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ふくでん!

夙多史

第七話 炎海の救出劇

 と啖呵を切って飛び出したものの、そこは俺じゃなく小槌の出番だった。
「妾の力で場の運気を操作する。今城芹菜が運よく・・・見つかる確率を高めるのじゃ」
 そう言って彼女は『うちでのこづち』を振り回す。その効果は絶大で、今城さんではなかったが、俺は行く先々で逃げ遅れた人々を見つけては安全な場所まで誘導できた。
 消防車や救急車のサイレンが止まることなく鳴り続けている。
 炎が食べ物屋のガスにでも引火したのか、近くでまた立て続けに爆発が起こる。
 だが、俺たちに害はない。荒ぶる炎も、立ち昇る黒煙も、爆発の衝撃で飛散する瓦礫も、まるで意志でも持っているかのように俺たちには掠りもしない。
 小槌の運気操作と、俺の『不幸の中でのみ発揮する幸運』の特性が相乗効果にでもなってるのかな?
 なんにしても俺たちはわやくちゃになった夏祭り会場を、暴発事故が起こる前よりも自由に行動できた。
 そしてついに、今城さんを発見した。
「今城さん!」
 元々は盆踊りの櫓が建っていた広場だ。そのほぼ中央の位置で、崩れた櫓を背にして座り込んでいる彼女は――
 炎に囲まれていた。
「え? 富海くん?」
 炎の向こうに俺の姿を見つけた今城さんは、幻でも見たかのように目を大きく見開いた。右の足首を手で押さえている。まずいな、捻挫でもしているのか?
「今城さん、すぐ助けるから!」
「だ、ダメ! 私のことはいいから逃げて富海くん!」
「いいわけないだろ!?」
 俺が大声を上げると今城さんはビクリと肩を震わせた。それでも俺を逃がそうと言葉をかける優しい今城さんには悪いが、耳を傾ける気はない。代わりに俺は小槌を見る。
「小槌、俺は無理でも今城さんの幸運は上げられるか?」
「既にやっておる。問題はないのじゃ」
「さっすが。仕事早いな」
 これで今城さんにさらなる不幸は訪れないはずだ。周りが極限の不幸一色なこの状況で、俺の不幸(笑)が伝染することもないだろう。
「して、ここからどうするのじゃ?」
「とりあえずあの中に飛び込む」
「さらりと果敢な台詞を言うのう、おんし。じゃが嫌いではないぞ。妾も付き合おう」
 カカッと小槌は笑う。それから俺と一緒に駆け出して炎の壁に突進した。すると都合よく風が吹き、俺たちがタックルを極めようとした炎が道を開けるように揺らぐ。
 無傷で炎を突破して来た俺たちに、涙目の今城さんは心配そうに、
「ば、馬鹿! 富海くんの馬鹿! こんなことして、死んじゃうかもしれないのに……」
 初めて聞いたな、今城さんが誰かを罵倒するの。
「俺の方は『かもしれない』だ。けど今城さんは放っておくと確実に死んでいた。足、捻ったのか?」
「う、うん……」
 今城さんの右足首は青くなって腫れていた。かなり痛そうだ。こりゃ歩くのは無理だな。
「ふむふむ、これはおんしが担ぐしかないのう」
「やっぱそうなるよな……」
 神様とはいえ幼女の小槌に担がせるわけにもいかないよな。ところでなんでニヤニヤしてるんですか小槌様?
「今城さん、ごめん」
「きゃっ」
 俺は今城さんをお姫様だっこで抱えた。おんぶだとほら、背中に当たっちゃうじゃん? 柔らかいアレが……おんぶにすればよかった。しかし筋力いるなこの抱え方。今城さん軽いからよかったけど。
「富海くん、ごめんなさい。私、重いよね?」
「いやいや、そんなことはないよ」
「でもプルプルしてる……」
「これは抱え方の問題です! 漫画やアニメのように軽々とはいかんとです!」
 申し訳なさそうに身を竦ませる今城さんに俺は必死に強がってみせた。思わずエセ博多弁が出るくらい強がってみせた。
「やっぱり富海くんだけでも先に逃げ」
「ねえよ。今城さんを置いて俺だけ逃げるなんてできるわけないだろ。今城さんの友達に、今城さんを絶対見つけて連れて帰るって約束したんだ」
「え? ……みんなは無事なの?」
 おっとそうだった、そのこと言わないとな。
「今城さんと一緒にいた三人は無事だよ。先に避難してる」
「そう、よかった」
 心の底から安心したような表情をする今城さんに、俺もつい頬が緩んでしまった。
「どうでもよいが、おんしら、そろそろ逃げぬと危ないのじゃ」
 小槌が周りを見ながら告げた。炎はさらに燃え広がっていて……まずいな。俺たちが来た方角はもう完全に火の海になっているぞ。アレは運気でどうこうできるレベルじゃない。
「くそっ、どこに逃げれば……」
「李福の社じゃ。彼の地は神域。炎が燃え移ることもあるまい」
 小槌が火の手の弱い後ろ側を示す。神様が言うんだ。そこは安全に違いない。信じてるぞ。
「あの、富海くん、その子は?」
 今さらだが、今城さんが小槌について訊ねてきた。
「あー、えーと……迷子?」
「誰が迷子じゃ!? 妾のことは後でよい。とにかく逃げよ」
「お、おう!」
 俺は今城さんをお姫様だっこしたまま再び炎の壁に飛び込んだ。
 やっぱり不自然な風が吹き、炎は道を開けてくれた。

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