ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その3・故郷の為に

[クロノ]
クロノ「それで?なんでアウストールに行くんだ?」
アクア「あんたは『レギオン』って知ってるかい?」
レギオンは以前ハゼットから聞いたことあるな。
クロノ「あれだろ?10年くらいに1度どこからか現れたデッカい巨人みたいな魔獣だっけ。ハゼットさんでも倒せなかったんでしょ?」
アクア「そのレギオンが海の向こうから来てるのが見つかったのさ。」
クロノ「それで1番近いのがアウストールだって?」
アクア「そういうこと。町長さんから直々のご依頼さ。」
そりゃまた随分ギルドを信頼されてるが…
クロノ「今ハゼットさんいないじゃん!どうすんの⁉︎」
アクア「今シーラをミランダの所に行かせてる。それでミランダを魔界に行かせてハゼットを連れ戻してくるのさ。」
クロノ「それまで時間稼ぎしろってか?」
アクア「時間稼ぎになるといいけどねって程の相手らしいけどね!あたしはその時まだガキだったし、遠くの村にいたから奴がどんくらい強いのか分かんないのさ。ハゼットが勝てない程ってのは知ってるけどね!」
ドラゴンより強いってことでしょ?
ドラゴンにマトモに勝てるのがこの世でハゼットだけなのに。
クロノ「ガイアさんらは?」
アクア「あの人らは別任務だってさ。レギオン討伐の邪魔にならないようアウストールの周りの森の魔獣を退治する任務って。」
クロノ「そりゃまあ重要だけど、何でガイアさん程の腕前の人がそんな任務を?他の人でも出来そうなのに。」
アクア「さぁね。あたしもそこまでは聞いてないけど、ガイア曰く、俺にしか果たせない任務。だってさ。」
クロノ「そんな強力な魔獣がいんのか?」
アクア「さぁね。全く、戦力的には絶望だよ‼︎」
クロノ「でもこれで勝てたらヒーローじゃん‼︎そうでなくても、やる気くらいは出していこうぜ?」
アクア「そうだね‼︎あたしらが負けるわけにはいかないからね‼︎」

アウストールに着く。
以前来た時は観光客や行商で溢れかえっていたのに、今は軍人やら武器を持った傭兵やらで溢れかえっている。
クロノ「みんなは?」
アクア「多分、浜にいるだろうね。」
バイクから降り、町に入る。
軍人「おい、お前たちは…傭兵か?」
いきなり軍人に話しかけられる。
この鎧…ベルージアの…
アクア「アリアンテのギルドのもんさ。」
軍人「ギルドか。よく来てくれた。今は人手がいくらあっても足りないという状況だ。」
アクア「急だったからねぇ。」
軍人「お前たちの仲間が浜辺に向かっていった。既に戦う準備を始めている頃だろう。合流してやれ。」
アクア「了解。クロノ、行くよ。」
軍人「クロノ…?お前、クロノと言ったか…?」
クロノ「そうだけど…」
軍人はとても苦い顔をする。
軍人「あの事件から、ベルージアはよその町と関係を改めようという方向に進んだ。前町長の悪事を暴き、町を救ってくれたことは感謝する。町民は皆同じ気持ちだ。だが…私個人のことではあるのだが…お前が殺した兵の中に…私の友人がいたのだ。」
クロノ「………」
軍人「もちろん、お前に感謝したい気持ちは嘘ではない。だが…」
クロノ「友達殺されてるから好きにはなれないってか?別にそれでも構わんよ。俺は好かれる為に色々やってるわけじゃないからな。」
軍人「…そうか……」
クロノ「ただ一個言っとくとすれば…」
軍人「………?」
クロノ「あの時俺が出会った兵の中にマトモなやつはいなかった。正義感溢れるような善人はいなかった。」
軍人「……善人はいなかった、か…」
クロノ「あんたの友人を悪く言うようで悪いが、いなかったと断言させてもらおう。」
軍人「いや、むしろ心が軽くなった。なぜあいつが殺されなければと思っていたが、それならば仕方ないな。」
クロノ「そうか。」
軍人「だがお前のことが嫌いなことには変わらない。あいつはたとえクズだったとしても私の友人だったからな。」
クロノ「それでいい。俺は嫌われ者のヒーローだからな。」
軍人「ヒーローなのに嫌われ者とはな…。さぁ、行ってこい。連れは既に先に行ってしまったぞ。」
クロノ「はいはい。レギオンに巻き込まれて死ぬなよ?」
軍人「ははっ。ならお前はレギオンに食われてしまえ。」
クロノ「ひっでぇ。」
と言いつつもお互い笑い合う。

浜が見えてきた。
レギオンの全身が見えるくらいには迫ってきているようだ。
クロノ「あれがレギオンか…。」
顔がない巨人のような姿だ。
いや、正確には顔がある。
胴体が全部顔で埋め尽くされており、その胴体から手足が出ているという感じだ。
本来顔がある場所には顔がない。
クロノ「今まであった魔獣で1番魔獣っぽい見た目してんな…。」
まだ距離は離れているが、遠距離からの攻撃が可能な者は既に攻撃を始めている。
ターニア「クロノ‼︎来たか‼︎」
カンザー「おお‼︎とうとう来たか‼︎」
レオ「お兄ちゃん‼︎」
アウストールと言えばカンザーさんだな。
クロノ「おまたせ。今どんな状況?」
ターニア「まだ全然だ。今は弓使いや超遠距離からの魔法攻撃が可能な者が頑張っている。だが見ての通り、痒そうな素振りすら見せない。」
カンザー「やらないよりはマシじゃろうが、こっちが疲れるだけにしかならんような気もするのぉ。」
周りを見渡す。
レーニャとレオはいる。
クロノ「あれ、フレアとブランとアクアは?あとエリーも。」
レーニャ「アクアさんは先制攻撃隊に入っていきました。エリーさんは他の場所を見てくると。すぐに合流すると思いますよ。」
カンザー「実はの…ブランがレギオンの姿を見た途端怯え出してしまっての。今フレアが町の中央の拠点で看病しておる。」
クロノ「へぇ〜。むしろ張り切りそうな子だと思ってたんだけどなぁ…。」
カンザー「ブランは幼い頃に村を奴に襲われてな。おそらく、トラウマなんじゃろう。」
クロノ「そんな過去があったのかよ…。それならむしろ怯えない方が強すぎるくらいか…。」
カンザー「あのような怯え方ではおそらくマトモに戦えんじゃろう。」

しばらくして、浜の中央で1人の軍人が声をあげる。
隊長「全員聞いてくれ‼︎私は全ての町を代表し、この討伐隊の隊長を任されている者だ‼︎レギオンとの戦いの為に、集まってもらった者達を第1、第2、第3陣の3つに分ける‼︎これはこれほどの人数が1度に行動してしまうと火力はあるだろうが仲間への誤射や動きにくくなるなどのデメリットがあるためだ‼︎向こうの端からそこの深緑の鎧を着た兵士‼︎そこまでを第1陣とする‼︎第1陣はこの浜辺にてレギオンの攻撃‼︎続いてそこの上半身裸の斧使い‼︎そこまでが第2陣だ‼︎第2陣は町の中央付近にて第1陣で追い返しきれなかった場合に戦ってもらう‼︎残りは第3陣‼︎第3陣は町の外で奴の迎撃だ‼︎今もなお援軍はこちらへ向かい続けている‼︎我々の任務はそれまでの時間稼ぎ、及び奴の体力を最大限削りきることだ‼︎勿論、この第1陣で奴を倒してしまっても構わん‼︎私も第1陣に加わり戦う‼︎私はこの戦いで戦死する覚悟で戦う‼︎その時の代わりの隊長は既に用意されている‼︎仮に私が死んでも、混乱に陥らないためだ‼︎これは私やお前達の故郷だけでなく、お前達の家族、友人、恋人、全ての者の故郷を守る戦いだ‼︎私も私の故郷の為に戦う‼︎このアウストールの町長からは町がどれだけ破壊されても構わないから奴を討伐してくれと言われている‼︎町長は、自らの故郷を犠牲にしてまで、自分とは関わりのないはずの故郷の為に、我々より早く戦ったのだ‼︎我々に情けない撤退はできようか‼︎否‼︎我々には故郷を守る義務がある‼︎各々奮戦せよ‼︎そして…全員の生還を祈る‼︎」
「「「うおおおおおおおお‼︎‼︎」」」

クロノ「あっちー。」
カンザー「ワシらは第2陣だな。」
ターニア「フレア達にもこのことを言っておいた方がいいだろう。」
レオ「僕、フレアの所に行ってくるね‼︎」
レオが走っていく。
クロノ「さて、俺らも準備しますか。」

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