転生したら美少女勇者になっていた?!
第十九話-俺は一体
ウェンポートに着くまでの道のりはほとんど順調だった。
遠目に見える湖が近づくにつれて出会う動植物もちょっとずつ変わり、中々飽きない旅路であったように思う。
目に映るモノすべてが俺にとっては珍しく、ゲーム感覚でどんどん知識を蓄えていく。
昔は全く興味ながかった道端の植物も、今では複雑な武器の名前や能力値を暗記するかのように吸収することが出来ていた。
何をしても知識欲が掻き立てられる。
エラメリアもゾルフも俺が質問した事にはすべて丁寧に解説してくれ、これまで習ったものは全部頭に入っている。
お陰さまでその辺の植物から簡単な薬味を生成するぐらいなら出来るまでになっていた。
日常生活に限って言えば結構パーティにも貢献できているんじゃないかと自負している。
そしてもちろん、日々の鍛錬も欠かさない。
午前中はエラメリアに魔術の練習に付き合ってもらい、夕方その日の移動が完了すると剣を握ってゾルフに言われた通りのメニューをこなしていた。
魔術特訓といっても魔力をコントロールできない俺はただひたすら杖を握ってイメトレしてるだけなのだが・・・でも剣術の方はかなりいい線を行っているように思う。
ゾルフが課した修行内容は常に俺の成果に合わせて変更されている。
本人曰く体が技を覚えるまで同じ作業を続けさせたいのだが、いかんせん想定より習得速度が早かったためほぼ毎日更新していかねばならないらしい。
良い傾向なんだろうけどメニューを作成するのに非常に頭を悩ますのだと言っていた。
呆れたような声でそう説明されたのだが、俺自身も感じていた成長を他人に後押ししてもらうような形になり大変鼻が高い思いでいる。
そしてゾルフはこうも続けた。
素振りなどの反復練習は、唐突の斬りにも対応できるよう身体を進化させ脳が効率的な振り下ろし方を理解させることが目的である。
だが俺の場合、仕組みの理解力は中の上ぐらいの成績でも”肉体”の方が早くに形成されてしまうため、効率を上げる云々以前に体が剣を振るうのに最適の状態になってしまうそうなのだ。
これを聞いた時の反応はまさに有頂天!って感じだったね。
だって、言い換えれば「身体が強すぎてアタマが追いつかないんだ!」ってことなんだろ?
そんなオイシイ設定この俺が見逃すわけがないじゃないか。
いつだって俺TUEEEEEEEは素晴らしい。
だが喜び舞う俺にゾルフが苦言を呈す。
「ステフの身体能力は確かに高い。だけどいざ戦えるかどうかと言われると、ぶっちゃけ戦力にカウントはされねぇだろうな」
えっ何で? 強いんでしょう、俺。
愕然としている間にも彼は続ける。
「速さ、重さ、精度どれをとっても十分に将来が期待されるだろうけどな。だがそれはあくまで言われた通りに動く場合に限ってだ。実戦での足運びなんかを考えりゃ、今のステフじゃ囮ぐらいにしかならねえ」
そんな、でも先制を決めるように動けば・・・。
反論しようとする俺にゾルフは痛恨の一撃を放ってきた。
「先制を決めようにも簡単にフェイントに引っかかって、結局カウンターを食らって一発ダウンよ。つまり、ステフのレベルは”剣舞”程度なんだっちゅうことだ」
俺を黙らせるのには完璧なコンボだった。
その時以来、涙を噛みしめるようにして修行に励むようになった。
今まではのほほんと繰り返していた作業も、現在ではちゃんと架空の相手を見立てたりと工夫しながら行っている。
まあ、これ自体は悪い事だけでは無かったんだけど・・・。
一振り一振り相手の動きを想定しながらやるよう心掛けていたお陰で、ちょこまか逃げる小動物程度は捕まえられるようになっていた。
あんまり強くなった気がしないが、晩飯の足し程度にはなったようなので満足する。
まあ、まだ始めたばかりだしね! そんなもんそんなもん。ぐすっ。
ただ剣技はそこそこ上達しているのだが、魔術に関しては本当にさっぱりなので少しつまらない気持ちでいる。
剣を使ってどこぞの脳筋野郎みたく敵をタコ殴りにするのもそれはそれで爽快だろうが、やっぱり一番は魔術での戦闘だ。
知略戦、というのかな、誘い出しや味方との連携で敵をじわじわ追い詰めたり、男の夢で言えば超火力の特大魔法で敵を焼き尽くしたりする様は想像しただけでも胸が躍る。
そこまでの術が存在するのかは怪しいが、でも生命力を魔力に置換するシステムのこの世界ならあるいはと思うのだ。
命を代償にすんごい魔術を発動。
本来なら好まれるべきではないのだろうが”身を犠牲にして大を成す”というのはそれはそれで憧れるものがある。
しかしその夢も叶えるにはよほど遠い道のりを歩まねばならぬことを認識させられてしまい、かなり気が滅入ってしまう。
ゴールが見えない努力ほど苦痛なものはない。
今にも投げ出したい気持ちに駆られていた。
それでもめげずに頑張っているのは、やっぱりエラメリアのお陰だろう。
彼女は俺が少しでも落胆したりつらい表情を見せたりすると、決まって過剰に応援したり慰めてくれるのだ。
時には自身の胸に抱きしめてくれることもある。
彼女も昔スランプがあったりしたようで、何かと親身になって俺の事を考えてくれる。
心から共感し、そのたびにこうして元気づけてくれていた。
こんな俺の真意に気付くことなく、エラメリアは俺の頭を撫で続けるのだ。
正直下心満載で激しく申し訳なく思っているのだが、嘘をついてるわけじゃないので遠慮せず慰めてもらおう。
こんなに厚い待遇をしてもらえるならもう魔術なんて習得しなくてもいいんじゃないだろうか(ゲス顔)
まあ最近の出来事をまるっと纏めてみたわけだが、とにかく言えるのは俺自身もかなり順調に日を重ねている、ということだ。
この調子でどんどんこの世界にもなじんでいきたいと思う。
・・・え? 話が飛びすぎじゃないかって? エラメリアとの夜はどうなったかって?
正直あんまり触れたくない事なんだが・・・。
まあ、なんてことはない。
最初に一緒に寝た日から十数日間、ほぼ毎日一緒に夜を明かしているさ。
もちろんドキドキしっぱなしだし、興奮しないわけでもない。
だが当初懸念していた理性の崩壊や、夜も眠れない状態なんてものはなかった。
というのも、どういうわけか俺の性欲は結構萎えてしまっているようだ。
女性と同じ布団で寝るというシチュエーションに童貞臭い感情が無いわけでもない。
だが、興奮はすれどそこどまり、エッチな気持ちになるのも男だったころの本能の名残のように感じられてしまうのだった。
昔の俺からは考えられない感覚である。
そういうわけで別段エラメリアの体に意識が搔っ攫われるようなこともない。
間近にある女性の肉体に、興味は湧けど見れないならそれでもいいやという気持ちの方が強かったりするのだ。
どうにも男の象徴を失った辺りから日に日にエロいことを考えなくなってきているように思う。
これは本格的にマズいのではなかろうか。
もし本当の女の子みたいな思考回路になってしまったらどうしよう。
昔とは反対に男性の体、例えばゾルフなんかに欲情しちゃったりするのだろうか。
考えたら鳥肌が立ってきた。
もしもそうなってしまったら、諦めて舌をかみきろう。
そう心に決めた。
遠目に見える湖が近づくにつれて出会う動植物もちょっとずつ変わり、中々飽きない旅路であったように思う。
目に映るモノすべてが俺にとっては珍しく、ゲーム感覚でどんどん知識を蓄えていく。
昔は全く興味ながかった道端の植物も、今では複雑な武器の名前や能力値を暗記するかのように吸収することが出来ていた。
何をしても知識欲が掻き立てられる。
エラメリアもゾルフも俺が質問した事にはすべて丁寧に解説してくれ、これまで習ったものは全部頭に入っている。
お陰さまでその辺の植物から簡単な薬味を生成するぐらいなら出来るまでになっていた。
日常生活に限って言えば結構パーティにも貢献できているんじゃないかと自負している。
そしてもちろん、日々の鍛錬も欠かさない。
午前中はエラメリアに魔術の練習に付き合ってもらい、夕方その日の移動が完了すると剣を握ってゾルフに言われた通りのメニューをこなしていた。
魔術特訓といっても魔力をコントロールできない俺はただひたすら杖を握ってイメトレしてるだけなのだが・・・でも剣術の方はかなりいい線を行っているように思う。
ゾルフが課した修行内容は常に俺の成果に合わせて変更されている。
本人曰く体が技を覚えるまで同じ作業を続けさせたいのだが、いかんせん想定より習得速度が早かったためほぼ毎日更新していかねばならないらしい。
良い傾向なんだろうけどメニューを作成するのに非常に頭を悩ますのだと言っていた。
呆れたような声でそう説明されたのだが、俺自身も感じていた成長を他人に後押ししてもらうような形になり大変鼻が高い思いでいる。
そしてゾルフはこうも続けた。
素振りなどの反復練習は、唐突の斬りにも対応できるよう身体を進化させ脳が効率的な振り下ろし方を理解させることが目的である。
だが俺の場合、仕組みの理解力は中の上ぐらいの成績でも”肉体”の方が早くに形成されてしまうため、効率を上げる云々以前に体が剣を振るうのに最適の状態になってしまうそうなのだ。
これを聞いた時の反応はまさに有頂天!って感じだったね。
だって、言い換えれば「身体が強すぎてアタマが追いつかないんだ!」ってことなんだろ?
そんなオイシイ設定この俺が見逃すわけがないじゃないか。
いつだって俺TUEEEEEEEは素晴らしい。
だが喜び舞う俺にゾルフが苦言を呈す。
「ステフの身体能力は確かに高い。だけどいざ戦えるかどうかと言われると、ぶっちゃけ戦力にカウントはされねぇだろうな」
えっ何で? 強いんでしょう、俺。
愕然としている間にも彼は続ける。
「速さ、重さ、精度どれをとっても十分に将来が期待されるだろうけどな。だがそれはあくまで言われた通りに動く場合に限ってだ。実戦での足運びなんかを考えりゃ、今のステフじゃ囮ぐらいにしかならねえ」
そんな、でも先制を決めるように動けば・・・。
反論しようとする俺にゾルフは痛恨の一撃を放ってきた。
「先制を決めようにも簡単にフェイントに引っかかって、結局カウンターを食らって一発ダウンよ。つまり、ステフのレベルは”剣舞”程度なんだっちゅうことだ」
俺を黙らせるのには完璧なコンボだった。
その時以来、涙を噛みしめるようにして修行に励むようになった。
今まではのほほんと繰り返していた作業も、現在ではちゃんと架空の相手を見立てたりと工夫しながら行っている。
まあ、これ自体は悪い事だけでは無かったんだけど・・・。
一振り一振り相手の動きを想定しながらやるよう心掛けていたお陰で、ちょこまか逃げる小動物程度は捕まえられるようになっていた。
あんまり強くなった気がしないが、晩飯の足し程度にはなったようなので満足する。
まあ、まだ始めたばかりだしね! そんなもんそんなもん。ぐすっ。
ただ剣技はそこそこ上達しているのだが、魔術に関しては本当にさっぱりなので少しつまらない気持ちでいる。
剣を使ってどこぞの脳筋野郎みたく敵をタコ殴りにするのもそれはそれで爽快だろうが、やっぱり一番は魔術での戦闘だ。
知略戦、というのかな、誘い出しや味方との連携で敵をじわじわ追い詰めたり、男の夢で言えば超火力の特大魔法で敵を焼き尽くしたりする様は想像しただけでも胸が躍る。
そこまでの術が存在するのかは怪しいが、でも生命力を魔力に置換するシステムのこの世界ならあるいはと思うのだ。
命を代償にすんごい魔術を発動。
本来なら好まれるべきではないのだろうが”身を犠牲にして大を成す”というのはそれはそれで憧れるものがある。
しかしその夢も叶えるにはよほど遠い道のりを歩まねばならぬことを認識させられてしまい、かなり気が滅入ってしまう。
ゴールが見えない努力ほど苦痛なものはない。
今にも投げ出したい気持ちに駆られていた。
それでもめげずに頑張っているのは、やっぱりエラメリアのお陰だろう。
彼女は俺が少しでも落胆したりつらい表情を見せたりすると、決まって過剰に応援したり慰めてくれるのだ。
時には自身の胸に抱きしめてくれることもある。
彼女も昔スランプがあったりしたようで、何かと親身になって俺の事を考えてくれる。
心から共感し、そのたびにこうして元気づけてくれていた。
こんな俺の真意に気付くことなく、エラメリアは俺の頭を撫で続けるのだ。
正直下心満載で激しく申し訳なく思っているのだが、嘘をついてるわけじゃないので遠慮せず慰めてもらおう。
こんなに厚い待遇をしてもらえるならもう魔術なんて習得しなくてもいいんじゃないだろうか(ゲス顔)
まあ最近の出来事をまるっと纏めてみたわけだが、とにかく言えるのは俺自身もかなり順調に日を重ねている、ということだ。
この調子でどんどんこの世界にもなじんでいきたいと思う。
・・・え? 話が飛びすぎじゃないかって? エラメリアとの夜はどうなったかって?
正直あんまり触れたくない事なんだが・・・。
まあ、なんてことはない。
最初に一緒に寝た日から十数日間、ほぼ毎日一緒に夜を明かしているさ。
もちろんドキドキしっぱなしだし、興奮しないわけでもない。
だが当初懸念していた理性の崩壊や、夜も眠れない状態なんてものはなかった。
というのも、どういうわけか俺の性欲は結構萎えてしまっているようだ。
女性と同じ布団で寝るというシチュエーションに童貞臭い感情が無いわけでもない。
だが、興奮はすれどそこどまり、エッチな気持ちになるのも男だったころの本能の名残のように感じられてしまうのだった。
昔の俺からは考えられない感覚である。
そういうわけで別段エラメリアの体に意識が搔っ攫われるようなこともない。
間近にある女性の肉体に、興味は湧けど見れないならそれでもいいやという気持ちの方が強かったりするのだ。
どうにも男の象徴を失った辺りから日に日にエロいことを考えなくなってきているように思う。
これは本格的にマズいのではなかろうか。
もし本当の女の子みたいな思考回路になってしまったらどうしよう。
昔とは反対に男性の体、例えばゾルフなんかに欲情しちゃったりするのだろうか。
考えたら鳥肌が立ってきた。
もしもそうなってしまったら、諦めて舌をかみきろう。
そう心に決めた。
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