう呟き、俺は自分の胸アーマーのフックに手を掛けた。
途中バッフムルドさんが作業をしていた一階を通過し、さらにもう一段下の地下一階までやってきた。
「着いたよー」
「お、おお!」
最後の一段を踏み鳴らすと、途端にもわっとした蒸気にあてられる。
一瞬視界が見えなくなるものの、それもすぐのことで、どこかに湯気を吸収する装置でもあるのかすぐさま肌に張り付いていた水気は消えていく。
明瞭になった視界で改めて確認すると、そこは日本でもよく目にする銭湯の入り口みたいな場所だった。
左右に赤と青の暖簾が掛かっており、文字が読めない俺でもどちらへ向かうべきかすぐにわかるようになっている。
・・・はい、今回はボケませんよ。
わかってます、赤の暖簾でしょ?
はぁ・・・
覚悟を決め、恋愛経験の無い男子にありがちな、女子風呂に足を踏み入れるという背徳感に少しドキドキしながら赤の暖簾をくぐる。
と、すぐさま後ろから焦ったような声が飛んできた。
「ちょっとステフ! どこに行くの? そっちは男性風呂だよ!」
「逆なんかい」
頬を赤らめながら指摘するペツァニカに返事をし、改めて青い暖簾をくぐった。
・・・うん、無いね、背徳感。
やっぱり色の感覚って大事なんだなあと思いながら今しがた通った暖簾に触れる。
湿気を存分に吸ったそれは、ごわごわしていてなんだか懐かしい気持ちにさせられた。
小学校の頃に家族と一度だけ行った、旅行先の温泉を思い出す。
あの頃は家族みんなが仲が良かった。
学校に居場所は無くても、家では暖かいご飯が待っていた。
それだけで充分救われていたんだろうなと、どこか他人事のように考えながらペツァニカにくっついて奥へと進む。
折れ曲がった廊下を進んでいくと、まず目に入ったのは木で出来た棚だった。
「見ての通り、これが服を置く所ね」
「うん」
流石にこれくらいなら用途は分かる。
続いて棚と隣り合うようにして設置されていた器具のもとへ連れて行かされる。
「そしてこれが洗濯機」
「う、うん?」
見せられたのは、胸辺りまである大きめの白い箱だった。
てっぺんの真ん中あたりに丸い穴が開いており、スライド式の蓋で閉じられている。
側面には四角い穴と、その真下にカゴも置いてあった。
ぶっちゃけ俺の知っている洗濯機とは似ても似つかない。
「これが洗濯機? どうやって使うんだ?」
見たところ機械のスイッチや電力を供給するためのコンセントも無い。
どこからエネルギーをもらっているのだろうか。
そもそもこの世界には電化製品という物すらあるかどうか怪しい。
本当に動くのか、洗濯機。
俺の不安げな反応を見て面白がっているのか、ペツァニカはニヤニヤと鼻に着く笑みを浮かべて洗濯機の正面に立った。
「使い方は簡単、まずは上の蓋に手を置きまーす」
言いながら手を伸ばし、蓋に手をかざす。
すると、それに呼応するかのように洗濯機(?)が唸り声をあげ、先端から淡い光を出し始めた。
その光は先ほど部屋の鍵を開けた時に見たものと似ている。
魔力を吸い取る仕組みだったのだろうか。
数秒ほどそうした後、洗濯機は充分な魔力を得たのか自身の音を潜め、同時に上の蓋が奥へとスライドする。
ぽっかりとした穴が姿を見せた。
「次にこの穴に洗いたいものを入れます。防具とかの金属は入れちゃダメだよ」
そう言ってポケットから自分のハンカチを取り出すと、おもむろにその穴の中へと放り込む。
ヒュコッと小気味よい音がして、ハンカチが穴の中に吸い込まれていった。
「あとは待つだけ。洗濯が終わると下の穴から出てくるよ」
言われるままに待つことしばし。
ヒュンヒュン普段耳にしないような不可思議な音色が一定時間続く。
それはペツァニカの鼻歌と上手く調和しており、いつの間にか聞き入ってしまっていた。
二分ほど経った頃だろうか。
ペツァニカの鼻歌が止み、俺も我に返る。
「できた! ほら!」
下からこぼれ出てきたハンカチをすいっと掬うと、ペツァニカは嬉しそうに広げたそれをこちらに見せてきた。
流されるままに手に受け取り、まじまじと見つめる。
「綺麗になってるでしょ?」
「本当だ・・・」
入れる前のハンカチを見てなかったから何とも言い難いのだが、とりあえずそう言っておく。
しかし、ちゃんと見てみると確かに汚れらしきものは一切見当たらなかった。
綺麗に折りたたんでいた時のシワすらちゃんと取れているのだから、それは大したものであろう。
お礼を言って返すと、ペツァニカはそのままくしゃりとポケットにねじ込む。
見栄え的には最初より汚く感じられた。
ガサツだ・・・。
「こんな感じかなー。どう? わかんないとことか無い?」
「ああ。洗濯機は俺でも使えると思う」
そう伝えると、彼女は満足したように一度大きく頷き、
「ん、おっけー。じゃあ、いよいよお風呂の方を紹介するね!」
そう言って洗濯機や棚が置いてある面とは反対側の、曇りガラスで隔たれた空間へと足を進めて行った。
何気に自分が洗濯機使う際の事を考えてわくわくしながら、俺もペツァニカについて行く。
背後から役目を終えたと言わんばかりに、洗濯機の蓋を閉じる音が聞こえてきた。
ペツァニカがガラリと入り口を開けると、そこには店の規模にはそぐわない広々とした浴場が待ち受けていた。
縦長の造りで、正面奥には浴槽がででんと一つ。
そこに続く道のりには、綺麗に積まれた腰掛けや桶がある。
シャワーの様なものも完備されており、ある壁の一面からは突き出た筒状の物がいくつか覗いていた。
そしてその上部には、正面に座れば丁度自身が見えるであろう高さまで鏡が嵌められている。
わざわざ中に入ることまではしなかったが、ペツァニカが指さしであれこれ教えてくれた。
「見ればほとんど分かると思うけど、左が湯突、それから順に浴槽、桶などなどだね」
ほう、あれは湯突って言うのか。
そのまんまだな。
「タオルとかは?」
「タオルはこっち」
そう言って今しがた開けた入り口の真横を指し示す。
見ると、そこには数枚ほど積まれたタオルが、物置き台に乗せられて鎮座していた。
「湿気対策の魔術は施してあるから心配しなくて大丈夫だよ。体を拭いてから外に出てね」
「わかった。色々とありがとう」
「どういたしまして~!」
そう言って二カッと笑うと、来た道を上機嫌で戻っていく。
俺も彼女に続いた。
先ほどの服を置く棚の前まで戻ってきたとき、改めてペツァニカは確認を取る。
「大体わかったかな?」
「うん、一人でもなんとかなりそう」
「なら良かった。何かあったらいつでも呼んでね。当分の間は上にいると思うから」
その言葉に頷いて答える。
正直早く風呂に入りたくてたまらなかった。
予想以上に豪華な造りで、自分でもびっくりするぐらいわくわくしている。
ペツァニカはそんな俺の様子を見て「よし!」と掛け声を上げると、
「それじゃ、ごゆっくり~!」
元気な声で出口の方へと消えて行った。
この広い空間に一人、残される俺。
元気な子がいなくなったからか、途端にその場は静かな雰囲気に包まれ、謎の孤独感に苛まれる。
なんだか手持ち無沙汰な思いで周囲をぐるりと見回す。
そうしていると、ふと例の洗濯機が目に入った。
無機質なそいつは、なんだかんだで俺の好奇心をくすぐってくる。
システムは知れたとはいえ、やっぱり自分でも実践してみたいと思うのは仕方がないことだろう。
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