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転生したら美少女勇者になっていた?!

ノベルバユーザー21439

第三十話-ペツァニカ父

 一階に降りると、丁度他の宿泊客達が解散する所だった。
 静かになった食堂(だと思う)で、準備してくれていたペツァニカにカウンターへ通される。

「お待ちしておりました! 特に足りないものとか無かったかな。あったら言ってね、出来る限りのことはするよ」
「ありがとうございます。今のところは充分満足していますよ」

 エラメリアの言葉にほっとしたような顔を見せる。

「よかったー。あ、お品書きはここね。お父さんがエラさんと話したいって言ってたから、あとでまた相手してあげて」
「わかりました。私も楽しみです」
「ふふ、お父さんきっと喜ぶよ。じゃあ私は飲み物を取ってくるね!」

 そういうとペツァニカは一旦厨房へもどり、端っこの小さな出口から外へ出て行った。

「元気な子だなぁ」

 後姿を見送りつつ、ゾルフがそう感想を口にする。
 俺も同感だ。

「まだ子供なのにすごいよな。俺だったらあんな強面の客は絶対相手できない」

 素直に口にすると、エラメリアが説明してくれる。

「ペツァニカはすごく小さい時からずっとお手伝いをしていましたからね。ここは馴染みの客しか来れないので、彼女もやりやすいんでしょう」
「へーえ」

 今より小さい時ってそりゃ何歳だ?
 あの易々とした動きは並みの経験じゃ身に付かないものだろう。
 それこそ幼稚園時代からでないと・・・。

 ふと5歳ぐらいの幼女店員を想像してみる。
 もっと小さくなったペツァニカだ。
 ちょこんとしたエプロンを身に纏い、恐る恐るといった表情で客の注文を取る。
 おぼつかない足取りでえっちらおっちら料理を運んでくる様は、さぞかしかわいらしいものであろう。
 きっと目が離せないに違いない。

 そうか、だから他の客達もペツァニカの成長を見守りがてらここを利用してんのか。
 目が離せなくなるのも仕方があるまい。
 日々成長していく店員に、心が和む気持ちでいたんだろうな。
 親心がなんとなく分かった気がする。

 勝手な想像に満足していると、注文を決めたらしいエラメリアがお品書きを回してくれた。

「私はもう決めました。ステフはどれにしますか?」
「ん、ありがとう。どれどれ・・・」

 わくわくしながら受け取った票を眺める。
 しかし、書かれている文字が読めずに結局エラメリアに尋ねることになった。

「ごめんエラ、ここの文字は全然読めないや」

 その言葉にエラメリアはさして気にした風もなく言う。

「やはりそうですか。薄々そうなるかもとは思っていたのですが・・・」
「言葉は通じるのに文字はダメみたいです」
「言語は世界共通なので、ただ単に表記が違うだけでしょう。気にする程の事ではないです」

 マジか。
 この世界って世界共通語なの?
 昔英語がひたすら苦手だった俺には有益な情報だ。
 あ、でも文字はいろいろ勉強しなきゃだからそこまで変わらないのか。
 少し残念。

 それはさておき。

「そっか。また勉強していかなきゃな・・・。じゃあとりあえず、今日はエラと一緒のものにする」
「わかりました。勉強の方はまた一緒に頑張りましょう」
「いつも本当にありがとうございます・・・!」

 こんなにお人好しな人はそういないよな。
 エラメリアが居なかったら、俺はいまここでちゃんと立っていることが出来なかったろう。
 返しきれない恩が積もりすぎて、エラメリアにだけは絶対頭が上がらないわ。



 そんなこんなでゾルフも注文を決め終わり、三人で他愛もない会話をしていると、外からペツァニカと渋い男性の声が聞こえてきた。
 待ってましたとばかりに、ちらりとエラメリアの方を見やる。

「戻ってきたみたいだな。エラはここの店主と顔見知りなんだっけ?」
「ええ、数年ほど前にもここを利用させてもらったんです。私の師とも仲が良くて、昔からお世話になっている方です」

 ほほう、師弟の二代に渡って愛されている店か・・・。
 これは期待値があがるぞ。

 カチャリ、とドアが開かれる音がしてペツァニカとお父さんらしき人が中へと入ってきた。
 二人ともかなりの量の瓶や何かが入っているカゴを抱えている。
 慣れた手つきでそれらを下ろすと、ペツァニカは「ちょっと待ってねー」と言ってキッチンで作業を始めた。

 父っぽい人はペツァニカに二言三言指示をだし、ゆっくりとした足取りでこちらへやってくる。
 やがて俺たちの正面まで来ると、「待たせてしまって申し訳ない」と頭を下げた。
 つられて俺も会釈をする。
 ぺこり。

 ペツァニカ父は顔を上げ、俺達一人ひとりに握手をしながら自己紹介を始めた。

「ようこそ”海の家”へ。私は店長のバッフムルド、そしてもう会っているとは思うが、娘のペツァニカだ」
「どもども~」

 どうやら飲み物を注いでくれていたらしいペツァニカが、カウンターの横からグラスを渡しつつ登場する。
 受け取ったグラスに入っていたのは水だった。
 一口飲んでカウンターに置くと、まだ横に立っていた彼女はすっと右手を差し出してくる。
 握手か。

 父を真似て嬉しそうに握手を求めるペツァニカの手の平を握り返しつつ、ふと思った。
 バッフムルドにペツァニカ・・・。
 かなり特徴的な名前ですな。
 闘牛か?

 そんなことを考えつつ腕を振っていると、満足げに頷いたペツァニカがようやく手を放す。
 そしてポケットから伝票を取り出つつ尋ねた。

「じゃあ注文とってくね。あ、皆さんもう決まってた?」
「ええ、ちょっと前に。では、私とステフはこの”コケチキンの丸焼き”で」

 コケチキン・・・。
 名前からしてニワトリみたいなやつか?

「ほーい、コケチキふたつ。ゾルさんは?」

 さらさらと伝票に書き込むと、ゾルフの方に顔を向けた。

 ゾルフはお品書きを脇に寄せ、殊更カッコよく変えた声で答える。

「オレも同じく”コケチキンの丸焼き”と――」
「コケチキみっつ、と・・・きゃっ」

 突然小さく悲鳴を上げてペツァニカが伝票を取り落とす。
 驚いて振り向くと、ゾルフがペツァニカを抱き寄せているところだった。

 体をこわばらせるペツァニカに、ゾルフがスッと顔を寄せて囁く。

「――君で」
「おい」

 フライパンが飛んできた。
 それは物凄い速さで飛んでいき、カーン!といい音を立ててゾルフの後頭部に直撃する。
 言うまでもなくバッフムルドさんだ。

 彼は頭を押さえて床を転げ回るゾルフを一瞥した後、粛々とした声で告げる。

「娘に手を出すな」
「・・・はい」

 正座してそう返事をした。

 席に戻ってきたゾルフに、俺は白い眼を向けながら動機を訊く。

「急に何してんだよ。さっきまで全然そんな素振り見せなかったじゃん」
「だって・・・最近まったくオレが目立つ状況が無かったんだもん・・・・・・」
「はぁ・・・?」

 確かにこのところめっきり大人しくなってたけど。
 目立ちたかったってことか?
 変態の考えることはよくわからんが・・・。
 それでも小学生相手に通じる冗談とそうでないものがあるだろ。
 ペツァニカ逃げちゃったし。
 てかその口調やめろ。

 聞いてもよくわからなかった上、バッフムルドさんももう気にしていないようだったためこの件は無かったことになった。
 ほんと何がしたかったんだよコイツは・・・。


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