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ふくでん!

夙多史

エピローグ

「よ、よかったのう。幸い掠り傷で済んで」
「心の方は重傷だい……」
 一晩だけの簡単な検査入院でさっさと病院から追い出された俺を待っていたらしい小槌が、引き攣った笑みを浮かべつつ労わってくれた。それでも溜息は出るもんだ。
「はぁ~、絶対嫌われたぁ……」
「お、落ち込むことはないのじゃ! あの娘はおんしを必死に助けようとしておったしの」
「それ、突き飛ばした罪悪感からだろ。今城さん優しいから」
 今度会った時に避けられでもしたら俺はもう立ち直れないかもしれません。
「やめいやめい! 暗い顔をするでない! そうじゃ、おんしに恋人はできなかったが、妾がその、友になってやらんこともないぞ?」
 チラッと上目遣いで俺を見上げてくる黒髪の美少女にちょっとぐらっと来そうになった。危ない危ない。そっち方面に俺の性癖を開発されちゃたまったもんじゃない。
「ていうか、どうせ俺の体質をどうにかするまで帰れないんだろ、お前?」
「な、なぜそれを!?」
「だってそれがお前の仕事なんだろ? 最初からずっと善意でやってたんなら、お前の性格ならとっくに諦めるだろ」
「ぐぬぬ、一日共に過ごしただけで妾を知ったような……じゃが言い返せんのじゃ」
 図星を突かれて唸っていた小槌だが、なにを閃いたのか唐突にカカッと笑った。

「そうじゃとも! 妾は〝福天〟が一柱、名を小槌! おんしの問題が解決しておらぬ以上、おんしの傍を離れるわけにはいかんのじゃ! フフフ、迷惑と言われようが知ったことではないわ! 妾は勝手におんしの家に住みつくからの! タダ飯食い放題じゃ!」

「お、おう、開き直ったぞこの貧乏神……」
 手の甲を腰にあてて踏ん反り返る小槌に俺は冷や汗を禁じ得ない。すっと差し出された手にビックリして後ずさりそうになった。
「そういうわけで、これからもよろしくなのじゃ!」
 その小さな掌と黒い瞳を見て、俺はもう一度溜息をつく。諦めるのは得意なんだ。
「わかったよ。なら、次こそ俺の体質をどうにかしてくれよ?」
「うむ、任せるのじゃ!」
 元気よく答えた小槌は花咲くような満面の笑顔だった。
 こうして、不幸な少年こと俺は幼女の福の神に憑かれてしまったわけだ。

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